資料4 平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について  平成25年12月17日 国家安全保障会議決定  閣議決定  平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について別紙のとおり定める。  これに伴い、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成22年12月17日安全保障会議及び閣議決定)は、平成25年度限りで廃止する。 (別紙)  平成26年度以降に係る防衛計画の大綱 T 策定の趣旨  我が国を取り巻く新たな安全保障環境の下、今後の我が国の防衛の在り方について、「平成25年度の防衛力整備等について」(平成25年1月25日安全保障会議及び閣議決定)に基づき、「国家安全保障戦略について」(平成25年12月17日国家安全保障会議及び閣議決定)を踏まえ、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」として、新たな指針を示す。 U 我が国を取り巻く安全保障環境 1 グローバルな安全保障環境においては、国家間の相互依存関係が一層拡大・深化し、一国・一地域で生じた混乱や安全保障上の問題が、直ちに国際社会全体が直面する安全保障上の課題や不安定要因に拡大するリスクが増大している。また、中国、インド等の更なる発展及び米国の影響力の相対的な変化に伴うパワーバランスの変化により、国際社会の多極化が進行しているものの、米国は、依然として世界最大の国力を有しており、世界の平和と安定のための役割を引き続き果たしていくと考えられる。  国家間では、地域紛争が引き続き発生していることに加え、領土や主権、海洋における経済権益等をめぐり、純然たる平時でも有事でもない事態、いわばグレーゾーンの事態が、増加する傾向にある。  大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散については、その防止に向けた国際社会の取組にもかかわらず、依然として大きな懸念となっている。また、統治機構が弱体化した国家や破綻国家の存在は、国際テロの拡大・拡散の温床となっている。これらは、引き続き差し迫った課題となっている。  海洋においては、各地で海賊行為等が発生していることに加え、沿岸国が海洋に関する国際法についての独自の主張に基づいて自国の権利を一方的に主張し、又は行動する事例が見られるようになっており、公海の自由が不当に侵害されるような状況が生じている。  また、技術革新の急速な進展を背景として、国際公共財としての宇宙空間・サイバー空間といった領域の安定的利用の確保が、我が国を含む国際社会の安全保障上の重要な課題となっている。さらに、精密誘導兵器関連技術、無人化技術、ステルス技術、ナノテクノロジー等の進歩や拡散が進んでおり、今後の軍事戦略や戦力バランスに大きな影響を与えるものとなっている。 2 我が国周辺を含むアジア太平洋地域においては、安全保障上の課題等の解決のため、国家間の協力関係の充実・強化が図られており、特に非伝統的安全保障分野を中心に、問題解決に向けた具体的かつ実践的な協力・連携の進展が見られる。他方、領土や主権、海洋における経済権益等をめぐるグレーゾーンの事態が長期化する傾向が生じており、これらがより重大な事態に転じる可能性が懸念されている。  北朝鮮は、軍事を重視する体制をとり、大規模な軍事力を展開している。また、核兵器を始めとする大量破壊兵器やその運搬手段となり得る弾道ミサイルの開発・配備・拡散等を進行させるとともに、大規模な特殊部隊を保持するなど、非対称的な軍事能力を引き続き維持・強化している。  さらに、北朝鮮は、朝鮮半島における軍事的な挑発行為や、我が国を含む関係国に対する挑発的言動を強め、地域の緊張を高める行為を繰り返してきている。こうした北朝鮮の軍事動向は、我が国はもとより、地域・国際社会の安全保障にとっても重大な不安定要因となっており、我が国として、今後も強い関心を持って注視していく必要がある。  特に、北朝鮮の弾道ミサイル開発は、累次にわたるミサイル発射により、長射程化や高精度化に資する技術の向上が図られており、新たな段階に入ったと考えられる。また、北朝鮮は、国際社会からの自制要求を顧みず、核実験を実施しており、核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っている可能性も排除できない。こうした北朝鮮の核・ミサイル開発は、我が国に対するミサイル攻撃の示唆等の挑発的言動とあいまって、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている。  