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 戦略研究グループ

 米統合参謀本部、Joint Operational Access Concept(JOAC)を公表

(トピックス012 2012/01/30)

Joint Operational Access Concept (JOAC)
バージョン1.0
2012年1月17日1


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 前 言 (仮訳)

 ジョイント・オペレーショナル・アクセス・コンセプト(JOAC)は、広く言えば、明らかになりつつあるアクセス阻止(antiaccess)及びエリア拒否(area-denial)という課題に対応して統合軍がいかに作戦していくかということについての私のビジョンである。

 世界中におけるアクセス阻止及びエリア拒否能力の向上、米国の海外における防衛態勢の変化、争われる領域としての宇宙及びサイバー空間の登場といった3つの大きな傾向から、将来の敵となる国家及び非国家の双方が、米国に対するアクセス阻止及びエリア拒否戦略の適用を、彼らにとって好ましい行動方針として見ている。

 JOACは、そのような戦略に直面して将来の統合軍がいかにオペレーショナル・アクセスを達成するかを記述している。その主題は作戦領域間の相乗作用(Cross-Domain Synergy)であり、異なる領域の能力をただ加え合わせるのではなく、相互補完的に運用することで、効果を増すとともに、弱点を補い、これにより、任務達成に必要な行動の自由を獲得するというものである。JOACは領域間のより一層の統合とかつてない低レベルでの統合を想定している。より低いレベルにおける作戦領域間の相乗作用は、敵のシステムを混乱させるための局所的な機会を活用するためにしばしば死活的に重要なテンポを作り出す上で重要である。JOACは、同様に、宇宙及びサイバー空間作戦と伝統的な陸海空の戦場の間の、より深く柔軟な統合を想定している。

 ジョイント・オペレーショナル・アクセスを達成する上で、それぞれの軍種が重要な役割を担っている。JOACは各軍種及び統合参謀本部の代表者により、戦闘コマンド、多国間パートナー、その他の関係者の協力を得て開発された。JOACの開発は、多シナリオのウォーゲーム、多軍種によるイベント、他のコンセプト開発の場などを含めた検証演習により支援された。

 戦略的な課題は明らかである:あらゆる与えられた任務において、統合軍は行動の自由を維持しなければならない。JOACはそのために不可欠な能力を統合軍が担保するための死活的に重要な最初の第1歩である。

(署名)
Martin E. Dempsey
陸軍大将
統合参謀本部議長

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要 約(仮訳)

 本文書は、様々な条件下で様々な潜在的な敵対者による武力抵抗に直面した場合に、より広範な国家のアプローチの一部として、統合軍がいかにオペレーショナル・アクセスを達成するかというコンセプトを提案している。

 オペレーショナル・アクセス(Operational Access)とは、任務達成に十分な行動の自由を有した状態で軍隊を作戦区域に投入する能力である。オペレーショナル・アクセスはそれ自体を目的として存在しているわけではなく、通商へのアクセスの担保、危機対応及び戦争防止のための海外への兵力の展開を通じての米国の意図の顕示、戦時における敵の打倒といった、我々のより広範な戦略的な目的に貢献するものである。オペレーショナル・アクセスは、国際公共財(global commons)及び選択された主権領域、領水、空間、及びサイバー空間を妨げられずに使用すること、すなわち、安定したアクセス(assured access)に対する統合軍としての貢献である。


軍事力の投入対する不朽の要求

 世界中に国益を有するグローバル・パワーとして、米国は世界のどこであってもその利益を守るために軍事力を投入しうる確かな能力を維持しなければならない。オペレーショナル・アクセスに対する要求はいかなる任務であっても生じるが、最も困難な課題であり、それゆえにこのコンセプトの主題となるのは、武力による抵抗によって妨害されるオペレーショナル・アクセスである。


アクセス阻止とエリア拒否の相違

 この文書において、アクセス阻止とは、敵部隊が作戦区域に進入することを阻止すべくデザインされた、通常は長距離の活動及び能力をいう。エリア拒否は、敵部隊を近づけさせないのではなく、作戦区域内で敵の行動の自由を制限するようにデザインされた、通常は近距離の活動及び能力をいう。


前提条件の重要性

 オペレーショナル・アクセスにおける課題は、主として戦闘作戦開始前に存在する各種条件により決定される。結果として、戦闘における成功は、しばしば望ましいアクセス条件を形成するための事前の努力に左右され、これには、周到な省庁間協力が必要となる。統合軍は、紛争前に、多国間演習、アクセスと支援のための協定、海外展開基地の設置と改善、物資の事前集積、兵力の前方展開といった様々な安全保障及び関与活動を通じて作戦エリアを形作るであろう。


最近の傾向

作戦環境における以下の3つの傾向が、米国の統合軍がアクセスする上での妨害活動をより複雑なものにする。

 (1) 作戦空間におけるアクセス及び行動の自由を拒否しうる兵器・技術の劇的な改善と拡散
 (2) 海外における米国の防衛態勢の変化
 (3) 宇宙及びサイバー空間が、重要性を増し、かつ、争われる作戦領域となっていること


敵によるアクセス阻止・エリア拒否戦略の採用

 最近数十年の出来事は、米統合軍が邪魔されずに作戦エリアに戦闘力を投入できたときには、決定的な成果を挙げることができることを示している。武力による抵抗で米国のアクセスを拒否できる能力を自らが有していることを気づいた敵が殆どいなかったので、この期間における米国のオペレーショナル・アクセスは本質的に妨害を受けなかった。上記の3つの傾向の組み合わせは、このような計算を劇的に変化させてしまった。能力を向上させつつある将来の敵は、米国に対するアクセス阻止・エリア拒否戦略を、彼らにとって好ましい行動方針として見るだろう。将来においてオペレーショナル・アクセスを確保する能力は課題を突きつけられており、これは来るべき数十年で米軍が直面する最も困難な作戦上の課題となるであろう。


軍事上の問題

 将来の統合軍にとってアクセス上の重要な課題は、米国の海外防衛態勢が変化しつつあり、宇宙とサイバー空間が一層重要で争われる領域になりつつあるときに、能力を増しつつある敵による武力妨害に直面するなかで兵力を作戦エリアに投入し、それを維持することができるようにすることである。


中心となる考え(The Central Idea):作戦領域間の相乗作用(Cross-domain synergy)

 この課題に対処するために、将来の統合軍は「作戦領域間の相互作用」を利用し、異なる作戦領域においてその能力を単に足し合わせるのではなく相乗的に運用することで、強点を強化し、弱点を補っていく。これにより、いくつかの領域で優位を確立し、任務達成に必要な行動の自由を獲得する。作戦領域における優位の組み合わせは、敵の能力及び任務の要求に基づく状況により異なる。ある作戦領域における優位は、広範囲に及ぶものでも永続的なものでもないであろう。優位はむしろ地域的で一時的なものである。

 将来のアクセス上の課題を打ち負かす作戦領域間の相互作用の達成は、これまで以上に統合(integration)を必要とする。さらに、この統合は、より低いレベル(echelon)で達成されなければならず、そこで一瞬の局地的機会を活用する上でしばしば重要となるテンポを作り出す。加えて、伝統的な空陸海の戦闘空間に宇宙とサイバー空間を一体化することが必要である。


