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 戦略研究会

 米海軍の戦力構造:議会調査局報告から

(トッピクス072 2019/11/15)

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    2019年11月1日、米国の議会調査局(Congressional Research Service; CRS)は、「海軍の部隊構造と建艦計画:議会の背景と課題」と題した報告書を公表した1

    同報告書の要旨を抄訳し、解説する。

    なお、特定の建艦プログラムの詳細は、次に記載されている。
●2019年11月5日「フォード級(CVN-78)級航空母艦プログラム」 2
●2019年10月10日「DDG-51及びDDG-1000駆逐艦プログラム」 3
●2019年10月10日「フリゲート(FFG(X)プログラム)」 4
●2019年10月9日「コロンビア(SSBN-826)級弾道ミサイル潜水艦プログラム」 5
●2019年9月18日「大型無人水上及び水中ビークル」 6
●2019年9月17日「バージニア(SSN-774)級攻撃潜水艦調達」 7
●2019年9月17日「沿岸戦闘艦(LCS)プログラム」8


海軍の部隊構造と建艦計画:議会の背景と課題
(Navy Force Structure and Shipbuilding Plans: Background and Issues for Congress)

要旨(Summary)抄訳
    2016年12月15日、海軍は、特定のタイプと数で構成される355隻の艦隊を達成、維持するための戦力構造の目標を発表した。
    355隻という戦力レベルの目標は、2016年に海軍が実施した戦力構造評価(Force Structure Assessment; FSA)の結果である。
    海軍関係者は、2016年のFSAを継承する新たなFSAが現在進行中であり、2019年末までに完了する予定であると述べている。
    海軍と海兵隊は、この新たなFSAが355隻という数のみならず、艦隊の根本的な艦船と航空機の組み合わせを意味するアーキテクチャーを変える可能性があると公言の中で示唆している。

    海軍の声明を観察する一部のオブザーバーは、新たなFSAが海軍の水上部隊をより分散されたアーキテクチャーにシフトする可能性があると見ている。これには、大型水上戦闘艦(巡洋艦や駆逐艦)の割合減少、小型水上戦闘艦(例えばフリゲート艦と沿岸警備艦(LCS))、新たに作成された無人水上ビークル(USVs)の3つの階層が含まれる。

    また、一部のオブザーバーは、新たなFSAが海軍の水中部隊を攻撃型潜水艦(SSNs)及び海底のセンサーに加えて、超大型の無人潜水艦(extra-large unmanned underwater vehicles ; XLUUV)を含めた、より分散化したアーキテクチャーに変更する可能性があると見ている。
    2020年度に提案された海軍の予算は、ジェラルド・R・フォード(Gerald R. Ford (CVN-78) )級空母1隻、バージニア(Virginia)級攻撃型潜水艦3隻、DDG-51級駆逐艦3隻、FFG(X)1隻など計12隻の新たな艦艇を調達する経費を要求している。

    2020年度から2024年度までの5年間の建艦計画には、55隻、年間平均11隻の艦艇建造が含まれている。また、2020年度から2049年度までの30年間の建艦計画には、304隻、年間平均10隻の艦艇建造が含まれている。2020年度から30年間の建艦計画が実行された場合、海軍は2034年度までに合計355隻の艦艇数を達成する計画となる。

    これは、海軍の2019年度における30年間の建艦計画の予測よりも約20年早まることとなる。これは、2019年度の計画が提出された後、2018年4月に海軍が全てのDDG-51駆逐艦の耐用年数を45年に延長した決定による加速となる。

    他方、海軍は2034年度に艦隊が合計355隻に達すると予測しているが、その年以降は2016年度FSAの要求と一致しない。議会にとっての課題の1つは、海軍が実施している新たなFSAによる355隻の目標を変更するかどうか、もし変更するならばどのように変更するかである。もう1つの課題は、30年間の建艦計画の手頃な価格に関するものである。もう1つの課題は、2020年度の建艦プログラムが1つ以上の継続的な決議によって資金を供給することの潜在的な影響に関するものである。海軍の部隊構造と建艦計画に関して議会が下した決定は、海軍の能力、資金調達要件、米国の造船産業基盤に大きな影響を与える可能性がある。

