防大かわら版VOL.142

2022年09月27日

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◯掲示内容一覧
 ・遠泳訓練参加所感【各大隊】
 ・夏季定期訓練参加所感【各学年・各要員】
 ・前期を振り返って
 ・中期学生隊学生長としての決意・抱負


遠泳訓練参加所感

沼田学生
 私が入校して以来三か月半、ついにこの日がやってきた。入校前から1学年の夏に8キロを泳ぐ遠泳訓練があることは知っていたし、子供のころから泳ぎは得意であったので、自分としては何の心配もしていなかった。しかし、いざ泳力を測ってみるとなんと平泳ぎができない。今までクロールでしか泳いでこなかったので泳ぎ方が全く分からないのだ。水泳補備になったのは島国の出身として全くの恥である。それからも補備訓練は1か月続いた。その間私は何とかあおり脚を矯正し、学校内のプールで行う訓練ではある程度の泳法を身につけることができた。しかしゴールはプールで泳法を身につけることではない。
 7月上旬以降、海面訓練がはじまり私はその事実を痛感させられた。特に海面訓練では、海面温度が低いとともに、波も自分の想像以上に高く、私は波に酔ってしまい離脱してしまった。私は波がトラウマになってしまい、次の日からの海面訓練を行うのが怖くなってしまった。しかし、このままでは淡路にいる父母にあわせる顔がないし、海上要員志望としてのメンツも立たなくなると思い、私は覚悟を決め、次の日の遠泳訓練に臨んだ。結果は4キロを完泳。特に自分は何度も限界を感じたが、周りの同期の支えや頑張っている姿が励みになり力となった。4キロ完泳は私にかつてないほどの自信を与えた。そして迎えた遠泳本番の日、4キロを完泳した私にとって怖いものなどなかった。実際本番では退屈さえ感じた。
 この訓練を通して、同期が横にいるという安心感と、どんなにつらいことにも覚悟を決めて立ち向かうことの大切さを実感した。これからもこの教訓を忘れず、いかなる困難にも同期とともに打ち勝っていこうと思う。

石井学生
 「8キロを泳ぐ。」、普通に生活していれば一生することはないし、まして考え付きもしないだろう。しかし防衛大学校の一学年は必ず夏季定期訓練でこれを経験する。一本泳ぎ切るだけで辛い50メートルプールを80往復すると考えると、その過酷さを感じていただけるだろうか。しかも、それを波のある海の上で行わなければいけない。訓練開始当初は泳ぎ切ることができるかどうかとても不安だった。
 遠泳の訓練は、まずプールを泳ぐことから始まった。30分、60分、90分、120分と日を追うごとに時間が伸びていくスケジュールになっていたが、必ず誰かがトイレに行き時間が延長されるため時間通りに終わることは、一度も無かった。トイレに行く者が出るたびに飛び交っていたヤジも今ではいい思い出だ。次に始まった海面訓練では波のうねりやクラゲなどが障害となった。波酔いで嘔吐する者、クラゲに刺され手足が赤く腫れてしまう者、ラッシュガードと乳首が擦れて乳首に絆創膏を貼って挑んでいる者もいた。初めはこのような障害や海への恐怖から溺れてしまう者もいたが、4キロを完泳できるようになった頃にはこれらにも慣れて落ち着いて泳げるようになっていた。
 迎えた本番、たくさんの保護者の方々に応援して頂きながら入水し、遠泳が始まった。はじめは意気揚々と泳いでいたが、後半になるにつれて変わらない景色と疲労から泳ぐのが辛くなってきた。向かい潮で30分泳いでも10メートルも進まないときは苦痛で仕方がなかった。それでも泳ぎ続け、陸に上がった時には一気に解放されたような気分になった。この遠泳を通して、難しく見える課題でもしっかり準備して諦めずに挑めば、案外やり通せるのだとわかった。

