海上自衛隊幹部学校

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 留学制度

韓国合同軍事大学校

3等海佐 鳥居 悠希

 

はじめに
   私は現在、大韓民国のほぼ中央である大田広域市に所在する合同軍事大学校の合同基本正規課程に留学しています。課程期間は、2019年1月から12月までの約1年です。海上自衛隊としては、合同軍事大学校の前身である海軍大学の時代から毎年留学生を派遣しており、私で23代目になります。

1 学校概要
   合同軍事大学校は、わが国における各自衛隊幹部学校に相当し、合同基本正規課程が指揮幕僚課程に当たり、韓国の陸海空軍士官及び各国陸海空軍の留学生に対する統合教育を行っています。2011年12月にそれまで各軍所属であった陸海空軍大学を統合し、国防部直轄機関として創設されました。現在は合同軍事大学校の中に陸海空それぞれの大学があります。校名にある「合同」とは日本における「統合」であり、統合教育に重点を置いているのが特徴です。合同軍事大学校には、年間を通じていくつもの課程が存在しますが、私を含めた外国人将校は合同基本正規課程を履修しており、この課程が合同軍事大学校の主たる課程と言えます。
   合同基本正規課程の主たる目的は、戦術部隊の指揮官/参謀の育成、自軍(海軍)作戦計画作成/遂行の専門家の育成、他軍(陸空軍)作戦計画/教理/武器体系の熟知、統合/連合作戦遂行能力の体得、統合性と連携した国防政策及び国防企画体系への理解です。現在の合同基本正規課程は第8期目であり、従来の海軍に対する勉強を基本として、「合同(統合)」という要素を非常に重要視して教育が行われています。


【留学生(海軍及び海兵隊)集合写真:3段目最右翼が筆者】

2 教育内容等
   本課程は48週のカリキュラムで構成されており、大きく共通合同、自軍教育、合同教育の3つのセクションに分けることができます。共通合同は戦時における合同の基本概念の理解と研修による他軍の現状の体験を、自軍教育は自軍についての作戦及び戦術の専門家の育成を、合同教育は情勢に応じた合同及び連合作戦遂行能力の育成をそれぞれ目的としています。共通合同及び合同教育は陸海空軍将校混成のグループで行われ、自軍教育は海軍及び海兵隊に分かれて行われます。
   教育方法は、40名程度のグループで講義を受け、個人またはグループでの課題作成、10名程度のグループでのセミナー形式の発表及び討議という構成を基本として実施されます。外国人将校も韓国人将校とともに同じ教育を受けますが、課目及び教育内容によっては、外国人将校のみで班を編成する場合もあります。
   教官は大佐、中佐クラスの現役武官、退役後軍属として勤務している教授、さらに国家安全保障機関等の専門家等であり、それらの教官がまず、それぞれの項目に対して講義を行います。その後、個人研究又は討議を中心としたグループ研究を行い、研究成果を発表し、その成果について全体で討議が行われます。講義に関しての特徴は、やはり北朝鮮に関連する内容が多い点です。北朝鮮と国境を交える韓国は、北朝鮮に関する様々な研究を行っており、大変興味深く講義を受講しています。
   また、全ての学生に対し、卒業論文が課されており、担当教官の指導を受けつつ、10月の最終提出に向け、作成を進めています。
   これらの教育は当然、全て韓国語で行われています。私は、昨年4月から約8か月の間、陸上自衛隊情報学校(小平駐屯地)にて韓国語課程を履修しました。その成果もあり、問題なく各種教育を受けることができています。


