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米海軍作戦部長の航海計画2015-2019

(トピックス026 2014/09/08)

  8月19日、米海軍は「航海計画2015-2019」を発表した1
  本「航海計画」はグリナート海軍作戦部長が2011年9月の就任時に発表した「運航指針」に基づいているが2、「運航指針」が海軍の任務や海軍作戦部長のビジョンを示しているのに対し、「航海計画」は今後5年間をにらんだ予算、装備、訓練といった海軍力建設の指針をより具体的に示すものである。
  昨年公表された「航海計画2014-2018」と比較すると、大きな3本柱である「戦闘最優先(Warfighting First)」「前方での作戦(Operate Forward)」「即応(Be Ready)」に変更はない。緊縮財政から来る強制削減に懸念を示している点も同一である。
  グリナートは昨年の「航海計画」の進展状況を検するため、本年後半に「艦位報告(Position Report)」と呼ばれるレポートを発出すると述べている。航海中に僚艦の位置を常に把握することが必要であるのと同様に、海上自衛隊の最大のパートナーである米海軍がどこにいてどこに行こうとしているのか把握するため、「運航指針」「航海計画」「艦位報告」の3つをモニターしておくことは重要ではないだろうか。
  本トピックスではこの米海軍作戦部長の「航海計画2015-2019」を仮訳で紹介する。

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  軍作戦部長の航海計画2015-2019(仮訳)3
CNO’s Navigation Plan

  この「航海計画(Navigation Plan)」は「運航指針(Sailing Directions)」から導かれたもので、この船(訳注:米海軍)が新たな目的地に向けて、安全かつ効果的に航海するために保有している資産をどのように使用していくかについて、詳細を記述している。同様に、この「海軍作戦部長の航海計画」は2015年度から2019年度における海軍予算案が、どのように「海軍作戦部長の運航指針」のビジョンを追及しているかを論述している。この計画は、「戦闘最優先(Warfighting First)」「前方での作戦(Operate Forward)」「即応(Be Ready)」の3つのレンズを通じて、国防戦略指針「米国のリーダーシップの維持(Sustaining U.S. Leadership): 21世紀の国防に向けての優先順位」及び「4年ごとの戦略見直し2014(2014 Quadrennial Defense Review)」を支えるための投資に焦点をあてている。この「航海計画」は今後数年間にわたり我々の海軍を組織し、訓練し、装備する上で従うべき針路と速力を定義している。

   現在の財政状況は、幅広く競合する優先順位に渡って、海軍に厳しい選択を強いた。我々は第1に適切な能力を構築することに焦点を当て、それから我々が獲得可能な量的限度にこれを当てはめた。我々の海軍はこれを「財政問題を片づける」ための一部として実施するが、現在の即応態勢と、高い能力を有する将来の艦隊を建設する必要性との間のバランスをとった形でこれを遂行する。2016年度に執行される可能性のある強制削減にも関わらず、我々の優先順位は、重要な問題が生じた時間と場所に前方展開し、様々な脅威や非常事態に対して即応することにある。

  6つの方針に基づく優先順位に従い、将来に向けて立案した予算案を律している。
(1)  信頼性があり、現代的で、生存可能な、海上を基盤とした戦略抑止力の保持
(2)  重要な場所にグローバルに割り当てられる前方プレゼンスの維持
(3)  一つの多段階(マルチフェーズ)危機対応作戦で決定的に勝利し、第2の地域で他の侵略者の
      目的を拒否できる手段の保持
(4)  我々の海軍が適切に資金を提供され即応態勢にあることを確実ならしめるために、最重要の海
      上及び陸上の(部隊の)即応態勢に焦点を当てる。
(5)  物理領域同様にサイバー空間並びに電磁スペクトラムにおける海軍の非対称能力の強化
(6)  造船を中心とした関係産業の維持
  私はこれらの優先順位について、今我々がどこにいるのか「艦位」を、今年後半に作成する「艦位報告(Position Report)」の中で明らかにする予定である。

  戦闘最優先(Warfighting First)

  我々が行うことは全てこの(予算上の)責務に基づいていなければならない。海軍は、必要とされるあらゆる時と場所で、いかなる領域(ドメイン)へのアクセスをも達成できなければならず、今日普及している物理的(キネティック)及び非物理的(ノンキネティック)の武器の組み合わさった能力を保有し、明日の戦いに勝利する準備ができていなければならない。我々の戦闘力における優位を維持するため、我々の2015年度から2019年度の予算案は次の目標を目指している。

