防大かわら版VOL.138

2022年03月11日

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◯掲示内容一覧
 ・防大4年間の想い出と今後の抱負
 ・米国長期派遣所感
 ・カタール国長期派遣所感
 ・仏国長期派遣所感


防大4年間の想い出と今後の抱負

川島学生
 防大入校後3か月、初の夏季定期訓練では8㎞遠泳訓練が行われていた。訓練も終盤、残り1㎞、溺れかける同期を横に指導教官からこんな一言を言われた。「続けさせるか、リタイアさせるか、川島が決めろ。」一緒にゴールしたい気持ちがある一方で、溺れさせてしまった時の恐怖と責任感が私を襲った。これまでの人生、「もしも自分のせいで失敗してしまったら、誰かに迷惑をかけてしまったら」ということを考える機会が多かったような気がする。当時の体験はこの気持ちを絶頂にまで押し上げた。しかし、本当に重要なことは「失敗を恐れることではなく、仮に失敗したとしても自分のした選択がかっこいいものなのか。」であるとこの4年間を通じて強く感じるのである。
 結局、私は同期の手を引きながら泳ぐことを選択した。絶望するほど体力が奪われ、人生で初めて溺れ死ぬかと思った。人を一人助けることがどれだけ厳しいことなのかを実感したと同時に、「自分で何かを選択する」責任の重さも感じることが出来た。このような貴重な経験をする機会を下さった当時の指導教官には感謝の気持ちでいっぱいである。これからの人生、たくさんの迷いや責任という高い壁にぶち当たることがあるであろうが、この4年間の経験とこれまで支えて下さった方々への感謝の気持ちを忘れず、「自分の思うかっこいい選択」を追求して、これまで以上に成長していきたい。

遠泳訓練後の食事(1学年時)

8km共に泳いだ組員(1学年時)

村田学生
 卒業を目前に控え、改めて防衛大学校での生活を振り返ると、多くの出来事を想い返すことができ、本当に濃い4年間であったのだと感じた。私は、防衛大学校の三本柱である学科・訓練、学生舎生活、校友会をバランスよく取り組むことを意識して生活していたが、今回は特に校友会での想い出について述べようと思う。
 私はアメリカンフットボール(以下、アメフト)部に所属し、夏の焼けるような暑さや冬の凍えるような寒さの中でも、平日や休日関係なく土のグラウンドで仲間とともに練習してきた。アメフトは体の大きさや技術が重要であるが、それと同じくらい戦術が重要なスポーツであり、採用する戦術により大きく戦況が左右される。4学年時には、ウエイトリーダーとアナライジングリーダーとして、相手に勝つための肉体を作るためのウエイトメニューを考える一方で、相手のプレー傾向を把握するために何度も動画を見て、仲間と意見を交換し、自分たちの作戦を考えた。アメフトは辛いことのほうが多かった気がするが、悔いのない時間を過ごすことができた。
 卒業後は、防衛大学校で学んだ“人とのつながりの大切さ”や“辛いことから逃げずにやり切ることの大切さ”を生かし、国民の負託に応えるよう勤務する所存である。

校友会活動時

大隊学生長勤務中

伊藤学生
 私が防衛大学校で過ごした4年間は、必ずしも明るく成功に満ちたものではなかった。 4年前の着校日、春の陽気とは裏腹に、不安いっぱいで正門を通り抜けた。そこから始まった1年間は、朝6時から全力ダッシュに全力挨拶、防大生活に不慣れなことにより厳しい指導を受ける連続であり、1日1日を乗り越えるのに必死で、消灯後にふと我に返ってホームシックに襲われることもあった。
 2学年になると、夢中で駆け抜けたカッター期間、そして念願の1年生生活脱却の傍ら、格好のつかない自身の1学年指導に悩んだ。3学年においては、日本を覆い始めた新型コロナウイルス感染症で先が見えない中、初めての長期勤務学生と校友会運営の務めをうまく果たせず、自らの至らなさを痛感し、ひとり授業のない教場で涙したこともあった。4学年になってからは3本柱のうち特に学科教育・訓練、学生舎生活にさらなる挑戦をしたものの、勉学・読書また最上級生として後輩にしてあげられたことが、まだまだあったように思う。
 しかし、この4年間は、後悔と反省ばかりではない。なぜなら、温かい家族、素晴らしい同期、尊敬すべき先輩と優秀な後輩、寛容な指導教官、親切な学科教官に恵まれたからである。
決して強くはない私が、楽ではない1学年生活を乗り越え、カッター競技会では金クルーの一員となり、曲がりなりにも長期勤務学生と校友会運営を務め、防衛学の論文で表彰をいただけたのは、ひとえに私が関わった方々のおかげであった。私の防大4年間の想い出は、苦い記憶と同時に、私とともに歩み、支え、導いてくれた人との記憶でもある。
 今後、防衛大学校を卒業して新たな道を歩む時、様々な形で、困難や弱い自分と直面することがあると思う。しかし、この4年間で学んだように、どんな時も自身とともに歩み、支え、導いてくれる方々の存在と感謝を忘れず、一歩一歩、成長していきたい。