指 針

 武力による抵抗に直面した際にオペレーショナル・アクセスをいかに将来の統合軍が達成するかの中心となる考えについて、いくつかの原則を詳述する。

・ 事後の作戦におけるアクセスへの障害を減らすことも考慮に入れて、より幅広い任務の必要性を基礎として、アクセス獲得のための作戦を実施せよ。
・ アクセス促進のため、事前に作戦区域を準備せよ。
・ 多様な基地設定オプションを考慮せよ。
・ 同時並行的な展開、作戦により、主導権を獲得せよ。
・ 敵のアクセス阻止/エリア拒否能力を混乱させるため、1つ以上の作戦領域における優位を他の作戦領域で活用せよ。
・ 味方の偵察・哨戒活動を防護しつつ、敵の同活動を混乱させよ。
・ 任務達成に必要な、敵の防衛網の突破及び維持のため、局地的な領域優勢の空間又は回廊を作り出せ。
・ 戦略的な距離から、鍵となる作戦目標に直接機動せよ。
・ 周辺部から敵の防御を後退させるのではなく、敵のアクセス阻止/エリア拒否防衛を縦深攻撃せよ。
・ 敵の目標設定を困難にするため、欺瞞、秘匿、曖昧さを通じて、奇襲を最大化せよ。
・ 敵の宇宙及びサイバー能力を攻撃しつつ、我の宇宙及びサイバーアセットを防衛せよ。


求められる能力

 このコンセプトは、抵抗される状況下で将来の統合軍がオペレーショナル・アクセスを得るために必要な30の作戦能力を導いている。必要な能力としてこれら示された能力を創り出し、維持していくという示唆は潜在的に重要である。

 このコンセプトの適用は、抵抗されるアクセス(opposed access)という課題に対しての共通の知的な枠組みを確立し、これに続く統合及び各軍のコンセプトに情報を提供し、ドクトリン、組織、訓練、機材、リーダーシップ、教育、人事及び施設(DOTMLPF)における解決策をもたらす。

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本 文(抄訳)


1.導 入

 本文書は、様々な条件下で様々な潜在的な敵対者による武力抵抗に直面した場合に、より広範な国家のアプローチの一部として、統合軍がいかにオペレーショナル・アクセスを達成するかというコンセプトを提案している。

 オペレーショナル・アクセス(Operational Access)とは、任務達成に十分な行動の自由を有した状態で軍隊を作戦区域に投入する能力である。オペレーショナル・アクセスは安定したアクセス(assured access)2に対する統合軍としての貢献である。

 国際公共財(global commons)とはいかなる国にも属していない空、海、宇宙、サイバー空間を指す。

 世界中に国益を有するグローバル・パワーとして、米国は世界のどこであってもその利益を守るために軍事力を投入しうる確かな能力を維持しなければならない。これには、国際公共財の利用の確保と、必要に応じての外国領域の利用を含む。過去数十年間、米国から作戦エリアへの兵力の移動は殆ど抵抗されなかった。1990年から91年の湾岸戦争において、有志連合は「砂漠の嵐」作戦のための兵力集結を、6か月間妨害を受けずに行った。同様に、2001年のアフガニスタンにおける「不朽の自由」作戦、2003年の「イラクの自由」作戦でも抵抗されずに兵力を展開した。

 潜在的な敵対勢力はより効果的な武器とシステムを保有しつつあり、米国に対してアクセス阻止・エリア拒否を行う能力を得るので、このような無抵抗のアクセスは、将来では可能性が低い。


2.目 的

 本コンセプトは、将来の統合軍がいかに抵抗されるアクセスという課題を乗り越えるかを示している。その目的は軍事力整備に指針を示すことである。


3.範 囲

 本コンセプトは、戦闘コマンド、統合任務部隊、及び隷下コマンドに適用される。

 これは戦闘コンセプト(warfighting concept)である。本コンセプトは、敵が武力の使用を通してアクセスを拒否しようとするのに対し、アクセスを確保するために武力の使用が求められる状況、すなわち抵抗されるアクセスを対象としている。

 このコンセプトは、統合作戦は国力のあらゆる要素を運用する広範な国家戦略を支援するために行われると認識している。包括的な国家及び多国間の努力は極めて重要であるが、本文書の範囲を超えるものである。本文書は軍の行動に範囲を限定している。加えて、このコンセプトは自国のみの統合作戦及び多国間の統合作戦の双方に適用されるものである。このコンセプトの中心的考えである戦闘領域間の相互作用は、統合軍内の相互作用又は外国軍との一体化の集大成たりうる。

 本コンセプトは、抵抗されるアクセスを概念的用語として使用している。このコンセプトは特定のアクセス阻止及びエリア拒否のシステムを打倒するための戦術、技術や手順を定めたものではなく、そのための手段を開発するための努力に情報を提供することを企図している。これは、特定の計画上の要求を確立するためのものでもない。これは、本文書に記述されたアプローチを実施するために必要な広範な能力を導き出すものためのものである。

 本コンセプトは、アクセス阻止・エリア拒否という課題により具体的に向き合うより下位のコンセプトをつなぐ橋渡しとなるコンセプトである。下位のコンセプトには検討中のエアー・シー・バトル・コンセプト (Air-Sea Battle concept) や、進入作戦 (entry operation) や沿岸作戦 (littoral operation) などがある。


エアー・シー・バトル

 アクセス阻止/エリア拒否能力が、統合軍の行う作戦に対して、ますます大きな課題となっていること から、国防長官は海軍省及び空軍省に対し、エアー・シー・バトル(ASB)・コンセプトの開発を指示した。 ASBの意図するところは、戦闘指揮官に対し、洗練されたアクセス阻止/エリア拒否能力を行使する敵対者 を抑止し、必要であれば打ち負かすのに必要な能力を提供するために、空、陸、海、宇宙及びサイバー空 間の兵力の統合(integration)を改善することである。ASBは統合軍が、将来における米国の国益を維持・ 防衛するために必要となる兵力投射能力を有することを確かなものにすることに焦点を当てている。

 ASBコンセプトは、伝統的な米国の兵力投射の発展と、21世紀にむけた米国の国家安全保障戦略の 中核的な支援要素の両面を有している。しかしながら、ASBはアクセス阻止/エリア拒否の脅威に対 する空軍及び海軍の連携の強化に焦点を当てた、限定的な作戦コンセプトであることも重要である。 本コンセプトはこのような脅威を打ち負かすために必要な活動、これら活動を実施するに当って必要 な物資及び非物資的な投資について示している。

 空軍省及び海軍省の協力を強化するために、ASBには3つの主要要素がある。第1の要素は、期間を 通じてアクセス阻止/エリア拒否に対する公式の協力を担保する、持続する組織モデルを発展させ るための制度上の関与である。第2の要素は、海空軍間で能力の適切な統合が行われることを担保す る概念的な連携である。最後の要素は、ドクトリン、組織、訓練、機材、リーダーシップ、教育、 人事及び施設におけるイニシアチブであり、これが必要なときには補足的に、能力上必要とされた ときには十分に、インターオペラビリティが十分に担保され、実現可能であれば効率性を追求した 統合的な調達戦略に基づいて配備されるよう、統合的に発展することである。



4.オペレーショナル・アクセスの本質

 オペレーショナル・アクセスの必要性は、世界で始めて軍隊による海外侵攻が行われた時から存在している。世界の大半から2つの大洋で隔てられた米国にとって、オペレーショナル・アクセスは、常に変わらずその必要事項であり関心事項であった。

 米軍を展開するには、国際水域や国際空域、非主権的サイバー空間、宇宙及び電磁スペクトラムの大々的な利用が必要である。国際的な市場への自由なアクセスから敵対的な領土への兵力の展開に至るまで、米国的なライフスタイルと国益のためには、国際公共財における行動の自由が極めて重要である。実際、オペレーショナル・アクセスを巡る争いは、第2次世界大戦における太平洋正面や北大西洋の戦いに見られるように、事実上、戦闘のあらゆる局面に影響する。