中国は、地域と世界においてより協調的な形で積極的な役割を果たすことが強く期待されている一方、継続的に高い水準で国防費を増加させ、軍事力を広範かつ急速に強化している。また、中国は、その一環として、周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での他国の軍事活動を阻害する非対称的な軍事能力の強化に取り組んでいると見られる。他方、中国は、このような軍事力の強化の目的や目標を明確にしておらず、軍事や安全保障に関する透明性が十分確保されていない。  また、中国は、東シナ海や南シナ海を始めとする海空域等における活動を急速に拡大・活発化させている。特に、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試み等、高圧的とも言える対応を示しており、我が国周辺海空域において、我が国領海への断続的な侵入や我が国領空の侵犯等を行うとともに、独自の主張に基づく「東シナ海防空識別区」の設定といった公海上空の飛行の自由を妨げるような動きを含む、不測の事態を招きかねない危険な行為を引き起こしている。  これに加えて、中国は、軍の艦艇や航空機による太平洋への進出を常態化させ、我が国の北方を含む形で活動領域を一層拡大するなど、より前方の海空域における活動を拡大・活発化させている。  こうした中国の軍事動向等については、我が国として強く懸念しており、今後も強い関心を持って注視していく必要がある。また、地域・国際社会の安全保障上も懸念されるところとなっている。  ロシアは、軍改革を進展させ、即応態勢の強化とともに新型装備の導入等を中心とした軍事力の近代化に向けた取組が見られる。また、ロシア軍の活動は、引き続き活発化の傾向にある。  米国は、安全保障を含む戦略の重点をよりアジア太平洋地域に置くとの方針(アジア太平洋地域へのリバランス)を明確にし、財政面を始めとする様々な制約がある中でも、地域の安定・成長のため、同盟国との関係の強化や友好国との協力の拡大を図りつつ、地域への関与、プレゼンスの維持・強化を進めている。また、この地域における力を背景とした現状変更の試みに対しても、同盟国、友好国等と連携しつつ、これを阻止する姿勢を明確にしている。 3 四面環海の我が国は、長い海岸線、本土から離れた多くの島嶼及び広大な排他的経済水域を有している。海洋国家であり、資源や食料の多くを海外との貿易に依存する我が国にとって、法の支配、航行の自由等の基本的ルールに基づく、「開かれ安定した海洋」の秩序を強化し、海上交通及び航空交通の安全を確保することが、平和と繁栄の基礎である。  また、我が国は、自然災害が多発することに加え、都市部に産業・人口・情報基盤が集中するとともに、沿岸部に原子力発電所等の重要施設が多数存在しているという安全保障上の脆弱性を抱えている。東日本大震災のような大規模震災が発生した場合、極めて甚大な被害が生じ、その影響は、国内はもとより国際社会にも波及し得る。今後、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震が発生する可能性があり、大規模災害等への対処に万全を期す必要性が増している。 4 以上を踏まえると、冷戦期に懸念されていたような主要国間の大規模武力紛争の蓋然性は、引き続き低いものと考えられるが、以上に述べたような、様々な安全保障上の課題や不安定要因がより顕在化・先鋭化してきており、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成22年12月17日安全保障会議及び閣議決定)の策定以降、我が国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増している。こうした安全保障上の課題や不安定要因は、多様かつ広範であり、一国のみでは対応が困難である。こうした中、軍事部門と非軍事部門との連携とともに、それぞれの安全保障上の課題等への対応に利益を共有する各国が、地域・国際社会の安定のために協調しつつ積極的に対応する必要性が更に増大している。 V 我が国の防衛の基本方針 1 基本方針  我が国は、国家安全保障戦略を踏まえ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から、我が国自身の外交力、防衛力等を強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図るとともに、日米同盟を基軸として、各国との協力関係を拡大・深化させ、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を追求しつつ、世界の平和と安定及び繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく。  