五嶋学生
  平成30年4月に防衛大学校に入校し、4年の月日が経過しようとしている。防大での学生舎生活や校友会等を振り返り、感じたこと、思い出や今後の抱負について述べたいと思う。
 防衛大学校の4年間で同期の大切さを学ぶことが出来た。初めて集団生活を経験し、1学年時の前期では同期5人と同部屋で防大生活の基本が出来るまでお互いに助け合い、協調性を身につけ、同期の絆を感じる非常に濃い時間を過ごせた。2、3学年時は各種競技会への参加や長期勤務学生として学生の指揮を取り上級生を支え、4学年時では大隊学生長という約500人を指揮し、リーダーシップを発揮するという貴重な経験をさせて頂き、同期の協力を得て4大隊の一員として貢献していくことが出来た。特に印象深い思い出は海上要員の乗艦実習である。様々な訓練の研修と実習を通じて、実際の幹部自衛官の業務を間近で見学し、海上要員、幹部自衛官としての意識や任務するにあたって大切なことを学んだ。また、訓練中の休暇では様々な寄港地で上陸し、初めての場所でその土地の風土を感じ、充実した生活を送ることも出来た。
 今後の抱負はこの防大で得た同期、上下のつながりを永遠に大切にすることである。自衛官として今後約40年は続く仲になり、統合運用の時代で陸・海・空の要員は違うものの同じ場所で勤務することがあるので、今後も同期と助け合いながら自衛官生活を充実させ、任務に邁進していく所存である。

米国長期派遣所感

中村学生
 私は8月10日から12月25日の間、メリーランド州アナポリスにある海軍兵学校(USNA)で過ごした。英語圏へ行くのが初めてであったり、全て文系科目をとってみたり、文化の違いを感じたり、予期せぬこともたくさん起こり冒険のようだったが、辛いと感じたことは1度もなく、とても有意義な5か月だった。そう思わせてくれたのは多くの友人の存在だ。USNAの学生だけでなく各国からの留学生とも交友関係を築くことができた。国際問題について意見を交わしたり、お互いの言語や文化を教えたり、旅行にも行った。このように海外の士官候補生と関わることができたのはとても貴重な経験だった。友人たちとは今でも毎日のように連絡を取り合っている。
 今回の派遣において多くのことを学び、経験した。それらは私に英語力だけでなく広い視野や考え方、行動力などリーダーとなるために必要な様々な要素を与えてくれた。しかし自分が成長することがこの派遣の目的ではない。この期間で築いた各国士官候補生との交友関係を糧に、将来幹部自衛官として世界で活躍し日本はもちろん、国際平和にも貢献すること、そして多くの経験を防大や海上自衛隊に還元し、より良い組織を作っていくことがこの派遣のゴールだと私は考える。誇り高き日本の士官候補生として今日から尽力していく。このような機会を頂けたこと、支えてくださった方々、そして世界中の友人へ心からの感謝を述べたい。
Go Navy,Beat Army!

カタール国長期派遣所感

八尋学生
 私は、令和3年9月から同年12月までの間、中東のカタールに派遣された。カタールでは、軍が管轄する語学学校にてアラビア語を学んだ。カタールはアラビア半島に所在し、面積は秋田県ほどの大きさであり、その大部分は砂漠である。派遣されている期間も平均気温は40度の暑さであった。
 語学学校では、日曜日から木曜日の午前に語学の講義を受けた。講義は各人のレベルに応じたものであり、防大の第2外国語講義で学んでいたことを更に磨くことができた。
 語学講義の時間以外は、カタール軍士官学校の士官候補生とともに過ごした。士官学校はイスラム教の礼拝の関係で1日に7回点呼が実施されている。また、規律違反等に対しては厳しい罰則を定めており、日本より厳しいように感じた。
 休日は木曜の午後から土曜日までであった。カタールの士官候補生のエスコートのもと、多種多様な場所の研修を行うことができた。イスラム教のモスク、活気のある市場やそこで働く人々の姿など、初めての光景で戸惑うこともあったが、それ以上に刺激的な体験をすることができた。カタールでは親族間の繋がりが強く、彼らは毎週のように親族で集まり団欒をしていた。今日の日本では、薄れつつあるものであり羨ましく感じた。
 本派遣は、コロナ禍という厳しい情勢下であったが、防衛大学校教職員及び様々な方々のご尽力により実施することができた。多大なるご支援を賜り、厚く感謝申し上げます。
 本派遣にて得られた経験を防衛大学校での教務、訓練及び学生舎生活に活かし、将来、幹部自衛官に必要とされる資質の伸展の糧にしていく所存である。

仏国長期派遣所感

實廣学生
  私は、令和3年9月4日から令和4年1月25日の約5か月間、フランス陸軍士官学校に派遣された。フランスは、世界でも美食の国、花の都パリに代表されるような美しい街並みが有名である。しかしそれとは反対に、訓練は非常に厳しくレベルの高いもので、士官候補生自らが考えそれを実行していくという主体的な部分が多くみられた。また、学生一人一人が国を守るという意識をとても強く持っており、ナポレオン時代からのフランス陸軍の誇りを感じた。また、彼らは歌が非常に好きである。どんな時でも一人が歌いだすと全員が歌いだす。訓練で寒くて凍えているとき、パーティで皆と集まった時、何気ない日常の場面。自分も訓練時に歌ってみると、確かに気持ちが上向きになりまた頑張ろうという気持ちになった。このようなフランス人の強い精神、ポジティブ思考は今後においても自分の糧になるだろうと思う。最後に、この派遣で学んだ多くのことを今後防大生活、任官後もしっかり発揮し、努力していく所存である。

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