本部長の群馬紀行
第11回 吉井三山(牛伏山、八束山、朝日岳)

 皆様、こんにちは。
梅雨の中休みで暑い日が続きますが、突然の大雨がありますので注意が必要です。

 学生の皆さんは、夏休み期間中の活動について色々と計画されていると思いますが、この期間中は、防衛大学校・防衛医科大学校のオープンキャンパスや、航空学生・一般曹候補生・自衛官候補生の説明会などを予定しています。日程等はホームページ上で随時お知らせしますので、是非ご参加ください。

 

 さて、群馬紀行第11回は、吉井三山と呼ばれている牛伏山、八束山、朝日岳をまとめてご紹介します。


 前橋市内から約25km、車で45分ほどの距離にある高崎市吉井町から甘楽郡甘楽町にかけて東西に連なる里山で、かつて多胡郡が置かれていたこの地方の伝説などに絡めて昔から親しまれてきた山だそうです。いずれも標高500mに満たない低山なので三山の縦走も可能なようですが、私の場合は2日に分けて登りました。掲載写真は鏑川に架かる多胡橋からの景色ですが、手前に連なる山のうち左(東)の大きな山が牛伏山、真ん中が八束山、右(西)が朝日岳です。

 



 
東に位置する牛伏山は標高491m、万葉集に「多胡嶺」と詠まれ、東西二峰からなり、その姿が牛が伏せたような姿をしていることから名付けられたそうです。牛伏山自然公園として整備され、頂上まで車道が通じ、登山道の他、遊歩道も整備されているため、体力に応じて楽しむことができます。登山口は麓の牛伏山ドリームセンター(保養施設)付近にあり、なだらかな登山道を辿って頂上(西峰)まで1時間10分ほどでした。掲載写真は、東峰から西峰方向を写したものです。

 

 


 西峰は金毘羅山とも呼ばれ、NHKなどの中継塔の他、琴平神社、洞窟観音、臥牛石造、天狗の松、青い山脈の歌碑など見どころがたくさんあります。牛伏山の「牛」の由来は、昔、頂上の松に住んでいた天狗が、村娘に恋をして若者姿に身を変え牛に乗って会いに行くが娘の心を動かすことができなかったため、諦めきれずに娘を山の姿に変えしまうが、それが朝日岳で「多胡美人」と呼ばれるようになり、その後年月が過ぎて、この山も臥牛の姿になったというものです。掲載写真は、臥牛石造と天狗の松です。

 

 


 一方、東峰は一郷山とも呼ばれ、かつて平井城(藤岡市西平井)に拠点を置く関東管領の上杉氏が西の守りとして城(狼煙台)を築きましたが、西上州攻略を図る武田信玄によって攻め滅ぼされることとなります。現在、その城跡には、立派な天守閣を持つ3階建の「牛伏山展望台」が建てられており、360度の眺望が得られます。

 

 



 中央に位置する八束山(やつかやま)は標高453m、かつて八束城があったことから、別名「城山」とも呼ばれています。当日は、登山者用駐車場に車を停め、北登山口から登って西登山口に降り、東隣の朝日岳の登山道を往復して駐車場に戻るという周回ルートを選びました。北登山口から登る北側ルートは比較的なだらかな一般向きの登山道で、頂上まで約1時間でした。頂上付近は北側が広く開け、榛名山や赤城山が望めます。なお、西登山口から登る西側ルートは、岩場の急斜面が続く健脚ルートなので、下りの場合は慎重に進む必要があります。

 



 群馬紀行第9回「上野三碑」でご紹介した羊太夫伝説の舞台はこの山です。昔、八束山を居城にして多胡郡を治めていた郡司で、羊の年、羊の日、羊の刻に生まれた「羊太夫(ひつじだゆう)」という大男は、小脛(こはぎ)という従者を連れて足の速い馬に乗り、毎日奈良の都へ仕えていたが、ある日寝ていた小脛にトビの羽が生えているのに気付いて遊び心で抜いてしまったところ、翌日から都へ仕えることができなくなってしまった。都の朝廷は羊太夫に謀反の企みがあると疑い、羊太夫の一族を苦戦の末攻め滅ぼしたが、後に無実だったことが分かり祠を建てて丁寧に弔った、それが多胡碑だというものです。掲載写真は、北側ルートの尾根上から見た牛伏山と「羊の足跡」(羊太夫が八束山から都に飛び立つ時に岩を蹴った足跡)です。

 



 西に位置する朝日岳は標高448m、南北二峰からなり、女性の寝姿のような山容から別名「多胡美人」とも呼ばれていますが、そのイメージとは異なり、吉井三山の中では最も険しい岩山です。八束山の西登山口から車道を20分ほど歩いて、南側の登山口から山に入り、巨岩・奇岩の岩場を鎖やロープを頼りに登ること約40分で頂上(南峰)に着きました。南側が開けています。かつて天引城(あまびきじょう)があった北峰は、空堀を下って登り返して5分くらいです。なお、牛伏山や八束山に比べて登山者が少ないため登山道は荒れ気味なので、特に下りは道を失わないように注意する必要があります。

 

 (参考図書等:「ぐんまの里山てくてく歩き(上毛新聞社)」、多胡碑記念館資料、現地の説明板、観光パンフレット等)