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 戦略研究グループ

 米国 「中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書」(2011年版)を公表

(トピックス005 2011/8/31)

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中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書(2011年版)イメージ中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書(2011年版)


 米国防省(U.S. Department of Defense)は2011年8月24日、「中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書」(2011年版)(ANNUAL REPORT TO CONGRESS, Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2011)(以下、「中国の軍事力」と呼称)を連邦議会に提出・公表しました。「中国の軍事力」は向こう20年間にわたる中国人民解放軍の動向等について、毎年国防長官が連邦議会に報告するものです。去年、名称が変わったものの、最初に作成された2000年以降、ほぼ毎年公表されてきており、今回で11回目の公表となります(2001年のみ無し)。


 今回の「中国の軍事力」の全体要旨は、以下のようになものです。


 1 米国は、国際ルール及び規範を強化し、地域レベル・世界レベルにおける安全と平和を守る、強く、繁栄し、成功した中国を歓迎する。

 2 中国は国際平和維持活動、海賊対処、人道支援・災害救援、中国国民の海外紛争地域からの退避活動を増大させた。しかし一方で、近代化した中国の軍事力は、外交的優位を獲得、あるいは紛争を有利に解決するための能力増大のために利用され得る。

 3 中台間の軍事的バランスは、引き続き中国側優位にシフトしてきている。

 4 中国の軍事及び安全保障における透明性は徐々に改善されてきているが、増大する能力をいかに使用していくのかについては、依然、不確実性がある。

 5 米国は中国軍の発展及び戦略について引き続き監視していかなければならない。

 6 米国は友好国及び同盟国と協力して、安定的かつ安全な東アジアの環境を維持するために、戦力(forces)、態勢(posture)、作戦構想(operational concepts)を適応させていく。


 その他、空母(ワリヤーグ)は艦載機は搭載されないものの2012年に就役可能となることや、2010年の軍事支出は1,600億ドル以上(見積)であり、2009年の軍事支出が1,500億ドル以上と見積られていた時と比べて増加したことなどが記述されています。

 今年の報告書が昨年度の報告書と比べて特徴的なのは、2つの特別トピック(Special Topic)、すなわち、「中国の発展する海洋戦略」(China’s Evolving Maritime Strategy)と「中国の軍事関与」(China’s Military Engagement)が別の章立てで追加された点です。米国が、「中国の海洋戦略」と「中国の軍事関与」に対して、特に強い関心を持っていることが窺われます。以下では、この2つの特別トピックの大まかな内容について述べます。

 トピック「中国の発展する海洋戦略」では、これまでの中国の海洋戦略の歩みについて概観しつつ、「『遠海』における中国の役割に関する議論」(Debating China’s Role in "Distant Seas")を別枠で取り上げ、中国海軍の海外基地建設に関する議論等について言及しています。そして海軍基地建設と空母開発を、中国海軍の、より「グローバルな」ミッションに志向した徴候である可能性があると見積もっています。

 トピック「中国の軍事関与」では、他国との合同演習(Combined Exercises)、国際平和維持活動(Peacekeeping Operations)、人道支援・災害救援(Humanitarian Assistance/Disaster Relief)、武器輸出(Arms Sales)の観点から分析し、中国の海外への軍事的関与が増加してきていると指摘した上で、今後も中国の軍事関与は、特に他国との合同演習、国際平和維持活動、人道支援・災害救援の分野において増加していくであろうと結論づけています。また中国の武器輸出について別枠で取り上げた上で、イランやスーダンといった、不安定な地域への武器輸出を継続していると指摘しています。

 前述のとおり、報告書の中では「米国は友好国及び同盟国と協力して、安定的かつ安全な東アジアの環境を維持するために、戦力、態勢、作戦構想を適応させていく」と述べられているものの、残念ながら具体的にどのような「適応」をしていくのかについて、報告書の中では明記されていません。この点については我が国の海上防衛を考える上で、今後も、日米同盟の在り方も含めて、中国の動向を見据えつつ、注視していく必要があると思います。

(幹部学校国際計画班  関 博之) 


 本トピックスに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。