学生舎生活の紹介


1 はじめに
  「防大は厳しい。」という印象を持っている方が多いようです。
  また、「防大は厳しくないといけない。」という激励を部外の方々からいただくこともあります。
  どのように厳しいのか、なぜ厳しくないといけないのか、防大の厳しさをより理解していただくために、学生舎生活全般について紹介します。

2 防大生の1日
  平日の日課時限は次のようになっています。



  6時30分に起床してから、22時30分に就寝するまで、防大生の日課は分単位で決められています。

  防大を辞めていく学生の多くが、「こんなに自分の時間がないとは思わなかった」と言っています。


  防大で生活して行くには、物事に優先順位をつけて効率的に生活していくことが必要であり、それにより、先見性や計画性を身に付け、「時間は自分自身で作るものだ。」と知るのです。


  洗濯やアイロン掛けは自分たちで休日や平日の空いている時間を使って行います。

  衣服は国から無償貸与されますが、裾上げや、名札を縫ったりするのも自分たちで行います。








  以下、日課表の項目に従って紹介します。

(1) 起 床
   6時30分に、起床ラッパ(ラッパには色々な種類があり、それによって行動等を示しています。)で一斉に起床します。
   起床後はわずか5分で寝床を整理し、着替えをすませ、学生舎前に整列して点呼を受けます。



(2) 点 呼
   点呼では、人数及び各人の健康状態を確認し、教官に報告します。
   点呼整列完了までの間、一年中を通じてたとえ冬の雪の中でも、乾布摩擦を行い心身を鍛えます。あわせて、大きな声で号令をかける練習をします。
   点呼終了後は、腕立て伏せ等の体力増強を行います。



 ※ シャツを着て腕立て伏せをしているのは女子学生

(3) 清 掃
   点呼終了後全員で部屋や廊下、トイレ等の公共場所の清掃を実施します。
   公共場所の清掃は、2年生が現場指導しつつ、1学年と共に実施します。



(4) 朝 食
   朝食は学生食堂においてセルフサービスとなっています。

(5) 課業行進
   朝礼後は、班長が指揮して教室まで行進します。
   防大及び幹部候補生学校を卒業後は、幹部自衛官として指揮官等の職務に就くため、移動間の行進は部隊指揮・行動の基礎を学ぶ場となります。



(6) 授 業
   授業は一般の大学とほとんど変わりません。
   ただし、学生は国家公務員であり、授業を勝手に欠席することはできません。
   その他、他大学にない科目として防衛学があるのが本校の特徴です。

(7) 昼 食
   全学生が一堂に集まって昼食を取ります。
   この際、ご飯をよそったり、みそ汁やお茶を注ぐこと、後かたづけは主として1年生の担当です。これらを通じて、食事マナーや周囲への気配りを身に付けていきます。



(8) 課外活動(クラブ活動)
   午後の課業終了後、16時10分からクラブ活動の時間となります。学生は基本的に運動部に所属することとされています。学生はクラブ活動を通じて、体力・気力の向上を図り、チームワークを学びます。更に、真の友人を作る機会でもあります。

(9) 夕 食
   夕食は学生食堂においてセルフサービスとなっています。

(10) 入 浴
   数百人が一度に入れる浴場となっています。

(11) 自習時間
   1日2時間の自習時間が定められています。受験勉強時のように多くの時間を確保することは困難です。学科成績で留年しないためにも、何を優先して勉強するか、いかに集中して勉強するかが重要となります。

(12) 綱領時間
   防大生としていかにあるべきかを考える時間です。

(13) 消 灯
   消灯後、自習時間だけでは足りない学生は、許可を得て24時まで勉強をすることができます。

3 各部屋での生活
  学生舎は8人部屋(一部旧学生舎は4人部屋)です。
  自習室と寝室に分かれています。
  各部屋は基本的には各学年2名の編成となっていますが、入校後の1年生にとって4月〜8月は最も厳しい時期といわれ、1年生がより協力し合って困難を乗り切っていけるように、4年生2名と1年生6名の部屋編成となっています。
  集団で生活をするためプライベートは非常に制限を受けます。
  学生はこの環境の中で、リーダーシップとフォロアーシップ、人との接し方、思いやりや社会人として必要なマナーなどを学びます。

4 学生の現状と対策
  現在、約2割弱の学生が入校後、防衛大学校の生活等になじめずに、あるいは、他の道への進学のため退校しています。
  この中には、頑張って続けようと思っても体が拒否反応を示してしまう学生も希にいます。
  このような学生への対応として、学生課の中にメンタルヘルス係を新設し、学生の心の悩みに対応すると共に、指導教官が過去の事例を参考に研究会を定期的に開催し、この成果を、教育や日常の指導に反映しています。

  本年度については、これまで2回研究会を実施し、学生の悩みや相談に適切に対応できるようにしています。
  特に、上級生のみならず同級生及び下級生からの進言も取り入れて早期に学生の悩みなどを察知すること、及び、これに伴う積極的な保護者への連絡等、親身な対応を取ることを重視しています。

  このほか、校内で起こりうる様々な問題に対応できるように、引き続き研究会を充実させ学生教育に反映していきます。

  なお、今後の予定として、学生個人の心の問題及びそのケアに、より適切に対応できるように指導教官に対してカウンセリング要領の教育等を実施していく予定です。

5 おわりに
  学生舎での生活は、心身ともに大きな成長を得ることのできる場です。ただし、楽なことをして成長は求められません。
  大きな成長にはそれに応ずる厳しい環境があり、それを乗り越えて初めて大きな成長が得られるのです。辞めていく学生からは「厳しいとは聞いていたが、ここまで厳しいとは思わなかった。」という声も聞きますが、その厳しさには目的があるのです。
  防衛大学校は、自衛隊の幹部となる者を育てる学校です。
  このため、真の武人にして真の紳士、淑女たる学生を育てようと、職員と学生が一体となって取り組んでいます。
  あまり気の向かないまま、ただ勧められて入校した学生には非常につらい環境でしょう。しかし、幹部自衛官となり、我が国の平和と独立のために働く意志を持って、自らを向上させようと前向きな考えを持って入校する学生にとっては、これほど良い環境は他にはないでしょう。

  国民の税金を使って学ぶ防大生への社会の目は非常に厳しいものがあります。
  更に、卒業後自衛官となって、いかなる厳しい任務が付与されようと、事に臨んでは危険を顧みず身をもって責務の完遂に努めうる基盤を確立するためには、やはり厳しい試練を乗り越えていくことが必要不可欠であることは言うまでもありません。
  「国防の任」は、中途半端な気持ちではやり抜くことはできません。防衛大学校の生活の厳しさの源はここにあります。また、厳しいが故に、みんなが協力し、真の友情が生まれ、団結力が高まります。この団結力が、卒業後も「国防の任」にあたる支えとなっています。

  防大生活及びその中での厳しさについて書きましたが、防大の生活や防大生を理解していただく一助になれば幸いです。