● 4隻のオハイオ級戦略ミサイル原潜、トライデントD5ミサイルと支援システム、関連する核指揮統
     制通信(システム)(Nuclear Command, Control, and Communications)を含めた信頼でき、生存可
     能で現代的な、海上に基盤を持つ戦略抑止力の維持。我々の予算は次世代の海上戦略抑止
     力、すなわち2021年に建造を開始し、2028年から就役するオハイオ級更新計画についても先行
     的な;調達を開始している。オハイオ級更新(計画)はその最初の戦略パトロールを2031年
     に実施するであろう。
● 水中領域での優位を堅持する。2015年に12隻目のヴァージニア級攻撃原潜が艦隊に加わり、
     2019年までにさらに8隻の建造が計画されている。海洋パトロール及び偵察部隊(Maritime
     Patroland Reconnaissance Force)に2015年だけで13機のP-8Aポセイドン哨戒機を加え、20
     19年終わりまでに約80機を製造することで再構成する。
● 2種類の新たな艦級で一番艦を就役させる。USSズムウォルトは3隻の最新の多目的駆逐艦の
    一番艦であり、2015年に就役する。USSジェラルド・フォードは我々の新型空母であり2016年初
    頭に就役し、2060年代まで我々の戦力投射を維持する。
● 争われる海洋及び航空空間における制海及び一方的な攻撃を確実なものとするために、ニミッ
    ツ及びフォード級空母の空母飛行団の多用途艦載機による、ネットワーク化されたパッシブ及び
    アクティブの死の連鎖(kill-chain)能力の改善を持続する。
● 紛争のあらゆるスペクトラムに渡ってハイ・ローミックスの能力を提供する小型水上艦艇及び任
    に応じて装備等が積み替え可能な(reconfigurable)支援艦船の役割の拡張を継続する。大型水
    上務艦艇及び強襲揚陸艦艇は世界中で必要とされており、これらの艦船はその圧力を緩和し
    、指揮官たちに変容する任務が必要とするのに応じた適応性のある部隊配備を可能にする。
    以下の艦船が2015年に就役する。
      ➢  4隻の新たな沿岸戦闘艦(LCS 5-8)
      ➢  2隻の統合高速輸送艦(JHSV: Joint High-Speed Vessels 5-6)
      ➢  3隻のうちの最初の機動上陸プラットフォーム・洋上前方展開基地
            (MLP/AFSB: Mobile Landing Platform Afloat Forward Staging Bases)
● 信号を受信し情報戦を実施する更なる能力を艦艇に装備し、先進的な対艦ミサイルに対抗する
     ための妨害及び欺瞞能力を付与することで、電磁スペクトラムの中で自由に活動する能力を強
     化する。同様に、予算要求には2021年以降にEA-18Gグロウラーに強化型空中電子攻撃能力
     (enhanced Airborne Electric Attack capabilities)を付与する次世代妨害装置(Next Generation
     Jammer)が含まれている。
● 内部からの脅威を抑止し、探知し、軽減し、秘密の国家安全保障情報を守るためのシステム開
     発により、我々のサイバー態勢を強化する。我々は同様に海軍のネットワークを、より防衛力の
     高い国防省統合情報システム(DOD Joint Information Environment)と連携させるが、これは艦
     艇や海上作戦センターに搭載された艦載共通コンピューターネットワーク基盤であるCANES
     (Consolidated Afloat Networks and Enterprise Services)や次世代陸上ネットワークNGEN
     (Next Generation Enterprise Network)並びにデータ集約センターを通じて行われる。加えて、
     我々は単一の海軍「サイバースペース」機関を海軍全体のネットワーク、プラットフォーム、シス
     テムと「ゆりかごから墓場まで」のサイバーセキュリティを管理するために創設する。我々は開
     発能力と攻勢的なペイロードの更なる拡張を継続する。我々はサイバーオペレーター1000人の
     リクルート、訓練、雇用を行い、2016年末までにサイバーミッションチームを40チーム編成してい
     く。

  前方での作戦(Operate Forward)

  米国の海軍は前方に出て作戦するときにもっとも効果的である。海外における我々のプレゼンスは大統領に選択肢を与え、同盟国及びパートナー諸国との頻繁な関与を通じて信頼と信用を構築し、グローバルな安定性を下支えしている。我々の2015年度から2016年度までの予算案は我々の態勢を以下のとおり支えている。

