呉地方総監
海将 伊藤 弘(いとう ひろし)
呉地方隊ウェブサイトをご訪問頂いている皆さん、新年明けましておめでとうございます。令和5年の新春をご家族、ご友人と穏やかに迎えておられることとお慶び申し上げます。
さて、先ずもって本サイトへのメッセージのアップが、4月の「海上自衛隊の日」以来となってしまったことをお詫び致します。この間、呉を母港とする約40隻の艦船のロジスティクス、警備区内に勤務する1万人余りの隊員諸君にかかる「人への投資」に全力を尽くして参りました。令和4年を振り返ってみると、コロナ禍にはあったものの、呉海自カレー事業等への協賛・協力、海上自衛隊70周年を祝して行いました呉警備区内でのフリートウィーク関連のイベントなど、地元呉、そして地域の方々との交流が例年以上に盛沢山の一年だったと感じています。お陰様を持ちまして、呉地方隊ツイッターのフォロワー数も昨年3月末着任時の2万1千人余りから、11月には3万人を超えました。加えて、海上自衛隊呉史料館 通称「てつのくじら館」も開館15年目をもって12月初旬に来館者数500万人を達成することが出来ました。永年にわたるご支援、ご愛顧に心からの感謝を申し上げます。
昨年は2月に始まったロシアによるウクライナ侵略に全世界が衝撃を受けました。21世紀には起こり得ないと考えられていた力による現状変更の試みがいとも簡単に行われたことは、我が国にも大きなインパクトを及ぼしました。安全保障論の世界では、一般的に「脅威」は「能力」と「意図」の積で表されると言われています。「能力」の積み上げには時間を要しますが、「意図」は一瞬で変えることが可能であり、瞬く間に「脅威」となり得ることが示されました。加えて、ウクライナの人々の自国防衛にかかる強い気持ちが、我が国を含む多くの国々の支援を引き寄せ、ロシアに対する攻勢につながっていることは、「天は自ら助くる者を助く」というサミュエル・スマイルズの自助論(Self Help)における名言を想起させるところです。
この大きな国際情勢の変化を受け、呉地方隊の我々は何を求められているでしょうか?私は大きく2つあると考えています。1点目は、これまで以上に艦船修理を始めとしたロジスティクスの完遂に努めることです。海上自衛隊に課せられたオペレーションを成し遂げるためには、それを支えている呉を母港とする40隻余りの水上艦、潜水艦のロジスティクスを完遂する必要があります。その2点目は、人の教育、人の充実を図るための「人への投資」の促進です。ここでいう投資は必ずしも予算の投入を意味するものではありません。ハラスメント絶無を期しての教育、良き社会人・良き自衛官としての躾教育、一人一人の個の充実のためのより良いワークライフバランスの追求などが、この投資に当たります。
我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、国家防衛のフロントラインに立つ我々海上自衛隊は、精強・即応の態勢をもって、平素は「戦わずして勝ち」、有事においてはこの国を「守り抜く」ため、引き続き日々任務に邁進してまいります。
令和5年が皆さんに、そしてご家族にとって素晴らしい一年となることを祈念申し上げ、年頭に当たっての私からのメッセージとさせて頂きます。
令和5年元旦 海上自衛隊 呉地方総監
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