原学生
 1学年の夏季定期訓練における最大の山場、8km遠泳。
 私は水泳が得意であったため、プールでの90分から180分の時間泳は難なく乗り越えることができた。初めはほとんど泳ぐことができなかった同期も気づけば補備訓練を抜け、余裕の表情で泳げるようになっていた。しかし、実際に海に出てみるとそのような表情はぱったりとなくなった。つかない足、突如視界に現れるクラゲ、容赦なくかかる波、様々な要因が私たちをパニック状態に陥れた。1km、2kmと距離は伸びていき、ついに迎えた3km訓練、その日は前日の大雨の影響が残り、訓練を実施できるギリギリの波の高さであった。それまでの海面訓練で海に慣れたと思っていたが、その日の海は荒れていた、救助艇が乗員オーバーになってしまうほど救助を求める学生が出た。結果、3大隊のみ途中で引き返すこととなった。とても悔しかった。なぜ3大隊だけ、とも思った。教官には海に対する認識が甘いと指導された。翌日4km、気持ちを切り替え、油断せず泳いだ。調子よく進み、前を泳ぐ区隊に追いついた。これは私たちにとって大きな自信となった。
 そして迎えた本番、上級生からの応援と激励を胸に私たちの戦いは始まった。天候に恵まれ、波も穏やかで最高の遠泳日和であった。初めて泳いだ8kmは想像以上に長く、心が折れそうになったが、バディや近くの仲間同士で励ましあい、泳ぎ切ることができた。
 私はこの8km遠泳を通じて、仲間と団結し最後まで諦めることなく完遂し、大きな達成感を得た。この経験を活かして今後の訓練も全力で臨んでいく。

加形学生
 私が防衛大学校に入校する上で最も懸念していたのが遠泳でした。8kmという未経験の距離を本当に泳ぎ切れるのか不安でした。その不安を胸に抱きながら遠泳に向けた校内訓練が開始されました。最初の訓練は屋外プールでの30分泳でしたが、自分が思っている以上に疲れることなく泳ぎ切ることができました。その後、60分泳、90分泳と泳ぐ時間は長くなっていきましたが、体力は勿論、精神的にも余裕を持って訓練に臨むことができていました。
 8キロ完泳が見え始めた中で最初の海面訓練を迎えましたが、そこで足がつかない恐怖や、波に流され、なかなか前に進めない中で泳ぐ精神的疲労の多さという海の怖さを思い知り、再び8km完泳への不安が生じました。
 しかし、その不安は、バディをはじめとする4大隊の同期みんなで声を掛け合い、毎日少しずつ距離が伸びていく海面訓練を実施する中で徐々に取り除かれていきました。
 そして迎えた本番、泳ぎ始めるまでの待機時間が一番長く感じる程あっという間の8km遠泳でした。この遠泳を通して、一緒に頑張っている同期の心強さを感じました。
 遠泳訓練で深めることができた同期との絆を大切に、中期以降の学生舎及び訓練も全力で取り組んでいきたいです。

夏季定期訓練参加所感【2学年・陸】

山田学生
 防衛大学校での生活はその忙しさから意識する機会は少ないが、訓練における各課目のみならず学生舎生活・校友会活動・学科教育で学んだことは成長の糧として蓄積されている。今回の夏季定期訓練を通じて自身の手によってその成長の糧を繋ぎ合わせ、様々な状況に対応できる能力が養われつつあるということを実感することが出来た。
 「これから学ぶことは全て繋がっている。」という趣旨の話を入校当初の講話で聞いたことがあったが、当時は緊張と不安もありその真意をなかなか理解することができなかった。今夏、私は陸上要員として初めての夏季定期訓練に臨むことになったが、訓練内容は1学年時より一層専門的になり新たな課目が増えたものの、関山演習場での日々は陸上要員としての知識や技能、同期達との絆も深まる充実した時間だった。思い返すと訓練期間中の各課目は内容こそ違えどもそれぞれの実施時に留意する事項、例えば安全管理上の理由から指導の対象となること等は共通していた。宿舎での整理整頓や日々の清掃は詳細な指示がなくとも自然とこなすことが出来るなど、学生舎生活で得た経験が夏季定期訓練での様々な場面で役に立つこともあった。
 かつて頭に入れるだけであった講話も経験を重ねた今になってやっと講師の伝えたかったことが理解でき幹部自衛官を志した初心を思い出した。残りの限られた修学期間の中で物事を常時繋ぎ合わせて考えることは現段階の私には難しいことなのかもしれないが、慌ただしい日々で小さな発見を積み重ねることが出来ればここで生活する意義がより大きなものになるだろうと確信している。

