海上自衛隊幹部学校

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 米海大ナウ!

 フリートを支援する:戦略作戦統率部(COSL)

(015 2015/08/26)

米海軍大学   客員教授
本校戦略研究会(SSG)
1等海佐    下平   拓哉


   ミッドウェー海戦で敗北を喫した日本海軍や、ベトナム戦争で苦しんだ米軍に共通していたのが、作戦思考の欠如と言われています。2007年、戦略レベル及び作戦レベルにおけるリーダーシップ、意志決定、計画作成の重要性が認識されて、米海大に戦略作戦統率部(College of Operational and Strategic Leadership: COSL)が設置されました。
   COSLでは、海上指揮官がスタッフとともに、統合部隊、海上部隊、そして多国間部隊を率いるための作戦計画の作成、実施、評価が適切にできることを目的に、過去の教訓を踏まえ、特に作戦レベルの能力向上に主眼をおいています。
   このCOSLが担当している作戦レベルの課程は実に多岐に亘っており、その課程は常に試行錯誤を繰り返してアップデートされているのが最大の特徴です。ジエフミック、シフミックと呼ばれている指揮官である将官級を主対象とした「統合/連合海上構成部隊指揮官課程(Joint/Combined Force Maritime Component Commander: J/CFMCC)」、イーロックと呼ばれているスタッフの取りまとめ役である大佐級を主対象とした「高級オペレーター課程(Executive Level OLW Course: ELOC) 」、モップシーと呼ばれる大尉から中佐級を主対象とした中級レベルの「海上作戦計画課程(Maritime Operational Planners Course: MOPC) 」、そして、エムソックと呼ばれている海上作戦センター等において実務を握る大尉・少佐級を主対象とした「海上オペレーター課程(Maritime Staff Operators Course: MSOC) 」等があります。その他、JMO(統合軍事作戦)部が担当しているマウズと呼ばれる作戦計画者のための最高レベルの課程として「海上高級作戦課程(Maritime Advanced Warfighting School: MAWS)」があります。
   COSLでは、これらの課程を行いながら、「評価支援チーム(Assist and Assess Team: ATT)」を編成し、艦隊司令部等に少人数のスタッフを直接派遣し、艦隊司令部等のリクエストに基づく実際的な教育と訓練にも携わっています。
   国家の安全保障を考える上で、戦略、作戦、戦術、後方の視点は欠かせません。その上で、過去の教訓を踏まえて、米海軍が作戦レベルの教育訓練に力を入れているのは間違ありません。日米ともに経験した作戦レベルにおける失敗の教訓を、今後いかに活かしてゆけるかが将来の安全保障を左右するのではないでしょうか。海上自衛隊と米海軍の現場及び教育研究の最先端に接している小生が杞憂しているのは、教育研究に対する日本の姿勢の甘さです。将来を考える唯一の手掛かりとも言える過去を学ぶことを軽視する者が、現在や将来を語ることがいかに危険であり、無責任であるかということです。過去の事例を繰り返し学び直し、現在にしっかりと対応し、未来に備えて考え続ける姿勢こそが安全保障の基本と考えます。


【戦略作戦統率部 HP】
   https://www.usnwc.edu/Departments---Colleges/College-of-Operational-and-Strategic-Leadership.aspx