防大かわら版VOL.125

2020年11月27日

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◯掲示内容一覧
 ・秋季定期訓練所感【各大隊】
 ・校友会の紹介
  アカシア会
  グライダー部
  軍事史研究部
  自転車競技部

秋季定期訓練所感【各大隊】

1学年 長谷川龍之介
 理工学専攻 駒沢大学高等学校(東京都出身)

約1週間、「克己」という訓練隊長の要望事項の下、秋季定期訓練が行われた。秋季定期訓練では、北富士演習場での16㎞行進、天幕の設営、飯盒炊爨及び地図判読など陸上自衛隊における基礎的な訓練を実施した。その中で最も印象に残っているのが北富士演習場での16㎞行進である。行進とは部隊が次の作戦を実行するために目的地に向かって機動することである。そのため、銃や装具はもちろん、食料、衣類やスリーピングなど作戦を実行するうえで必要なものを携行し歩くことになる。当日の午前3時、防衛大学校から北富士演習場に向け出発した。現地に到着したのは午前6時。天候は曇りであり、とても涼しかった。到着し、身辺の準備をした後行進が開始された。二列に並び、各人の間隔を3mに保ちながら進んだ。最初の行程、4kmは起伏のない経路でスムーズに進むことができた。しかし、次の行程はのぼりが続き体力的に辛くなる学生が多く、遅れてしまう学生が出てきた。そんな時は、その学生たちの荷物を周りの学生が分担して持ち、全員で協力しながら前に進んでいった。同期との協力、そして同期の大切さを改めて感じた瞬間であった。結果的に全員が16㎞を完歩することができた。正直、途中で諦めてしまいたくなる時もあったが同期の存在や全員で完歩するという自らの意思により完歩することができた。振り返ってみると「克己」という要望事項は達成できたと思う。
 1週間という短い期間ではあったが肉体的にも精神的にも大きく成長することができた。ここで学んだことを今後の防衛大学校での生活でも活かしていきたい。

同部屋の同期と(右が本人)

地図判読の様子(右奥が本人)

1学年 深澤 礼香
 人文・社会科学専攻 千葉県立成東高等学校(千葉県出身)

今年度の秋季定期訓練は、新型コロナウイルスの影響を受け例年とは異なる大幅な日程調整と、徹底した感染症対策のなか実施された。訓練内容の概要は、射撃と運動、行進、宿営基礎、地図の見方である。訓練隊長は、厳しい環境に置かれたときの自らの弱い心に打ち勝つという「克己」を要望し、特に私の所属する中隊では、国家の危機に際した防衛出動下という状況が付与された。そのため、訓練を淡々と進めるのではなく、将来の幹部自衛官としての在り方を思索しながら任務遂行の意識を持って訓練に臨むことができた。
 私が最も印象に残っている行進訓練は、まさに「克己」が試される場面であった。訓練の中盤、長く緩やかな上り坂がどこまで続くかわからない不安に加え、消耗された体力と精神は限界を感じた。分隊の歩調を止め、自分の荷物を背負ってもらい、自分の弱さに対する悔しさと手助けしてくれる同期に対する感謝の涙を堪えながらなんとか完歩することができた。
 私がこの秋季定期訓練で得た知見は、厳しい訓練を最後まで諦めない心と同期の大切さだけではない。それは、自分が実際に経験しなければ気付かなかった些細な情に満ちた言動と行動が、リーダーシップ・フォロワーシップともに絶大な力を発揮することに気づけたからである。もはや意地で荷物を背負い、歯を食いしばって分隊に迷惑をかけながら行進しているとき、「根性あるね。」と声をかけてくれた教官の言葉が自責の思いを軽くし、奮起させてくれた。このような、決して訓練のハンドブックに載ることのない、言語化できないが確かに伝わり合う人同士の心配りが、克己が試される場面での幹部自衛官の資質であると身を以て感じた次第である。

北富士演習場においてドーランを塗る体験

北富士演習場において行軍する様子

1学年 山口 翔大
 理工学専攻 神奈川県立横浜修悠館高等学校(東京都出身)