夏季定期訓練参加所感【2学年・海】

小倉学生
   私は、第2学年海上要員として、令和4年度夏期定期訓練において海事法規・艦内勤務に関する座学、呉、江田島研修及び乗艦実習を通じ、海上自衛官として必要な基礎的知識について理解を深めることができた。
 海事法規・艦内勤務に関する座学では海上や港において必要となる法律及び海上航行を行うための操艦知識並びに信号通信について学んだ。
 乗艦実習では練習艦「はたかぜ」に乗艦し、艦内生活を体験しながら艦内勤務について学んだ。艦内生活の体験を通じて、躾事項を学ぶとともに、艦内勤務では操艦訓練及び航海当直勤務を経験した。特に操艦訓練は舵を合わせることが予想していた以上に難しく、座学で学んでいたことでも簡単に実践はできないと感じるとともに、様々な業務を見て体験することで、理想の幹部自衛官となった自分を思い描くことができた。
 今年度の呉、江田島研修は、新型コロナウイルスの影響により、研修の一部が途中で取り止められたことは残念であるものの、後方支援部隊等の研修を長く行うことができ、後方支援の重要性や部隊運用のあり方を学ぶことができた。
 本訓練で得たことを今後の訓練で活かしていき、さらなる知識の習得ができるよう、日々精進する所存である。

夏季定期訓練参加所感【2学年・空】

宮寺学生
 2学年航空要員の夏季定期訓練では、「航空機運用訓練(グライダー訓練)」「輸送航空隊実習」「校内訓練」を行った。今回の定期訓練で私は、航空自衛隊という組織の特徴を知ることを目標とした。
 最初に、航空機運用訓練では、グライダーを飛ばすために必要な10個の部署に分かれて航空団を模擬した組織運用を学んだ。また、グライダーへの搭乗を通して、航空自衛隊の最大の特徴である空中勤務特性を体験することができた。
 次に、輸送航空隊実習で私たちは、入間基地に本部を置く第2輸送航空隊で研修を行った。航空機を実際に運用する飛行隊の他に、運用するための準備を行う整備群、運用を管理する飛行場勤務隊を見学した。特に記憶に残っているのは、C-1輸送機の体験搭乗だ。あいにくの悪天候で機体は大きく揺れ、周囲は雲ばかりで見えなかったが、空中での勤務をグライダー訓練以上に、身をもって知ることができた。
 最後に、校内訓練では、航空自衛隊独自の基本教練の他に、航空法や緊急時に生き残るための保命法、幹部自衛官のキャリアについて学んだ。階級が上がるにつれて要求される能力の水準が高くなっていくことから、常に自己研鑽に励む必要があると改めて感じた。
 今回の定期訓練を通して、航空自衛隊は一つでも部隊が欠けたら戦闘力にならない「掛け算の組織」といわれる理由を学べたとともに、将来の自分の道と幹部自衛官としての理想像を考える良い機会となった。

夏季定期訓練参加所感【3学年・陸】

大関学生
 第3学年の陸上要員は、夏季定期訓練において日本各地の普通科連隊に配属され、約3週間の部隊実習を実施した。本実習では各部隊において隊員と訓練及び営内生活を共にすることで、部隊の概要と幹部自衛官の地位や役割を理解し、自らの資質の向上に努めた。
 私は鹿児島県南の沖に位置する奄美警備隊(奄美駐屯地)にて、私を含む7名の同期とともに訓練に臨んだ。訓練の内容としては、行進・射撃・野戦築城などの陸上自衛官として必要な資質について、既習内容を確認・実践するとともに、細部や発展的内容を実習した。石灰岩の地層での陣地構築や沿岸監視の研修をはじめとし、全ての訓練が南西地域の島嶼部という地形や環境的条件を考慮した内容であり、特性ある奄美警備隊での実習は机上では得られない貴重な経験だった。
 特に休日に計画された史跡研修及び地域厚生活動では、加計呂麻島の戦跡研修から奄美群島の歴史について知り、大熊舟漕ぎ祭りでの後援から地域貢献に触れたことで、自衛官という職種についての理解も深まった。
 また師団研修では、第8副師団長の講話において、失敗を恐れず挑戦することの大切さと学生というモラトリアム的時間の重要性についてお話いただき、自らの活力を得た。そして熊本防大会の方々からは防衛大学校、そして自衛官は一生の仲間であるとお言葉と激励を頂いた。
 本実習を通して、私は国防の最前線で我々学生を受け入れ、教育・訓練を実施して下さった多くの方々の存在の大きさを知った。そして部隊の方々からプロとしての矜持と温かい人間性を学び、部隊長のそれらに応える人間力を実感した。今後の防大生活においては今回の生の経験を忘れることなく、再び会えた日に胸を張れるように、日々の教育・訓練、そして学生舎生活に励んでいきたい。

