防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(11月放送内容)



 

テ−マ:防衛施設周辺地域における周辺対策事業について(前編)

 
 


パーソナリティー:
 本日は東北防衛局の熊谷昌司局長から「防衛施設周辺地域における周辺対策事業」について、お話を伺います。 熊谷局長、よろしくお願いいたします。

局長:
 はい、よろしくお願いします。
 自衛隊や米軍が使用する防衛施設は普段部隊が所在する駐屯地のほか用途が多岐にわたり、飛行場や演習場等広大な面積を必要とするものも多く、施設の設置・運用によって航空機騒音などにより周辺地域の生活環境に影響を及ぼすケースもあります。そのため東北防衛局では、企画部周辺環境整備課及び防音対策課の両課を設置し防衛施設周辺対策事業を所掌させています。
 周辺対策事業が行われるようになったのは、戦後からの安全保障・自衛隊の歴史が深く関係しています。はじめに、事業の根拠となっている法律の成り立ちからお話ししたいと思います。 第2次大戦後、日本は連合国軍の占領下にありましたが、昭和27年、平和条約(通称サンフランシスコ平和条約)の発効と同時に日本占領が終了し、日本は主権を回復しました。 一方で、平和条約の発効後、いわゆる「基地問題」が全国的に社会問題となり、昭和28年に「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に関する法律(通称特別損失補償法)」が制定されました。 この法律は、米軍の行為により生じた農林漁業等の損失を補償することを目的としていましたが、障害を未然に防止・軽減する施策については、法律の対象とはなっていませんでした。 その後、防衛施設の周辺地域の住民や関係地方公共団体等から、防衛施設の所在する地域社会全体の発展を目指すような幅広い解決策を実現するよう、強い要望があり、昭和41年に「防衛施設周辺の整備等に関する法律(通称周辺整備法)」が、閣議決定。国会に提出され、その後可決・成立、同年7月に施行されました。ところが、この法律が施行された昭和40年代は、我が国の高度経済成長の時期であり、防衛施設周辺の都市化が進展し、また、生活環境に対する国民の意識の向上等もあり、防衛施設の設置・運用とその周辺地域社会との調和を保つためにはなお課題があったのです。 更に、米軍提供施設等が所在する主要都道府県から構成される渉外関係主要都道府県知事連絡協議会等の関係団体から、防衛施設周辺対策について積極的に取り組んで欲しいとの要望が相次ぎ、防衛施設周辺の生活環境の整備等の諸施策を抜本的に強化・拡充するため、昭和49年に周辺環境整備法を発展させた「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(いわゆる環境整備法)」が国会で可決・成立し、施行され、現在の周辺対策事業が実施できる環境が整いました。 防衛施設の機能を十分に発揮させるためには、防衛施設とその周辺地域との調和を図り、周辺住民の方々のご理解とご協力を得て、常に安定して使用できる状態に維持することが必要です。
 このため防衛省では、射撃訓練等による演習場の荒廃によって河川への影響が生じたり、重車両の通行による道路損壊など自衛隊等の行為によって障害が生じている場合や、防衛施設が所在することによって周辺住民の生活や事業活動が阻害されていると認められる場合、環境整備法に基づき、これらの障害等の緩和を目的とした施策を行っております。

パーソナリティー:
 防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策はいろいろあると思われますが、主な施策について具体的にご紹介していただけますか。

局長:
 はい。まず、自衛隊等の特定の行為、例えば砲撃や射撃、重車両の走行等訓練による演習場の荒廃等により生ずる障害を直接的に防ぐことなどを目的として「障害防止工事への助成」を行っています。具体的には、洪水対策、土砂流出対策、用水対策として、ダム、ため池、用水路の整備、河川改修などがあり、そのほかにも、道路やテレビ放送の共同受信施設などの施設整備を行う防衛施設周辺の自治体に対して、その費用の全部又は一部の助成を行っています。

パーソナリティー:
 ほかにはどのような施策があるんでしょうか。

局長:
 防衛施設の周辺住民の生活や事業活動に被る阻害を障害と幅広くとらえ、これら生活・事業上の障害を緩和することを目的として実施している施策として「民生安定施設の助成事業」があります。
 対象としては、道路、公園、消防施設、無線放送施設、学習等供用施設など、生活環境施設や事業経営の安定に寄与する施設で、これらの施設の整備を行う防衛施設が所在している自治体や防衛施設周辺の自治体に対し、その費用の一部の助成を行っています。一例を申し上げますと、現在、松島飛行場が所在している宮城県東松島市が事業主体となって、航空機事故等が発生した場合における消防活動の円滑化を図るため、消防庁舎の整備を行っており、今年度に完了する計画となっています。

パーソナリティー:
 宮城県のほか、他の県においても民生安定施設の助成事業が行われていると思いますが、どのようなものがあるんでしょうか。

局長:
 はい、米軍三沢基地等が所在している青森県の三沢市においては、昭和54年度に防衛施設から排出される廃棄物についても継続的かつ安定的に受け入れるため整備したごみ処理施設が、経年に伴う老朽化によって機能低下したため、平成28年度からごみ処理施設の助成を行っており、令和5年度に完了する計画となっています。  
 また、福島県においては、白河布引山演習場が所在する西郷村に対し、演習による火災等が発生した場合における住民の避難・消防活動の円滑化が図られるよう、村道川谷由井ヶ原線の改良・舗装事業への助成を行っており、令和4年度に完了する予定です。

パーソナリティー:
 まさに住民の生活環境に直結する様々な施設への助成が行われているのですね。

局長:
 はい。ほかにも、周辺地域の生活環境や開発への影響を和らげることを目的とした施策として、特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付を行っています。  
 これは、ジェット機が離着陸する飛行場や砲撃などが行われる演習場等が所在する市町村は、広大な面積を占める施設が所在することにより、著しく生活環境や地域開発に影響を受けていると考えられることから、これらの市町村を特定防衛施設所在市町村に指定し、生活環境や地域開発というまちづくりのための公共用施設の整備等に使用できる交付金の交付を行っているものです。

パーソナリティー:
 具体的にどの様なまちづくり事業に交付金が活用されているんですか。

局長:
 公共用施設の整備といった、いわゆるハード面の事業としては、交通施設、レクリエーション施設、教育文化施設、産業振興に寄与する施設などが交付の対象となります。
 また、ソフト面の事業としては、子ども医療費助成事業、コミュニティバス運行事業、学校給食給付金事業などが交付の対象となっています。

パーソナリティー:
 医療費の助成や教育事業へも活用されるなど、住民生活に直結するところで防衛施設と周辺地域との調和を図るための様々な周辺対策事業が実施されているのですね。

局長:
 はい。東北防衛局としては、これからも防衛施設周辺の地元市町村の皆様方からの要望を踏まえ、より効果的で効率的なものとなるよう、周辺対策事業を行っていきたいと考えています。  
 本日は、民生安定事業と障害防止事業、交付金事業についてご紹介いたしました。

パーソナリティー:
 本日は、東北防衛局の熊谷局長からお話をお伺いいたしました。  
 どうもありがとうございました。

局長:
 はい、こちらこそ、どうもありがとうございました。

 
 
  
 
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