防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
 自衛隊百科 
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(11月放送内容)



 

テ−マ:令和3年版防衛白書について

 
 

パーソナリティー:
 今月の放送は、東北防衛局の市川道夫局長からお話を伺います。市川局長、よろしくお願いします。
 本日は、令和3年版防衛白書についてお話しをいただきます。今、私の手元に防衛白書があるのですが、まず気になるのはこの表紙の絵ですね。この絵は、騎馬武者ですか。

局長:
 はい。早速表紙に注目していただき、ありがとうございます。今年の防衛白書には、表紙全体に墨絵による騎馬武者が描かれています。これが書店に並んでいたら、思わず手に取ってみたくなる人も多いんじゃないでしょうか。
 この絵は、世界的に注目を集める墨絵アーティストの西元(にしもと)祐(ゆう)貴(き)さんという方のものです。
 この墨絵には、防衛省・自衛隊の「力強さ」というものや国を守る意思の強さ、そういったものが表現されています。
 

パーソナリティー:

 私の手元に他の官公庁から発刊されている白書もありますが、表紙だけ見ても、だいぶ雰囲気が違いますね。
  

局長:

 そうですね。国のそれぞれの行政機関では、実施した施策を国民に対して説明するという趣旨から、毎年、白書を刊行しています。刊行された白書は、一般の書店でも発売されています。発売部数は、白書ごとに違うのですが、茂木さんは、どの役所の白書が人気があると思いますか。 


パーソナリティー:

 書店で実は見かけたことがありまして、人気があるんじゃないかなと思っています。
 
局長:
 さすがですね。実はですね、防衛白書の発売部数は、国の行政機関の白書の中で、第1位です。


パーソナリティー:

 なるほど、そうなんですね。
 では、次に、この防衛白書の中身について教えてください。

局長:
 はい。
 令和3年版防衛白書には、令和2年4月から令和3年3月までの1年間、つまり昨年度における防衛省・自衛隊の活動や国際情勢が記述されています。ただし、重要な出来事については、今年の5月くらいまでの出来事も記述されています。
 
パーソナリティー:
 昨年1年間での大きな出来事というと、新型コロナウイルスへの対応などですか。
 
局長:
 そうですね。
 新型コロナウイルス感染症に対して、自衛隊は、文字通り総力を挙げて対応しました。全国35の都道府県に対して、災害派遣というかたちで、自衛官であるお医者さん、私達は医官という風に呼んでいますけども、医官を含む自衛隊員を医療支援のために派遣したり、自衛隊の病院にコロナの陽性が判明した患者さんを受け入れたり、また、テレビとかで見た人もいらっしゃるかと思いますも、東京と大阪に自衛隊大規模接種センターというワクチン接種会場を設けたりと、様々な活動を実施してきました。これらの活動は、特集ページを設けて白書の中で紹介されています。
   

パーソナリティ:

 国際情勢については、どのようなことが記述されていますか。
 

局長:

 はい、我が国の安全保障にとって懸念される動きとして、尖閣諸島周辺の中国海警の動きについて、紹介しています。
 

パーソナリティ:

 中国の海警という言葉は、ニュースでも聞くことがあるのですが、どのような組織なのでしょうか。

局長:

 中国の海警という組織は、中国の、いわば海上保安庁に相当する組織ですが、軍事的な任務も付与される可能性がある組織なんです。中国は、尖閣諸島は中国の領土だと主張していますので、そういう独自の主張を行動で示そうとして、海警の船舶を日本の尖閣諸島の周辺に派遣して、頻繁に日本の領海に侵入したり、領海のすぐ外側の海域である接続水域に、何日間にもわたって居続けさせたりと、そういう活動を行っています。


パーソナリティー:

 日本にとって受け入れられない出来事が、実際に日本の周辺の海で起きているのですね。それ以外に国際情勢で注目しているものはありますか。

局長:
 白書の中で中国海警の動きの他に、例えば、アメリカのバイデン政権の誕生とそれに伴う安全保障政策の行方について注目して説明しています。米国は、日本にとって唯一の同盟国です。トランプ政権からバイデン政権に移行する中で、米国の政策がどう変化しているか、あるいは変化しない部分はどこかなど、詳しく紹介しています。  
 例えば、変化したところとしては、バイデン大統領は、アメリカ単独の取り組みではなく、同盟関係を重視して世界に関与していくというそういう姿勢を見せています。


パーソナリティ:

 なるほど。変わらない部分は何ですか。

局長:

 はい、変わらない部分は、アメリカの中国への対応です。トランプ政権は、中国を世界の秩序に対する修正主義勢力という風に位置づけて、中国との戦略的競争、これを重視するとしていました。バイデン政権になっても、中国を抑止しようという姿勢に変化は見られず、バイデン大統領自身も、中国を「最も深刻な競争相手」と述べています。
 今年の白書では、こうした点を紹介しながら、特に台湾をめぐって、米国と中国との間で対立が顕在化する可能性が否定できないと記述しています。

パーソナリティ:

 台湾をめぐるアメリカと中国の対立について、私たちはどのようにとらえたらよいのでしょうか。


局長:

 そうですね。台湾から中国本土までの距離は、近いところでは130km程度離れています。これに対して、台湾から日本の与那国島までは、110kmしか離れていません。日本の方により台湾は近い、地理的にはそのような位置関係になっています。仮にそのように近い台湾で何かが起こった時ということを考えますと、日本の安全保障にとって影響は少なくないといえるのではないでしょうか。 
 この点に限らず、防衛白書では、日本がどのような安全保障上の課題に直面しているのか、そういうことについて紹介しています。また、安全保障上の課題に対して、自衛隊がどのような防衛力を整備しようとしているのか、あるいは、日米同盟関係をより強固なものとするためにどのような取組を行っているかについても、紹介しています。


パーソナリティ:

 この1年の国際情勢の動きと、それに対する防衛省・自衛隊の歩みが、これを読めば分かる、ということですね。
 ところでこの防衛白書、結構厚みのある本なのですが、局長は、どのような方に防衛白書を読んでほしいとお考えですか?


局長:

 そうですね。私としては、厚い本なんですけど、学生さんなどの若い人を含んだ一般の方にも、ぜひ防衛白書を読んでもらいたいと思っています。  
 確かに今年の防衛白書は、例年の白書に比べれば薄くなったといえるんですけども、全部で470ページもある、厚い本になっています。また、国の1年間の施策をしっかり説明しようとしていますので、専門用語も出てきて、一般の人が気軽に手に取ってよむ、というものではないかもしれません。
 ただ、リスナーの方々が、例えば、新聞記事やテレビのニュースなどで何か気になる防衛問題があったり、あるいは気になる国際情勢を目にしたときに、「この問題についてもう少し詳しく知りたい」とか、あるいは「もう少しこの部分はどうなっているのだろう」と疑問を持ったり、いろいろ調べてみたいと思った場合に、防衛白書をめくってみる、そういう風に使っていただいたらいいのではないかと思っています。


パーソナリティ:

書店で売っているんですよね。値段はいくらぐらいするのでしょうか。

局長:

 高くないです。1,400円です。ただし、防衛白書は書籍として販売されているほかに、防衛省のホームページでも閲覧することもできますし、また無料でのダウンロードすることもできます。気軽に防衛白書をご覧になっていただいて、防衛省・自衛隊をより身近なものに感じていただければと思っています。


パーソナリティ:

 ありがとうございました。  
 本日は、令和3年版防衛白書について、東北防衛局の市川道夫局長から、お話しをお伺いしました。市川局長、どうもありがとうございました。

局長:

 こちらこそ、どうもありがとうございました。


パーソナリティー:

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