夏季定期訓練参加所感【3学年・海】

三浦学生
 今年度の夏季定期訓練において、私は実際の部隊での生活で現役自衛官の方の考えや理念を学び、今後の防衛大学校生活及び自衛官人生への資とすることを目標に取り組んだ。私が最も見習うべきと考えたのは隊員各個人の責任意識の高さだ。現在の長きにわたるコロナ情勢下では黙食・黙浴、手洗いうがいなど感染対策を徹底するのは難しいが、部隊では全員が自分たちは国防の要であるという意識を持ち自ずから行動を起こしていた。私たち防衛大学校の学生として、将来の幹部自衛官としてこのような意識を持つことは重要である。八戸航空部隊の研修において、第2航空隊群司令の髙田空将補による講話では第六潜水艇の佐久間大尉の沈没する潜水艦の中で取り乱さず、部下への感謝、天皇への敬意を遺書に記した話に関連付けて「人はいつ死ぬかわからない、だからこそ常に思いやりを持って行動せよ」というお言葉をいただいた。この考え方は人を統率する指揮官にとって非常に参考になる考えであると感じた。
 今年度の夏季定期訓練は自衛官としてどうありたいか、またどのような指揮官になりたいかを考える良い機会となった。今後の防衛大学校生活でも実習や訓練で協力してくださった方々への感謝と身近な同志への思いやりを忘れずに生活していきたい。

夏季定期訓練参加所感【3学年・空】

宮川学生
 我々第3学年航空要員は、日本各地の戦闘航空団において約3週間にわたる定期訓練を行い、私は金沢県小松基地の第6航空団を研修した。日本において唯一日本海側に位置し、常にスクランブル等の非常事態に備えているこの基地では、今まで研修した基地とはまた違う緊張感を味わうことができた。
 飛行群、整備補給群、基地業務群、所在部隊の研修を通じて現場の声を聞くことができ、将来幹部自衛官として指揮する上で必要な資質や能力が自分に足りていないと実感させられた。しかし、今回の研修でそれに気づくことができたということも大きな成果であったと感じている。
 また、座学だけでは絶対に得ることのできない多くの体験もすることができた。その中でも特に記憶に残っているのはTー4練習機の体験搭乗である。パイロットスーツの着用から飛行前後のブリーフィングまで実際にパイロットが行う過程を体験し、1つの機体を飛ばすのに多くの時間と労力がかかっているということを再認識した。離陸してから着陸するまでの時間は30分ほどであったが、機体の振動や自分自身にかかるGの体感、民間機から見るのとはまた違う景色を見ている時間は格別であった。
 研修の最終日は、空曹士との懇談や防衛大学校出身の幹部自衛官との対談があり、たくさんの人と話し質問する機会を得ることができた。自分が将来なりたい職種やすべきことなどを今一度考えることができ、とても有意義な時間であった。
 最後に、コロナ禍におけるにも関わらず時間を割き、支援してくださった教官、部隊の方々に感謝するとともに今回学んだこと、感じたことを生かし、理想の幹部自衛官像目指して日々精進していきたい。

