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 戦略研究グループ

 排他的経済水域(Exclusive Economic Zone:EEZ)の基礎知識

(トピックス009 2012/01/10)

 近年、排他的経済水域(Exclusive Economic Zone:EEZ)で生起している諸問題に関する理解の一助として、その基礎知識について紹介します。


1 排他的経済水域(Exclusive Economic Zone:EEZ)の成立

 海洋法に関する国際連合条約(United Nations Convention on the Law of the Sea:UNCLOS)(以下「国連海洋法条約」という。)起草過程において、自由航行が許される海域を広く確保したい海洋先進国と、沿岸海域の資源を独占し、近接する海域での他国船舶(特に軍艦)の通航を制限したい途上国・新興国間の激しい論争が生起した。

 当該論争の最中、ケニアの主張が特に顕著であるが、基線から200海里の海域において、海洋資源について沿岸国の権利を主張する経済水域の構想が現れ、いくつかの国が続いた。この200海里水域の登場は、領海それ自体の拡大を封じ込めたい先進国と、できるだけ広い海域で漁業資源を独占したい途上国・新興国のまさしく妥協点であり、国連海洋法条約において、排他的経済水域として正式に成立することとなった。


2 排他的経済水域の法的地位

 国連海洋法条約により、沿岸国には、領海の外に接続して基線から200海里までの範囲で排他的経済水域を設定できることが認められた(海洋法55・57条)。

 続いて、排他的経済水域の設定に伴う沿岸国とその他の国の権利であるが、まず沿岸国について、その権利は「主権的権利」(Sovereign Rights)と「管轄権」(jurisdiction)に大別される。

 主権的権利は、海底の上部水域、海底及びその下の天然資源(生物資源、非生物資源を問わない)の探査、開発、保存及び管理、及び経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動(海水、海流及び風からのエネルギーの生産等)が認められている(56条1(a))。また、沿岸国は漁獲可能量を決定することができる(61条1)。さらに、この主権的権利を行使するにあたり、国連海洋法条約にしたがって制定する国内法令の遵守を確保するため、乗船、検査、拿捕及び司法上の手続を含む措置を実施できる(73条1)。ただし、拿捕された船舶や乗組員は、合理的な保証金の支払等があれば、速やかに釈放される(73条2)。

 管轄権については、人工島、施設及び構造物の設置及び利用、海洋の科学的調査、海洋環境の保護及び保全が認められている(56条1(b))。それぞれ、人工島等に対しての排他的管轄権(60条1,2)、投棄または船舶による汚染に対する国内法の制定と執行(210条、211条5、215条、216条)、外国の科学的調査の際の沿岸国の同意(246条2)等の規定がある。

 次に他の国の権利については、航行及び上空飛行の自由、海底電線及びパイプライン敷設の自由、海洋法条約のその他の規定と両立するその他の国際的に適法な海洋の利用の自由が認められている(58条)。


3 排他的経済水域にかかる我が国の施策

 我が国は、昭和52年(1977年)の「漁業水域に関する暫定措置法」で、東経135度以西の日本海及び東シナ海等を除き、基線から200海里までの「漁業水域」を設けていた。しかし、平成8年(1996年)に国連海洋法条約の批准に合わせて「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定し、一部の例外もなく排他的経済水域を設けた(1条1)。また、我が国と他国との基線間が400海里に満たない場合は、合意による場合を除き、中間線を採用することとしている(1条2)。

 なお、我が国は、中国と平成9年(1997年)に「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」(Japan‐China fishery agreement)(2000年発効)を、韓国とは平成10年(1998年)に「漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定」(Japan‐Korea fishery agreement)(1999年発効)を締結することにより、特定の海域において相互に漁業に従事できることとしている。


4 中国と韓国間の排他的経済水域

 先般、韓国海洋警察庁の男性職員が中国漁船の船員に刺殺されたとの報道は、まだ記憶に新しいことと思う。中国漁船員による抵抗で韓国側に死者が出たのは2008年9月以降、2人目である。各種報道によれば、今回の事件は、韓国の排他的経済水域において不法操業していた中国漁船の取り締まりが発端とされている。

 本件に関連し、中国と韓国は、互いの排他的経済水域の存在を認め、漁業共同委員会の設置により海洋生物資源等を共同管理することを主な内容とする漁業協定を締結している(2001年発効)。ただし、当該協定は両国間に単一の線による境界を設定するものではなく、それぞれ他方の国のみ管轄権を有する水域は認めているものの、日中、日韓における漁業協定のように相互に漁業に従事することのできる「暫定経済水域」を広く設ける協定となっている。


(幹部学校第3研究室 小賀坂 彰一) 


 本トピックスに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。