防大かわら版VOL.137

2022年02月10日

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◯掲示内容一覧
 ・後期学生長としての決意・抱負
 ・冬季定期訓練参加所感
 ・入校へのアドバイス
 ・米国長期派遣所感
 ・カタール国長期派遣所感

後期学生長としての決意・抱負

殿塚学生
 今年度は、新型コロナウイルスの影響が続く中、新たな生活様式の下、前期及び中期を通して防大の在り方の見直しとその定着が行われ、通年目標である「誇り」を醸成するための基盤の整備が行われてきた。指導要領は、コンプライアンス感覚を醸成させるとともに、コロナ禍における感染防止対策の観点から柔軟に変化し、新たな指導態勢の中での指導の在り方や学生のあるべき姿が模索された。防大は、そうした各人の努力の中で、日々進化しつつあることは間違いない。しかし、理想の追求に終わりはなく、現状に満足するべきではない。通年目標である防大生としての「誇り」をより価値のあるものにするためには、今後も継続した理想の探求が必要である。そこで後期の勤務目標を、「価値の発見と創造への挑戦」とした。
 後期は新たに綱領実践委員会主体の下、理想の防大の在り方について幅広く議論する場として、「考える葦」を学生隊として本格化する。「考える葦」とは、かつての槙智雄学校長が言った「防大生は考える葦である」という一言から着想を得たものであり、学生隊本部はこの場における議論を足掛かりに、理想の実現を目指し、全力で勤務していく所存である。

冬季定期訓練参加所感(陸上要員)

寺田学生
 第3学年冬季定期訓練において、太平洋戦争で激戦地となった硫黄島への研修に参加した。硫黄島へ訪れることができるのは、全自衛隊員の中でも限られていると聞かされていたため、今回の研修は、感謝の気持ちと探求心を持って臨んだ。
 硫黄島に到着して感じたのは、経験したことのない不気味さだった。硫黄島の気温は24℃、湿度は70%、加えてかすかな硫黄の匂いが鼻を刺激し、明らかに冬の本土とは違う雰囲気であった。
 南地区にある粟津壕は、人が1人通れるほどの横幅で、常に頭を低くしなければ歩けない高さだった。壕の中は外よりも暑くサウナのような環境で、まるで迷路のような光の無い空間の中で、米軍の上陸を待つ当時の日本兵は強い精神力を持っていたのだと感じた。  摺鉢山からの景色は絶景だった。しかし当時は、今では綺麗な青で染まる大海原も米軍の艦船で埋め尽くされていたと考えると鳥肌が立った。当時の日本兵は、「敵を10人倒すまでは死ぬことを許さない」という栗林中将の命令に従って祖国を守るために戦った。今の私には到底できることではないと感じた。
 今回の硫黄島研修では、私に足りないものは何かを気づかせてくれた。今を生きる者として、かつて祖国のために遠く離れた地で戦い抜いた先人たちがいたこと忘れることなく、今後の防衛大学校の生活に精進しようと思う。  

    硫黄島の風景


冬季定期訓練参加所感(海上要員)

瓢 学生
 我々3学年は12月、冬季定期訓練の一環として硫黄島を訪れた。76年前に激戦地となったその島は、本土から考えれば季節外れの暑さと湿度を以て我々を出迎えた。恵みであるはずの雨はその厳しさを増しており、私は戦争当時の過酷な環境に思いを寄せつつ、摺鉢山、海軍水平砲台、陸軍トーチカ、鎮魂の丘、粟津壕と研修場所に足を運んだ。
 わずか半日の徒歩研修であったが、進むほどに額から汗が滴り、体力が激しく消耗していくのを感じた。この地で戦った先人たちが水を飲むことさえままならなかったことを考えると、彼らに畏敬の念を感じずにはいられない。
 硫黄島の過酷さは、その高温多湿な環境に加え、水が得にくいという点にある。島自体が火山の一部であり、湧水がなく、必要な水は雨水で与えられるのみである。硫黄島の暑さ、水不足、食料不足という過酷な環境の下での1か月にわたる持久戦は、まさに想像を絶する苛烈さであっただろう。戦闘に使われた壕内は、地熱で熱せられ蒸し暑く、腰をかがめなければ通ることができないほどに狭く、一歩前にいる者を見失うほどに暗く、そして自分の位置がわからなくなるほど複雑に入り組んでいた。天井にはつるはしの跡、ところどころに生活の痕跡が残され、厳しい環境で命を懸けて戦い続けた先人たちの祖国を守り抜くという固い意志を目の当たりにした。
 我々には将来、国家のために全身全霊をかけて戦う任務が付与される。76年前、硫黄島は本土防衛の第一線であった。背後に守るべき国民を抱え、背水の陣で敵と対峙するとき、その時我々に求められる覚悟とはいかなるものか。そして、来るべき未来へ向け、若い我々が今するべきことは何か。もっとも重要なことをこの地に散った先人から学ぶことができた。  

