防大かわら版VOL.72

2016年06月02日

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カッター競技会参加の所感

2学年 上田竜次  私立興國高等学校  大阪府出身

競技会当日、レースの艇内は荒れに荒れてしまった。予選レースは2着の24クルーと5秒差でなんとか勝つことが出来たが、内容は最悪だった。折り返し地点を過ぎてから他の艇を意識し過ぎて漕ぐペースがいつもより大幅に早くなり全員が不完全燃焼のまま予選レースが終わってしまった。だが全ての予選レースを終え14Aクルーが決勝レースに進んだという連絡を受けた瞬間、全員が嬉しさのあまり叫び心の底から湧き出る歓喜に泣く者もいた。だが、同時に予選レースで14Bクルーの艇が失格になったという連絡も来た。私はクルーヘッド(クルーのまとめ役)として、14Bクルーたちに何か言葉をかけたかったが、良い言葉が見つからず、ただ予選レースで落選した14Bクルーの思いを引き継いで、決勝レースで全力を尽くすということしか言えなかった。
   決勝レースに臨んだ14Aクルーは、今まで見せたことのない集中力を発揮し、艇内は艇指揮の声と漕ぎ手がかいを返す時のかけ声である「ショイ」しかなく怖いくらい落ち着いていた。しかし、折り返し地点を過ぎてから全員の息が合わなくなり艇内には怒鳴り声が飛び交った。このとき予備の「落ち着けー!!」という声がなければ負けていただろう。残り約300mになった頃には「14Bクルーのために漕げ」と互いに励まし合いながら漕いでいた。ゴールした瞬間全員が涙を流し抱き合い泣き叫んだ。
 私にとって14クルーのみんなはこれからもかけがけのない仲間である。ありがとう。そしてこれからもよろしく。

前列左から2番目が本人

2学年 池畠陸朗  私立尾道高等学校   広島県出身

私は、このカッター訓練を通じて、「不撓不屈」の意味するところ、特にその精神について深く感じることができ、体力的にも精神的にもまた一歩、防衛大学校学生の理想像に近づいたものと思料する。
 カッター競技会は、防衛大学校の伝統競技である。短艇(カッター)は、12名の漕ぎ手が6名ずつ艇の左右に分かれて乗艇し、櫂(オール)を1人1本人力で漕ぐものである。本競技会は、2000mの時間を競い合い、各中隊2艇を出艇し、その総合得点によって順位を争うものであった。本競技会で優勝することは、中隊にとって非常に名誉なことであり、優勝を獲得するため、短くも厳しい約1か月の訓練があった。本訓練期間は、2学年の学生生活において最も忙しい期間であると言っても過言ではない。なぜなら、本訓練だけでなく新入生の受け入れ準備及び教育等も同時並行的に行い、限られた時間の中、カッターのとう漕法及び安全管理等について修得しなければならないからだ。本訓練期間は、クルー長を中心とした上級生の指導の下、防大生としての資質及び識能を成長させることができる重要な期間であった。
 さて、始めに述べた「不撓不屈」であるが、これはクルー長の要望事項である。その目指すところは、「強い意志をもち、どんな苦労や困難にも挫けない。」であり、我々2学年にとっては、「優勝を勝ち取るため闘い続ける(漕ぎ続ける)こと」の大きな目標を十分に理解させてくれる言葉であるとともに、本訓練に臨む覚悟及び激励の言葉でもあった。
 約1か月の訓練が終了し、ついに競技会当日を迎えた。24クルー全員で漕いだその結果は「準優勝」であった。私としては、決して満足のいく結果ではなかったが、漕ぎ終わった同期の顔はみな晴れやかで、達成感に満ちており、今振り返ると、24クルーの全員が全力を出し切り、カッター競技会を通して一つになれたものと思料する。
 本訓練期間を終えて、私は同期の団結だけでなくフォロワーシップ等の防大生にとって大切なことを学ぶことが出来た。これらはカッター競技会のみならずこれからの防衛大学校生活、ひいては自衛官人生において非常に重要なものであると確信する。私はこれからも、クルー長にご指導頂いた「不撓不屈」の精神と私達の成長を支えて下さった方々への感謝を忘れることなく日々精進していきたい。

左端 池畠学生

2学年 畑 航介  私立札幌光星高等学校   北海道出身

私は、このカッター訓練期間を通し、様々なことを学んだ。特に、中隊の同期達と辛いことやきついことを共有しながら、一つの大きな目標のために団結し、成し遂げようと努力して、悲願であった学生隊第1位中隊を達成することができたことは、大変貴重な経験となった。
 カッター訓練には、陸上トレーニングと海上トレーニングがあり、陸上トレーニングでは、ランから筋トレ、体幹など幅広いメニューがあり、毎日が自分の限界との闘いであると同時に、同期との団結が試される場であった。同期を励まし、逆に励まされることもあった。厳しいトレーニングの中で、同期の絆が大きく深まった。
 海上トレーニングでは、毎日が自分の漕ぎを探求する絶好の機会であり、同じ艇のメンバーで今日の漕ぎ方の改善点を話し合ったり、漕ぎ方の技術を教えあったりした。きつい時ももちろんあったが、互いに声を出し、励ましあった。
 私は、クルー全体のまとめ役であるクルーヘッドという任に就き、人をまとめ、人を動かす難しさ、指示を明確に示し、全体の認識を統一させる難しさなど多くのことを学ぶことができた。そして、このカッター競技会を通して、信頼できる仲間と出会い、その仲間たちと喜びを分かち合うことができた。この経験を活かし、フォロアーシップ、リーダーシップともに伸ばし、今後の自衛官人生に役立てていきたいと思う。 

表彰式にて下段中央

2学年 佐野智彦  私立立教新座高等学校    埼玉県出身

カッター競技会当日。風はなく、空を見上げれば一面曇り空。カッターにはうってつけの天気であった。いつにない緊張感と期待を胸にスタッフの思いの詰まったTシャツに袖を通し決戦へと向かった。思えば今日までの1か月間、いろいろなことがあった。辛いこと、苦しいこと、逃げ出したかったこと、たまにある楽しいこと。これらすべてのことが、この日に繋がっていた。
 クルーヘッド(クルーのまとめ役)として私ができたことは、誰よりも声を出し励まし士気を高めること。不安しかなかった。しかし共に過酷な訓練を乗り越えていくうちに心が通じ合い団結していくのが分かった。苦楽をともにした仲間は何よりも信用できる。そんな仲間たちと競技会を迎えられることが本当にうれしかった。金のみを目指し一致団結のもと44クルーは競技会へ臨んだ。初めは44A艇。緊張はしていたものの練習以上の気合と根性でやり切った。しかし結果は最下位。回頭でのミスが響いてしまった。これだけ高い気持ちでやってきたからこその悔しさがあり、涙が止まらなかった。そんな中44B艇は仇を取るが如く精一杯やってくれた。お互いの気持ちが分かりあってこそできることでありとてもうれしく感じた。
 結果だけ見れば敗北であるがそれ以上に団結の意味や仲間を知ることができた。私にとって44クルーのみんなはかけがえのない存在であり仲間である。感動をありがとう。そしてこれからもよろしく。

中央2番目が本人

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