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 戦略研究グループ

 米国防総省、初の「サイバー空間作戦戦略」を公表

(トピックス004 2011/7/25)

米国防総省「サイバー空間作戦戦略」


 米国防総省は、7月14日、サイバー戦に関する初の戦略となる、「サイバー空間作戦戦略(Department of Defense Strategy for Operating in Cyberspace)」を公表しました。これは、本年5月にホワイトハウスから発表された「サイバー空間国際戦略(International Strategy for Cyberspace)」を受ける形で、国防面での戦略を明らかにしたものです。なお、報道によれば、公表されたものの他に、30ページの秘密版があると報じられています。

 同戦略では、(1)サイバー空間を一つの作戦領域として扱い、組織、訓練及び装備を行うことで、その潜在的可能性を十分に活用すること、(2)国防総省のネットワークとシステムを防護するための新しい運用概念を採用すること、(3)国家全体のサイバーセキュリティ戦略実現のため、米国内の他省庁、機関並びに民間部門と協力すること、(4)集団的サイバーセキュリティ強化のため、同盟国及び国際社会におけるパートナーと強固な関係を構築すること、(5)優秀なサイバー技術に関わる人材と迅速な技術革新を通じて国家の独創性を推進することの5項目が、国防総省の戦略的構想として掲げられています。

ホワイトハウス「サイバー空間国際戦略」

 なお、この作戦戦略の上位戦略となる、ホワイトハウスの「サイバー空間国際戦略」では、戦略目標として、「国際社会と協調し、開かれた(open)、相互運用性のある(interoperable)、安全な(secure)、そして信頼性のある(reliable)情報通信インフラの整備を図り、国際的通商を支援し、国際的なセキュリティーを強化し、表現の自由と技術革新を促進する。上記の目標を達成するため、国家の責任ある行動という行動規範環境を構築し、パートナーシップを維持し、サイバー空間における法の支配を支援する」ことが掲げられ、外交、防衛、経済、技術等の各分野別の方針が述べられていました。そして、防衛の項目の、「我々は、サイバー空間での活動にはネットワークを越えて影響を及ぼし得るものもあり、そのような事例には自衛による対応が必要となるかもしれないと認識している。(中略)正当な場合には、米国はサイバー空間における敵対行為に対しても、我が国に対する他の脅威と同様に対応する。全ての国家は固有の自衛権を有しており、サイバー空間を通じての敵対行為の中には、我々が軍事同盟のパートナー国と共に有しているコミットメントの下での行動を余儀なくされるものがあると考える。我々は、国家、同盟国、友好国そして国益を守るため、外交、情報、軍事、経済上のあらゆる必要な手段を、適用可能な国際法に合致した適切なものとして行使する権利を留保する。そうする場合において、我々は可能な場合はいつでも軍事力行使の前にそれ以外の手段を尽くし・・・(以下略)」という部分が注目を浴びていました。つまり、サイバー攻撃に対しては、自衛権を発動し、軍事力を使用することも選択肢に含まれるというのです。

 今回の国防総省の戦略発表に際しては、サイバー攻撃に対しては軍事的対応を行うということに関し、より具体的な言及があるものとして各メディアからも注目されてきましたが、少なくとも公表された文書においては、この件に関する記述はありませんでした。しかしながら、今回の戦略発表の際にも、米国は、3月に軍事産業から24000もの国家機密ファイルが、外国からのサイバー攻撃によって流出したことを明らかにしていますし、最近では国際ハッカー集団「アノニマス」がNATOにサイバー攻撃を実施し、機密文書を入手したと発表したとの報道もありました。

 つまり、サイバー攻撃に対しては軍事力使用の可能性も辞さずとの米国の見解は、サイバー攻撃に関する同国の強い脅威認識の現れといえるでしょう。今後は、米国によるサイバー空間での国際的ルール確立に対する積極的な取り組みが予想されると共に、国防省の戦略構想の中に、同盟国との集団的サイバーセキュリティに関する連携強化も述べられていることから、我が国等にも今後具体的なアプローチがあることも考えられます。サイバー攻撃の脅威は、当然我が国にとっても重大な問題であり、サイバー空間を巡る国際社会の動向に、引き続き注目が必要です。

(幹部学校第3研究室  高山 裕司) 


 本トピックスに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。