国際平和協力センターは、年間を通じ、国際平和協力活動等に関する教育を実施しています。当センターで教育を受ける学生の中には、将来海外派遣を予定している隊員もいます。本ページでは本教育を受けた後、実際に海外に派遣された隊員の所感についてお届けしたいと思います。
国際平和協力中級課程(特別)を修了し、遥か遠く南スーダンの地へ…
3等陸佐 田原 快
こんにちは。UNMISS兵站幕僚として南スーダンで1年間勤務した田原3佐です。兵站幕僚は南スーダン各地に派遣されている各国部隊の補給を管理・監督する業務を担います。また、私は派遣間、UNMISSの文民部門と軍事部門の橋渡しをするリエゾンチームの長を任されました。特にリエゾンチーム長の職務においてはUNMISS全体に係る調整や連絡を実施することから、国際平和協力中級課程(特別)で学んだPKOの変遷やUNMISSのような統合型PKOがどのようなものであるかを知っていたことが非常に役立ちました。例えば、「統合型PKOにおける軍民Integration」について討議した際には、背景知識を十分に理解していたことから議論をリードすることができました。日本から派遣された兵站幕僚として歴代初の「軍事部門司令官賞」を受賞できたのも、本課程に参加したことが大きな要因と認識しています。
UNMISS軍事部門司令官表彰受賞時の写真
令和2年度国際平和協力中級課程(特別)を受講中の田原3佐(当時田原1尉)
国際平和協力中級課程(特別)から初の海外派遣任務へ
1等陸尉 森 克仁
私は、UNMISS航空運用幕僚として令和4年1月から令和5年1月までの1年間南スーダンで勤務をしてきました。私の担当業務は、UNMISSが実施する航空輸送の計画作成及び運航当直業務です。十数名の外国人同僚や南スーダン各地に展開する地方事務所と連携し、UNMISS所属航空機25機を効率的かつ安全な運航ができるように調整を行いました。初めての国際派遣で不安がいっぱいでしたが、本課程で学んだ国際平和協力活動に関する知識があったおかげで、UNMISS全体の状況が理解容易になるとともに、航空課内外の関係各部署との調整をスムーズに行うことができたと思います。
令和2年度国際平和協力中級課程(特別)を受講中の森1尉
国際平和協力中級課程(特別)修了者としてUNMISSに派遣され
3等陸佐 有薗 光代
私は、UNMISS施設幕僚として南スーダン共和国に一年間派遣される機会を得ました。施設課に勤務していた私の職務は、シビリアンのチーフを直接補佐しつつ、各国から派遣されてくる軍人の受け入れや教育を担当、また6ヶ国の陸軍工兵隊に対して任務を付与し南スーダン全土に及ぶ道路整備を担当するポストでした。本教育で、ミッションの原則・構造、法的枠組から文民保護まで幅広い知識を学んでいましたので、軍民入り交じる複雑な環境下においても、関係機関とよく連携し、任務を遂行することが出来ました。また、国際女性デーでスピーチをする機会を得たのですが、ジェンダーやWPS(女性・平和・安全保障)についても背景知識を学習していたお陰で、自信を持って臨むことが出来ました。
国際女性デーにおいてスピーチする有薗3佐
UNMISS軍事部門司令官表彰受賞時の有薗3佐
令和2年度国際平和協力中級課程(特別)を受講中の有薗3佐
国際平和協力基礎講習で得た財産
1等陸尉 原田 寿幸
私は、2021年5月、国際平和協力基礎講習を修了し、同年8月末から翌年8月末まで、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に情報幕僚として派遣され、国連事務総長特別代表(SRSG※1)等による戦略計画作成及びその意思決定を支援する統合任務分析センター(JMAC※2)で、1年間勤務しました。私は、JMACの情報管理チームの一員として、UNMISSにおいて収集される情報資料のチェック、修正、管理等の業務を行っていました。