かかる基本理念の下、総合的な防衛体制を構築し、各種事態の抑止・対処のための体制を強化するとともに、外交政策と密接な連携を図りながら、日米同盟を強化しつつ、諸外国との二国間・多国間の安全保障協力を積極的に推進するほか、防衛力の能力発揮のための基盤の確立を図る。  この際、我が国は、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備する。  核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していくとともに、併せて弾道ミサイル防衛や国民保護を含む我が国自身の取組により適切に対応する。同時に、長期的課題である核兵器のない世界の実現へ向けて、核軍縮・不拡散のための取組に積極的・能動的な役割を果たしていく。 2 我が国自身の努力  安全保障政策において、根幹となるのは自らが行う努力であるとの認識に基づき、同盟国、友好国その他の関係国(以下「同盟国等」という。)とも連携しつつ、国家安全保障会議の司令塔機能の下、平素から国として総力を挙げて主体的に取り組み、各種事態の抑止に努めるとともに、事態の発生に際しては、その推移に応じてシームレスに対応する。 (1)総合的な防衛体制の構築  一層厳しさを増す安全保障環境の下、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備し、統合運用を基本とする柔軟かつ即応性の高い運用に努めるとともに、平素から、関係機関が緊密な連携を確保する。また、各種事態の発生に際しては、政治の強力なリーダーシップにより、迅速かつ的確に意思決定を行い、地方公共団体、民間団体等とも連携を図りつつ、事態の推移に応じ、政府一体となってシームレスに対応し、国民の生命・財産と領土・領海・領空を確実に守り抜く。  また、各種災害への対応や国民の保護のための各種体制を引き続き整備するとともに、緊急事態において在外邦人等を迅速に退避させ、その安全を確保するために万全の態勢を整える。  以上の対応を的確に行うため、関連する各種計画等の体系化を図りつつ、それらの策定又は見直しを進めるとともに、シミュレーションや総合的な訓練・演習を拡充し、対処態勢の実効性を高める。 (2)我が国の防衛力−統合機動防衛力の構築  防衛力は我が国の安全保障の最終的な担保であり、我が国に直接脅威が及ぶことを未然に防止し、脅威が及ぶ場合にはこれを排除するという我が国の意思と能力を表すものである。  今後の防衛力の在り方を検討するに当たっては、我が国を取り巻く安全保障環境が刻々と変化する中で、防衛力を不断に見直し、その変化に適応していかなければならない。このため、想定される各種事態への対応について、自衛隊全体の機能・能力に着目した統合運用の観点からの能力評価を実施し、総合的な観点から特に重視すべき機能・能力を導き出すことにより、限られた資源を重点的かつ柔軟に配分していく必要がある。  また、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、平素の活動に加え、グレーゾーンの事態を含め、自衛隊の対応が求められる事態が増加しており、かつ、そのような事態における対応も長期化しつつある。このため、平素から、常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動(以下「常続監視」という。)を行うとともに、事態の推移に応じ、訓練・演習を戦略的に実施し、また、安全保障環境に即した部隊配置と部隊の機動展開を含む対処態勢の構築を迅速に行うことにより、我が国の防衛意思と高い能力を示し、事態の深刻化を防止する。また、各種事態が発生した場合には、事態に応じ、必要な海上優勢及び航空優勢を確保して実効的に対処し、被害を最小化することが、国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜く上で重要である。  そのため、装備の運用水準を高め、その活動量を増加させ、統合運用による適切な活動を機動的かつ持続的に実施していくことに加え、防衛力をより強靭なものとするため、各種活動を下支えする防衛力の「質」及び「量」を必要かつ十分に確保し、抑止力及び対処力を高めていく。  同時に、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全保障と密接な関係を有するアジア太平洋地域の安定化に向け、二国間・多国間の協力関係を強化するとともに、防衛力の役割の多様化と増大を踏まえ、グローバルな安全保障上の課題等への取組として、国際平和協力活動(国連平和維持活動、人道支援・災害救援等の非伝統的安全保障問題への対応を始め、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動をいう。