洋上給油

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 この話は、私が宮城地本で勤務する前の艦艇勤務時代のことです。
 エンジン関係で勤務する若手が持ち回りで担当する「燃料係」通称オイルキングと言うのを受け持った時があります。

 燃料係の主な仕事はその名のとおり、艦の燃料を全般的に管理することなのですが、燃料の枠にとどまらず潤滑油など油関係のほとんどを管理します。
 その他に蒸気を作るボイラーの薬品などのこまごまとした物も取り扱い、パソコンでそれらの在庫などを管理します。
 結構ズボラな私はこの管理が一番苦労しましたw


 もうひとつ重要な仕事がバラスト管理です。

 艦に搭載する燃料は非常に多く、船体の下にいくつも設置された燃料タンクにバランスよく燃料を入れなくてはいけません。
 そのバランスを計算して艦を水平に保ちます。タンクは仕切りで区切られておりますので、使用するタンクも考えて使わないとバランスが崩れます。
 例えば前部側のタンクばっかり使うと艦首が軽くなって浮いてしまい、航海時に前方からの波の影響を受けやすくなったり、燃費や速度などにも影響してきます。
 結構頭を使う大変な係なので、やりたがる人はあんまりいないんじゃないでしょうか?w

※燃料タンクはこんな感じに配置されてます。
 手書きですみませんw

 


 当然艦が動いていれば燃料は減るわけですから補給しなければいけません。
 車のようにガソリンスタンドで入れることはできませんので、停泊中は油船という小さな船から給油します。
 しかし侮る無かれ、この油船は小さいボディーに500〜600k?(大体お風呂3000杯分?)もの量を満載してやってきます。
 来た時は沈みそうなくらいに積んで来るのですが、終わる頃には船の赤い腹を見せるぐらい軽くなって浮き上がる面白い船です。

停泊中は油船で補給しますが、洋上ではまた別の方法で行います。それが洋上給油というもので、この場合は補給艦という艦から燃料をもらいます。
 油船とは違い船体も大きく給油速度も倍の速さです。補給艦から給油するには艦を併走させて、送られてきた蛇管(だかん:燃料ホース)を自艦に接続し、双方異常が無かったら給油開始となります。

その時行う仕事としては蛇管を繋いで併走しているので、管の長さを見ながら着かず離れずの距離を維持することと、燃料の送油圧力が油船の倍なのでタンクの燃料が吹き出さないか監視することです。
 
 私の仕事は後者なのですごく神経を使います。

 多々ある燃料タンクを満たしていくわけですが、タンクにも大小ありますので小さいタンクだと入れたらすぐに切り替えないと上甲板にあるエア抜き管からタンク内の空気とともに海に燃料が漏れてしまいます。


 エア抜き管を塞いでしまえば良いのでは?と思う方もいるかと思いますが、例えるなら容器に液体を入れる時に中の空気が外に逃げないと液体が入っていきません。
 その空気を外に逃がして燃料を入れやすくするのがエア抜き管の役目です。もちろん安全策としてオーバーフローバックという袋を取り付けてますが、漏らさないにこしたことはないです。

(※オーバーフローバッグというのはビニール素材でできた袋で、エア抜き管に取り付けて燃料が漏れた際に受け止めてくれる頼りになる道具です。容量は大体300L程なので、そのままにしておくとすぐに溢れてしまう危険性があるため、給油中は監視員を最低1名配置につけます。)

 
 また、通信関係にも気を使います。

 両艦の意思疎通がなされていないと補給量が少なかったり、多すぎて溢れたりしますので通信系等の確立が重要になります。その通信系等でもっとも大変なのが外国籍の艦船とおこなう洋上給油ですw

彼らは日本語が通じないのが前提になるので、ある程度英語に慣れる必要があります。
 マイク越しなので、初めて聞くと何言ってるかサッパリ分かりません!もともと何喋ってるか分かりませんが…。
 英語が堪能な隊員が乗艦している時はいいのですが、いない時は先輩隊員を頼りにしたくなります。
 けれど、「俺は昔の人間だから英語はさっぱりだわ!」と言って隠れてしまう(後輩を鍛えようとしているのでしょうか?w)ので大体若い隊員が犠牲になりますw

 しかし、若いだけあって何回かこなしてるうちに通信相手の外国人と仲良くなるくらいにまで成長します。若いって素晴らしいですねw
 外国の補給艦の場合、送油圧力もその圧力の単位も違いますので計算が大変ですが、総じて圧力が高いために早めに終わります。結構神経を使いますけど…w


 これは米軍と洋上給油した時なのですが、補給が終わって艦を離すぞ!という時になぜか離れません。しかもなんだかロープを伝ってダンボールが1つブラブラと送られてきます。


 初めての隊員は「何だ?アレ?」と頭に「?」がいっぱいになります。私もそうでしたw
 近づくにつれ磯の香りに負けないアメリカ特有な甘い独特な香りが漂ってきて、中を開けると見たこと無いくらい馬鹿でかいホカホカのクッキーが大量に入ってました。
 先輩に聞くと米軍は毎回クッキーを送ってくるそうで、習慣のようでした。

 ハンドメイドのクッキーはなかなか美味で補給のたびにもえるなら米軍との洋上給油も悪くないと思うのでしたw