夏季定期訓練参加所感【4学年・陸】

宮城学生
 私たち4学年陸上要員は北海道東千歳駐屯地において、約3週間の訓練に参加した。本訓練は、陸上要員における防衛大学校の訓練の集大成としての位置付けであり、主として1夜2日の分隊防御及び2夜3日の分隊攻撃に参加した。分隊長、組長を学生自身が行うことで学生が積極的に行動する訓練にできたと感じた。また、例年とは異なりバトラー装置(レーザーによって実際に弾があたったか判定する装置)を使用することで、より実戦的な訓練を行うことができた。
分隊防御では、掩体、鉄条網の構築、敵の斥候への警戒を行い、掩体と障害の構築をそれぞれの機能が十分に発揮されるように場所を選定した結果、敵の攻撃を破砕することに成功した。
次に、分隊攻撃では、40kmの徒歩行進、戦闘射撃、敵陣地への偵察、陣地攻撃を連続した状況下で行った。今まで行ってきた訓練とは違い、徒歩行進から陣地攻撃までを連続した状況下で行う初めての経験であり、多数の課題を発見した。この課題を幹部候補生学校へ入校するまでに改善していきたいと感じた。
本訓練で学び、感じたことを今後の資とし学生生活、自衛官生活へと活かしていきたいと思う。

夏季定期訓練参加所感【4学年・海】

小林学生
  例年、海上要員の夏季定期訓練では実際に護衛艦に乗艦しての実習が行われており、今回私はイージス艦「きりしま」で実習する機会を得た。3年間の要員訓練の成果を発揮し、また幹部候補生学校へと繋がる訓練とすることを目標に取り組んだ。
実習では実際に護衛艦を操艦したり、各種訓練の主要な配置に就いて参加した。また、照明弾射撃、対空、対潜戦闘などを見学することができ、訓練時の雰囲気や各艦の役割、そして数年後に我々が何をするのかを具体的にイメージするとともに、将来の部隊勤務に対する大きなモチベーションとなった。寄港地では一般公開に役員として参加することで、国民の方々に自衛隊を理解してもらうための広報活動の重要性を肌で感じることができ、非常に良い経験となった。また、実習期間を通じて海士から海将までの幅広い階級と様々な経歴をもった方とたくさんのお話をすることができたことが、本訓練において最も有意義な点であったと感じている。幹部自衛官としてどのような立ち振る舞いをすればよいのか、どのような着眼で部下と接すればよいか、どのような統率を発揮すればよいかなど、改めて「統率」に関する考えや、残りの防大生活で実践していかなければならないことを具体的にイメージすることができたと感じている。
最後に、有意義な実習となるよう様々なイベントを企画してくださった「きりしま」乗員及び関係各部の皆様に改めて感謝申し上げたい。

夏季定期訓練参加所感【4学年・空】

坂本学生
 4学年航空要員の夏季定期訓練では、グライダーを用いた航空機運用実習、校内訓練、松島基地での部隊実習を行った。特に印象の残った航空機運用実習と部隊実習について述べる。
 航空機運用実習では、2学年が新隊員、4学年が基幹隊員としてグライダー運用する訓練を行った。航空団を模倣しており基幹隊員はそれぞれの役職につき団の一員として活動し任務達成をすることができた。私は「安全班長」として勤務した。富士川航空団全体の、飛行安全と地上安全の監督全般を行うのはかなり難しく各長に割り当てられている学生と協力しながら大きな事故事案等を起こすことなく訓練を終えることができた。この訓練を通して、航空団運用の円滑な運航に最も重要なのは安全確保であり将来幹部自衛官になる我々にとっては非常に考えさせられる有意義な訓練であった。
 松島基地の部隊実習では、飛行群、整備補給群、基地業務群及び所在部隊それぞれの研修を行った。昨年度の研修でも感じたが航空機を飛ばすために多くの隊員の支えがあって初めて戦力発揮をすることができることを感じた。また、部隊実習では震災学習も行われました。私は岩手県出身のため震災についてこれまでも学ぶ機会があったものの大川伝承の会の語り部の方が語って下さった内容は自分自身の災害の脅威について改めて考えさせられた。「恐怖を知ることは希望につながる」という語り部の方の言葉は、自分の命と多くの方の命を救うために私たちはよく考え学んでいかなければならないと感じた。私は、この訓練全般を通して自分たちの使命を自覚し将来この国を守る歯車として任務遂行できるように改めて覚悟をかため努力していきたいと思った。