国際平和協力基礎講習では、国際平和維持活動の背景・変遷、関連法規等について、学ぶことができました。国際平和協力基礎講習で学んだ事項は、派遣間、情報幕僚として情報管理をする際に、JMACチーフ、JMAC分析チームの分析官及び関係部署職員等と認識を共有するために不可欠なものでした。また、日本の国際平和維持活動に関する知識は、他国軍人や国連職員の方々と話す話題となるため、日の丸を背負って派遣される隊員として国際平和協力基礎講習で学ぶ事項は基礎的なものでありますが、大変重要なものであると、身をもって感じました。また、本講習の教官方、一緒に受講した防衛省・自衛隊職員及び内閣府PKO事務局職員とは派遣間も知識を共有したり、近況報告をしたり、良い人間関係を築くことができました。
国際平和協力基礎講習を通じて得た国際平和維持活動に関する知識と人間関係は、派遣間において大変有意義なものであり、今後の勤務においても活用し、国際平和維持活動の一助となれるように、任務に邁進していきます。
※1 SRSG(国連事務総長特別代表)・・・Special Representative of the Secretary-General
※2 JMAC(統合任務分析センター)・・・Joint Mission Analysis Centre
国連メダル授与式においてメダルを授与される原田1尉
情報業務を行う原田1尉
同僚と調整を行う原田1尉
第21回国際平和協力基礎講習を受講する原田1尉
国際平和協力中級課程(特別)修了者としてのMFO派遣
陸上総隊司令部運用部付 2等陸佐 林田 賢明
私は、2021年3月、国際平和協力中級課程(特別)を修了し、同年6月からMFO(シナイ半島多国籍部隊・監視団)連絡調整部副部長(兼ねて第3次シナイ半島国際平和協力隊長)として派遣され、主としてエジプトとの連絡調整業務に従事しています。
アメリカ、イタリア及びノルウェー将校やエジプト現地職員を率いるとともに、MFO司令部内の各国将校等と調整し、MFOが実施する活動に必要不可欠な連絡調整業務を行っています。
本課程で学んだ事は、国際任務に従事するうえで理解しておくべき事項であり、特に多様性の尊重については、現在の勤務に必須であると実感しているところです。また、MFO内には、過去にUNミッションへの参加経験がある隊員も多く、国際任務に対する共通の理解を持つことは非常に重要であり、本課程は大変有益であると感じます。
国際任務への参加予定者だけではなく、多くの隊員が本課程へ入校し、国際任務へ備えるとともに、より幅広い知識・思考をもって、今の職務にまい進することを祈念しております。
令和2年度国際平和協力中級課程(特別)受講時の様子
指揮転移完了報告
執務室
MFO連絡調整部主要幹部
(右から2人目が林田2佐)
ノルウェー式行軍に参加する国際平和協力隊第11次司令部要員
左から
施設幕僚 佐藤 応百3等陸佐(第17回国際平和協力基礎講習)
情報幕僚 橋 忍3等陸佐(第5期国際平和協力中級課程)
兵站幕僚 山之内 祐希3等陸佐(第18回国際平和協力基礎講習)
航空運用幕僚 中林 由貴1等陸尉(第7期国際平和協力中級課程)
撮影場所:UNハウス
※1 課程等名は、国際平和協力センターの課程等名
2 ノルウェー式行軍・・・ノルウェー王国軍が企画した行軍訓練で、多国間における隊員の交流も含めたイベント
国際平和協力基礎講習修了者としてUNMISSに派遣され
3等陸佐 佐藤 応百
私は、2019年5月、第17回国際平和協力基礎講習を修了し、同年6月末からUNMISS(国連南スーダン共和国ミッション)に施設幕僚として派遣され、UNMISSの任務遂行を下支えするミッション支援部隷下の施設課工兵セルで1年2ヶ月間勤務をして参りました。施設課工兵セルでは、UNMISS施設間を結ぶ補給幹線道整備事業の企画・運営、施設任務に関する各国工兵部隊との調整・報告等を行っていました。 国際平和協力基礎講習においては、国際平和維持活動の変遷、関連法規類、民軍連携等について教育して頂きました。中でもグループごとに実施した課題研究では、座学で習得した知識を再整理するとともに、グループ内の多様な意見をまとめることで協調性を向上させることが出来たと感じています。また、部内外の講師による講話においては、国際協力活動の現場での実情や着意点を理解することが出来ました。 国際平和協力基礎講習を修了したことにより、自信をもってUNMISSへの派遣に向かうことが出来、かつ派遣間その成果を発揮出来たものと感じています。この場をお借りして御礼申し上げます。
UNMISS軍事部門司令官からの
表彰受賞時の写真
