019 「シーパワーの提唱者」A.T.マハン
(019 2015/10/07)
米海軍大学 客員教授
本校戦略研究会(SSG)
1等海佐 下平 拓哉
1840年9月27日は、シーパワーの権威であるA.T.マハン(Alfred Thayer Mahan)の誕生日です。マハンは、数多くの名言を残しています。
「過去の戦史から実例を引き出し、徹底的に調べること。」
「戦いの原理に今も昔もない。」
「得た知識を分解し、自分で編成し、自分なりの原理原則を打ち立てること。」
【マハン・ホールに掲げられている肖像画】 |
マハンは、ニューヨーク州ウェスト・ポイントにおいて、米陸軍士官学校デニス・マハン教授の子として生を受けました。1867年に「イロコイ」副長として日本に滞在していたこともあります。1884年、米海大設立時の初代学校長ルース提督により、45歳のマハンは戦術の教官として抜擢されています。米海大における講義録をまとめ、1890年に『海上権力史論(The Influence of Sea Power upon History, 1660–1783)』を刊行し、世界的に有名となります。そしてその後、第2代と第4代の米海大校長を務め、1911年には、『海軍戦略(Naval Strategy)』を書きあげて
います。
【米海大アーカイブ所蔵のマハンの研究ノート】 戦争術(Art of War)の分類を整理したもの。 |
マハンは、海洋活動を行う商船隊、 それを守る海軍、 それらの活動を支える拠点として必要な海外基地や植民地を「シーパワー(海上権力)」と規定しました。そして、シーパワーを構成する3つの連鎖の環として、「生産、海運、植民地」を挙げ、生産によって生産物の交易が必要となり、海運によって交易品が運搬され、植民地は海運の活動を拡大し、安全な拠点を増やすことにより海運の保護に役立つと説明しています。
また、シーパワーに影響を及ぼす一般条件として、次の6点を挙げています。
1) 地理的位置
2) 地勢的形態
3) 領土の規模
4) 人口
5) 国民性
6) 政府の性格
生産量の増大が海外市場(植民地)を必要とし、 製品と市場を結ぶために商船隊が育ち、この海外市場と商船隊を守るために海軍が必要であると説きました。そして、制海権の確保が、国家に冨と繁栄をもたらし、世界をコントロールできると主張しました。
米海大で学ぶ学生は、シーパワーを考える上で、今もマハンの著書を「クリティカル(批判的)」に読む努力が欠かせません