海上自衛隊幹部学校

交通案内 | リンク | サイトマップ |  English

HOME / 戦略研究会 / コラム / コラム129

 戦略研究会

 後方支援能力の強化


 海上自衛隊幹部学校ホームページはリニューアルしました>>


(コラム129 2018/12/18)

*******

   平成30年11月20日、第5回「安全保障と防衛力に関する懇談会」が開催され、防衛計画の大綱見直しの議論の方向性が明らかにされた 1
   この中で公開された資料である「防衛力強化に当たっての優先事項」において「持続性・強靭性」が謳われており、「弾薬、燃料等の整備・備蓄等」が挙げられている。
   このように、自衛隊の作戦基盤となる弾薬、燃料等の確実な確保は、自衛隊部隊の行動を担保する極めて重要な事項であり、防衛計画の大綱見直しにも反映されてゆくものと考える。
   また、先に公表された平成31年度防衛省概算要求の内容は、防衛計画の大綱見直し及び次期中期防衛力整備計画策定にかかる防衛省内の検討状況を踏まえたものである2
   この中の一事業として、「油槽船(仮称)」の整備が盛り込まれている。そこで、本項においては、海上自衛隊が進める「防衛力強化」のために必要な「持続性・強靭性」確保に資するための本事業の意義について考えてみたい。

   これまでの防衛力整備において、海上自衛隊が整備してきた、燃料輸送を行い得るアセットは大きく二種類存在する。
   第一は、艦艇部隊の洋上補給用アセットである。「ましゅう」型・「とわだ」型補給艦がその中核と言える。
   洋上補給用アセットに要求される能力を細分すると、艦内に搭載した燃料を基地や停泊中の艦艇に補給する能力、単独で外洋を航海する能力、艦内に搭載した燃料を洋上で行動中の護衛艦に補給する能力の三つに整理することができる。
   第二は、各地方隊に配備された支援船であり、いわゆるポート・サービス用アセットである。艦艇用主燃料や航空機用主燃料を搭載する支援船YO・YGは、港内において行動する。
   すなわち、ポート・サービス用アセットに要求される能力は、船内に搭載した燃料を基地や停泊中の艦艇に補給する能力のみであり、その性格から、単独で外洋を航海する能力や船内に搭載した燃料を洋上で行動中の護衛艦に補給する能力は不要である。

   これら二種類のアセットがある中で、「油槽船(仮称)」は洋上補給用アセット、ポート・サービス用アセットのいずれにも当てはまらない、異なった性格のものと言えるだろう。

   本船の概算要求における要求の理由は「有事の際の燃料を前線基地等に補給する際、民間の協力が得られない事態を想定」した際の「艦艇の支援能力確保」とされている3
このことから、本船の任務は、艦艇部隊が行動している地域の近傍にある前線基地等への燃料補給だと考えられる。
   つまり、本船に求められるのは、洋上補給用アセットに求められる能力のうち、燃料を洋上で行動中の護衛艦に補給する能力を除いたものとなり、母基地において船内に搭載した燃料を単独で輸送し、前線基地や前線付近で停泊中の艦艇に補給する船だと言うことができる。

   補給用燃料の供給は、民間製油企業で精製された燃料の輸送に依存しており、有事の際、補給用燃料を前線基地等に輸送するにあたり、内航タンカーを運航する民間海運企業の協力が得られない場合、前線基地等への燃料補給が安定して行い得ないことが危惧される。

   この観点から見ると、「油槽船(仮称)」は、前線基地等への燃料輸送を自隊で行い得る手段となることから、艦艇への安定した燃料補給能力が担保されるため、艦艇の運用基盤の強化に大きく寄与し、「持続性・強靭性」の確保と「防衛力強化」に貢献するものと考える。

(幹部学校運用研究部ロジスティクス研究室 石原明徳)

(本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省・海上自衛隊の見解を表すものではありません。)

--------------------------------------------------------------
1 内閣官房国家安全保障局「安全保障と防衛力に関する懇談会(第5回会合)」平成30年11月20日 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzen_bouei2/dai5/siryou3.pdf
2 防衛省「平成31年度防衛関係費(概算要求)等について」平成30年9月 http://www.mod.go.jp/j/yosan/2019/setsumei.pdf
3 平成30年9月21日「海上自衛新聞」記事