【海軍大学中央ロビーの様子】

3 各種行事等
   外国人将校に対しては、年間を通じて、各種の行事や家族帯同の研修等が計画されており、外国人将校とその家族に、韓国という国の文化や歴史に対する理解を深めてもらいたいという学校側の強い意気込みを感じます。 これまでの間、済州島研修から地元の野球観戦まで、様々な行事が実施されました。私は家族帯同で留学しており、全ての行事に家族とともに参加することができました。
   また、外国人将校夫人に対しては、週に3回を基準として韓国語教育が実施され、現地の韓国人講師から直接講義を受講することができます。私の妻も、渡韓当初は韓国語初心者でしたが、今では簡単な会話ができる程度にまで能力が向上しました。これらは、他国では見られない充実した支援態勢であると感じています。
   外国人将校は年々増加傾向にあり、今年度は過去最多(海軍及び海兵隊:17カ国20名)となっています。これほどの多国籍集団の中で、勉学をともに行うのは初めての経験であり、当初は戸惑うこともありましたが、上記の行事等を通じて交友を深めることができました。外国人将校は、ともに自国を出て韓国で母国語以外の言語を用いながら共に学ぶ同志として、公私ともに深い付き合いをしています。世界各国から集まった彼らと話をしながら、文化や宗教、歴史観、国際情勢に対する認識、日本への関心の違い等、毎日大きな刺激を受けています。どの国も日本への関心は高く、軍事的な側面だけでなく、文化、歴史、宗教に関する質問も多く受けています。特に、今年は5月1日に新天皇が即位されましたが、この件に関しての関心も高く、日本への注目度を窺い知ることができました。


【外国人将校に対する済州島研修の様子】

4 生活全般
   外国人将校には、韓国人将校と同様に、学校が管理する官舎が提供されています。官舎から学校までは車で約5分の距離にあり、また、官舎地区にはショッピングセンター、体育館、室内プール、保育園、幼稚園、小学校、中学校といった施設が隣接されています。当該地域には、合同軍事大学校のみならず、陸軍の教育機関や軍病院等も所在しており、軍の関係者で一つのコミュニティーを形成しています。従って、生活環境は非常に整備されており、治安も当然良好で、安心して生活を送ることができます。
   私が渡韓した当時は、徴用工問題等が盛んに取り上げられている時期であり、日韓関係の悪化が懸念されていました。私自身も一抹の不安を抱えながら渡韓しましたが、現地では日本人だからといって偏見を持たれることは全くなく、むしろ同じ東アジアの一員として日本に対する興味を持って接してくれています。
   また、学生将校夫人に対しては前述した韓国語教育のみならず、各種体験教室(ヨガ、料理、製菓から選択)も開催され、妻は料理教室に参加しています。これらの活動を通じて妻自身も友人の輪を広げており、家族にとっても有意義な時間を過ごしています。

おわりに
   韓国と聞いて、日本の皆さんはどのような印象を持つでしょうか。昨今の情勢を鑑みると、肯定的ではない意見を持つ方もいるかもしれません。しかし、実際に韓国で生活し、現地の韓国人との交流を通じて感じたことは、彼らは非常に情に厚く、我々日本人と類似した点が多いということであり、これまで抱いていた印象と大きく異なりました。親を敬い、家族や友人を愛する情緒は、我々も見習うべき点の一つであると感じました。
   一方で、日本と韓国の間には、国家レベルでの困難な問題が累積しています。ソウルの地下鉄内では、竹島の領有権に関する映像が流れ、韓国独立に関連する記念日等では、日本大使館前で大規模なデモが行われます。問題の解決には今後も長い年月が必要かもしれません。しかし、両国は様々な分野で協力を進め、日韓関係を未来志向で前に進めていくことが求められています。韓国人将校とも相互の関係について話をしますが、彼らは皆、「過去は過去であり、韓国は日本と手を取り合って協力しなければならない。」と言います。このような意見を実際に聞くことができ、現場レベルではありますが、今後の日韓関係の明るい未来を展望することができました。
   これまでの間、一連の交流をとおして、様々な国の学生と幅広い友好関係を築くことができました。それぞれが持つ価値観、文化、習慣等を相互に再認識することで、我々日本人の勤勉さや信頼等を印象付けることができたものと考えます。今後も防衛交流の一環として、僅かでも一翼を担えるよう努力していく所存です。
   最後に、本留学に際し様々なご支援を頂いた関係各位に改めて感謝を申し上げます。