 武力を以って抵抗する相手に直面して、オペレーショナル・アクセスを得て、これを維持するには、不可分の2つの要件を満たさなければならない。第1に敵のアクセス阻止・エリア拒否能力を、戦闘力の利用を通じて打倒する戦闘任務である。第2に、必要な距離を通じて戦闘力を移動し、これを支援する主として兵站任務であり、これ自体が困難となりうる。これらは相互に依存している。抵抗されるオペレーショナル・アクセスに関するいかなるコンセプトも、この両者を満たさなければならない。

 この文書において、アクセス阻止とは、敵部隊が作戦区域に進入することを阻止すべくデザインされた、通常は長距離の活動及び能力をいう。アクセス阻止活動は、主として海空から接近する部隊を対象としているが、同様にサイバー、宇宙、或いは他の手段でそのような部隊を支援する部隊を対象とする場合もある。エリア拒否は、敵部隊を近づけさせないのではなく、作戦区域内で敵の行動の自由を制限するようにデザインされた、通常は近距離の活動及び能力をいう。エリア拒否能力は、地上軍を含めたあらゆる領域の兵力を対象としている。アクセス阻止とエリア拒否の区別は厳密なものというよりは相対的なものであり、多くの能力がこのどちらにも適用することができる。例えば、沿岸水域ではエリア拒否をおこなった潜水艦が、遠距離哨戒に使用されたときにはアクセス阻止能力ということもありうる。

 オペレーショナル・アクセスの課題は、主として実際の作戦開始前に存在する諸条件により決定される。これらの諸条件は、危機が拡大する途中の敵味方の活動によって影響されうる。地理的条件、特に距離は、他のいかなる要素にも増してアクセス上の課題となる。エアー・パワー及び長距離攻撃兵器の進歩は、距離の影響をいくらかは軽減したものの、完全に取り除いたわけではない。一方で、サイバー能力は距離による影響を受けない。これらの進歩は攻撃側の利点だけでなく防御側にも適用され、より長距離から攻撃する能力を獲得することができる。

 歴史的に、距離のもたらす悪影響を緩和する鍵となる方策は、予想される作戦区域に前方基地を設立することである。永続的或いは長期運用される前方基地は、パートナー諸国を安心させ、敵対勢力を抑止する効果もある。

 政治的条件も、アクセス上の課題に影響する。軍事的及び政治的に支援してくれる友好国(施設、領水、領空へのアクセスを含む)は極めて重要となりうる。前向きで有能な友邦との長年のわたる協力は成功する上で重要であり、逆に、敵対者が地域及び接近路で強固なネットワークを構築している場合には、オペレーショナル・アクセスは大きな課題に直面することになる。

 危機の初期に、前方展開又は域内に既に展開している戦闘部隊のプレゼンスは、オペレーショナル・アクセスを容易にし、或いは最初から敵対行為を抑止することができる。国際水域に事実上無限の間留まることができる海軍部隊は、そのような任務に最適である。航空、宇宙兵力も、生じつつある危機に対応するために迅速に展開する上で、その速度と世界的な到達能力を生かすことができる。一方で、前方展開兵力及び基地は、先進的な警戒能力が無ければ、攻撃に対して脆弱であるとも言われる。

 米国は世界的に兵力を投入・維持するため、本国の基地までの交通線を防衛しなければならないが、自らの領域内で活動する敵対者の側にはそのような重荷は無い。米統合軍は殆ど常に国際水域及び国際空域を通過する必要があるが、敵対者の側にはそのような必要は無く、また、米国をそのような地点で攻撃するかもしれない。このような必要性は、米国の側のみに存在する潜在的な弱点を作り出している。


5.将来の作戦環境下におけるオペレーショナル・アクセス

 オペレーショナル・アクセスそのものは新しいものではないが、統合軍が将来においてこれを獲得するための諸条件のいくつかは全く新しいものである。作戦環境における以下の3つの傾向が、米国の統合軍がアクセスする上での妨害活動をより複雑なものにする。

 (1) 作戦空間におけるアクセス及び行動の自由を拒否しうる兵器・技術の劇的な改善と拡散
 (2) 海外における米国の防衛態勢の変化
 (3) 宇宙及びサイバー空間が、重要性を増し、かつ、争われる作戦領域となっていること

 最初の傾向は、作戦空間におけるアクセス及び行動の自由を拒否しうる兵器・技術の劇的な改善と拡散であり、これは先進的なテクノロジーだけでなく、基本的或いは原始的な能力の革新的な使用からも生まれてくる。

 鍵となる「アクセス阻止」能力には次を含む:

 1000海里以上の射程から、前方基地、展開している米軍及びこれを支援する兵站を正確に攻撃できる水上、空中、潜水艦発射型の各種弾道及び巡航ミサイル
 衛星、航空機、陸上レーダー及び艦船のレーダーを含め、必要なターゲッティング情報を提供する長距離偵察及び哨戒システム
 米国が兵力投入する上で不可欠な衛星システムを機能不全にすることができる運動エネルギー及び非運動エネルギーの衛星攻撃兵器
 米国の基地と作戦戦域の間の国際水域及び領水における米国及び友邦の海上交通線(SLOC)を遮断できる潜水艦部隊
 軍民双方にとって必須のインフラ及び米国の指揮統制システムを混乱させることを狙いとしたサイバー攻撃能力
 米国の基地、友好国の基地、さらには米本土等を攻撃しようとするテロリスト
 作戦区域への接近路において、直接或いは不正規戦をしかける能力がある特殊作戦部隊


 これらのアクセス阻止能力の向上に伴い、展開する軍は今まで以上にリスクにさらされている。攻撃下における展開は、米統合軍がこの数十年経験していない課題であり、後方にあって安全と思われていた人員、機材も攻撃目標となりつつある。


 鍵となる「エリア拒否」能力には次を含む:

 米国の局地的な航空優勢を拒否することを狙いとした、固定的或いは機動的な航空部隊及び防空システム
 目標とするエリアで米国の海上優勢を拒否するための、短距離対艦ミサイル及び先進的な魚雷を装備した潜水艦
 以前の通常弾頭よりも正確性と殺傷能力を増し、地上部隊を含めた地上目標を攻撃することを狙いとした精密誘導ロケット、野砲、ミサイル、迫撃砲
 選択された地域の利用を拒否する科学、生物兵器
 作戦エリアにおける米国の指揮統制を妨害し、無力化し、破壊するためのコンピューター及び電子攻撃能力
 海峡、地峡、長い沿岸、又は空港を迅速に封鎖するための大量の機雷及び地雷
 複雑な沿岸水域及び海峡に展開した、武装し爆薬物を搭載した小型舟艇
 陸上機動兵力
 目標エリアにおいて、直接或いは不正規戦をしかける能力がある特殊作戦部隊
 目標エリアを動き回り、情報収集又は攻撃を行う無人航空機、無人潜水艇等の無人システム

 上記の能力はかつては、大国のみが入手できたが今日では、より弱い国や、非国家主体でさえも入手可能となりつつある。いくつかの敵は、これらの能力のうちの少数を限定的に保有しているに過ぎないが、その他の敵は、統一された指揮統制の元で完全に統合化され多層化された陸、空、海、サイバー、宇宙兵力からなるアクセス阻止/エリア拒否を展開し、相互支援の下で運用するであろう。