硫黄島研修の様子

鎮魂の丘にて黙祷の様子

冬季定期訓練参加所感(航空要員)

沈 学生
 冬季定期訓練に参加し、硫黄島研修、航空機運用実習、教育法及び指揮運用基礎の四つの科目を学んだ。 教育法及び指揮運用基礎では、今後、指揮官として部下を効果的に教育し、統率する資質を習得した。航空機運用実習では、グループに分かれてグライダーの組み立て、離陸前までの実習を行い、滑空機に関する基本知識の習得及びチームワークを高めることができた。
 硫黄島研修では、リーダーシップ及び平和の重要性について感じることができた。 第二次世界大戦当時の硫黄島の戦いについて説明を受け、厳しい状況の中においても徹底した準備を行う部下たちを督励し、戦いを繰り広げた当時の指揮官たちの気概に感銘を受けた。 また、島に構築された陣地と地下要塞を見ながら当時の軍人たちの困難に同感しただけでなく、戦争の惨状を肌で感じた。 これにより、平和というものがいかに重要な価値を持つか気付くとともに、このような惨劇が二度と起こらないように精進するという決意が芽生えた。
本訓練を通じて、航空要員としての多様な技術と知識を習得するとともに、指揮官としての資質を醸成することができた。また、何よりも戦争と平和に対する深思を行う契機となった。本国に帰っても、この経験を糧に日韓両国が協力し、極東の平和の基盤を固める役割を果たしていきたい。  

硫黄島研修にて

訓練にて

入校へのアドバイス

林 学生
 防衛大学校に入校するかどうかを考えている皆さんは、多かれ少なかれ何らかの不安を抱えていることでしょう。そしてそのような不安を抱えている皆さんの中には「防大に入ってもそんなにきつくないから安心していいよ」などと声をかけられている人もいることと思います。しかし、はっきり言います。最初はつらいことがたくさんあります。すべてが今までとは違う環境であり、これまで経験したことのないようなこともあります。防衛大学校に入校しようと考えているのなら、この事実を受け止めて、覚悟を決めなければなりません。しかし、厳しいからこそ、多くの学びがあり、自分のためになると実感できるのです。例えば、物事に優先順位を付け、同期と協力して事に当たり、仕事を効率的に終わらせるという経験は他大学では容易に得ることのできないものでしょう。
 皆さんにもう一つ知っておいてほしいことがあります。それは先輩も同じ道を通ってきているという事です。1年生が悩んでいること、つらく感じることは大抵先輩たちも経験し、理解しています。入校後、もし悩むことがあっても、部屋の上級生や上対番が必ず相談に乗ってくれます。余談ですが、私の前期の部屋員は皆、5月になるまで毎日部屋の4年生に慰めてもらっていたものです。
 以上の事を踏まえ、自分の能力や限界を向上させたいと考える人はぜひ防衛大学校にご入校下さい。4月に防大で会いましょう。

部屋の雰囲気


川上 学生
 私が防衛大学校で生活して感じたことを、入校へのアドバイスとして3点書きます。
 1つ目は、家族や友人など周りの人を大切にしてほしいということです。私は防衛大学校に入校し、想像を超える大変な生活の中で数え切れないほど多くの人に助けられてきました。また、切磋琢磨し互いに成長することができる同期、優しくかつ厳しくも日ごろから下級生を見守ってくれる上級生、将来の話を聞いてくれる指導官の方々など、人との関わりが絶えない防衛大学校での生活の中で、これほど周りの人へのありがたさを実感した事は今までありませんでした。入校する前に周りの人へ、感謝の気持ちを表しておきたかったです。
 2点目は、自分のことは自分でする癖をつけてほしいということです。私は以前、掃除も洗濯も家族に任せっきりでした。そのため、防衛大学校に入校してからは自分のことをこなすことで精一杯になり、周りで困っている同期を助けることができず悔しい思いをしたことが何度もありました。できないことを助け合うのが同期であるので、入校前から基本的なことはできるようになっておくと役立つと考えます。
 最後に、強い心を持って来てほしいということです。私は入校直後において、日々の目まぐるしい生活に追われ幹部自衛官になるという目標を忘れかけたことがありました。しかし思い返してみると、忙しさの中で学んだことは将来幹部自衛官になった時に活かせることばかりでした。すべては自分の夢のためということを忘れず、絶対に幹部自衛官になるという強い心を持って入校してほしいです。  