訓練終了式を終えた際、「周囲への気配り」、この意識の大切さを強く実感した。今回の秋季定期訓練は、校内に加え、北富士演習場という慣れない環境下で実施された。訓練の内容は、いずれも陸海空問わず、自衛官たるものとして必須となる基礎的事項を理解及び体験するものであり、本期間を通じて様々な経験を積むことができた。
 特に、演習場での徒歩行進は、富士の麓という特性から校内における訓練では味わうことのできない辛さに直面した。起伏の激しい経路であり、集団から遅れをとりそうになる学生もいた。しかし、体力に余裕のある学生が同期を励まし、背中を押すなど助け合った結果、訓練班全員での完歩を達成することができた。他にも、撤収作業の際に班内で物品(シャベル)の所在が一時不明となった。原因は、訓練の終了間際ということで心身ともに疲労している中、周囲に関心を持っていなかったことである。日頃から指導されている物品管理の重要性について身をもって知るとともに、疲弊しているときこそ周囲に目を配る必要があると学んだ。
 数日間の短い訓練期間は非常に有意義なものとなり、将来幹部自衛官になる上での土台を築くことができたと強く感じる。以後実施される訓練は今回より過酷なものとなるが、困難な時こそ「周囲への気配り」を忘れずにやり遂げていきたい。

コンパスと地図を用いた自己位置の特定(本人)

訓練班の集合写真(中央が本人)

1学年 藤山 翔悟
 理工学専攻 昭和学院秀英高等学校(千葉県出身)

 秋季定期訓練を通して主に陸上自衛隊の訓練を経験することができた。特に北富士演習場にて行われた16㎞行進訓練と宿営訓練では、自衛隊の基礎ともいえる徒歩での長距離移動や天幕(テント)の設営方法、夜間の歩哨(監視する壕を作り、敵の偵察や攻撃に対して警戒を行うこと)を行い、実際に部隊を展開する際にどのようなことを行っているのかを学んだ。また、校内訓練では地図の見方の教育を受け、戦闘訓練を行い、自衛官として必要な基礎的知識と動作の習得をすることができた。
 私が特に印象に残っているのは行進訓練で、地図から地形を予測することの困難さを知った。地図上の距離と実際に歩く距離は同じはずなのに、地形や気象によって、その体感的な距離は大きく異なることが分かった。さらに、多くの装備品を持って長時間歩くことは体力を多く消耗することを学んだ。将来、部隊を指揮する際には、この経験を十分に生かしていきたい。
 今後も、幹部自衛官を目指す者として、陸海空問わず様々な訓練を実施し、見学して、多くの知識を取り入れていきたいと思う。

天幕設営の様子(右が本人)

行進訓練休憩中の様子(本人)

アカシア会「真の紳士・淑女になるための一歩を」

4学年 宮城 栄里
人間文化学科 聖ウルスラ学院英智高等学校 (宮城県出身)

第65期アカシア会理事の宮城栄里学生です。アカシア会は「社交ダンスを通じて紳士淑女としてのマナーを身に着け、将来の自衛官としてふさわしい教養及び立ち振る舞いを身に付ける。」という目的のもと、槇智雄初代学校長により設立された伝統ある委員会です。具体的に言えば、防大生に簡単な社交ダンスとマナーを身に付けさせることを目標に、各種ダンスパーティーの開催、パーティーダンスの教育、デモンストレーションの披露などを行っています。
 今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、例年開催していたダンスパーティーの実施を見送り、デモンストレーション披露の場も極めて限られてしまいました。しかし、アカシア会では、社交ダンスとマナーは披露する場があるから身に付けるものではないという信念のもと、これからも真の紳士・淑女を目指す防大生の教養と品性の涵養の手助けをしていきます。
 活動の様子は積極的にInstagramなどのSNSで発信していきますので、これからもアカシア会を温かく見守ってくださると幸いです。
※添付の写真(卒業ダンスパーティー練習)は平成31年2月に撮影したもの

卒業ダンスパーティーにおけるダンス教育の様子
(右側が宮城学生)

デモンストレーション披露後の様子
(前列右から3番目が宮城学生)

グライダー部「空を飛ぶということ」

3学年 片岡 尚輝
 機械システム工学科 高輪高等学校(神奈川県出身)

