海上自衛隊幹部学校

交通案内 | リンク | サイトマップ |  English

HOME / 戦略研究会 / トピックス / トピックス071

 戦略研究会

自律型致死兵器システム(LAWS)に関する国際会議について

(トピックス071 2019/09/06)

*******

○LAWSに関する国際会議
   本年8月20日・21日、スイスのジュネーヴにおいて自律型致死兵器システム(LAWS: Lethal Autonomous Weapons Systems)に関する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW: Convention on Certain Conventional Weapons)の政府専門家会合(GGE: Group of Governmental Experts)が開催された。本会合には、我が国を含む約70か国のほか、国際機関及びNGOも参加し、我が国からは外務省、防衛省等から関係者が出席した1
   2012年にNGOの「キラーロボット反対キャンペーン」2で大々的に国際社会に懸念が表明された完全自律型兵器は、国際的に明確な定義はない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは完全自律型兵器である「キラーロボット」を「人間の介在なしに標的を選択・攻撃でき得るもの」としており、完全自律型兵器の開発、生産、使用の先制的な禁止を目的としてキャンペーンを行っている3。LAWSは、2013年の国連人権委員会及び国連総会で取り扱われ、CCW締約国会議において2014年から2016年まで非公式専門家会議で検討していくとされた。2017年にはGGEに議論の場を移し2019年に成果を出すべく議論が続けられ、今回の会議がその結節となるものであった4


GGEの様子(外務省ホームページより)

○LAWSの主な論点等
   今回のGGEでは報告書案が採択された。この報告書案は11月に開催されるCCW締約国会議において正式に採択される見込みである。この報告書案では「国際人道法はLAWSを含めたすべての兵器システムに適用される」、「兵器システムの仕様決定に当たっては、人間の責任を確保しなければならない」、「LAWSを使用する際の国際人道法の遵守」、「CCWでの議論やあり得べき政策措置については、自律化技術へのアクセス及び平和的利用の進展を妨げるべきではない」等の指針が確認された5
   その他、一連の会議において、「LAWSの定義」、「人間の関与」等が議論された。「LAWSの定義」に関しては、GGEで見解の一致がみられていないが、ヒューマン・ライツ・ウォッチのLAWSの考え方には次の3種類がある。①「Human in the Loop Weapons」(ロボットが標的を選択できるが人間の命令によってのみ攻撃ができる兵器)、②「Human on the Loop Weapons」(ロボットが標的を選択し攻撃もできるが、人間がロボットの動作を無効にできる)、③「Human out of the Loop Weapons」(ロボットが人間の命令や関与なしに標的を選択し攻撃できる)。そして、完全自律型兵器とは②と③を指すとしている6。GGEでの議論において、我が国はLAWSの定義に関して、致死性や人間の関与の在り方等の議論を深めることが必要であるとしている7。米国防総省の2012年11月の指令では、LAWSの運用(Use of Force)に関して人間の判断を適切な段階で行えるよう設計されなければならないと述べており8、米国はLAWSに人間の判断が必要であるという方針である。
   CCWは「コンセンサス方式」と言われる全会一致による採決方法が採用されており、多数決方式とは違って少数の反対意見があると採択が困難なため、意見が分かれる議題については結論が出せず継続審議となることがある。

○今後の展望
   今回の報告書案では、LAWS分野の新興技術に関する規範的及び運用上の枠組みを明確化し、検討するために2020年及び2021年にCCWの枠組みでLAWSを引き続き議論していくことが提案され、その検討グループには、法律、技術、軍事の専門家を含めることが推奨された 。また、成果物としては、法的拘束力のあるもの、政治宣言、既存の国際法の義務の履行の明確化等が考えられている10
   我が国のLAWSに関する考え方として、「完全自律型の致死性を有する兵器を開発しないという立場。有意な人間の関与が確保された自律型兵器システムについては、ヒューマンエラーの減少や、省力化・省人化といった安全保障上の意義がある」11とGGEで表明している。また、防衛省としても、隊員の安全確保や負担軽減を目的として、AI、無人装備等の研究開発を含め積極的に技術基盤の向上に努めていくとともに、LAWSに係る国際的な議論に適切に参画していく方針である12。現在のLAWSに関する国際社会の考え方は、容認派と規制派とで別れているため13、今後の議論の推移及び科学技術の発展に注視していく必要がある。

(幹部学校 作戦法規研究室 上薗 智昭)

(本トッピクスに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省、海上自衛隊の見解を示すものではありません。)

--------------------------------------------------------------
1 外務省「特定通常兵器使用禁止制限条約 自律型致死兵器システムに関する政府専門家会合の開催」2019年8月22日、 https://mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_000379.html(2019年9月2日アクセス)
2 ヒューマン・ライツ・ウォッチ「武器:殺人ロボットに反対する新キャンペーン発足」2012年4月23日、https://www.hrw.org/ja/news/2013/04/23/249550(2019年9月2日アクセス)
3 Human Rights Watch, “Killer Robots”, https://www.hrw.org/topic/arms/killer-robots, (accessed at September 2, 2019.)
4 United Nations Office at Geneva, “Background on Lethal Autonomous Weapons Systems in the CCW”, https://www.unog.ch/80256EE600585943/(httpPages)/8FA3C2562A60FF81C1257CE600393DF6?OpenDocument(accessed at September 2, 2019.)
5 CCW/GGE.1/2019/CRP.1/Rev.2, August 21, 2019, pp.13.
6 Human Rights Watch, LOSING HUMANITY; The Case against Killer Robots, November 2012, p.2.
7 外務省「自律型致死兵器システム(LAWS)に関する政府専門家会合に対する日本政府の作業文書の提出」2019年3月22日、https://mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_007229.html(2019年9月2日アクセス)
8 U.S.Department of Defense, Directive No.3000.09, p.2.
9 CCW/GGE.1/2019/CRP.1/Rev.2, p.7.
10 Ibid., p.6.
11 外務省「自律型致死兵器システム(LAWS)に関する政府専門家会合に対する日本政府の作業文書の提出」2019年3月22日(2019年9月2日アクセス) 
12 衆・予算委員会(平成30年2月14日)小野寺国務大臣答弁「・・・防衛省としては、隊員の安全確保や負担軽減を目的として、AI、人工知能や無人装備について、研究開発を含め、積極的に技術基盤の向上に努めていく必要がある・・・無人機等の利活用への影響や、自律的な機械が人間の生死に関することの倫理上の問題といった観点から、LAWSに係る国際的な議論に適切に参画し、日本の考え方をしっかり述べていきたい・・・」
13 Human Rights Watch, CAMPAIGN TO STOP KILLER ROBOTS; Country Views on Killer Robots, August 21, 2019, https://www.stopkillerrobots.org/wp-content/uploads/2019/08/KRC_CountryViews21Aug2019.pdf (accessed at September 2, 2019.)
   本文献によると、キラーロボットの禁止賛成:29か国、キラーロボットの条約反対:12か国である。また、中国は、完全自律型兵器の使用禁止には賛成だが、その開発や製造には反対していない。
   福井康人「自立型致死性兵器システム(LAWS)を巡る国際的規制の現状と課題」日本安全保障貿易学会第27回研究大会、京都、2019年3月、8頁。
   本文献によると、GGEでの対立構造は、①規制推進派(議定書の策定)、②規制穏健派(政治宣言、行動規範の策定)、③規制反対派(成果物の策定に反対)に区分されている。