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 米海大ナウ!

 中国海事研究所(CMSI)年次会議

(006 2015/06/10)

米海軍大学連絡官/インターナショナル・フェロー
本校戦略研究会(SSG)   1等海佐    下平  拓哉


   2015年5月19、20日、米海大において第10回 中国海事研究所(CMSI)年次会議が実施されました。この会議は、CMSIが中国の安全保障に係る最新のトピックについて、毎年、国内外の様々な専門家を招いて議論を深めるものです。今回のテーマは、「中国の現代造船:進展と挑戦」であり、CNAS(新アメリカ安全保障センター)やRAND、 CSBA(戦略・予算評価センター)、IHS Jane’s等から錚々たるメンバーが参加しました。今回の問題意識は、近年急速に海軍力を高めている中国において、その造船能力は確実なものであろうか。また、中国の造船能力は、中国海軍に対してどのような影響があり、かつ米海軍にどのような影響を及ぼすであろうかと言うものです。
   この会議を通じて主に判ったことは、次のとおりです。

  1)  中国の造船能力は、中国史上最大の進展を遂げている。特に、商船の造船能力は、2002年と
     2012年を比較すると13倍にもなっている。総量としては膨大であるが、分野ごとにかなり差があ
     るのが特徴である。そして、近い将来一層の進展が予想されるのは、艦隊の整備や艦隊を支援
     するためのインフラ整備の分野である。
  2)  中国は、米国や他国の技術革新を模倣することによってコストと時間を節約し、海軍力、エンジ
     ニアリング、生産等において大躍進を遂げた。特に、モジュール化が進んでいるのが特徴であ
     る。
  3)  中国海軍における造船、とりわけ、艦隊の設計や質の向上は、技術研究と戦略研究を踏まえ
     て決定されている。また、造船は、詳細な国家基準と海軍基準によって規定されている。しかし
     ながら、大型で複雑な艦船を造船する能力は依然乏しい。
  4)  もし現在の傾向が継続されれば、中国の造船産業は、中国海軍を2020年までに世界第2位の
     水準に上げられる態勢にある。しかしながら、民間の造船所は未だ不十分な能力のままであ
     る。そして、推進器能力が最大かつ唯一の問題点である。
  5)  2020年までに、中国海軍は、米軍以上の射程を有した膨大な量のミサイルを装備した艦船を
     順調に建造しそうである。

   年次会議終了後、CMSIがまとめたクイック・レポートの主な評価は上記のとおりです。また、本会議において、今後の中国海軍の注目すべき特徴として、第1に、コルベットやフリゲート等からなる大規模な小型艦隊、第2に、プレゼンスを高める潜水艦隊、そして第3に、新旧ミックスされた水陸両用戦部隊が上げられていました。

   【中国海事研究所(CMSI)年次会議プログラム】
   https://www.usnwc.edu/getattachment/626a1f52-4038-4fc5-805e-e08076351e71/Shipbuilding_China_CMSI-Conference-Agenda_Comprehe.aspx

   【中国海事研究所(CMSI)年次会議クイック・レポート】
   http://www.andrewerickson.com/wp-content/uploads/2015/05/Quick-Look_CMSI-Conference-on-Chinese-Naval-Shipbuilding_Final.pdf