以下同じ。)等をより積極的に実施していく。  以上の観点から、今後の防衛力については、安全保障環境の変化を踏まえ、特に重視すべき機能・能力についての全体最適を図るとともに、多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る実効的なものとしていくことが必要である。このため、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハード及びソフト両面における即応性、持続性、強靱性及び連接性も重視した統合機動防衛力を構築する。 3 日米同盟の強化  日米安全保障条約に基づく日米安全保障体制は、我が国自身の努力とあいまって我が国の安全保障の基軸であり、また、日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、我が国のみならず、アジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための「公共財」として機能している。  米国は、アジア太平洋地域へのリバランス政策に基づき、我が国を始めとする同盟国等との連携・協力を強化しつつ、当該地域への関与、プレゼンスの維持・強化を進めている。その一方で、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、日米同盟を強化し、よりバランスのとれた、より実効的なものとすることが我が国の安全の確保にとってこれまで以上に重要となっている。 (1)日米同盟の抑止力及び対処力の強化  米国の我が国及びアジア太平洋地域に対するコミットメントを維持・強化し、我が国の安全を確保するため、我が国自身の能力を強化することを前提として、「日米防衛協力のための指針」の見直しを進め、日米防衛協力を更に強化し、日米同盟の抑止力及び対処力を強化していく。  同時に、一層厳しさを増す安全保障環境に対応するため、西太平洋における日米のプレゼンスを高めつつ、グレーゾーンの事態における協力を含め、平素から各種事態までのシームレスな協力態勢を構築する。  そのため、共同訓練・演習、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動及び米軍・自衛隊の施設・区域の共同使用の拡大を引き続き推進するとともに、弾道ミサイル防衛、計画検討作業、拡大抑止協議等、事態対処や中長期的な戦略を含め、各種の運用協力及び政策調整を一層緊密に推進する。 (2)幅広い分野における協力の強化・拡大  海賊対処、能力構築支援、人道支援・災害救援、平和維持、テロ対策等の分野における協力のほか、海洋・宇宙・サイバー分野における協力を強化し、アジア太平洋地域を含む国際社会の平和と安定に寄与する。  災害対応に関しては、在日米軍施設・区域の存在を含め、米軍が国民の安全に大いに寄与した東日本大震災における事例を踏まえつつ、国内外における自衛隊と米軍との連携を一層強化する。  さらに、情報協力及び情報保全の取組、装備・技術面での協力等の幅広い分野での協力関係を不断に強化・拡大し、安定的かつ効果的な同盟関係を構築する。 (3)在日米軍駐留に関する施策の着実な実施  接受国支援を始めとする様々な施策を通じ、在日米軍の円滑かつ効果的な駐留を安定的に支えるとともに、在日米軍再編を着実に進め、米軍の抑止力を維持しつつ、地元の負担を軽減していく。特に、沖縄県については、安全保障上極めて重要な位置にあり、米軍の駐留が日米同盟の抑止力に大きく寄与している一方、在日米軍施設・区域の多くが集中していることを踏まえ、普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍施設・区域の整理・統合・縮小、負担の分散等により、沖縄の負担軽減を図っていく。 4 安全保障協力の積極的な推進 (1)アジア太平洋地域における協力  アジア太平洋地域においては、災害救援を始めとする非伝統的安全保障分野を中心とする具体的な協力関係が進展していることに加え、ASEAN地域フォーラム(ARF)、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)、東アジア首脳会議(EAS)等の多国間枠組みや、ASEANによる地域統合への取組が進展してきているものの、特に北東アジアにおける安全保障上の課題等は深刻化している。このため、域内の対立的な機運や相互の警戒感を軽減するための協調的な各種取組を更に多層的に推進する。  我が国と共に北東アジアにおける米国のプレゼンスを支える立場にある韓国との緊密な連携を推進し、情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結等、今後の連携の基盤の確立に努める。  