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 米海大ナウ!

 2つのA:アンドリュー・エリクソン & アダム・リッフ

(013 2015/07/23)

米海軍大学   客員教授
本校戦略研究会(SSG)
1等海佐    下平   拓哉

 


   現代中国の安全保障研究について、米国における新進気鋭の若手研究者と言えば、The National InterestやThe Diplomat, Foreign Policy等において持論を活発に展開している米海大戦略研究部・中国海事研究所コア・メンバーのアンドリュー・エリクソン(Andrew S. Erickson)准教授でしょう。そのエリクソン教授と彼の親友であるインディアナ大学国際関係学院のアダム・リッフ(Adam P. Liff)博士との関係には興味深いものがあります。
   アンドリューとアダム、「2つのA」にはかつてプリンストン大学博士課程を共にした強い絆があります。そして、彼らは米国のアイビーリーグで有名な2校による共同研究、すなわちプリンストン・ハーバード中国・国際関係研究プログラムに所属していました。同プログラムは、中国の政治的、経済的発展がどのような方向へ向かうのかを判断する上で、大学と政府、そしてビジネスセクターが協力した信頼ある分析が必要であるとの認識の下に立ち上がったものです。プリンストン大学のクリステンセン(Thomas J. Christensen) 教授とハーバード大学のイアン・ジョンストン (Alastair Iain Johnston) 教授といった中国研究の双璧が同プログラムの部長に就いて、国際関係論の知識と中国研究の知識の融合を図っているのが特徴です。
   現在の米国においては、学問領域における新たなアプローチが活発です。大学・政府・ビジネスセクターの協力、国際関係論と中国研究の融合、いずれも新たな知的関心を引き起こすユニークなアプローチとして、ここ米海大でも認識されています。「2つのA」が自らのHPにおいて主張する意見は、現代中国の安全保障研究に係る最新のトピックを把握する上で、好材料を提供してくれます。

   【アンドリュー・エリクソンのHP】
   エリクソン准教授の発表論文が掲載され、中国に係る最新の安全保障トピックを把握できます。
   http://www.andrewerickson.com/

   【アダム・リッフHP】
   http://scholar.princeton.edu/apl/home

   【両名が関係する最近の注目すべき論文】
   1) Ely Ratner, Elbridge Colby, Andrew Erickson, Zachary Hosford, and Alexander Sullivan,
   More Willing and Able: Charting China’s International Security Activism , Center for a New American
   Security, May 2015.

   中国は新たな時代に入った。中国は、政治的、経済的、安全保障上の利益を急速に高めようとしており、国際社会における活発な活動が顕著になってきている。中国の最近の活動の特徴としては、次の3つがある。第1に、内政不干渉についてルーズになっている。第2に、世界中の国々と安全保障パートナーシップを深化させようとしている。第3に、戦力投射能力を高めようとしている。

   2) Liff, Adam P, "The 2015 US-Japan Guidelines for Defense Cooperation: Toward 'A More Balanced and Effective Alliance" PacNet, # 27, Pacific Forum CSIS, April 23, 2015.

   2015年5月、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が改定された。1997年以来18年振り3回目の改定であり、地域及び世界における安全保障についての一層の協力を確認した。前回のガイドラインにおける多くの欠点を克服したが、日米にとっての今後の挑戦は、地域の緊張を高めず、そして国民の理解を得ながら、日米の防衛協力関係を強め、抑止力を高めることである。そして透明性の向上と外交的関与が不可欠である。

   3) Adam P. Liff and Andrew S. Erickson, “Crowding the Waters: The Need for Crisis Management in the East China Sea,” Foreign Affairs, March 23, 2015.

   東シナ海をめぐる日中関係は、緊張している。誤算や偶発事件が大規模な危機へとエスカレートしてゆく危険性は十分にある。また、日中間の敵意はこれまでになく高まっている。偶発的衝突を制御してゆく力強い危機管理メカニズムが必要である。問題は、日中がそれを導入する政治的意思があるかどうかである。