解説
    2016年1月、米海軍は、『海上優勢の維持への構想1.0(A Design for Maintain Maritime Superiority, Version 1.0)』を公表した9。これは、海洋ドメインの使用量増加、グローバルな情報システムの台頭、技術の創造と適用の増加といった要素を併せ持つ環境下において、米海軍が優位性を獲得するための構想である。そこでは、長期にわたる精密攻撃に耐えうる力学的(kinetic)かつ非力学的(non-kinetic)な戦闘能力と有人・無人のシステムを混合した艦隊設計の必要性を説明している。

    その年の12月15日、米海軍はFSAを公表した10。これは、常に変化し、複雑化する脅威に対処するために必要な将来の調達計画における適切な戦力のバランスと戦闘に伴うリスクを分析したものである。

    その2年後の2018年12月、米海軍は『海上優勢の維持への構想2.0(A Design for Maintain Maritime Superiority, Version 2.0)』を公表した11。これは、Version1.0の進捗と戦略的環境の想定を再評価し、その健全性を確認した上で、プロセスではなく結果を重視した4つの努力線(Line of Effort; LOE)を示すものである。その中で、将来型フリゲート艦や無人システムなどの早期取得目標が挙げられている。

    米海軍の戦力構造と建艦計画は、厳しさを増しつつある安全保障環境と限られた予算の中で、効率的な部隊構造を模索する動きとして、我が国も引き続き注目する必要があろう。

(幹部学校防衛戦略教育研究部 戦略研究室 高橋 秀行)

(本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省、海上自衛隊の見解を表すものではありません。)

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1 Ronald O'Rourke, “Navy Force Structure and Shipbuilding Plans: Background and Issues for Congress,” Congressional Research Service Report, November 1, 2019, summary, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/RL/RL32665, accessed November 13, 2019.
2 Ronald O'Rourke, “Navy Ford (CVN-78) Class Aircraft Carrier Program: Background and Issues for Congress,” Congressional Research Service Report, November 5, 2019, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/RS/RS20643, accessed November 13, 2019.
3 Ronald O'Rourke, “Navy DDG-51 and DDG-1000 Destroyer Programs: Background and Issues for Congress,” Congressional Research Service Report, October 10, 2019, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/RL/RL32109, accessed November 13, 2019.
4 Ronald O'Rourke, “Navy Frigate (FFG[X]) Program: Background and Issues for Congress,” October 10, 2019, Congressional Research Service Report, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/R/R44972, accessed November 13, 2019.
5 Ronald O'Rourke, “Navy Columbia (SSBN-826) Class Ballistic Missile Submarine Program: Background and Issues for Congress,” Congressional Research Service Report, October 9, 2019, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/R/R41129, accessed November 13, 2019.
6 Ronald O'Rourke, “Navy Large Unmanned Surface and Undersea Vehicles: Background and Issues for Congress,” Congressional Research Service Report, September 18, 2019, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/R/R45757, accessed November 13, 2019.
7 Ronald O'Rourke, “Navy Virginia (SSN-774) Class Attack Submarine Procurement: Background and Issues for Congress,” Congressional Research Service Report, September 17, 2019, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/RL/RL32418, accessed November 13, 2019.
8 Ronald O'Rourke, “Navy Littoral Combat Ship (LCS) Program: Background and Issues for Congress,” Congressional Research Service Report, September 17, 2019, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/RL/RL33741, accessed November 13, 2019.
9 U.S. Navy, A Design for Maintain Maritime Superiority, Version 1.0, January 2016, pp. 3-4, https://www.navy.mil/cno/docs/cno_stg.pdf, accessed November 12, 2019.
10 U.S. Navy, EXECTIVE SUMMARY: 2016 Navy Structure Assessment(FSA), December 14, 2016, pp. 1-2, http://news.usni.org/2016/12/16/document-summary-navys-new-force-structure-assessment, accessed November 12, 2019.
11 U.S. Navy, A Design for Maintain Maritime Superiority, Version 2.0, December 2018, p. 9, https://www.navy.mil/navydata/people/cno/Richardson/Resource/Design_2.0.pdf, accessed November 12, 2019.