皆さんは「ジュリア集合」(図1) あるいは「マンデルブロー集合」(図1, 2) なる言葉を聞 いたことがあるでしょうか。 この言葉を聞いたことがなくとも、 その美しくも怪しげなコンピュ ーターグラフィックスをみたことのある人は多いと思います。 これら平面図形をよく見てみると、まるで曼荼羅のように、 いたるところに相似な図形が潜んで いる(自己相似性)ことに気が付きます。これらを眺めているだけでも飽きないのですが、 どのよ うにしてこのような図形が計算できるのか、 そして、 こられの図形が何を表しているのか、 知 りたくなるはずです。その謎を解く鍵が「複素力学系」の理論です。 複素力学系は、私達の研究室における今年度の卒業研究の研究テーマにもなっています。 卒業 研究ではもちろん数学的にきちんとした話をするわけですが、そのためには大学で学ぶ数学の知識 (複素関数の知識、本科の理工系では2学年において履修)が必要です。しかし、複素力学系の理論 は、「平面上の点の動きを調べる」ことが目的ですから、数学的な厳密さを考慮しなくとも、その 雰囲気をお伝えすることはできます。ここでは、このような観点から、複素力学系の理論を軸に、 ジュリア集合、マンデルブロー集合について、手短に紹介させていただきたいと思います。 最初に、まず、複素力学系の歴史について、ごく簡単に触れたいと思います。皆さんは、高校に おいてニュートン法について学んだことと思います。実は、このニュートン法についての研究がも ととなり、複素力学系の理論が誕生しました。このいきさつについては、次節で扱います。複素力 学系は、以後一世紀以上の長い歴史を持つ分野です。 ジュリア集合なる名前は、二十世紀初頭にこの分野で活躍した数学者ジュリア(Julia)にちなんで 付けられました。ジュリアの研究以降は、しばらくの間この分野は注目されることがありませんでし た。しかし、コンピューターの登場により複素力学系は再び脚光を浴びることとなりました。 1980年コンピューターの力を借りて、マンデルブロー(Mandelbrot)が、後に彼の名で呼ばれる こととなった平面図形を初めて描き出したのです。その後、複素力学系は再び多くの数学者の注目を 浴びることとなり、この二十年ほどの間に爆発的に研究が進展しました。ジュリア集合やマンデルブロ ー集合の想像を絶する複雑さが、コンピューターグラフィックスにより明らかになり、それが、これ ら図形の意味するところを理解したいという数学者の知的好奇心を捉えたのだといえるでしょう。 |
図1 中央の緑の部分がマンデルブロー集合、周りの四角の枠内に表示されているのが ジュリア集合。マンデルブロー集合の1点1点にジュリア集合が対応している。 |
図2 マンデルブロー集合とその一部分の拡大図 |
ジュリア集合、マンデルブロー集合に興味を持った方は、解説へGO!
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最後に |
(文責:数学教育室 教授 後藤泰宏、助手 藤村雅代) |