前期を振り返って

東郷学生
 私の前期大隊学生長としての大隊運営方針は「成長のための基盤強化」としていた。学生舎生活における各個人の自主性を重んじ、自己陶冶を図りやすい環境の構築を推し進めてきた。特に最も重視した点は形骸化しつつある学生間での指導要領や、学生舎生活における各種統制事項の見直しである。学生間アンケートの実施による問題点の把握、勤務学生とのミーティング、下級生とのコミュニケーションの醸成及び指導教官との意見交換を行い、その中で必要なものは現在の情勢に合わせ継承しつつ、無駄なものは刷新することによって学生舎生活をより過ごしやすい環境へ構築し直すことを理想とし勤務してきた。その結果、学科・訓練、校友会、競技会、体力練成、趣味、その他各種活動を全学生が以前より積極的に楽しんで取り組める環境を構築できたと考える。さらに、幹部自衛官になるものとしてふさわしい厳正な規律の維持、自主自律の気風醸成を図り、徹底させることができた。学年の枠組みに縛られることなく大隊としての「結束」を目指し、上級生に対する尊敬、下級生に対する信頼を相互に得ることで全学生が協働できる組織形態を組み立てることができたと考える。この大隊において上下級生問わず「1大隊に所属することができてよかった」という声が聞こえるのは大隊学生長として余りある名誉であると思う。前期作り上げた基盤をもとに中期以降、1大隊全学生のさらなる飛躍を期待する。

舩木学生
  令和4年度前期の第2大隊は「先駆」を年間大隊方針として、そして「達観」を前期の方針として掲げた。「先駆」は、あらゆる点において学生隊を牽引するという意思を示しており、「達観」は、目先のことではなく長期的な視点をもって物事に取り組むということを意味するものである。前期大隊学生長としての任を終え、改めて前期を振り返ってみると、大隊員一人一人がそれぞれの持ち場で、前期の方針である「達観」を体現してくれたと考える。年度当初は新型コロナウイルスに翻弄され、多くの学生が苦しい状況に陥ったが、早期の体制復旧のため非常に多くの学生がリーダーシップ・フォロワーシップを発揮してくれた。校務再開後は、感染症対策と並行しつつ学生舎や競技会の運営を行うという状況となったが、各中隊学生長及び競技会責任者以下全員が、目先の利益ではなく、より長期的な影響を考えて運営を実施した。このような厳しい情勢下においても無事に前期を終えることができたのは、大隊員一人一人の思考力、行動力、そして長期的視野の賜物である。私も未熟でありながら、多くの人に支えられ、無事に責務を完遂することができた。かつて武田信玄が「人は城、人は石垣、人は堀」と組織における人の重要性を説いたが、まさに身をもって人の重要性を感じた前期であった。中期以降も、前期で培ったこれらの経験を活かし、第2大隊として年間方針である「先駆」の体現を目指す所存である。

久保学生
 私が第3大隊幕僚の中で担当となったのは、第4係であった。第3大隊の第4係の管轄は、備品・施設・衛生・厚生・被服・給食が主であり、加えて、幕僚内での管轄不明な業務についても携わる事が多くあった。
私の任期である前期は、その特性上、年度の初動時期でありまさに激動であった。 新1学年を迎え入れるにあたっての様々な準備に多くの労力を要した。
 施設・備品関係については各中隊の係、大隊施設・備品係、そして管理施設課との円滑な連携を行い、新1学年に対する被服交付についても各中隊・大隊・学生隊被服係と様々な調整を行った。恒常的な業務の中で、施設・備品の修理申請の受諾及び指導受け、消耗品の支給及び被服交換といったものは突然大量に所要が発生する場合もあれば、非常に閑な時期もあり非常に勤務の濃淡を感じる業務であった。
 勤務を終えて気付いたことは大隊事務室の存在の大きさである。第4係は勤務内容の関係上、大隊事務室の方々と接する機会が多かった。その中で我々学生の事を気遣う言動・行動を多く目の当たりにし、大隊事務室の存在を大きく感じたのである。 我々学生は日々、自主自律を目指し精進しているが支えてくれる方々があってこそであることを忘れてはならない。