カッター訓練の様子

課業行進の様子

花藤 学生
 皆さん、防衛大学校合格おめでとうございます。  今までと大きく異なる環境に飛び込むことに大きな期待と不安を抱いていることと思います。勉強についていけるか、体力は足りているか、普段の生活に適応できるかなど人によって様々でしょう。入校前の時期は特に、生活のイメージがつきにくく不安に思う部分のほうが大きいかもしれません。しかしいざ入ってみると不安に思い過ぎる必要がないことがわかります。対番学生という2年生の先輩はひとつひとつ丁寧に教えてくれる上、常々兄弟のように気にかけてくれます。さらに対番学生だけではなく、多くの同期がいます。彼らは寝食を共にし、24時間協力しあう最高の仲間であると同時に互いに切磋琢磨するライバルでもあります。困難を乗り越える上でも、何かを楽しむ上でも欠かせない家族のような存在です。つらいことも少なくない防大ですが、同期と協力すれば必ず乗り越えられます。
 防大での生活は、もちろん楽しいだけの生活ではありませんが、厳しいだけの生活でもありません。防大でしか得られない貴重な経験が多くあります。しっかりとメリハリをつけて生活すれば非常に有意義なものになるはずです。なぜ防大を、幹部自衛官を志し、どのように成長したいのか。今持っている気持ちを忘れずに防大での生活に励んでください。
 みなさんと一緒に成長できる日々を楽しみにしています。

夏季定期訓練にて

夏季定期訓練にて

久木山 学生
 防衛大学校に合格された皆さん、おめでとうございます。春の入校に向けて胸を膨らませつつも、不安や疑問に思うことも多いのではないでしょうか。私自身も、入校するまでは、集団生活や同期、上級生との関係など不安に思うことが多くありました。そこで私から実際の防大生の生活の一部を紹介しますので、少しでも皆さんの入校後のイメージアップになれば幸いです。
 まず、学生舎生活についてです。集団生活である防衛大学校では一部屋8~10人で構成されています。入校から夏季休暇までの期間は1学年と4学年のみで構成され、その後は全学年混合で構成されます。上級生は厳しくもありますが、親身になって下級生に接してくださり、私も何度も相談にのっていただきました。
 次に、学科・訓練についてです。防衛大学校は一般の大学とは大きく異なります。学科の中に防衛学があり、安全保障や防衛、戦史、軍と社会の関係などを学びます。訓練では遠泳や射撃などを行い、1学年次の夏季定期訓練では、陸海空それぞれの部隊での研修を受け、2学年次からの要員志望に役立てることができます。
 最後に、校友会活動についてです。校友会とは、いわゆるクラブ活動のことで、防衛大学校では全員が運動部に所属することになっています。様々な種類の校友会がありますが、儀仗隊など防衛大にしかないものもあります。
 防衛大学校での生活は忙しく厳しい面もありますが、同期と協力し、乗り越えていくことで自分自身を成長させることができます。私自身、入校から約8か月が経過して、防衛大学校に入校して本当に良かったと思っています。
 皆さんと共に学べる日が来ることを楽しみにしています。  

米国長期派遣所感

河内 学生
 私は2021年7月30日から翌年1月3日までの間、アメリカ合衆国のウェストポイント陸軍士官学校に留学した。某有名魔法学校を想起させる石造りの建物に囲まれ、刺激と学びに満ちた濃密な5か月間を送ることができた。米国の学生達と生活を共にし、彼らの日常や佇まいから母国を守る者としての高いエリート意識を感じた。学業のシステムの違いや異文化における生活に苦労することも多かったが、大使館訪問や諸会議への参加等貴重な経験ができた。米国の学生は国の持つ文化的背景からか個人として高いレベルで独立している学生が多く、積極的にリーダーシップを発揮し他の学生を牽引する場面が多くみられた。彼らは防衛大学校と違い夏の限られた期間にしか訓練を行わないがトレーニングに対しては高い意識を持っており、早朝から深夜にかけて、校内のどこかで必ず誰かがトレーニングやランニングを行っていた。
 日本に興味を持っている学生・教官も多く、日本の政策や自衛隊について幅広い知識を有している学生もいた。自衛隊としてもグローバル化の進む現代であるからこそ、そのような人達と関わりを持てたことは私のこれからの自衛官人生の資になった。今回の派遣に携わった方々をはじめ、支援していただいたすべての人に感謝し、この経験を今後の学生生活及び自衛官生活に活かそうと思う。