図1 多層的統合的防衛の一部としてのアクセス阻止・エリア拒否能力


 いくつかの敵は、多層的で多領域にまたがるアクセス阻止システムと、それを運用しうる地理的な縦深性を有しており、米国が目標とするエリアに到達する前にこれを実際に打ち負かそうとするかもしれない。他の敵は、物理的に米国を作戦エリアから追い出すチャンスは無い代わりに、米国が許容できないレベルの損害を与えようとするかもしれない。


 将来のオペレーショナル・アクセスに影響する第2の傾向は、関連するファクターの結果であるところの海外における米国の防衛態勢の変化である。最初のファクターは「世界中の米軍基地のネットワークの衰退である。グローバル化する世界において、地域的な影響力とアクセスを巡る競争は激しさを増している。冷戦直後は、米国以外にパートナーのオプションが無かった国に対し、今日では様々な勃興する国家が米国に代わるものを提供している。脅迫であれ勧誘であれ、多くの国が、米国が冷戦時代に謳歌していたような長期の基地設置の権利のようなものを提供することを、好まないようになるであろう。遠征作戦のために基地を開設することは、米国の軍事計画立案者及び外交官にとって、既に最重要の懸念事項であるが、この課題は今後さらに大きなものになるであろう。

 第2のファクターは、極めて限られた資源の割り当てである。国際的に認められたとしても、脅威予測が困難で、情勢が劇的に変化する不透明な時代にあって、全ての考えうる脅威に対応できるだけの兵力を世界中に駐屯させることは最早できない。

 第3のファクターは部隊防護(force protection)である。テロが増加し、精密誘導兵器の入手が容易になり、国家の主権がセンシティブな話題となっている現代、海外における米軍部隊は摩擦の原因であり、攻撃目標となっている。

 第3の傾向は、宇宙及びサイバー空間が、重要性を増し、かつ、争われる作戦領域となっており、兵力の投入にとって死活的に重要となっていることである。議論の余地はあるが、これは過去数十年における抵抗されるアクセスに生じた課題の中で、最も重要で抜本的な変化である。

 宇宙とサイバー空間は、他の作戦領域に対する支援作戦においても、それ自身を作戦領域としても、重要性を増しつつある。その重要性ゆえに、多くの将来の敵が宇宙のコントロールと、サイバー空間における優越を、米統合軍のオペレーショナル・アクセスを拒否するための手段として争うであろう。実際、将来の敵対者にとって、宇宙とサイバー空間は最優先の作戦領域となるだろう。なぜなら、そのための能力は既存の(市場)から入手可能であり、米国が(敵対勢力による)作戦の効果を追跡したり、あるいは発見することすら困難だからである。

 最近数十年の出来事は、米統合軍が邪魔されずに作戦エリアに戦闘力を投入できたときには、決定的な成果を挙げることができることを示している。武力による抵抗で米国のアクセスを拒否できる能力を彼らが有していることを気づいた敵が殆どいなかったので、この期間における米国のオペレーショナル・アクセスは本質的に妨害を受けなかった。上記の3つの傾向の組み合わせは、このような計算を劇的に変化させてしまった。国家或いは非国家主体といった将来の敵は、米国に対するアクセス阻止・エリア拒否戦略を、彼らにとって好ましい行動方針として見るだろう。多層的で完全に統合化されたアクセス阻止・エリア拒否防御を多数の戦闘領域に展開する敵対勢力は、米国のオペレーショナル・アクセスを完全に排除しようとするであろうし、より能力が劣る勢力は米国が政治的に受け入れ困難な損害をするだろう。

 そのような戦略はいくつかの共通項を有しているであろう。

 紛争前に、情報作戦を含めた長期的な準備作戦を行い、影響力の増大と域内におけるアクセス阻止・エリア拒否能力の構築を行う。併せて、米国のアクセスを拒否するような政治的状況を域内のアクターに対し醸成する。
 多数の死傷者が生じるように作為した消耗戦、大打撃を通じて、米国が許容しがたいコストを負わせる。
 可能な限り深い戦略的・作戦的縦深を作り出し、そこで死傷者を生じさせるとともに、米側の根拠地あるいは乗船地でサボタージュを起こすことで米軍の展開を阻止する。
 大量破壊兵器の使用を含めた、ミサイル、特殊部隊、非正規部隊による米軍前方基地への攻撃
 米国の特に遠距離の指揮統制、通信並びに宇宙及びサイバー能力への攻撃
 固定又は脆弱な通信線及びサイバー攻撃を通じて兵站の指揮統制を混乱させ、米国の補給活動を攻撃する。
 局地的な航空及び海上優勢あるいは地上における機動の自由を巡る争いと組み合わせてアクセス阻止・エリア拒否を行う。


6.軍事的な問題:先進的なアクセス阻止・エリア拒否環境下における抵抗されるオペレーショナル・アクセス

 将来の統合軍にとって極めて重要な問題は、以下の3つの傾向がある中、軍事力を作戦エリアに投入し、それを武力による抵抗に直面しても維持することである。

 (1) 作戦空間におけるアクセス及び行動の自由を拒否しうる兵器・技術の劇的な改善と拡散
 (2) 海外における米国の防衛態勢の変化
 (3) 宇宙及びサイバー空間が、重要性を増し、かつ、争われる作戦領域となっていること

 この課題に対応するためには、殺傷性と洗練さを増しつつあるアクセス阻止・エリア拒否システムを打倒することが益々必要となる。


7.ジョイント・オペレーショナル・アクセスのためのコンセプト

 この課題に対処するために、将来の統合軍は「作戦領域間の相互作用」を利用し、異なる作戦領域においてその能力を単に足し合わせるのではなく相乗的に運用することで、強点を強化し、弱点を補っていく。これにより、いくつかの領域で優位を確立し、任務達成に必要な行動の自由を獲得する。作戦領域における優位の組み合わせは、敵の能力及び任務の要求に基づく状況により異なる。

図2 作戦領域間の相乗作用


 ここでいう優越とは、特定の作戦領域におけるある軍の他の軍に対する支配の度合いであり、前者がある期間と場所において、他方から阻止されるだけの干渉を受けない状況をいう。作戦領域の優越の組み合わせは、敵の能力及び任務の要求といった状況により異なる。いかなる条件でどの組み合わせを選ぶかは、作戦立案の機能である。ある作戦領域における優位は、広範囲に及ぶものでも永続的なものでもないであろう。優位はむしろ地域的で一時的なものである。

 このコンセプトは、作戦領域を通じての活動と能力についての今まで以上に深く、低いレベルでの統合を想定している。より低いレベルにおける作戦領域の相乗効果を受け入れることは、一瞬の局地的機会を活用する上でしばしば重要となるテンポを作り出す上で重要である。このコンセプトは、さらに完全でより柔軟な、伝統的な空陸海の戦闘空間と宇宙とサイバー空間との一体化をこれまで以上に想定している。

 作戦領域の相乗効果は、統合軍に固有の非対称的な利点を作り出し活用するものである。例えば、対艦兵器を打ち負かすエアパワー、防空網を無力化する海軍力、空海兵力に脅威を与ええる地上兵器を無力化する地上兵力、宇宙システムを打ち負かすサイバー作戦といった具合である。(ただし、これは統合軍が対称的優位を捨て去ることを示唆するものではない)

 相乗効果は、敵のアクセス阻止能力を外側から攻撃するときに適用されるだけでなく、作戦エリア内に前方展開された兵力が敵システムを内側から攻撃するのにも適用される。

 能力が統合され作戦領域の相乗効果を達成すべきレベルは、コンポーネントレベルから、戦術レベルまで様々である。


8.オペレーショナル・アクセスの指針

 中心的考えである作戦領域の相乗効果は、大まかに言えばいかに統合軍が武力抵抗に直面してオペレーショナル・アクセスを獲得するかを述べている。以下の一般原則は、基本的なコンセプトにより詳細な説明を加えるものである。これはチェックリストではなく、どちらかといえば判断の基準である。

