防大かわら版VOL.122

2020年09月04日

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◯掲示内容一覧
 ・カッター競技会参加所感【優勝大隊】
 ・遠泳訓練参加者所感【各大隊】

カッター競技会参加所感

2学年 坂 諒
 機能材料工学科 埼玉県立熊谷高等学校(埼玉県出身)

今年度のカッター競技会において、私は選手として、クルー(漕手)のリーダーとして自分自身とても成長できたと感じた。カッター訓練期間中、私はクルーヘッドというクルーをまとめる役職に就き、どのようにすればクルーがより良い方向へ進めるか常に悩みながら取り組んだ。クルー全体の課題が改善されずタイムが縮まないなど、思うようにいかないことが多く、時には私の至らない行動により、クルーやカッター訓練を指導してくれる上級生からなるスタッフに迷惑をかけることもあった。そんな時でもクルーは励ましながら支えてくれた。スタッフは的確な助言とともに教え導いてくれた。私はその中でクルーとの信頼や団結の素晴らしさ、リーダーシップやフォロワーシップなど多くのものを得ることができた。また、スタッフは長期間、訓練時間外でも幅広くサポートしてくれた。競技会本番では私たちに関わってくれた多くの方々が応援する中、クルー一丸となり優勝を目指し競技に挑んだ。結果は、予選レース敗退という悔しいものであったが第二大隊としては優勝大隊に輝いた。予選レースではこれまでで最も早いタイムを記録し、クルー全員が持てる力を最大限発揮することができたと思う。結果は悔しいものであったが、約一ヵ月の訓練期間を通じて助け合い、団結し、優勝を目指し努力するという貴重な経験ができた。このカッター競技会は2000m(1000m折り返し)という長い距離を1秒でも早く漕ぐために、艇指揮、艇長、漕手、予備の全員の団結力が試される競技であり、そのことを身をもって体感することもできた。また、指導官、上級生の方々、最後まで支えてくれたクルーのおかげで素晴らしい競技会にすることができ、心から感謝している。

22クルー集合写真(最前列中央が本人)

競技会の様子(左から二番目が本人)

遠泳訓練参加者所感

1学年 長谷川 晟也 
 理工学専攻 宮城県立仙台第二高等学校(宮城県出身)

今、私は海にいる。この文章は、遠泳の最中に考えたものだ。この、うんざりするほど長く、過酷な遠泳を、ありのまま表現するには、海の中で考えるのが1番だと思った。
 泳ぎ始めて3時間が経過した。仲間と協力して乗り越えたから、この3時間はあっという間だった、なんてことは決してない。遠泳は孤独な戦いだ。前を泳ぐ同期についていこう、という必死の努力を、8km泳ぎきるまで繰り返す。その間、何かを考えながら泳ぐわけだが、海面では思考を邪魔するものが多すぎる。結局、曖昧な何かをぼんやりと思い浮かべながら、ただ泳ぐ。私は、これほど3時間の時の経過をはっきりと感じたことはない。何かを考えているとき、時の経過を感じないことはよくあるが、海はそれすら許さない。むしろ、遠泳をしている最中に、私たちが感じられるものは、時の長さくらいだ。私は、既にうんざりしているのだが、まだ折り返し地点に到着したに過ぎないことに気付き、さらにうんざりした。
 また、私たちが泳ぐ海水は生きている。つまり、汚い。そこに生き物が見えなくても、たくさんの生物がいることはわかる。何時間も泳げば環境に慣れるだろう、と思われがちだが、私は、海面訓練が始まってから今に至るまで、この生きた海水に一瞬でも心を許したことはない。十分過酷な環境である。
 もちろん体力的には、既に疲れている。
 遠泳訓練を経験し、感じることは、防大生の偉大さだ。防大生はみな、この訓練を乗り越えている。これほど過酷な経験を、全員がしている集団は滅多にない。改めて、私が防大生であることに、誇りを感じるきっかけになった。

遠泳訓練の様子

本 人

1学年 森川 禎史
 理工学専攻 愛知高等学校(愛知県出身)

