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 米海大ナウ!

 新たな戦い方を考える:非正規戦・非国家主体センター(CIWAG)シンポジウム

(011 2015/07/16)

米海軍大学   客員教授
本校戦略研究会(SSG)
1等海佐    下平   拓哉


   2015年6月23、24日、米海大の非正規戦・非国家主体センター(The Center for Irregular Warfare and Armed Groups : CIWAG)主催の第7回CIWAGシンポジウムが実施され、参加してきました。CIWAGは、21世紀における非正規戦や非国家主体による様々な挑戦に対して学際的な研究を促進させるため、2008年、米海大に設置されました。テロ、ゲリラ、反乱勢力等に代表される非正規戦については、多国間協力、省庁間協力、軍民協力を通じた新たな「知識」が必要との観点から、毎年、国内外の様々な専門家を招いて議論を深めています。今回のテーマは、「回顧と展望」であり、イスラム国の台頭、サイバー戦争、海上における国土防衛、生物・化学兵器の脅威、人道支援作戦等を扱いました。
   CIWAGの任務は、第1に非正規戦に関する最先端の研究をすること、第2に実務者と学者がともに知識と経験を共有することにあります。そして、CIWAGの大きな特徴の1つが、今回のようなシンポジウム等を含めた研究成果をケース・スタディ集にまとめて広く発信していることにあります。これまでのケース・スタディとしては、1980年代のエルサルバドル内戦、ブラマプトラ川における中印水戦争、シンガポールにおける政府系ファンド(SWF)、タリバンネットワーク、イラクにおける反乱戦・対反乱戦、海賊、アフガニスタンにおける人的地勢チーム(HTT)、2011年リビア革命におけるサイバー戦等があり、どれもが解決の難しい新たな安全保障上の問題です。
   また、最近の非正規戦の特徴として、ソーシャル・メディアの活用が顕著であることから、CIWAGの2つ目の特徴として、ネットワークの最大活用が挙げられます。「軍民教育パートナーシップ計画(Civil- Military Educational Partnership Program: CMEPP)」という民間と軍の教育を融合するオンラインネットワークの構築を進めており、①各種フォーラムの開催、②リアルタイムでの教育と助言、③非正規戦に関する理解を深めること等を通じて、安全保障における新たな視点を得ることを目指しています。
   さらに、今回のシンポジウムにおいては軍との協力に重点をおくユニークなNGO「スピリット・オブ・アメリカ(Spirit of America)」の紹介もありました。NGOの一般的な特徴である中立性を敢えて乗り越え、より人道性を求めていることが特徴です。今回議論されたNGOの特徴とは、迅速、柔軟、リスク許容、付加価値、ニーズへの近さにあります。より厳しさが増している現今の安全保障環境下、NGOの特徴を最大限に活かした軍とNGOの協力のあり方についても、新たな「知恵」を絞り出してゆく努力がますます必要となってきているのです。

   【CIWAGシンポジウム】
   https://www.usnwc.edu/About/News/June-2015/Naval-War-College-hosts-irregular-warfare-symposiu.aspx

   【CIWAG HP】
   https://www.usnwc.edu/Departments---Colleges/Center-on-Irregular-Warfare---Armed-Groups.aspx

   【NGOスピリッツ・オブ・アメリカのHP】
   https://spiritofamerica.net/index.php