事後の作戦におけるアクセスへの障害を減らすことも考慮に入れて、より幅広い任務の必要性を基礎として、アクセス獲得のための作戦を実施せよ。
オペレーショナル・アクセスはそれ自身が目的ではないことから、統合軍はアクセス・オペレーションを他のより広範な目標と、できれば国家の他の力と連携して実施すべきである。重要なこととして、統合軍司令官は、必要以上に深い関与を避け、目標達成に必要とされる以上に敵領内に深く侵攻すべきではない。同時に、アクセス阻止・エリア拒否が備えている殺傷力から、指揮官は可能であれば、敵のアクセス阻止・エリア拒否防衛網に踏み込んで攻撃することを必要としないような戦役(計画)を立案すべきである。さらに、この殺傷性ゆえに、指揮官と政治指導者は、状況開始後速やかに、そのような兵器の使用により、状況が急速にエスカレートする可能性があることを考慮すべきである。最後に、軍事力の使用以外に国家目標を達成する要素があるのであれば、軍事力使用のリスクよりもそちらが望ましい。

アクセス促進のため、事前に作戦区域を準備せよ。
 既に述べたとおり、抵抗されるアクセスによりもたらされる課題は、主として戦闘開始前に作り上げられた条件により決定されるであろう。そのような条件の多くは、国家的あるいは多国間の課題であるが、統合軍は自身が他の省庁、特に国務省を支援していることに気づくだろう。
 作戦エリアの準備は戦闘部隊の指揮官にとって継続的に優先事項でありつづけ、戦闘のはるか前から始まり、戦闘開始後も継続する。指揮官は他の省庁、外国の軍隊とこれについて協力しなければならない。事前にアクセス条件を改善するために重要で継続しなければならないことは、全般及び異なる作戦領域の状況把握を改善するための情報、哨戒及び偵察である。これにより、域内における敵のアクセス阻止・エリア拒否の能力、計画及び準備を明らかにすることができる。
 宇宙及びサイバー空間並びに電磁スペクトラムにおける作戦も同様に、航法、指揮統制、照準、維持、情報を確実なものにするために継続されるだろう。コンピューター・ネットワークにおける攻防双方の作戦も、戦火を交えるはるか前から開始されるだろう。

多様な基地設定オプションを考慮せよ。
既に述べたとおり、前方基地の使用は前方展開における距離の要素を軽減するための第1の手段である。海上機動基地を含む前方基地は、部隊と補給品の展開を支援する極めて重要な「アクセス・インフラ」を構成している。基地の能力と容量が大きいほど、最終的に投入される兵力が大きくなる。このことから、将来の敵はアクセス阻止・エリア拒否戦略の一部としてこれらの基地を攻撃することが予想される。攻撃手段としてはミサイルからテロ攻撃まで幅広く考えられ、大量破壊兵器の使用も考えられる。したがって、抵抗されるアクセスにおいて脆弱であることは否定できないが、前方基地は潜在的に相当のリスクを負いつつも維持される。
 作戦を継続する上で、いずれは作戦エリア内に大規模な基地が必要となる。このジレンマを解決するためのオプションが複数あり、現実的な解決法はそのいくつかを組み合わせることである。最初のオプションは、強化された永続的な基地を建設しこれを防衛することである。第2のオプションは大規模な基地を多数の小規模基地に分割し、冗長性を高めるとともに敵の目標選択を複雑化することで、脆弱性を減らすというものである。このオプションには、自らの兵站能力及び部隊防護に負担がかかる傾向がある。第3のオプションは、基地分散と併せて、不毛の地に臨時基地を作るというものである。小規模、特殊部隊向けには、放棄された飛行場や基地などの軍民施設が考えられる。このような基地は目標になりにくいが、永続基地に比べると能力が低い第4のオプションは海上基地(seabasing)であり、これは主権問題を減らすという利点もあるほか、敵が沿岸一帯を防衛しなければならなくなるという利点もある。ただ、海上基地は容量の点で限定的である。最後のオプションは前方基地への依存度を減らすことであり、これには、上陸作戦、長距離攻撃、サイバー、電子及び宇宙能力がある。

同時並行的な展開、作戦により、主導権を獲得せよ。
米統合軍が大部分の潜在的な敵に対して有している1つの利点とは、複雑な作戦を実行する能力である。複数の線に沿って、複数の戦闘領域で同時に作戦することで、敵の対応能力は手一杯となり、その結果、統合軍が主導権を獲得することができる。
 さらに、これにより、味方の行動オプションが増えるとともに、もし統合軍が主要なインフラに依存していない場合は、敵には複数の接近路の防衛を強制することになる。複数のラインで作戦することで、統合軍に与えられた機会を活用し、不利を覆す能力が改善される。最後に、統合軍が分散することで、敵の大量破壊兵器のリスクが軽減される。

敵のアクセス阻止/エリア拒否能力を混乱させるため、1つ以上の作戦領域における優位を他の作戦領域で活用せよ。
 統合軍は、優位にある作戦領域内及び領域間で、相対的な強さに立つため、作戦領域のミスマッチを発見、利用するだろう。ある作戦領域における優位は、その領域の優位に留まらない。多くの潜在的な敵に対し、統合軍の持つ重要な非対称の優位の1つは、戦闘力を領域を超えて、時には相乗的、相互補強的に活用し、敵の効果的な反撃を防止する潜在力にある。当初、どの作戦領域から作戦を開始するかは、任務や敵の能力、様々な作戦領域における弱点次第であり、定まったものはない。通常、統合軍の作戦は、初期における情報作戦及び宇宙並びにサイバー空間の作戦の実施を含んでいると言われる。なぜなら、これらの作戦領域における行動の自由が重要性を増しているからである。
 アクセス阻止・エリア拒否防御が弱体化させる前には、秘匿性の高い部隊が、全ての作戦領域における早期侵入の鍵を握る。地形が許せば、海中環境は敵の銃火にさらされる事も少なく潜在的に価値ある場所である。海中部隊は分散して行動する場合が多く、他の作戦領域から見て限られた脆弱性しかもたない。水中戦は、海上優勢獲得にとって重要である他、他の作戦領域に対しても、対地ミサイルや電子戦で攻撃することができる。空も一般的に早期において努力を傾注される作戦領域であり、他の作戦領域に広く急速に影響を与えることができる。特殊部隊も敵の鍵となる能力を発見し、照準し、破壊する上で価値ある兵力である。
 これに対し、一般的に、巨大な地上軍は、壊滅的な被害を受ける可能性があることから、敵のアクセス阻止・エリア拒否兵器の射程内に進入する最後の部隊となるだろう。
 他の作戦領域への拡張の順番は、様々なファクター次第である。宇宙及びサイバー空間並びに電磁波スペクトラムへのアクセスは、他の領域における優越を前提としない。一方で、地上領域及び程度は下がるが海上領域へのアクセスには、航空領域での優越が重要な前提条件となるであろう。