8キロ遠泳とは、1学年の夏季定期訓練で行われる訓練の一つであり、東京湾を自分の力だけで泳ぎ切る大変厳しい訓練である。私は2大隊B区隊組長を務め、総員63名を率いて8キロ完泳を目指した。
 遠泳訓練は泳力測定から始まり、プールで45分泳、60分泳、120分泳と訓練を行い充分な泳力を身に着けたうえで、海面での慣熟訓練、1キロ、2キロ、3キロと海面訓練を行った。
 私は中学・高校ともに水泳部で、泳力にかなり自信があったので海面訓練が始まるまで8キロは余裕だと思っていた。しかし、所詮はプールの中の話で、海ではクラゲ、日焼け、潮の流れ、トイレ、食事など多くの点でプールとは全く違っていた。初めての海での訓練の後は「本当に8キロも泳げるのだろうか?」と不安を抱いていた。
 8キロ遠泳本番は、天候に恵まれたものの潮の流れが強すぎて進めない区隊が出たり、足をつってしまう学生が多発したりと練習では起きなかったトラブルに見舞われた。私達の区隊も予定より時間がかかっていた。そのため何度も陸が恋しくなってしまったが、組長として仲間を引っ張り、励ます立場にありながら弱音を吐くわけにはいかないと自分自身を鼓舞し、何より仲間が自分の後ろに続き頑張っている姿に励まされ、何とか8キロを泳ぎきることができた。
 この夏期定期訓練を通じて、仲間の大切さ、そして困難を克服し最後まで諦めない心を学ぶ事ができた。

最前列が本人

右下最前列が本人

1学年 服部 誠也
 理工学専攻 中部大学春日丘高等学校(愛知県出身)

今夏7月21日、東京湾の入り口である神奈川県三浦半島走水沖で実施された、伝統ある8kmの遠泳訓練に参加した。訓練では縦6列の隊列を組んで泳いでいくのだが、最も右側の列の学生は、横6名の学生のリーダーとなって、体調の確認、ペースの調整等を行う。私は隊列の後方で、そのリーダーを任されることとなった。
 本音をいうと、私は遠泳経験者であり、当初完泳について楽観視していた。しかし実際に海に出てみると、想像していた以上の困難に直面することとなった。私は短艇委員会という校友会に所属しており、毎日短艇で海に出ているが、オールと艇の揺れで体感してきた潮の流れは、体で受けてみると大変強いものだった。私よりも泳力の低い隣の学生のサポート、リーダーとしての6名の学生の体調把握等、自分のこと以外にも気を配らなければならないことが多く、精神的にも体力的にも余裕が少なくなっていった。当日の潮の流れは練習時よりもさらに強く、泳力の低い学生には厳しい状況であった。私がリーダーを務めるグループ全体が遅れてしまう場面もあったが、「遅れている者を絶対においていかない」という短艇委員会の精神を思い出しながら、周囲の学生と連携して遅れている学生をサポートし、なんとかグループ全員が完泳することができた。
 自分が苦しい状況の中でも、周囲のことを気にかけたり、サポートする力をつけることができ、厳しくも充実した訓練であった。

プールでの訓練の様子(中央が本人)

本 人

1学年 八尋 結愛
 理工学専攻 宮城県仙台第三高等学校(宮城県出身)

7月21日、約一か月に渡る夏季定期訓練の目玉となる遠泳訓練が行われた。東京湾内で8kmを5時間ほどかけて泳ぐ訓練である。当初、私たちの中隊内には5mほどしか泳げない学生や平泳ぎができない学生等、完泳が危ぶまれる学生もいた。しかし遠泳本番では潮の流れに憚られながらも、一人も脱落することなく完泳することができた。
 このような結果が得られた背景には一つの大きな要因がある。それは同期との団結力である。プールでの訓練時には泳ぎの得意な学生が積極的に泳ぎ方を教え、同期間で一生懸命声がけをしながら士気を高める姿は妙妙たるものだった。
 私たちの同期を支える気持ちは海面においても変わらなかった。おおよそ8kmの距離を協力しながら同期を押し続けた学生たち、赤クラゲに刺された痛みに耐えながらも泳ぎが不得手なバディを励ましながら泳いだ学生。そして全体を俯瞰し適切な指示を出し続けた指導教官、そのような互いを支えあう気持ちが強い学生が多くいることを実感し、全員で乗り越えた遠泳訓練は素晴らしい経験となった。
 クラゲや水温、そして強い潮の流れなど、海面における障害は多くあった。パニックを起こし、完泳を諦めそうになった学生もいた。しかし、それらを乗り越えて完泳した私たちは一回り大きく成長できた。今後さらなる困難に向き合ったとしても、この遠泳訓練で得た経験を糧に団結力を発揮し乗り越えていくことができるだろう。

遠泳中、写真中央が本人

完泳後、写真中央が本人

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