私が主将を務める防衛大学校グライダー部は週末を利用し、陸上自衛隊木更津駐屯地にて飛行訓練を行っている。後席の教官が見守る中、離陸から着陸までを学生が行うグライダー部は数多くある校友会の中でも空を飛び、重力に逆らって活動する校友会である。それだけに伴う危険も大きいが、部員は座学や演練を重ね、その危険を克服している。
 特に、木更津における合宿訓練は多くの人に支えられて成り立っている。貴重な週末を私たちの活動に費やしてくださる顧問の方々はもちろんのこと、使用しているグライダーは訓練課航空機係の方々の維持管理によって、使用している飛行場は陸自木更津駐屯地の方々の協力によって…と数を挙げるとキリがない。
 上述したように、空を飛ぶということは危険も多く、たくさんの方々の協力が必要となる。そこで危険を克服する気力や、顧問に協力を仰ぐ際の原動力となるのは部員の「空を飛ぶことに対する情熱」である。この情熱が無くなった瞬間、この活動は成り立たなくなる。コロナウィルスの影響もあり十分に飛べない期間が続いた中で、この思いを持ち続け、今できることは何か?と考え、追求している部員たちを私は誇りに思うとともに、今後もこの部員たちと一緒に防衛大学校グライダー部のさらなる飛躍を目指したい。

運航を統制する片岡学生
上空左端にグライダーが見える

離陸前の様子(片岡学生)

軍事史研究部「~温故知新・軍事史を学ぶということ~」

4学年 吉村 太一
 機能材料工学科 帝塚山高等学校(大阪府出身)

軍事史研究部理事の吉村学生です。軍事史研究部は我々65期入校当時、部員が0名であり廃部の危機にありました。当初1学年しかいない校友会であり、将来に活かせるアカデミックな戦史学習を目指すも「オタク・マニア」の域をなかなか出ることができませんでした。現在では部長と顧問の教官3名の指導のもと、部内での学生同士の発表、教官による講演や研修、部誌作成に向けた活動の3つを行い、一歩ずつあるべき姿に近づいていると考えています。一方で、最大の目標である部誌が未だ発刊に至っておらず、次の世代に託したいと考えております。
 戦史学習は防大生にとってより多くの意味を持ちます。イギリスの戦略家リデル・ハートは、歴史は普遍的経験であるとし、戦争の歴史において手段と条件とは常に変化する一方で、人間の本性は危険に対する反応という面では、ほとんど同じであると述べています。有名な例でいうと紀元前5世紀に勃発したペロポネソス戦争における「新興国(アテネ)の台頭と、それが覇権国(スパルタ)に与えた恐怖が戦争を不可避にした。」という「トゥキディデスの罠」の構図は第一次世界大戦等にも見られます。
 軍事史研究部は前述の様々な活動を通じ、表層的な事象にとらわれず本質的な研究を行えるよう心がけております。これからの軍事史研究部の活動へのご理解、ご支援のほど宜しくお願いいたします。

小原台砲台にて研修を行う1学年時の吉村学生
(右から3人目)

99式軽機関銃の説明を行う吉村学生

自転車競技部「インカレを目指して」

3学年 田原 一機
 人間文化学科 都立大泉高等学校(東京都出身)

第66期自転車競技部主将田原学生です。自転車競技はロードバイクと呼ばれる自転車を用いて速さを競う競技です。ヨーロッパではサッカーの次に人気のあるスポーツで、近年では日本でもファンが増えてきています。競技で勝つためには身体機能を鍛えることは勿論、使用するタイヤやギアなどの機材に関する知識や、個人・チームとしてどのようにレースを展開するかといった戦術が必要となるなど、幅広い視野が求められます。
 防衛大学校自転車競技部では、日本学生自転車競技連盟主催の大会での活躍を目標に掲げ、全部員が日々の練習に励んでいます。各自が目標を持ち、自分自身と向き合って毎日ペダルを回しています。その結果、前年度は全日本学生RCS最終戦・第14回明治神宮外苑大学クリテリウムクラス3において7位入賞を果たすことが出来ました。自転車競技は辛く険しい競技ですが、ここで得た忍耐力や統率力は将来の幹部自衛官としての勤務に必要となる素養だと考えています。
 まだまだ歴史の浅い校友会ではありますが、皆さんの期待に応えられるよう部員一同全力で精進していきます。応援よろしくお願いします。

試合の様子。中央が田原学生
(黒に緑のラインのヘルメット)

試合参加後の部員での集合写真。
(最後列左から3番目)

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