任務中の写真
世界の同期生と共に
3等陸佐 橋 忍
第5期国際平和協力中級課程においては、陸海空の自衛官10名、過去最多(当時)となる海外からの留学生10名を加えた合計20名で切磋琢磨しつつ多くのことを学ばせていただきました。本教育においては、多様化・複雑化する国際平和協力活動のニーズに応えるべく、ミッションの原則、法的枠組み、基本的な構造、文民・警察官・軍人組織の特性等を学び、答えのない想定課題に対し、自由に考察し、討議し、一案を案出するという柔軟な思考力、総合的な問題解決能力を鍛えることができました。
私は、本課程卒業後、部隊派遣として1回、個人派遣(司令部幕僚)として1回、南スーダン共和国(UNMISS)において勤務する機会をいただきました。特に、司令部幕僚としての勤務においては、中級課程の同期生と共に目の前の多くの課題に向き合い、相互に連携・協力し、それらの問題を一つ一つ解決しながら、任務を遂行することができました。
世界では、現在も12コミッション(2021年2月現在)が展開、9万人以上が平和及び安全の維持のために活動しています。中級課程やミッションで得た知識及び経験を基に今後も任務に邁進していきたいと思います。
現地において同期と再会
(第5期国際平和協力中級課程同期生
レ・ゴック・ソン ベトナム陸軍中佐)
情報業務中の写真
第18回国際平和協力基礎講習で得たこと
3等陸佐 山之内 祐希
国際平和協力基礎講習では、豊富な知識と経験を有する教官陣の教育はとても分かりやすく、それぞれの分野において、プロフェッショナルとして活躍する陸・海・空自衛官及び内閣府国際平和協力本部事務局員の仲間とともに国際の平和と安全について学ぶことができ、とても良い経験になりました。
教育は、国連の概要、PKOの変遷と実績、民軍連携、女性・平和・安全保障(WPS)、文民の保護(POC)、文化・食事・宗教の違いを超えた多様性の尊重、国際・国内法規など幅広い分野を学習し、国際平和協力活動等に関する基礎的な知識を得ることができました。
現在(2020年6月)、私は「世界一新しい独立国」として誕生した南スーダンの平和と安定のため、UNMISS司令部第11次兵站幕僚として勤務しています。慣れない生活環境や新型コロナウイルスにも負けず、世界約60ヶ国の仲間と一緒に勤務できているのは、同講習で得た国連の概要、関連法規等の知識と多様性を認め尊重する心構え、一緒に学んだ仲間の存在のおかげです。
我々の活動を少しでも多くの方が興味をもっていただければ幸いです。
UNMISS司令部第11次兵站幕僚
で活動中の山之内3陸佐
ベンティウ事務所長平原女史に着任挨拶
ベンティウ事務所長平原女史(中央)
セクターユニティ司令官(右)
山之内3陸佐(左)
第7期国際平和協力中級課程で得た財産
1等陸尉 中林 由貴
国際平和協力中級課程では、多国籍かつ多様なバックグラウンドを有する教官、同期と座学・実習等を通じて国際平和協力活動に関する基礎的事項から作戦の計画立案等の応用的事項まで学ぶことができました。特に、文民の保護(POC)、女性・平和・安全保障(WPS)に関する教育は、教育後に国連ミッションに参加する予定であった私にとって、自らの役割についてよく考えさせられるきっかけとなりました。
現在(2020年11月)、私は、国連ミッションUNMISS(南スーダン)に派遣されており、UNMISSで保有する航空機の日々の運航管理に携わっています。現地の航空機の運航は、現地の情勢、新型コロナ対策等の様々な制限がある中で行われており、日々のミッションを達成するため上司・同僚と力を合わせて取り組んでいます。現地の勤務において様々な困難がある中、前向きに取り組めているのは、国際平和協力中級課程において得た多くの知識だけでなく、教育を通じて「多様性を尊重することの重要さ」を経験できたからです。この知識と経験は、現在の職務に活きていると感じます。
これからも日本の国際平和協力活動の一助になれるよう日々精進していきたいと思います。
航空機の運航管理業務中の写真
同じ事務所で勤務する同僚
(文民・ガーナ人)
防衛省 統合幕僚学校 国際平和協力センター
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