防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(7月放送内容)



テ−マ:宇宙と防衛問題

パ−ソナリティ−:

 防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A、このコーナーでは防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話いただきます。今日は東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきます。よろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 では早速ですが、何についてお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 これから本格的な夏がやってくるわけですが、夏といえば七夕、七夕といえば天の川、天の川といえば宇宙ということで、今日は、宇宙と防衛問題について話したいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、よろしくお願いいたします。

増田局長:
 子供の頃から、宇宙について多少は興味があったわけでありまして。宇宙には夢がありますよね。何万光年という星を見ながら、今見ている光がこの星を出発したときには、まだ人間は原始人として原始生活をしていたんだとか、そういった感慨にふけれますよね。私は、東京生まれの東京育ちなものですから、街の灯りが明るすぎて、星はあまり良くは見えなかったんですね。一等星、二等星ぐらいは見えましたけれども。そういうわけで、渋谷に五島プラネタリウムがありまして、そこにはよく行きました。夏は、よく冷房が効いていて気持ちよかったんです。残念ながら10年前にその五島プラネタリウムというのは閉館してしまいました。


パ−ソナリティ−:

 実際に見るこの星空ももちろんすばらしいですけれども、プラネタリウムもまた生とは違う星の良さに触れられるので、とても良いですね。


増田局長:

 あと、星雲とか星団とかの写真を、図鑑で見るのも好きだったですね。バラ星雲とか、馬頭星雲とか、蟹星雲とか、いろいろありますけれども、非常に美しいんですね。そういった星雲の写真を見るのが好きだったんです。それで、クリスマスプレゼントにですね、天体望遠鏡が欲しいと言って、親にせがんだことがありましたけれども、結局買ってはもらえませんでした。まあ、子供に買って与える安い望遠鏡では星雲なんか見えませんけれどもね。せいぜい月の表面のクレーターが見えるぐらいなんですけれども。


パ−ソナリティ−:

 なるほど、図鑑を見たりとか望遠鏡を欲しがったりとか、局長、ほんとに星がお好きなんですね。


増田局長:

 私の生家のお向かいに、天文学が専門の立派な学者さんが住んでらっしゃったんですけどね。その学者さんというのは、小田稔東大教授という方で、後に宇宙科学研究所の所長や理化学研究所の理事長なども歴任された方なんです。X線天文学の権威でいらっしゃいましたので、可視光でなくX線を出す星、それが専門なものですから、目には見えない星なんですけれどもね。小田教授には克郎君という私と同い年のご子息がいてですね、小さい頃、よく克郎君と一緒にどこかに連れて行ってくれました。たとえば東京天文台とかあるいは駒場に宇宙航空研究所というのがあるんですが、そういうところに連れて行ってくれたことをよく覚えています。あと、学会とかで外国へ行かれたときには、克郎君の分だけではなくてですね、私にもおみやげとしてミニカーとかをよく買ってきてくださったりして、いろいろと良い思い出があります。


パ−ソナリティ−:

 ご家族ぐるみで、仲良しでいらっしゃったんですね。でも、なかなか宇宙航空研究所とか体験出来ないすばらしい経験をされてきたんですねえ。


増田局長:

 そうですね。小田教授は、その後文化勲章まで受章された偉い学者さんで、10年前にお亡くなりになりましたけれども、あと1年生きておられたら、ノーベル賞を受賞していただろうと言われています。実際、亡くなられた翌年に、小田教授の共同研究者であったアメリカのジャッコーニ氏らがX線天文学への貢献によってノーベル物理学賞を受賞しています。小田教授は、最晩年までピンピンされていらっしゃったので、あのとき亡くなられたのが本当に残念に思います。ちなみに、東北大学の名誉教授で海洋法の権威でいらっしゃる小田滋教授ですね、この方はハーグの国際司法裁判所の判事をも長く務められておりましたけれども、この小田稔教授の実弟でいらっしゃいます。


パ−ソナリティ−:

 なるほど、小田教授。ほんとに惜しい方を亡くしたというか、あと1年ですね。惜しい方はすぐ亡くなってしまいますね。


増田局長:

 防衛の話からだいぶ脱線してしまいましたけれども、話を宇宙と防衛問題にもどしたいと思います。近年、宇宙開発利用に関する大きな環境の変化がありましたので、防衛に関する宇宙開発利用の分野でも、今後の進展がおおいに期待できるのではないかというふうに考えています。


パ−ソナリティ−:

 大きな環境の変化とはなんでしょうか。


増田局長:

 3年前の2008年5月に宇宙基本法が成立したんですが、このことなんですね。これによって、それ以前と比べて流れが大きく変わりました。以前はですね、1969年の国会決議というのがありまして、40年前の国会決議ですが、これで自衛隊による宇宙開発・利用に大きな制約が設けられていたんですね。

パ−ソナリティ−:
国会決議による大きな制約とは詳しくお話いただけますでしょうか。

増田局長:
1969年5月の国会決議で、我が国の宇宙開発・利用は「平和の目的に限る」というふうにされたんですね。ここでいう「平和の目的」というのはイコール「非軍事」ということだとされていたわけです。この「非軍事」を厳格に適用すれば、防衛庁・自衛隊は通信衛星をはじめとした宇宙利用ができなくなってしまうというそういう議論ですね。

パ−ソナリティ−:
それは結構大変な事態でしょうか。

増田局長:
そうですね。それで政府は「一般化原則」というものを示しまして、利用が一般化しているものは自衛隊も利用出来るというふうにしたんですね。これが1985年のことですので、今からずいぶん古い話ですけれども、これによって、その後の、通信衛星とか、あるいは情報衛星等の導入が可能となってきたわけですね。ただ、非常に苦しいといえば苦しい状況だったのかもしれません。
宇宙基本法では、「国は、国際社会の平和および安全の確保ならびにわが国の安全保障に関する宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずる」というふうにされているんですね。それでこういうような動きがありましたので、昨年末に策定された防衛大綱の中でも、宇宙に関する文言が何箇所か出てきております。興味のある方は是非防衛大綱を見ていただきたいと思っています。いずれにせよ、防衛に係る宇宙開発利用について今後注視していきたいというふうに考えています。

パ−ソナリティ−:
はい、ありがとうございました。

増田局長:
どうもありがとうございました。

パ−ソナリティ−:
防衛省、東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A、今日は東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきました。ありがとうございました。
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