自 衛 隊 百 科
8月放送内容)


テ-マ:防衛関連企業の紹介について


パーソナリティー:
 本日は福島県郡山市に所在する東北防衛局郡山防衛事務所の古川(こがわ)洋彰(ひろあき)所長からお話を伺います。古川所長、よろしくお願いします。

所長:
 はい。よろしくお願いします。

パーソナリティー:
 古川所長は、陸上自衛官でいらっしゃいますが、これまで何度か転勤されたと思うのですが、どのくらいお引越しされましたか?

所長:
 引っ越しの回数ですか(笑) えーと、入隊以来、この30年間で15回くらいですね。

パーソナリティー:
 ええっ!ということは、ほぼ2年おきに引っ越しされたという事ですよね。引っ越しが多いと大変ですねえ。

所長:
 そうですねえ。ただ、その行った土地毎に「美味しいお酒に出会える」ということも楽しみの一つでしたので、逆に貴重な経験だったと感じています。この話になると、止まらなくなってしまいますので本題に行きましょうか(笑)

パーソナリティー:
 そうですか(笑)引っ越しにまつわるお話をもっと聞きたかったのですが、止まらなくなってしまうとのことですので、さっそく本題に入りたいと思います(笑) 本日は、どのようなお話をしていただくのでしょうか?

所長:
 はい、本日は、東北地方で防衛省自衛隊の装備品などを製造している企業、いわゆる「防衛関連企業」のお話をさせていただきます。

パーソナリティー:
 東北地方の防衛関連企業のお話というのは、私達にはあまり馴染みのない話ですね。

所長:
 はい、そうだと思います。ちなみに郡山防衛事務所では、東北6県にございます企業の工場で製造されている、自衛隊で使用する装備品等について、部隊に納品される前に、その品質や状態について検査をする業務を行っております。
 東北地方でも様々な装備品等が製造されておりまして、航空機や艦船の「部品」を製造している企業をはじめ、空挺部隊いわゆる落下傘部隊が使用する「パラシュート」、戦闘機やヘリコプターの搭乗員が着用する「救命胴衣」、自衛隊の大型トラックの「タイヤ」、ブルーインパルスなどのジェット機の「エンジン」、火薬を扱っている「爆薬メーカー」など、多種多様な装備品が東北の企業でも作られ、自衛隊の活動、ある意味、我が国の安全と平和を支えていただいています。

パーソナリティー:
 東北にも様々な企業が、自衛隊の装備品の製造を通じて日本の防衛に関わっていらっしゃるというわけですね。

所長:
 そういうことになりますね。その中でも実は、自衛官の制服や迷彩服などを製造している縫製工場が東北地方に最も多く点在しています。

パーソナリティー:
 繊維業、ということですかね。

所長:
 はい、そうですね。ただし、以前、繊維業界について少し調べたことがあったのですが、現在、国内の衣類製品の98%が輸入モノで、残りのほんの2%だけが国産でして、その2%の国産の中に、我々自衛官の制服や迷彩服が含まれているのだそうです。ある意味、東北地方にいくつかある繊維工場というのは、貴重な国産繊維産業の「最後の砦」とも言えるのではないかと私は思っています。

パーソナリティー:
 非常に少ない国産の繊維工場で、制服や迷彩服が作られているということですね。

所長:
 はい。制服や迷彩服などは私達自衛官にとっては、最も身近な装備で、隊員一人ひとりに貸与され、着れば着るほど愛着が湧いてくるものですし、年数とともに自衛官としての一人前の味が、じわじわ出てくるものと私は思っています。ですので、国産で、しかも東北の皆さんが縫っていただいていることを知り、非常に感慨深く、更に愛着と誇りを感じるようになりました。

パーソナリティー:
 ちなみに山形県内にも、そのような工場はあるのですか?