味方の偵察・哨戒活動を防護しつつ、敵の同活動を混乱させよ。
 偵察/対偵察戦闘は、いかなる戦闘作戦においてもより良い状況把握を得るために重要である。敵の母基地領域に侵入することから、統合軍は情報面では不利な立場からスタートし、状況は敵がしばしば複雑な環境下に秘匿した位置からアクセス阻止・エリア拒否能力をあらわにするにつれ悪化するであろう。前方展開された兵力から提供される情報により、この不利は緩和されうる。統合軍はこの不利を覆すため、大々的な情報収集、偵察及び哨戒活動を積極的に行わなければならず、これには威力偵察も含まれる。更に、敵の偵察及び哨戒作戦を妨害し、欺瞞や隠蔽を行うことで、敵の状況把握を劣化させる必要がある。

任務達成に必要な、敵の防衛網の突破及び維持のため、局地的な領域優勢の空間又は回廊を作り出せ。
 特定の作戦領域において、作戦期間を通じて永続的な優位を達成する必要は無い。過去数十年間、統合軍は通常、そのような優位を保ってきたが、将来の統合軍は必ずしも必要としない。そのような条件を待つ統合軍指揮官は、主導権と機会を失うことになる。それよりも、非対称の優位と作戦領域間の相乗効果を利用することで、将来の統合軍は、必要とされる作戦領域に任務達成に必要とされるに十分な間、局地的な領域優勢の空間又は回廊を作り出すであろう。

戦略的な距離から、鍵となる作戦目標に直接機動せよ。
 統合軍の中でもいくつかの部隊は、敵の重要拠点に対して、母基地又は作戦区域外の地点から、前方基地を使用せずに直接作戦を実施できる。前方基地に拘束されないことは、作戦の柔軟性を増すとともに、敵の防御準備を複雑なものにする。このような部隊が占める割合が増加すれば、統合軍の前方基地への依存度が低下し、基地が攻撃された場合の脆弱性も低下する。さらに、部隊展開における中間段階が無くなることで、作戦のテンポが向上し、作戦の休止期間が短縮される。これは、第1撃をかける部隊において特に価値ある能力である。

周辺部から敵の防御を後退させるのではなく、敵のアクセス阻止/エリア拒否防衛を縦深攻撃せよ。
 この構想は、統合軍が敵のアクセス阻止/エリア拒否防衛網深く侵入することを試みることを想定している。そのためには、作戦領域における優位を利用し、拡大し、作戦領域間の相乗効果を最大活用しなければならない。縦深攻撃は、敵の兵站や指揮統制網、長距離火砲や戦略及び作戦予備といった重要目標を攻撃することで、敵の防衛システムの統一性や防衛作戦を混乱させる。
 このアプローチに対する歴史的な代替え案は、敵の防衛網を周辺部から後退させるというものである。このような作戦は消耗戦であり、敵の防衛システムの統一性を圧迫するというよりは、これを後退に伴って兵力を集中させてしまう。これは、時間と空間と引き換えに、統合軍に許容できない死傷者を発生させようという、敵のアクセス阻止・エリア拒否戦略に沿った闘い方であり、不適当である。

敵の目標設定を困難にするため、欺瞞、秘匿、曖昧さを通じて、奇襲を最大化せよ。
敵を奇襲することは常に闘いの鉄則である。殺傷性を向上させているアクセス阻止・エリア拒否兵器の圏内に統合軍を展開することの脆弱性を考慮すると、奇襲はさらに重要で、実際には必須の要件になるかもしれない。しかしながら、奇襲をこれまで以上にしたいと思っても、奇襲の成否は相手の備え次第である。このことは、センサーの普及と情報面での透明性が高まる将来の作戦環境では更に問題となる。したがって、本文書では、奇襲を達成するための方法を3つに区分することとする:それは、欺瞞(deception)、秘匿(Stealth)、曖昧さ(ambiguity)である。
 欺瞞とは統合軍がある行動方針を採用しているのに、別の行動方針を採用するだろうと納得させることである。したがって、欺瞞の成功は、我々の努力というよりも敵を誤誘導するような証拠に敵が引っかかるか否かによるところが大きい。言葉を変えて言えば、成功する欺瞞とは、偽の期待を作り出すよりも、敵が既に有している期待、予測を理解し、それに付け込むところが大きい。将来の抵抗されるアクセス環境下において、欺瞞を達成することは困難であるが、一度達成できれば、その効果は、3種類の奇襲の中で最も大きい。
 秘匿とは、友軍の能力、意図、所在についての情報を敵に与えないことである(秘匿を「ステルス」テクノロジーと混同してはならない。「ステルス」は秘匿の一側面に過ぎない)。センサーと情報ネットワークが発達し、透明さを増している作戦環境において、秘匿を達成することは極めて困難であるが、米軍は戦場に秘匿を取り戻す機会を与えるテクノロジーやその他の手段を追求し続けるべきである。
 第3の手段は曖昧さである。統合軍は可能な行動方針が多数あるような行動を取ることで、敵にその全てに備えるよう強制し、曖昧さを達成する。情報過多ともいえる将来の抵抗されるアクセス環境で、曖昧さは最も成功率が高い奇襲方法である。このコンセプトにおいて、曖昧さには二通りがある。最初のアイデアは、同時に複数の作戦を実行し、敵に多方面での防衛を強要するもの。二番目は、前方の固定基地は、敵にこちらの作戦意図をある程度予想させるため、積み込み港から前方固定基地を経由せずに、直接機動するというものである。
 コンセプトとしては区分されているが、実行においてこれら3つの境界は曖昧となる傾向がある。欺瞞か秘匿かのいずれかに完全に依存することは危険であり、このコンセプトではこれら3つの手法の適切な組み合わせが重要であると想定している。

敵の宇宙及びサイバー能力を攻撃しつつ、我の宇宙及びサイバーアセットを防衛せよ。
宇宙とサイバー空間は、他の作戦領域への支援として、あるいはそれ自身が作戦領域として、今日の全ての統合作戦において重要となっている。他の領域の支援としては、位置測定、航法、時刻整合、指揮統制、ミサイル警報、天候予察、情報収集がある。自身が作戦領域とする分野としては、統合指揮統制や兵站機能への支援がある。このため、大半の敵は統合軍の兵力投入を混乱させるために、宇宙及びサイバー空間における活動を攻撃するアクセス阻止・エリア拒否戦略を採用する。実際、多くの敵は、戦火を交える遥か前から、米国の軍民双方の宇宙及びサイバー空間の利用を混乱させようと試みるだろう。このため、統合軍は宇宙及びサイバー空間能力へのアクセスを防衛することが必要である。
 同時に、多くの潜在的な敵は宇宙及びサイバー空間能力に依存するようになってきている。敵のアクセス阻止・エリア拒否戦略にとって、これらは目標照準にとって死活的に重用になってきている。このため、敵の宇宙及びサイバー空間能力を減退させることは、我のオペレーショナル・アクセスを獲得・維持する上で極めて重要である。


9.ジョイント・オペレーショナル・アクセス及び統合機能

 このコンセプトは、様々な統合機能の発揮についての示唆を含んでいる。作戦領域間の相乗作用を達成するには、5つの作戦領域を跨いだ統合機能の効果的な適用と、しばしば省庁間及び海外のパートナーとの一体性向上が求められる。

指揮統制(Command and Control)
 このコンセプトは、指揮統制に重い負荷をかける。指揮統制システムは、グローバルな距離で作戦し、複数の地点から複数の経路を辿って同時かつ独立して展開し運動するとともに、必要であれば流れるように集結するような部隊を支援しなければならない。同様に、敵が追随できない作戦テンポをサポートし、下位の部隊レベルにおける複数の作戦領域にまたがる統一性を促進しなければならない。このコンセプトの中核である相乗効果は、作戦領域にまたがる計画の立案と実行について、軍種間だけでなくより下位の部隊レベルにおいても高い一体性と同期を必要とする。
 ハイテンポの分散型作戦を支援し、悪化した指揮統制環境に適応するために、このコンセプトは計画と実行に可能な範囲での分散型の指揮統制を構想する。このため、達成目標のみを示した命令が与えられ、隷下指揮官は上級指揮官の意図に合致した形での独立した行動を取る。このような能力のためには、ドクトリン、訓練、教育が必要である。

