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 米海大ナウ!

 海上自衛隊のレジリエント・パワー 下平1佐の執筆論文が米海軍大学「Naval War College Review」に掲載

(007 2015/06/10)

米海軍大学連絡官/インターナショナル・フェロー
本校戦略研究会(SSG)   1等海佐    下平  拓哉


   米海大が編集している『Naval War College Review (NWCR)』Vol. 68, No. 3, Summer 2015に、私の論文が掲載されました。私の論文が、NWCRに掲載されるのは今回が2回目です。前回(2014年春号)は、一層厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障について、多国間協力と非伝統的安全保障をキーワードに分析を加えました。そして、私の論文『多国間協力時代の海上自衛隊-非伝統的安全保障-』では、海上自衛隊が人道支援/災害救援活動や海賊対処活動等の非戦闘分野における活動「ノコモ(Non Combat Military Operation: NCMO)」を主導することを提言しました。
   今回は、その第2弾として、市民社会をキーワードとし、海上自衛隊と市民社会との協力について分析しました。本年4月25日の日米共同声明において、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域の未来を形作るために、日米が主導的役割を果たしてゆくことが確認されましたが、様々なアクターとのパートナーシップ関係を構築してゆくことが、ますます重要となってきています。

要 旨

「市民社会に対する海上自衛隊のレジリエント・パワー ―東日本大震災の教訓から―
   (The JMSDF’s Resilient Power for Civil Society
    -Lessons from the Great East Japan Earthquake-)」

   市民社会の潜在的パワーは無限である。特に、多彩な経験とノウハウを有しているNGOやNPO、そして、活動的なボランティアは、これまで世界の至るところにおいて、多くの実績を挙げている。
   2011年3月11日の東日本大震災においても、物資支援やボランティア派遣、保健・医療活動等、広範な分野において、NGOをはじめとした多くのボランティア団体が、市民社会としてパワーを発揮した。
   東日本大震災のような未曽有な災害においては、時間の経過とともに、捜索救助、物資支援、復興支援といった活動が必要とされるが、まずもって備えなければならないのは、人命を救える可能性が高い発災後72時間への対応である。多くの島々や半島からなる日本の地理的特徴を踏まえれば、海上自衛隊が、様々なアクターと協働しつつ迅速に捜索救助し、かつ円滑に次の活動へと移行することが被害局限の鉄則である。
   伝統的に、人道支援活動とは、文民組織の仕事であったが、近年、軍事組織が人道支援/災害救援活動に重点をおくようになってきており、現場では、軍事組織と文民組織の協働が求められている。民軍関係においては、潜在的にギャップがあり、いかに民軍関係を構築しても、そのギャップは埋めることは難しいと言われている。しかしながら、未曽有な大規模災害においては、国家の総力を挙げて対応することが必要であり、このギャップは克服しなければならないギャップなのである。東日本大震災の例を挙げるまでもなく、現場では想像を絶する混乱状態に陥り、そこでは各組織の強点を活かし合うことが必要である。
   本稿では東日本大震災における教訓に基づき、市民社会との協働を探るべく、海上自衛隊のレジリエント・パワーについて分析した。ここでは、海上自衛隊が市民社会とともに協働できる能力として、第1に海上基地(Sea Base)、第2に、指揮統制能力、第3に現場中心と情報優位を掲げた。  いついかなるときも、市民社会と協働できることが、日本の海上自衛隊のこれからの真の姿なのである。

   【米海大 NWCR HP】
   https://www.usnwc.edu/Publications/Naval-War-College-Review/2015---Summer.aspx