所長:
 はい、ございます。山形県内で申し上げますと、南陽市にあります「三幸ソーイング」さんが、主に制服のYシャツや迷彩服などを作っていただいております。 また、制服以外でも、米沢にある「米沢製靴」さんが自衛官が履く革靴を製造していただいておりますし、河北町にあります「青木安全靴」さんや、山形市の「ミドリオートレザー」さんは、通常、陸上自衛官が半長靴と呼んでいる安全靴などを作っており、それぞれの工場から全国の部隊に送り届けていだいております。

パーソナリティー:

 山形県内にも、自衛官の制服や靴を作っていらっしゃる工場がいろいろあったんですね。

所長:
 そうですね。実際に工場の製造現場を見ますと、1着1着、1足1足、丁寧に、しかも手作業の部分も多く、かなり手間ひま掛かっておりまして、それを拝見すると更に愛着が湧きました。  
 制服などは、もちろんミシンなどの機械で縫っている部分もあるのですが、その多くは手作業なんです。自衛官の制服や迷彩服は、普通のスーツや作業着に比べて、ポケットなどのパーツやボタンの数が多かったり、耐久性を持たせるために裏地の処理が多かったり、迷彩服などは厚手の生地を使用しておりますので普通の針ではなく太めの針を使っていたりと、非常に手間ひま掛かっています。
 更に、職人さんと呼ばれるようなベテランの方しかできない「匠の技」を必要とする部分もあるのですが、その一方で技術の伝承といいますか、後継者の育成にご苦労されているという話は、東北各県の縫製工場で最近よく耳にするようになりましたね。

パーソナリティー:
なるほど、職人さん達の技術や想いがこもった制服や革靴ということなんですね。

所長:
 はい。ここまでは、制服や革靴などを作っていただいている防衛関連企業の紹介をさせていただきましたが、ここからは少し目線を変えて、宇宙にまつわる東北の防衛関連企業のお話をさせていただきたいと思います。

パーソナリティー:
 宇宙ですか!?

所長:
 はい、「はやぶさ2」ってご存知ですか?

パーソナリティー:
 新幹線の「はやぶさ」ではなく、宇宙に関係する「はやぶさ」のほうですよね(笑)

所長:
 そうですね(笑)昨年「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」の石や砂を採取して地球に持ち帰るというニュースをご覧になった方も多いかと思いますが、実は、あの「はやぶさ2」に東北の防衛関連企業の技術が搭載されておりまして、簡単に3つ紹介させていただきます。  
 一つ目ですが、昨年11月「はやぶさ2」は小惑星「りゅうぐう」の表面に衝突装置を使ってクレータを人工的に造る実験をしましたが、この時、東北の企業で自衛隊の火薬類を扱っている「日本工機」の爆破の技術が、衝突装置の中で使われ、世界初の実験に成功しています。

パーソナリティー:
 クレータを作ったニュースは私も見ました。

所長:
 二つ目は、航空自衛隊のブルーインパルスなどジェット機や陸上自衛隊のヘリコプターなどで使用されている航空機用バッテリーを製造している「古河電池」のリチウムイオン電池が、「はやぶさ2」の太陽電池が電力を供給できない場合に、代わりに電力を供給する役割として搭載されていて、今まさに地球に向けて帰還している最中に使われようとしている電池なのだそうです。

パーソナリティー:
 「はやぶさ2」には、そういう電池が載っているんですね。

所長:

 はい。最後に三つ目は、自衛隊の落下傘を製造している「藤倉航装」のパラシュートです。「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」で採取した石や砂が入っている「カプセル」を、今年の年末ぐらいに地球に向けて落下させるのだそうですが、そのカプセルが大気圏を通過したあと、既定の高度で自動的にパラシュートが開きゆっくりと地上に落下するよう「藤倉航装」のパラシュートが使われているのだそうです。

パーソナリティー:
 へえ、今年の年末に「はやぶさ2」が地球に帰ってくるのがとても楽しみですね。


所長:
 楽しみですよね。このように、繊維業界から宇宙開発まで、幅広い防衛関連企業が東北地方にもございまして、日本の安全や世界の平和に貢献していただいている、ということを本日は紹介させていただきました。

パーソナリティー:
 本日は、東北防衛局郡山防衛事務所の古川(こがわ)洋彰(ひろあき)所長からお話を伺いました。古川所長ありがとうございました。

所長:
 こちらこそ、ありがとうございました。





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