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 中国 新・国防白書を公表

中国 新・国防白書を公表



(トピックス001 2011/4/26)

 中国国務院新聞弁公室は、2011年3月31日、2年ぶりとなる国防白書、「2010年中国の国防」を発表した。中国は1998年以降2年おきに白書を公表しており、今回が7回目。

 前回の白書と比較すると、「防御的国防政策」を堅持し、「永遠に覇を唱えず軍事拡張を行わない」という基本方針は変わらないものの、情勢認識についてより率直な表現が見られる。例えば、国際安全保障環境について、戦略の競争が激烈となり「伝統大国」(米国等)と「新興大国」(中国等)の矛盾が表面化しているとの認識を示し、アジア太平洋地域に関しては、「安全保障情勢は総体的に安定」しているものの「朝鮮半島情勢はしばしば緊張」し、「領土と海洋権益を巡る係争が熱を帯びている」などと述べている。白書は従来から米国の戦略を覇権主義と呼んで批判してきたが、今回は米国との戦略のせめぎ合いを認め、また中国周辺の具体的な不安定要素について強調している。

 中国当局の言によれば、白書は中国軍の透明性を高め、中国脅威論に反駁するものだという。確かに、初めて平時の軍事力の運用方針を記述、軍事法規体系を解説し、軍事上の相互信頼の構築推進について「日中防衛交流の重視」を含め記述しており、また、平和・発展・協力を旨とした「ウィン・ウィン」の安全保障環境構築を目指すと述べるなど、その意欲は伺える。しかし、装備品購入の内訳が公表されておらず建造中とされる国産空母に関する記述もないように、不透明性を払拭するにはまだ不十分と言える。透明性の確保には、一層の情報開示と実際の行動を通じた信頼獲得が必要であろう。

 また、白書は海洋権益への意欲を明確にしている。海洋権益の擁護を国防の目標の一つに定め、海軍が「近海防御戦略」に基づいて戦略的威嚇及び反撃能力を強化する方針を示すとともに、海上防衛に関する武装力運用について初めて「海監」「漁政」等の海上法執行機関の任務を明記した。中国の姿勢は、ほぼ同時期に全人代において採決された「第12次5カ年計画」の中で新たに「海洋経済発展の推進」の章を設け、「海洋発展戦略」の制定を謳い、海上法執行能力向上を明記したことにも対応していると考えられる。いわゆる「A2/AD」の戦略思想が垣間見られ、これについては、既にウィラード米太平洋軍司令官が下院軍委員会で「国際的な規範に真っ向から挑戦するもの」と批判している。

 硬軟両面をもつ白書を携え、実際に中国が国際安全保障環境にどうコミットしていくのか、その動向を今後も注意深く観察していく必要がある。

(幹部学校国際計画班  古賀 丈憲) 


 本トピックスに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。