情 報(Intelligence)
 アクセス阻止・エリア拒否システムの殺傷性及び命中精度の向上から、統合軍は全ての作戦領域において適時に、正確で詳細な情報を収集し、融合し、配布する能力を必要としている。さらに、この情報の収集、融合及び配布は、省庁間及び外国のパートナーをも対称とするかもしれない。これら全てが、現状の秘密区分、アクセス、配布制限についての再検討を必要とするだろう。

火 力(Fire)
 抵抗されるアクセスを打ち負かすには、作戦領域間で柔軟で敏感に反応する殺傷的及び非殺傷的な火力を必要とする。このコンセプトの中心である作戦領域間の相乗効果が強調するのは何と言っても火力である。現在の統合軍の能力はいくばくかの柔軟性と反応性を有しているが、このコンセプトは更なる質的向上を想定している。この目標を達成するには、軍種間或いは戦闘部隊間のより柔軟な火力支援の要求、認可、調整手順が必要となる。
 武力抵抗に対するオペレーショナル・アクセスは、しばしばより規模は大きいものの、古典的な火力と機動の問題となるだろう。統合軍は、機動する部隊の必要に応じて、火力を迅速に集中又は分散できなければならない。
 このコンセプトでは、5つの全ての作戦領域における殺傷的及び非殺傷的な火力は、同一の火力指向及び調整システムで管理されることを想定している。今日では、電子妨害といった伝統的な非殺傷火力は同一のシステムで管理されているが、宇宙やサイバー空間については、機能別の支援司令部によりコントロールされている。このコンセプトでは、将来においては、これらの能力についても、作戦指揮官が、それもより下位のレベルで、より即応的にコントロールされることを想定している。

移動・機動(Movement and maneuver)
 本コンセプトは、統合部隊が目標エリアに前進し、そこで作戦し、アクセス阻止・エリア拒否の環境に反して流れるような適応性の高い運動を行うことを想定している。
 統合火力により支援された、自己完結した統合部隊は、複数の出発地から、複数の作戦ラインに沿って独立して動き、経路上で必要とあれば迂回し、鍵となる目標に対しては集中し、必要とあれば再び分散するであろう。これらの機動部隊は、自らの動きを隠すために欺瞞、秘匿及び曖昧さを最大利用し、許容しがたいリスクや損害を負うことなく目標地域に到達するであろう。
 統合軍の一部は、中間或いは前方の固定基地を経ることなく、鍵となる目標に対して移動の途中で目標を確認・変更しながら、直接機動することができるであろう。
 宇宙及びサイバー空間部隊は、事前に作戦を実施・支援するために、必要に応じて「機動」し、状況が展開するに応じてそのポジションを維持又は改善していくであろう。

防 護(Protection)
 大半の敵のアクセス阻止・エリア拒否戦略は、消耗戦の原則に従って行われるため、統合部隊の防護は、最終的な成功のために極めて重要である。アクセス阻止・エリア拒否に対して部隊を防護することは困難な課題である。全ての防護措置は、敵の攻撃を打ち負かすための受動的及び能動的な手段の組み合わせによって行われるが、アクセス阻止に対する部隊の防護は、目標エリアへの進軍途中の脆弱な状態の部隊の暴露を最小限にすることに重点が置かれる。統合軍は、分散、複数の作戦ライン、高速移動、脅威を回避する機敏な機動、欺瞞その他の手段による隠蔽、敵の情報収集活動の妨害といった手段の組み合わせにより暴露を最小限のものとする。
 統合軍の指揮統制は、敵が努力を傾注してくる重要な機能であることからその防護には特に注意する必要がある。指揮統制システムを防護するために、統合軍はシステム、テクノロジー、必要な時に必要な場所で行動の自由と宇宙、サイバー空間及び電磁スペクトラムへのアクセスを確保するための戦闘技術を発展させなければならない。
 兵站の防護には、兵站基地、配布活動、兵站ネットワーク及び関連データの防護が含まれる。これらには、攻撃に対する防御力の向上、分散化、可能であれば海上基地の利用等が含まれる。
 将来の統合軍にとって、ミサイル防衛とサボタージュに関する懸念が高まっている。前者はミサイルの性能向上と入手の容易化により、後者は多くの敵がこれを安価でかつ効果的な手段と見るからである。どちらの場合でも、防衛手段は、攻撃手段に比較して高価につく傾向がある。

継 戦(Sustainment)
 兵力の投入は、兵站に大きな負荷をかける傾向があることから、継戦能力の維持は将来の統合作戦の必須の要件であり、したがって、敵の攻撃目標となる可能性が高い。統合軍は、敵の能力を計算に入れた新たな継戦コンセプトを必要とするだろう。これらのイノベーションは、新たなプラットフォームのデザイン、さらに強固な情報ネットワーク、戦場にある戦闘部隊により迅速に到達する能力等を必要とするだろう。
 このコンセプトに示されているような分散型の作戦の特質は、自らの補給システムとその指揮統制に負荷をかけることになるだろう。指揮官は、複数の目標を持って複数の場所に存在する部隊を迅速に移動させ、支援し、維持することができる強固かつ柔軟なシステムを要求するだろう。
 このコンセプトでは基地設定オプション、機材物資の事前集積、柔軟で防護された分配プロセスの組み合わせからなる継戦システムを想定している。そのようなシステムの確立がオペレーショナル・エリアへのアクセスを準備する鍵となる。本コンセプトでは、継戦システムにおける劇的な進歩改善ではなく、段階的な改善を視野に入れている。第1に全ての補給物品特に化石燃料についての兵站要求を減少させる。第2に消費率と補給可能レベルの両者について可視化を推進し、補給網のマネージメントを改善する。第3に、米軍の空輸能力と海輸能力の能力及び容量を改善する。
 有機的な兵站能力の限界から、オペレーショナル・アクセスを達成するための作戦が、民間サービスに依存するということもありうる。なお、現在は契約業者への指示は政府の契約官を通して行わなければならないが、今後は部隊指揮官が直接、契約業者に指示できなければならない。なお、兵站基地に対する攻撃等があれば、契約業者もリスクにさらされるが、攻撃から民間人をいかに防護するかは重要な課題である。


10.本コンセプトで要求される能力

指揮統制

JOA-001 移動中に主要戦闘部隊司令部及び被支援/支援部隊間に、信頼性が高い連接及びインターオペラビリティを維持する能力
JOA-002 劣化し或いは厳しい通信環境下で、効果的な指揮統制を行う能力
JOA-003 作戦領域にまたがって、共通のデータベースから状況認識(situation awareness)(味方、敵及び中立の状況を含む)を提供するため、共有可能でユーザーが定義したオペレーション・ピクチャーを作り出す能力
JOA-004 宇宙及びサイバー空間を完全に統合し、より低い部隊レベルを含め、作戦領域にまたがった作戦を統一する能力
JOA-005 隷下指揮官が上級指揮官の意図に沿って独立して行動し、必要とされるレベルで領域間の統一を行うような任務権限の付与を行う能力

情 報 (Intelligence)

