防大かわら版vol156

2024年03月07日

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◯掲示内容一覧
 ・防大4年間の思い出、今後の抱負
 ・韓国陸軍士官学校長期派遣所感
 ・仏国士官学校(陸・海)長期派遣所感

防大4年間の思い出、今後の抱負

住友 学生

入校から4年の月日がたち、卒業を目前に控えるこの頃、ふと思い出します。入校宣誓書を書いた日の夜のことです。想像の先を行く熾烈な学生舎生活に不安を覚えながらも、自分で決めた道だと宣誓書を提出しました。その決意を後押しした担当教官の言葉が今も胸に刻まれています。「幹部候補生になるために、4年の歳月と多くの国費を投入される防大生は、他の大学生と同じ青春を味わうことはできない。それは修練の身だから、覚悟を決めよ。」という内容でした。
 入校後の日々は本当に過酷でした。覚えること、やることが多く、時間がない中、上級生や教官に求められる水準も高く、気を抜くことは許されませんでした。大変なのは承知の上で飛び込んだ世界とはいえ、入校を何度も後悔しましたが、そのたびに思い出したのは「修練の身」という一言でした。高校生の時分に志した立派な幹部自衛官になるためには、辛いことも苦しいことも、避けては通れない試練だと言い聞かせました。
 気付けばもう卒業目前です。本当に素晴らしい毎日でした。兎に角泳いだ夏、泥にまみれながら演習場を駆け回った日、寝る間を惜しんで勉強した夜もあれば、友と熱い議論を交わした夜もありましたが、こんな青春を果たして他に何処で味わえるのだろうかと思います。
 今になってこの地を去ることが惜しくてたまりません。それはこの日々が楽しかったとともに、やりきれなかったことや後悔していることが尽きないからです。それでも春からは幹部自衛官としての第一歩を踏み出し、今はこの思い出に区切りをつけ、幹部候補生学校という新たな修練の地に身を投じる覚悟です。

野沢 学生

卒業を目前に控え、防大生活を思い返すと充実しながらもあっという間に過ぎた4年間でした。4年前の春、慣れない新天地での生活に期待と不安を抱いて正門を通った日を鮮明に思い出します。訓練・学科、学生舎生活、校友会活動どれをとっても楽しいことばかりではなく、自ら考えて実行することの難しさや、思うような結果を出せずに悩む日々でした。そのような防大生活の中で、厳しくも日々気にかけてくださった先輩方、いつも傍で支えてくれた同期、そして指導教官の方々の存在は励みになると同時に、自分自身を大きく成長させてくれたと思います。
 私にとって小原台で過ごした4年間は、何物にも代えがたい経験です。そして、今後の幹部自衛官の基盤となることは間違いありません。卒業後は、4年間共に過ごした同期たちと離れ、幹部候補生学校へと進み、幹部自衛官としての一歩を踏み出します。防大生活で培った多くのことを無駄にせず、胸を張って人生を歩んでいけるように、今後も一所懸命努力し、日々精進します。

森北 学生

防衛大学校は「幹部自衛官となるべき者を養成する学校」です。私は4年間の防大生活を通じてこの学校の意義を強く実感しました。
 「幹部自衛官となるべき者」と一言で言っても、防大生一人一人が目指す幹部自衛官像は異なります。学生舎、学科教育・訓練、校友会、各種競技会、海外派遣等、防大では本当に多くのことを学べる機会が準備されており、このような様々な経験を通して一人一人が自ら理想の幹部自衛官像に近付いていかなければなりません。
 4年間で特に印象的な思い出は2学年時にサンドハースト(各国士官学校による総合競技会)の準備訓練に参加したことです。共に世界を目指して戦う仲間の存在が私の闘志を刺激し、その後の自信や生活のモチベーションに繋がりました。また、日本の代表になるという意識は世界を相手にする士官候補生としての自覚を芽生えさせるために非常に意味のある経験となりました。
 そして共に小原台で寝食を共にした同期、先輩、後輩の存在は自己を律し、目標に向かって共に高め合うことができました。学生舎生活では縦横の繋がりを築くことができたと感じています。
 この他にも思い出を上げればきりがありませんが、その全てが理想の幹部自衛官となるべき自身の資質を向上させるために有意義なものであったと感じています。私と関わって頂いた全ての人に感謝し、防大で得た仲間や経験をもとに幹部候補生学校、そしてその先の幹部自衛官としての勤務に励み、真の武人となれるよう今後も自己研鑽に努めていきます。

藤山 学生

私にとって防大の4年間は本当にあっという間でした。入校して間もなく新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、様々な制約の中での生活を余儀なくされました。しかし、そんな中で「自分たちはどうあるべきか」について日々悩み奮闘する上級生の姿を目の当たりにし、大変さを感じながらも、自ら考え判断し、行動する姿にあこがれを抱きました。2、3、4学年と学年が上がっていくにつれ、次第に指導を受ける立場から、下級生の指導をする立場へと変化して行き、その責任も大きくなっていきました。長期勤務学生、棒倒し幹部、サンドハースト(各国士官学校による総合競技会)、そして部屋の上級生として様々な同期・上下級生と関わる中で幹部自衛官として必要な指導力の基礎を身に着けることができたのではないかと思います。
 防大での一番の思い出は2度の海外派遣です。1度目は士官候補生会議への参加のため米国空軍士官学校へ、2度目はサンドハースト競技会の参加のため米国陸軍士官学校へ行きました。どちらも世界中から多くの士官候補生が集まり、同じ志を持つ者たちと関わることのできる素晴らしい機会でした。他国の文化や軍事事情、リーダーシップ論など様々なことを知ることができ、自分の知見を広げることができました。
 もうあと数か月で任官し、航空自衛隊の幹部自衛官として邁進することとなりますが、防大で培った知識・体力・指導力等の素養と、かけがえのない人脈を大切にして、部下や国民から信頼される立派な幹部自衛官になりたいと思います。

