自 衛 隊 百 科
7月放送内容)


テ-マ:島しょ部に対する攻撃への対応について


パーソナリティー:
 本日は東北防衛局の熊谷昌司局長からお話を伺います。熊谷局長、よろしくお願いします。

局長:
 はい、よろしくお願いします。
 本日は、日本の防衛の中でも、近年防衛省・自衛隊が力を入れている島しょ部に対する攻撃への対応について、お話ししたいと思います。

パーソナリティー:
 島しょ防衛という言葉を耳にしたことがありますが、「日本の領土である島を守ること?」と漠然としたイメージしかありません。 そもそも、日本に島はどれくらいあるのでしょうか。

局長:
 そうですね、御案内のとおり日本は島国であり、大小約6,800個以上の島々によって構成されており、世界第6位の面積となる領海及び排他的経済水域を有するなど広大な海域に囲まれています。
 自衛隊は各種事態に迅速に対応するため平素から、領海・領空とその周辺海空域において情報収集及び警戒監視を行っています。

パーソナリティー:
最近、中国船が尖閣諸島周辺で、日本の領海に侵入したとのニュースをよく耳にしますね。

局長:
 はい、近年、中国は尖閣諸島に関する独自の主張に基づくとみられる活動を行っています。中国の海上・航空戦力は、尖閣諸島周辺を含むわが国の周辺海空域における活動を拡大・活発化させており、行動を一元的にエスカレートさせる事案もみられるなど、強く懸念させる状況となっています。
 中国の海上・航空戦力の太平洋及び日本海への進出は近年頻度を増しており、こうした活動を定例化することを意図している可能性もあります。活動内容は質的な向上をみせています。

パーソナリティー:
 実際に、島しょ部への攻撃があった場合には、どのような対応をとるのでしょうか。

局長:
 島しょ部に対する攻撃に対応するためには、部隊の配置とともに、平素から状況に応じた機動・展開を行うなど、事前に十分な準備態勢をとることが必要です。
  常時継続的な情報収集、警戒監視などにより、攻撃などの兆候を早期に察知し、海上や上空で優位に立つことが重要になります。事前に攻撃の兆候を得たならば、侵攻が予想される地域に、侵攻部隊よりも先に部隊を機動・展開し、侵攻部隊の接近・上陸を阻止します。また、海上や上空で優位に立つことが困難な状況になった場合でも、侵攻部隊の脅威圏の外から、接近・上陸を阻止します。
  万が一、島を占拠された場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸上自衛隊の部隊を着上陸させるなど、あらゆる措置により奪回します。

パーソナリティー:
 では、防衛省・自衛隊では具体的にどのような取組を行っているのでしょうか。

局長:
 防衛省・自衛隊では有事の際に迅速かつ確実な対応がとれるよう部隊の新設や装備品の強化を行っています。
 航空自衛隊は、南西地域の防衛態勢強化のため、平成28年に第9航空団を、平成29年には、南西航空方面隊を新たに編成し、那覇基地に司令部を設置しました。
  警戒航空隊は、空中レーダーを搭載する早期警戒管制機E-767と早期警戒機E-2Cを保有する唯一の部隊であり、これらの航空機は、陸上に設置された警戒管制レーダーにより監視することが困難な空域の警戒監視にあたってきました。
  近年、島しょ部において、周辺国の軍事活動が急速に拡大・活発化している状況を踏まえ、早期警戒管制機などの運用態勢を強化するため、令和2年3月に警戒航空隊を警戒航空団として格上げしました。
 さらに、今年度、滞空型無人機グローバルホークを所有する無人機部隊を三沢基地に新たに編成する予定です。

パーソナリティー:
 はい、このグローバルホークとはどのような航空機なんでしょうか。

局長:
 グローバルホークは高高度滞空型無人機というもので、特徴としては、無線通信や衛星通信を使用した地上からの遠隔操作で民間機より高い高度1万5千m以上で飛行し、広域に監視する能力があります。
 東日本大震災の際の米軍による救援活動「トモダチ作戦」においては、東京電力福島第一原発の状況を上空から調査し活躍しました。

パーソナリティー:
 グローバルホークは東日本大震災の時も活躍していたということですね。
 陸上自衛隊も何か取組を行っているのでしょうか。

局長:
 はい、陸上自衛隊は平成28年に与那国沿岸監視隊を、平成30年には本格的な水陸両用作戦機能を備えた水陸機動団を新たに編成しました。
 また、平成31年には奄美大島と宮古島に警備部隊などを配置し、今後は、石垣島にも警備部隊などを配置します。

パーソナリティー:
 南西諸島に新たに部隊を配備していたんですね。 水陸機動団とはどのような部隊なんでしょうか。

局長:
 水陸機動団は、島しょ部が侵攻や災害を受けた際、速やかに救助活動や奪還作戦を行う部隊です。
  長崎県佐世保市に所在する相浦駐屯地に配置されており、水陸両用車を所有しています。 水陸両用車とは海上機動性、防護性に優れ、海上から部隊などを島しょ部へ投入するキャタピラの車両です。乗員は24名、最高速度は陸上では時速72Km、海上では時速13Kmで、高圧水流を利用し推進力を得るウォータージェットによって、水上でも約7時間の航行が可能です。

パーソナリティー:
 では、他にも何か取組を行っているのでしょうか。

局長:
 はい、島しょ部の常時監視態勢の強化のため、新型護衛艦やE-2D早期警戒機の整備などを行うとともに、新たなレーダーの開発や機能の強化を進めています。
  また、わが国への侵攻を企てる艦艇などを効果的に阻止するため、相手方の脅威圏の外から対処可能なミサイルの整備を行うとともに、島しょ防衛に万全を期すため、平成30年度から島しょ防衛用新型ミサイルの研究にも着手しています。
 さらに、島しょ部への輸送機能強化のため、中型級船舶及び小型級船舶の導入、共同の部隊としての海上輸送部隊の新たな編成等を検討しています。

パーソナリティー:

 島しょ部防衛は、陸海空各自衛隊が一体となりわが国を守っているということですね。  本日は東北防衛局の熊谷昌司局長から、島しょ部に対する攻撃への対応についてお話を伺いました。熊谷局長、今日はありがとうございました。

局長:
 はい、こちらこそ、どうもありがとうございました


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