JOA-006 抵抗されるアクセスの状況下で敵のコンピューター・ネットワーク攻撃に対して作戦部隊がこれを発見し、対応する能力 JOA-007 抵抗されるアクセスの状況下で、全ての情報源からの情報を適時、性格に融合する能力
JOA-008 抵抗されるアクセスに関連して、あらゆる必要な作戦領域において全てのカテゴリーの情報を明らかにする能力

火 力

JOA-009 付随被害を極限しながら、必要な射程、精密誘導、反応性、可逆性及び永続的な効果を以って、敵のアクセス阻止・エリア拒否能力を位置極限し、照準し、制圧し又は無力化する能力
JOA-010 敵のシステムを遅延させ、混乱させ、破壊するために、発見し、徹底的に交戦するために作戦領域間(cross-domain)を利用する能力
JOA-011 敵のアクセス阻止/エリア拒否能力に対して電子攻撃及びコンピューター・ネットワーク攻撃を行う能力
JOA-012 ある作戦エリアに展開中の敵の兵力及び物資を阻止する能力

移動及び機動

JOA-013 空及び海から、多様な前進軸に沿って戦略的な距離から作戦機動を実施し、支援する能力
JOA-014 敵のデジタル・ネットワークに侵入するために、サイバー空間で「機動」する能力
JOA-015 人員と事前集積物資の結合を含め、展開途上において部隊を指揮統制し、作戦を立案し、リハーサルを行い、部隊の集結を行う能力
JOA-016 襲撃から目標を限定した作戦、更には持続的な陸上作戦に至る(様々な規模の)強制進入作戦を行う能力
JOA-017 統合機動部隊が洗練されたアクセス阻止システムに侵入し、許容可能なリスクで攻撃圏内に近接できるよう、行動を隠蔽する能力

防 護

JOA-018 敵の精密誘導火力能力を含めた敵の照準システムを打倒する能力
JOA-019 敵のアクセス阻止・エリア拒否システムの精密誘導、高い殺傷性、長射程に対抗するために、派遣可能なミサイル防衛を提供する能力
JOA-020 出発地、積み出し港、荷降ろし港、中間集結基地を含めた、軍隊を投入するために必要な基地及びその他のインフラを防護し、必要であれば復元する能力
JOA-021 海及び空を経由して展開される部隊及び補給物資を防護する能力
JOA-022 敵の宇宙での作戦を妨害しながら、友軍の宇宙部隊を防護する能力
JOA-023 妨害されるアクセスの関係でサイバー防衛を行う能力

継 戦

JOA-024 海上基地を含めた固定及び移動基地からなるグローバルなネットワークを経由して、部隊を展開し、運用し、維持する能力
JOA-025 民間の輸送業者や施設を使用するなどして、迅速かつ柔軟に規格外の支援体制を確立する能力
JOA-026 武力抵抗に対するオペレーショナル・アクセスを得るための作戦において、契約業者による支援を企画し、管理し、統合する能力

情報配布 (Information)

JOA-027 敵対行為の前、最中及び事後に、オペレーショナル・アクセスを容易にするために、選択した対象に対し情報を配布し、感化する能力

関 与(Engagement)

JOA-028 アクセスを確保し、長期的な地域の安定を促進するために、関係とパートナーシップを深化し、能力と役割を分かち合う能力
JOA-029 域内のパートナーから、基地の設営、航法、上空通過の権利及び支援合意を獲得する能力
JOA-030 域内パートナーのアクセス能力向上のため、訓練、補給、機材その他の支援を提供する能力


11.本コンセプトを適用する際のリスク

 最も深刻なリスクは、統合軍が本コンセプトで不可欠の相乗効果を達成することに失敗することである。
 同様に、本コンセプトの指針を無視して、領域間を跨いで効果的に戦闘力を発揮するために必要な調整を実施出来ないかも知れない。
 本コンセプトが強調する領域間をまたぐ戦闘力が誤解され、部隊に十分な資源が割り当てられないかも知れない。
 敵の本質や戦争の状況から、敵の混乱させることが困難と導かれているのに、本コンセプトが条件付で混乱が好ましいとしていることから、指揮官と幕僚が敵を混乱させるための正確なメカニズムの分析に貴重な時間とエネルギーを浪費する。
 コンセプトが求める複数の作戦ラインにおける複数の作戦領域をまたいだ同時並行的な活動の統一化が、統合作戦を弱体化させるまでに複雑化する。
 本コンセプトは、敵のアクセス阻止・エリア拒否兵器が、自軍に大きな被害を与える前に、長射程の精密誘導攻撃でこれを無力化することに依存しているが、本コンセプトの時間枠ではこれは非現実的であろう。
 このコンセプトは兵站的に見て支援できないかもしれない。
 国防予算抑制の時代にあって、このコンセプトは経済的に支援できないかも知れない。
 現在の国家政策が、作戦上の要求を支持しないかも知れない。(このコンセプトは敵の領域深く攻撃を行うことを想定しているが、これは政治的に受け入れられないかも知れない)
 武力抵抗に対抗してオペレーショナル・アクセスを達成、維持することには、本来的にリスクをはらんでいる。(戦闘にリスクは付き物であり、特にオペレーショナル・アクセスにおいては、進行する作戦のなかで、機会とリスクを天秤にかけた「高度に計算されたリスク」を避けることはできない。)


12.結 論

 国益を擁護するため、武力抵抗があっても、統合軍はいかなる作戦エリアにも兵力を投入できなければならない。これは新たな課題ではなく、米統合軍が数十年にわたり向かい合ってきた課題である。その状況は変化しつつあり、今後は抵抗されるアクセスを乗り越える能力が死活的に重要となっていくだろう。兵力投入の本質は変化していないが、将来における兵力投入には3つの傾向が影響を与えるだろう。それは、作戦空間におけるアクセス及び行動の自由を拒否しうる兵器・技術の劇的な改善と拡散、海外における米国の防衛態勢の変化、及び宇宙及びサイバー空間が、重要性を増し、かつ、争われる作戦領域となっていることの3つである。

 この課題に対処するために、将来の統合軍は「作戦領域間の相互作用」を利用し、異なる作戦領域においてその能力を単に足し合わせるのではなく相乗的に運用することで、強点を強化し、弱点を補っていく。これにより、いくつかの領域で優位を確立し、任務達成に必要な行動の自由を獲得する。中心となる考え方(作戦領域間の相互作用)は、統合軍が武力抵抗に直面した際に、いかにオペレーショナル・アクセスを得るかを最も一般的な言葉で述べたものである。これを支える指針は基本的なコンセプトをさらに具体的に記述している。このコンセプトを運用できるようにするには、統合機能をまたいだ密接な関係構築と重要な機能の開発と実行が求められる。


別紙A: 用語集(略)
別紙B: 評価プラン(略)
別紙C: 参考文献(略)


(幹部学校研究部 平山 茂敏) 


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1 12月上旬に複数のメディアがJOACについて報じたが、その時のJOACは2011月11月22日付けで、統合参謀本部議長がまだ署名していない「案」の段階のものであった。今回、国防省から公表されたJOACは、表紙の日付が2012年1月17日に変更され、統合参謀本部議長デンプシー大将の署名がなされた「確定版」のものである。なお、どちらもバージョンは1.0で変更は無い。 JOACを公表した統参議長のブログ:http://www.dodlive.mil/index.php/2012/01/release-of-the-joint-operational-access-concept-joac/
2 国力のあらゆる要素を投射することで、国際公共財(global commons)及び選択された主権領域、領水、空間、及びサイバー空間を、国家が妨げられずに使用すること

 本トピックスに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。