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 米海大ナウ!

 ポートランド州立大学で安全保障講義

(065 2016/06/29)

米海軍大学   客員教授
1等海佐    下平   拓哉


   2016年5月24日、オレゴン州のポートランド州立大学において、「日本の安全保障と防衛」と題する講義を実施してきました。同大学政策科学学部「東アジアにおける国際政治」コースの大学生や大学院生らが集い、その後、学部長を含む教授陣を加えてのラウンドテーブルにて議論を深めました。オレゴン州には軍の基地がないためか、非常に様々な質問を投げかけられました。また、西海岸に面しているだけあってアジア太平洋地域に対する関心は高く、質疑応答を通じて日本に対する期待の大きさを感じました。
   ポートランド州立大学は、1946年に創設されたオレゴン州最大の学生数を誇る州立大学です。同大学は太平洋戦争後、帰還兵に対する高等教育の必要性から、政府からGIビルという資金援助を受けたことから始まっているため、社会人を対象とした教育に非常に重きをおいています。それを象徴しているのがUniversity Studiesと言われる新たな学際的なアプローチです。「生涯にわたる知的発展(Lifelong Intellectual Development)」の基礎を身につけることを目的に、批判的思考と効果的コミュニケーションを重視した様々なプログラムが用意され、学生が大きな自由度をもって選択できるようになっており、米国内でも注目を浴びています。最近、より専門的な生涯教育のために博士課程を増設し、120を越える学位プログラムがあります。また、校訓の「Doctrina urbi serviat (知識を都市に給仕せよ)」が示すように、都市開発や経済、芸術が特に有名で、毎年100か国以上、2000名を超える学生を迎え入れており、国際色も豊かです。
   このような生涯にわたっての教育研究環境が整備されているのは、やはりポートランドの気候が影響しているのかも知れません。ポートランドは、人と環境に優しい街づくりを進め、公共交通機関が充実し、自転車道もよく整備され、消費税もないため、全米住みたい街ランキングNo.1です。山岳、渓谷、砂漠、太平洋と四方を自然に囲まれており、Columbia スポーツの本社もあります。しかし自然は楽しいことばかりではなく、常に危険を伴い、過去の教訓を踏まえた自然への備えが必要であり、また自然を守るルール作りも重要です。自然に囲まれたポートランドにおいて、安全保障についても自然と同様なところがあるものと感じ、素朴な学生らとの議論を通じて、アジア太平洋の安全保障とは何かを見つめ直すよい機会となりました。

(2016年5月29日記)