海上自衛隊幹部学校

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 米海大ナウ!

 米海軍大学から見たアジア太平洋地域の危機
下平1佐の執筆論文が日本危機管理学会編『危機管理研究』に掲載

(004 2015/05/22)

米海軍大学連絡官/インターナショナル・フェロー
本校戦略研究会(SSG)   1等海佐    下平  拓哉


   日本危機管理学会が編集している『危機管理研究』第23号(2015年3月)に、下平1佐の執筆論文が掲載されました。米海大には、研究教育機関として、4つの学部があります。それぞれは、米国と様々な国々から集った学生たちへの教育、実際に世界中に展開している地域軍や艦隊への支援、米国政府や米海軍省等への政策提言をするための研究、さらに世界の国々とのパートナーシップを強化するための会議の主催等を担っています。
   一方で、昨今の複雑多岐化する安全保障環境を踏まえ、より地域の専門性が必要との認識の下、地域研究的なアプローチが重視されています。学部の壁を超えた地域研究が活発で、昼食時間や授業終了後の夕刻等の隙間時間を使って、4つの学部では扱われないような視座で、大いに議論する場が設定されています。
   第二次世界大戦中の米国で敵国研究として発展した地域研究は、グローバル化した現代においてこそ、異質な文化を理解するための重要な視座を与えてくれるのです。

要 旨

   「米海軍大学から見たアジア太平洋地域の危機-日米同盟の意義と日本の新たな役割-」
   世界の海から世界の平和と安全を守る世界最強の米海軍の司令官達は、例外なく米海大で学んでいる。その米海大は、ロードアイランド州ニューポートに、1884年10月6日に設置された。「スチール海軍(New Steel Navy)」の「知的指導者(Intellectual leader)」と呼ばれた初代校長のルース(Stephen B. Luce)提督は、
   「海軍大学は、戦争、戦争に係る政治的手腕、もしくは戦争予防に係るすべての問題に係る独自の研究をする場所である(“The War College is a place of original research on all questions relating to war and to statesmanship connected with war, or the prevention of war.”)」
   と、米海大を定義づけしている。
   本稿では、日本が位置するアジア太平洋地域の安全保障に精通し、現在の米政権にも多大な影響を与えている7つの地域安全保障研究グループのうち、アジア太平洋研究グループ(Asia-Pacific Studies Group: APSG)部長のローリグ(Terence Roehrig)教授、インド洋研究グループ(Indian Ocean Studies Group)部長のウィナー(Andrew C. Winner) 教授、ヨーロッパ/ロシア研究グループ (Europe/Russia) 部長のフェジズン (Thomas Fedyszn) 教授、また、地域安全保障グループとは別に設置された中国海事研究所 (China Maritime Studies Institute: CMSI) 所長のダットン (Peter Dutton) 教授、そして図上演習部長のデラボルペ (David DellaVolpe) 教授にインタビューを試み、米海大から見たアジア太平洋地域の最新の危機を明らかにした。
   インタビューを通じて感じたことは、台頭著しい中国への冷静かつ実践的な分析眼と、その上での日米同盟の強い「絆」の存在と日本への期待の大きさである。アジア太平洋地域の安全保障を担う日米、なかんずく海上自衛隊と米海軍の関係を深化させていく上で、海上自衛隊幹部学校と米海大間のあらゆるレベルにおける戦略的で知的な人間関係の深化が喫緊の課題である。

   【日本危機管理学会 HP】
   http://crmsj.org/gakkaishi.html