派遣国における会議にて

派遣国における会議にて

佐藤 学生
 アメリカの陸軍士官学校に派遣学生として行ってきた。米国陸軍士官学校と言えば、士官学校としては世界トップクラスで、アメリカの中でもかなりブランド力のある教育機関だ。今回は、その米国陸軍士官学校の学生たちの勉強の習慣を二つ紹介したいと思う。
 一つ目は、「授業にアクティブに参加をする習慣」だ。アクティブに参加するということは、教官のパワーポイントを写すだけという受動的な姿勢ではない。分からない所があれば積極的に質問し、教官の問いかけには間違っていようと自分なりの意見をその意見に至った思考過程まで含めて発表する。このようにアクティブに参加した授業は、その内容を考えながら参加するため、受動的に参加するよりも記憶に残りやすいのである。
 二つ目は、「予習と復習を必ずする習慣」だ。米国陸軍士官学校の授業はセイヤ―方式を使う。先に自己学習を行い、授業ではその確認の後にディスカッションもしくはグループワークをするというスタイルである。授業についていけなくなるため、予習と復習は各学生必ず行っている。この習慣は前のアクティブに参加する習慣にも貢献している。予習をすることで、学生が授業の前に質問や意見をまとめておくことができる。更に、予習と復習を繰り返すことで長期記憶となるため、試験のために焦って勉強をする学生が少ない。
 以上のような勉強の習慣は、防衛大学校の勉強においても使える手段ではないだろうか。今回の派遣で、私はこの他にも様々なことにふれて学ぶ機会に恵まれた。このような機会をくれた学校と、ご助力いただいた方々にここで感謝を述べる。  

派遣国における会議にて

現地学生と

植木 学生
 私は、7月30日から12月16日までの間、米国コロラド州に所在する米国空軍士官学校に留学した。1954年に設立され、米国の中で最も新しい士官学校であり、卒業後は、米空軍及び宇宙軍のいずれかに任官する。標高約2000mに位置し、東京ドーム55個分の広大な敷地内には、飛行訓練用の空港や空軍予備士官学校、教官用の住居エリアや娯楽施設も併設され、さながら一つの町のようであった。
 米空軍士官学校の大きな特徴の一つは、様々な国からの留学生を受け入れていることである。我々以外に36か国から留学生が派遣され、本科の学生達と学びを共にしていた。
中には実際に幼少時に紛争を経験した学生や、曹士として海外派兵された経験を持つ留学生もおり、授業では学生それぞれが自らの経験や価値観を基に異なる角度から意見を活発に出し合っていた。自分も議論に参加することで自分自身を深く見つめ直すことが出来た。
 訓練では、主にグライダー訓練を行った。後席パイロットの指導のもと、自分で離陸から着陸までを行い、14回のフライトを通して空中勤務特性を理解することが出来た。
 また、授業では第二外国語として日本語の授業が選択出来ることもあり、多くの学生が日本に興味を持ってくれている。日本の文化にも学生の関心が高く、多くの交流を行うことが出来た。
 今回の派遣で得た友人、経験、知識は私にとって大きな宝となった。コロナ状況下での留学を可能にして頂いた多くの方々、そして私を迎え入れてくれた米空軍士官学校の友人達に心から感謝したいと思う。この派遣で得た知識、経験を今後の学生生活、任官後に活かしていきたい。

第5空軍副司令官コシンスキー少将との写真


カタール国長期派遣所感

持田 学生

 (Bismillahhir rahmanir rahim)بسم الله الرحمن الرحيم
 慈悲あまねく慈悲深き神の御名において

私は、カタール国軍語学研究所(以降、語学学校)に入校し2ヶ月半アラビア語を学んだ。そして、その間はアフマド・ビン・ムハンマド軍事大学(以降、ABMMC)に滞在していた。ABMMCではカタール人学生と共に過ごし、語学学校ではトルコ軍人と共に学んだ。
 防大の派遣の中でカタールは唯一の中東の国であり、イスラームの国である。自衛隊において中東に教育目的で派遣される機会はほとんどない。カタールはタリバーンやイスラーム同胞団などとのパイプがあり、アフガニスタン和平交渉においてはタリバーンと米国を仲介するなど、その外交的な存在感は大きい。滞在間に、実際にアフガニスタン撤退の現場にいた在クウェート防衛駐在官(イラク・カタール兼任)や在カタール日本大使・大使館職員の方々など事件に関わった人から極めて貴重なお話を伺うこともできた。
 当派遣を通して、アラブ社会やイスラーム、日常生活から政治社会・軍事までのあらゆることについての彼らの考え方を知ることで、日本人からすれば物理的にも心理的にも遠いカタール、ひいては中東への理解が深まった。他にも得たものは多くあるものの、紙面の都合により割愛することとする。
 最後に、カタールでの経験は単なる語学研修で収まるものではなく、一生モノである。そして、共に過ごした兄弟とも呼べる友人たちに感謝の意を表する。

(Assalamu’alaykum warahmatullahi wabarakatuh )السلام عليكم ورحمة الله وبركاته
 あなた方に平安と神の祝福、慈悲がありますように 



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