韓国陸軍士官学校長期派遣所感

羽賀 学生

令和5年8月27日~令和6年1月20日までの間、私は韓国ソウル市にある陸軍士官学校、通称:陸士(육사:ユクサ)に学期交換留学生として派遣されました。ここでは学生は“生徒”と呼ばれ、約1100名(2個大隊)が在籍しています。校訓は“智”(緊迫した複雑な環境でも洞察力と判断力を発揮する知的・認識的能力)、“仁”(他人を尊重し、構成員と円滑なコミュニケーションをすることで組織の団結力を高める人格的・社会的品性)、“勇”(生命の危険と不意の誘惑を克服し、軍人らしい価値と信念を行動に移す精神的・身体的能力)の3つであり、同校生徒も参戦した朝鮮戦争中の1951年に制定されました。北朝鮮と国境を接するソウル市ということもあり、校内には若者らしい賑やかな雰囲気がある反面、防衛大学校とは異なった緊張感がありました。彼らは卒業後、将校として10年間の兵役の義務があり、休戦中の国ということも踏まえ、有事の話も良くします。また日本で見る韓国関係のニュースといえば、日韓関係に着目した内容が殆どですが、実際に韓国という“外国”に行って、韓国目線のニュースを見聞きすると、例えば戦争指揮権である「戦時作戦統帥権(Operational control:OPCON)」の問題のような、日本では取り扱われないような国内事情を学べました。
 学校生活で防衛大学校と大きく違うと感じたのは分隊の存在です。この韓国陸軍士官学校では1年生から4年生の各学年から構成された分隊(1個分隊:約6~8名)が存在します。私もこの期間中、他の生徒同様、分隊に所属しましたが、防衛大学校よりも1年生~4年生の関係が近く感じました。生活する部屋は学年毎で違いますが、朝食や校内にある飲食施設などは良く一緒に行き、この同じ分隊の生徒達と多くのコミュニケーションを取りました。私は来年度、4学年になり最後の防衛大学校生活になりますが、韓国派遣で学んだことを活かして、同期とはもちろん、後輩とも今まで以上にコミュニケーションを取ろうと思います。またこの留学生の経験から、防衛大学校にいる留学生達とコミュニケーションを取り、彼らの文化を積極的に学んで行きたいと思います。

仏国海軍士官学校長期派遣所感

中野 学生

 私は、令和5年9月15日から令和6年2月5日の間、仏国ブルターニュ地方に所在する仏国海軍士官学校、通称エコール・ナバールへ派遣されました。エコール・ナバールは、1830年創立の歴史ある海軍士官学校であり、グランゼコールと言われる技術官僚養成校の一つです。日本だけでなく、ドイツ、スペイン、マダガスカルやコンゴなどの様々な国の留学生を受け入れていました。また、この学校は海兵の教育、訓練も同様に行っています。
 日々の授業では、電磁気学や流体力学などの理系科目や、英語、海事法規や船舶などの海軍に関することも学んでいました。また、軍人ではなく、エンジニアとして留学している学生もおり、授業のレベルは非常に高いと感じました。訓練においては、セーリングやシミュレーションによる航海の訓練など、海に関する基本的な事を学びました。加えて、格闘術、戦闘訓練、野営や実弾射撃といった陸上戦闘に係る訓練も頻繁に行われ、軍人としての素養を高めるものも非常に多いと感じました。特に、私が経験した中で印象的だった事は、1週間にも及ぶ実際の練習艦に乗艦して行う訓練です。24時間当番制で常に学生が舵を握っており、それ以外の時間も地図を作ったりしていました。
 今回の派遣を通じて、語学や知識だけでなく、様々な価値観や考え方に触れ、他国から見た日本や自衛隊の事を知ることができました。楽しいことばかりではなく、大変なこともありましたが、この貴重な経験を活かして、自己研鑽に励んでいきたいと思います。

仏国陸軍士官学校長期派遣所感

富永 学生

令和5年9月3日~令和6年1月25日までの間、ブリターニュ地方にあるフランス共和国陸軍士官学校、通称サンシール(Saint-Cyr)にて語学及び学科訓練の研修をしてきました。校内には3年制の本科学生のほかに研究科課程、一般大学からの研修課程、下士官教育課程が存在します。私は本科学生の2学年として小隊に配属され、学生は1人部屋を与えられました。点呼は朝のみで、課業が終われば平日でも外出することができ、自由な時間が多いといった印象を受けましたが、学生は自律意識が高く、部屋はきれいに整頓されていました。また、防衛大学校と異なって大隊は同学年で構成されており、期別としての団結力の強さが訓練や障害走競技会で垣間見えました。
 このサンシールの特徴は、留学生の多様さにあります。ヨーロッパ諸国の士官候補生はもとより歴史的背景からアフリカ諸国からの学生も多く、国際色の強い環境で生活を送っています。
 授業は地政学を専攻していたため、他国の士官候補生と地政学的観点を踏まえて国際情勢について議論することができました。休日にはクラスの士官候補生と遊ぶことが多く、海水浴や、泊った宿でお互いの母国の料理を作り合い、親交を深めることができました。 国際色が豊かな学校であるがゆえに、他国との比較で自国を位置づけるといった環境が形成されており、フランス人を始め、他の国の士官候補生も自分の国への誇りを強く持っていました。また、島国の日本と異なり、国境を接する国々が持つ緊張感というものを感じ取り、そうした彼らの強い自己主張につながっているのだと実感しました。

防大かわら版