青谷学生
 前期の3カ月間、私は大隊幕僚として勤務し、3大隊の大隊運営に関わる業務を行った。前期の3大隊の運営方針は「吟味」であり、大隊学生長の補佐という立場で大隊方針に基づいた運営を行った。大隊運営に携わる中で、私は2つのことを学んだ。それは、物事を客観的な視点で見ることの必要性と幕僚の在り方である
 まず1つ目について、大隊内で慣習的に行われている制度や指導に対し、コロナ禍等の状況に即したものなのか、大隊をよりよくするために本当に必要なのか、といった客観的な視点で見直しを行った。そうすることで大隊内での制度や指導における問題点を見つけることができ、改善することができた。物事を客観的な視点で見ることで、私なりに「吟味」することができたのではないかと考える。次に幕僚の在り方について、幕僚は学生長の指揮の下、その業務を補佐する立場である。業務をする中で、大隊学生長のフォロワーとしてどうあるべきかについて考え、幕僚に求められるフォロワーシップについて学ぶことができた。指揮官の業務を補佐するだけでなく、指揮官の考えや意見に対して助言をし、間違っていた場合は軌道の修正をすることが幕僚の役目であると感じた。
 大隊幕僚として勤務することで前期の間は能動的に行動することができたと感じる。今回の経験で学んだこと、培ったことを活かし、残り短い防大生活を有意義なものにするとともに、幹部候補生学校へ向けて準備していきたいと考える。

井上学生
 私は44中隊が大好きだ。だからこそ、中隊員にもこの中隊を好きになってもらいたかった。そして、この中隊が厳しくも温かみのある、安心して学生舎生活を全う出来る場所となれるよう、前期44中隊学生長としての方針を「家族」と掲げた。 中隊を1つの家庭と見なし、その構成員である家族の帰属意識を高められるリーダーとなれるよう、私は主に①笑顔、➁感謝、③家族という3つを心の軸としていた。①自分が笑顔でいる、それだけの余裕を長として常にもつこと、➁心遣いに対しこまめにありがとうと感謝の気持ちを伝えること及び③家族のように愛情をもって接すること。また、中隊員が笑顔でいられるような、中隊員から感謝されるような、家族のように信頼してもらえるような存在になれるよう、1人1人に尽くすことを心掛けた。 人に尽くすことは、自分の労力を伴う。コロナウイルスの感染者が出続けた前期の最初は、尽くした結果が実を結ばず思い悩んだこともあった。しかし、その時労力に目を向け苦心せず、感謝の言葉や、人に尽くすことが出来た喜び、そして、自分も誰かに尽くしてもらっている有難さを感じることが大切だと思う。人に尽くすという行為は、感じ方1つで幸せに変わるのだ。カッターも隊歌も良好な成績を収め、楽しそうに学生舎生活を過ごす中隊員を見て、私はそう学んだ。 これからも、この中隊を更に好きになれるよう、好きになってもらえるよう、尽くしていきたい。

中期学生隊学生長としての決意・抱負

八尋学生
 中期学生隊学生長を務めさせていただく八尋学生です。はじめに伝統ある防衛大学校の70周年の節目にあたり、本役職に任命されたことに感謝申し上げるとともに、大きな責任を感じております。
 さて本年度は、「思考」という年間方針のもと、前期は嶋田学生によって基盤づくりがなされてきました。中期はその流れを引き継ぎ、且つ学生隊が新たな変革に対応できるよう「プラス思考」という勤務方針のもと学生隊運営を行って参ります。
 現在我々には多くの変革が求められており、中でも学生間指導はその筆頭に挙げられます。これは67期をはじめとする多くの学生が防衛大学校学生となる上での根幹を形成したものであり、この変革には多くの議論が必要となります。このような変革に際して、学生一人一人が「プラス思考」を持って、大学校を更なる高みへと向上させることが重要になると考えます。また、新型コロナウイルスの脅威は依然として深刻であり、前期においても学生生活に大きな影響を及ぼしてきました。学生においては、このような状況においても目標を見失わず、幹部自衛官としての資質を涵養し、自主自律を目指していくことが重要であり、学生隊としてこの動きを活性化させたいと考えております。
 学生隊学生長として、先輩方から受け継いだ伝統を継承しつつ、より高みへと進歩させ、防衛大学校をより意義のある学校とするべく全身全霊で勤務していく所存であります。

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