夢は世界に
   −世界学生ヨット選手権奮闘録−

         激しいレースを展開する防大ヨット部クルー                                       ヨット部クルーザー 主将 原 巨樹  我々防衛大学校ヨット部クルーザー日本代表チームは去る10 月25日から11月4日までの間、フランスのツーロンにて開催 された世界学生ヨット選手権に出場した。  最終スコアは14ヶ国中の12位。目を見張るような結果は出 せなかった。世界の壁は厚かったと書けば簡単に済む話かもしれ ないが今回の遠征はそれだけでは片づけられない。なぜなら私の 知る限り日本チームの過去最高順位よりもひとつ上げているし、 毎年の報告資料と比較しても過去に類を見ない好成績を上げても いるからだ。  我々のチームはとても経験の浅いチームで1学年の女子は半年 前にヨットを始めたばかり、また遠征出発の一ヶ月前に突然のク ルー交代で新加入した者や、それと同時に経験が重要な鍵となる タクティクスを初めて担当する事になった者もいた。私自身スキ ッパーを務めるもののただのヨット好きに過ぎない。ともすれば 経験不足は成績が出せなかった最大の原因とも言えるが敢えて私 はこのクルーはよくやったと皆様に伝えたい。  初日は上手く機能しなかったセールのアップダウンに関わるク ルーワークなども日を追うごとに厳しい練習に取り組んだ成果が 表れた。またレース成績は3日目にして10位の好順位を初めて 取り、最終日の最終レースでは2つ回るブイの内1番目のブイを 2位で回航、最終4位という素晴らしい成績を収める事ができた のだ。これは奇跡などではなくクルー自身の考えに基づき日本チ ームができる事をやっただけのレース。だからこそ確かに負けて いる部分もあったが張り合える力も十分に持っていたと思う。 我々はヨットを、地中海を、フランスを楽しみ尽くして帰って きた。ハイレベルなレースを厳しいライバル達と毎日戦い、とて も素晴らしい友人ができ、悔しい気持ちを強く押さえながらもや はり楽しかった。なぜだろうと考える。その答えは私なりの4年 間の結論とも言えるが、「ヨットという共通言語」が我々の拙い 英語では伝えきれない事まで包み込んで会話してくれたからでは ないだろうか。「ヨットは語る」と私の尊敬する二人のコーチは 教えてくれた。まさにヨットは「語り」。最高の親友になれたノ ルウェーのオリンピック候補選手達とはナイトレースで夜中1時 に宿舎に帰ってから更に3時半までヨットについて話し合った。 Good EnglishがGood Communicationなのではない。こうして楽し い話ができたのもヨットのお陰だし、ましてやヨットを知らなけ ればあんなに素晴らしい友人達と知りあう機会もなく人生を過ご していったのだろう。だからこそ言いたい。ありがとうヨット、 ありがとう一緒に戦ったライバル達、そして地中海。 防衛大学校を始め、防大同窓会、走水会や横須賀市、横須賀市 体育協会、ここには書ききれないほど様々な方にご支援ご指導を 頂きこの遠征が実現できた事に深く感謝申し上げる。そしてこの 場をお借りして、お忙しい中我々のためにフランスまでご同行頂 いた我らがOB長嶺氏と横山氏に厚くお礼申し上げたい。特に長嶺 氏は常日頃からお世話下さり厳しい戦いを強いられる時も我々の 背中を強く暖かく押してくれた。 最後にクルーの皆へ。4年間の最後に全日本の代表として共に 戦い、フランスを楽しんだ事を誇りに思う。これからもヨットを 楽しみ、世界へ羽ばたけ。