海上自衛隊幹部学校

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 戦略研究会

 海上自衛隊の人的基盤強化のための各種施策について

(コラム133 2019/03/11)

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   平成30年12月18日に閣議決定された新たな防衛計画の大綱では「防衛力の中心的な構成要素の強化における優先事項」として「人的基盤の強化」をあげている。自衛隊がその防衛力を最大限に機能させるには、高性能な装備品もさることながら、それを支える人的側面を盤石なものとすることが必要不可欠である。
   ところが、人的基盤強化の入り口である自衛官の募集について見てみると、例えば自衛官候補生の採用者数は4年連続で計画を下回り1、平成29年度の海上自衛隊自衛官候補生は、1300名2の募集に対し採用数が944名3という状況に陥っている。
   これに極力歯止めをかけるために募集時の施策として、採用上限年齢の27歳未満から33歳未満への引上げ4(自衛官候補生及び一般曹候補生)、女性の採用比率拡大5、採用時身体検査基準(体重の上限)の緩和6を行い、さらに入隊者減少の影響を緩和させるため、定年年齢の引上げ7や潜水艦への女性自衛官の配置制限解除8といった女性自衛官の配置の拡大も視野に施策を推進している。また、以前は出航中の艦艇において使えなかった私物携帯電話でのメールを使えるようにする9など職場環境の魅力化を進めて艦艇乗り組み希望者を減少させない工夫も実施しているところである。
   ところで、上記の施策により人手不足の解消が図られる一方、採用上限年齢及び定年年齢の引上げが、強健な体力が要求される自衛官の体力及び健康面でマイナスに作用することは否めない。強健な体力は、適正な体力把握及び健康管理が重要であり、体力把握に関しては例えば、隊員の高齢化等を踏まえ、年に一回以上実施する体力測定をより科学的・合理的な方法へ見直すなど充実を図る必要があるかもしれない。また、健康管理に関しては、法律に基づき40歳以上の隊員を対象に生活習慣病の発症や重症化を予防するための特定健康診査と該当者に対する特定保健指導を実施しており、採用年齢及び定年年齢引上げが人的基盤強化の妨げにならないように配慮している。採用上限年齢の引上げは負の側面もあるが、多様な人材を採用できる利点も併せ持つため、多角的な分析による施策の検討を進めていく必要があるだろう。
   最後に、好転する見込みのない人口減少に対して決定打といえる施策は存在しない。今後も継続して状況に応じた施策を打ち出していくことが人的基盤の強化につながっていくと考える。

(海上自衛隊幹部学校運用教育研究部 ロジスティクス研究室 久保 浩)

(本稿に示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省、海上自衛隊の見解を表すものではありません。)

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1:REUTERS 2018/09/19 19:29「焦点:自衛隊に迫る「静かな有事」、少子化で採用難」
2:自衛官募集HP(http://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanboshu/schedule/
3:防衛白書 平成30年版「資料60自衛官などの応募及び採用状況(平成29年度)」
4:自衛官募集HP(http://www.mod.go.jp/gsdf/pco/mie/doc/jieikannnennreihikiage.pdf)「採用上限年齢の引上げについて」
5:防衛白書 平成30年版「女性職員の活躍推進のための改革(3)女性職員の採用の拡大」
6:産経新聞2018/10/8 05:00「自衛官採用、志願者の体重制限を緩和 BMI「28」→「30」 人材確保「急務」」
7:防衛省ホームページ「自衛官の定年年齢の引上げについて」(http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21c.html
8:防衛省ホームページ「女性自衛官の配置制限の見直しについて」(http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21d.html
9:世界の艦船2019年1月号「人的基盤の強化-艦艇乗員の家族支援」193P