● 2014年の平均97隻から、2020年までに120隻で前方プレゼンスを提供
● アジア太平洋地域のプレゼンスを、2014年の約50隻から2019年には約65隻に増強し、リバラン
     スを継続。我々が有する最も能力の高い艦艇が西太平洋で運用され、これには最新のミサイル
     駆逐艦、JHSV、2種類のLCS、P-8A、EA-18G、アップグレードされたF/A-18E/F、E-2D、F-35C
     が含まれる。グアムに配備された3隻の攻撃型原潜も増派され、2018年までにMQ-4Cトライトン
     長距離UAVの運用が開始される。
● 中東では現在の30隻から2019年には40隻にプレゼンスが強化される。現在はバーレーン沖で10
     隻のパトロールボートが前方展開海軍部隊として活動しているが、2019年末までに4隻のLCSが
     これに合流する。最初のMLP/AFSBであるUSNSルイス・B・プラーが2016年にUSSポンスと交代
     し、特殊作戦軍を支援するとともに、情報、哨戒、偵察、対機雷戦能力を提供する。
● イランの弾道ミサイルの潜在的な脅威から防衛するため、ルーマニア及びポーランドのイージス
     地上サイトに対する欧州段階的適応型アプローチ(European Phased Adaptive Approach)に応
     じて、欧州における我々の態勢を発展させる。同様に、2015年末までに合計4隻のミサイル駆逐
     艦を、欧州派遣海軍の弾道ミサイル防衛能力を増強するためにスペインのロタ港に前方配備す
     る。
● 革新的でローコストかつフットプリントの小さなプレゼンスをアフリカ及び南米で提供する。2015年
     から我々は平均して毎年1隻の病院船を、2016年から毎年1隻の沿岸哨戒艇を南米に展開す
     る。任務上の必要に応じて、これらの地域おいてJHSV、AFSB及びその他の艦艇航空機によ
     り、を限ってプレゼンスを示す。
● 期間治安部隊への支援や、我々の同盟国とパートナーシップを強化するプロジェクトに関与する
     た め、海軍建設工兵隊(Seabees)や水中爆発物処分隊(Explosive Ordnance Disposal teams)の
     様な海軍遠征部隊(Naval Expeditionary Forces)の展開を継続する。

  即応(Be Ready)

  即応態勢にある船乗り、文官及び家族は海軍の戦闘能力の基盤であり続けている。我々の兵員は準備万端整い、自信を持ち、熟練でなければならない。海軍部隊に対する全世界的な高い要求は軍にストレスを与えており、それ故にこの予算は我々の兵員家族が回復力に富み、即応態勢にあることを確実ならしめるためにサービスとサポートを提供し続ける。そのための我々のプログラムは以下のとおりである。

● 2015年に始まる最適化艦隊レスポンス計画(O-FRP: Optimized Fleet Response Plan)と呼ばれる
     修正された枠組みが実行されるが、この計画は我々の部隊と乗組員をより良い準備態勢に置く
     と共に、部隊の展開をより予測可能にし、洋上勤務における作戦上の稼働率を向上させる。
● 乗り組み手当と重要スキルへのインセンティブ手当を増額することを通じて、洋上勤務に優先し
     て報いる。
● 隊舎や訓練施設の改善、更なる旅行や進学、戦術訓練装置やシミュレーターの更なる利用、予
     備部品や道具への更なる予算投下といった勤務の質(Quality of Service)イニシアチブに投資
     する。同時に、海上及び陸上における訓練、コミュニケーション、海軍将兵の経歴管理を強化す
     るための”eSailor”イニシアチブを通じて、スマートテクノロジーを用いた端末やアプリを更に活
     用する。
● 我々の将兵の安全、健康、福利厚生を対象とした重要な計画への大々的な支援を確実に行う。
      我々の21世紀の海軍将兵室(21st Century Sailor Office)はセクハラのような挑戦に、予防、対
      応、そして世界レベルの犠牲者支援プログラムで取り組み続ける。
● より安いコストでさらに現実的なリアルな訓練を提供するために、本物に近い、ヴァーチャルなそ
     して発展的な訓練環境の開発と普及を拡張する。
● 桟橋や滑走路といった死活的に重要な作戦施設を最優先し、艦隊作戦を支援する施設の維持
     修理に焦点を当てる。

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(幹部学校防衛戦略教育研究部 戦略研究室長 平山茂敏)

 本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。






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1 “CNO Releases Annual Navigation Plan”, America’s Navy, http://www.navy.mil/submit/display.asp?story?_id=82851, Accessed Aug 23, 2014.
2CNO’s Sailing Directions, http://www.navy.mil/cno/cno_sailing_direction_final-lowres.pdf, Accessed Aug 25, 2014.
3CNO’s Navigation Plan 2015-2019, http://www.navy.mil/cno/docs/140818_cno_navigation_plan.pdf, Accessed Aug 23, 2014.