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 米海大ナウ!

 戦争に関するあらゆる問題を研究する:海戦研究センター

(040 2016/01/25)

米海軍大学   客員教授
本校戦略研究会(SSG)
1等海佐    下平   拓哉



   米海大には、海戦研究センター(Center for Naval Warfare Studies: CNWS)があります。1981年、戦争と戦争に係る政策、及び戦争予防に関するあらゆる問題を研究するために設置されました。戦略研究部(Strategic Research Department: SRD)、図上演習部、歴史学部、ストックトンセンター(国際法学部)、戦争分析研究部(War Analysis and Research Department: WARD)等からなります。SRDの隷下には、中国海事研究所(China Maritime Studies Institute: CMSI)があります。
   WARDには、グレブリー・グループ(Gravely Naval Warfare Research Group)、ハルゼー・グループ(Halsey Groups)、マハン・スカラー(Mahan Scholars)といった研究グループがあります。これらは、最新研究プロジェクト(Advanced Research Projects: ARP)と呼ばれ、大半が秘密事項に係る研究ですが、一部はオープンになっており、米海大が現在関心をおいている安全保障問題を把握する上で、貴重な情報を入手することができます。
   グレブリー・グループでは、水中領域作戦構想(Undersea Domain Operating Concept: UDOC)という水面下における作戦レベルの協同プロジェクト、鏡プロジェクト(Project Looking Glass)という情報・監視・偵察( ISR-T)と精密攻撃能力の研究、そして統合防空・ミサイル防衛指揮統制(Integrated Air and Missile Defense C2)という弾道ミサイル防衛と統合防空・ミサイル防衛(BMD-IAMD)の研究を実施しています。グレブリー・グループは、もともとハルゼーCと呼ばれていましたが、より革新的に研究を進めるために名称を変えています。その由来は、アフリカ系アメリカ人で、1961年に初めて艦長を務め、艦隊司令官にもなったサミュエル・グレブリー(Samuel L. Gravely, Jr.)中将にあり、彼は後に米海軍通信部長と言われるほど革新的な人であったようです。
   次にハルゼー・グループにはAとBがあり、ともに米海大教授陣と選抜された学生によって構成され、図上演習におけるフリー・プレイを通じてそれぞれのテーマを検証し、海軍作戦部長に報告しています。大半の内容は秘密事項であるため詳細は不明ですが、ハルゼーAは、近年度を視野とした高度なテクノロジーによる接近阻止環境における高烈度の通常戦に関する検証を、ハルゼーBは、中烈度の通常戦で、特に制海を獲得、維持するために相手が講じる非対称戦を検証しています。また、ハルゼーXと言うグループもあるようですが、全く明らかにはなっていません。
   最後に、マハン・スカラーは、核抑止・通常抑止及び核不拡散についての研究を主とし、海軍のみならず、国防総省、CIA等の他省庁のメンバーを加えて構成され、現在は「第2の核時代(Second Nuclear Age)」に係る新たな挑戦についての研究を深めています。
   米海大には、国防総省や海軍省の命令を受けて、多くの秘密に関わる検証及び研究をしていますが、オープンになっていることも多く、透明性と抑止効果の重要性を感じています。

【米海大海戦研究センターHP】
https://www.usnwc.edu/Departments---Colleges/Center-for-Naval-Warfare-Studies.aspx