また、安全保障上の利益を共有し我が国との安全保障協力が進展しているオーストラリアとの関係を一層深化させ、国際平和協力活動等の分野での協力を強化するとともに、共同訓練等を積極的に行い、相互運用性の向上を図る。  さらに、日米韓・日米豪の三国間の枠組みによる協力関係を強化し、この地域における米国の同盟国相互の連携を推進する。  中国の動向は地域の安全保障に大きな影響を与え得るため、相互理解の観点から、同国との安全保障対話や交流を推進するとともに、不測の事態を防止・回避するための信頼醸成措置の構築を進めていく。なお、同国による我が国周辺海空域等における活動の急速な拡大・活発化に関しては、冷静かつ毅然として対応していく。  ロシアに関しては、その軍の活動の意図に関する理解を深め、信頼関係の増進を図るため、外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を始めとする安全保障対話、ハイレベル交流及び幅広い部隊間交流を推進するとともに、地域の安定に資するべく、共同訓練・演習を深化させる。  また、東南アジア諸国等の域内パートナー国との関係をより一層強化し、共同訓練・演習や能力構築支援等を積極的に推進するほか、この地域における災害の多発化・巨大化を踏まえ、防災面の協力を強化する。インドとは、海洋安全保障分野を始めとする幅広い分野において、共同訓練・演習、国際平和協力活動等の共同実施等を通じて関係の強化を図る。  能力構築支援は、今後の安全保障環境の安定化及び二国間の防衛協力強化に有効な取組であることから、ODAを含む外交政策との調整を十分に図りつつ、共同訓練・演習、国際平和協力活動等と連携しながら推進する。また、積極的に能力構築支援を実施している関係国との連携を強化しつつ、能力構築支援の対象国及び支援内容を拡充していく。  現在進展しつつある域内の多国間安全保障協力・対話において、米国やオーストラリアとも連携しながら、域内の協力関係の構築に主体的に貢献していく。また、多国間共同訓練・演習に積極的に参加していくとともに、ARF、ADMMプラス等の多国間枠組みも重視し域内諸国間の信頼醸成の強化に主要な役割を果たす。 (2)国際社会との協力  グローバルな安全保障上の課題等は、一国のみで対応することが極めて困難である。また、近年、軍事力の役割が多様化し、紛争の抑止・対処や平和維持のみならず、紛争直後期の復興支援等の平和構築や国家間の信頼醸成・友好関係の増進において重要な役割を果たす機会が増大している。  このため、我が国は、平素から、国際社会と連携しつつ、グローバルな安全保障環境の改善のため、各種取組を推進する。  同盟国や安全保障上の利益を共有する関係国及び国際機関等と平素から協力しつつ、地域紛争、国際テロの拡大・拡散、破綻国家、大量破壊兵器等の拡散、海洋・宇宙空間・サイバー空間を巡る問題を始めとするグローバルな安全保障上の課題等に対応するため、軍備管理・軍縮、不拡散、能力構築支援等に関する各種取組を継続・強化する。  その際、特に欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)及び欧州安全保障協力機構(OSCE)並びに英国及びフランスを始めとする欧州諸国との協力を一層強化し、これらの課題に連携して取り組むとともに、装備・技術面での協力・交流を推進する。  国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善のため、防衛・外交当局間の密接な連携を保ちつつ、派遣の意義、派遣先国の情勢、我が国との政治・経済的関係等を総合的に勘案し、国際平和協力業務や国際緊急援助活動を始めとする国際平和協力活動等を積極的かつ多層的に推進する。  特に、国際平和協力活動等については、自衛隊の能力を活用した活動を引き続き積極的に実施するとともに、現地ミッション司令部や国連PKO局等における責任ある職域への自衛隊員の派遣を拡大する。また、幅広い分野における派遣を可能にするための各種課題について検討を行い、必要な措置を講ずる。併せて、自衛隊の経験・知見を活かし、国内及び諸外国の平和構築のための人材の育成に寄与する。 W 防衛力の在り方 1 防衛力の役割  今後の我が国の防衛力については、上記V2(2)の防衛力を構築するとの考え方の下、以下の分野において、求められる役割を実効的に果たし得るものとし、その役割に十分対応できる態勢を保持することとする。 (1)各種事態における実効的な抑止及び対処  各種事態に適時・適切に対応し、国民の生命・財産と領土・領海・領空を確実に守り抜くため、平素から諸外国の軍事動向等を把握するとともに、各種兆候を早期に察知するため、我が国周辺を広域にわたり常続監視することで、情報優越を確保する。  このような活動等により、力による現状変更を許容しないとの我が国の意思を明示し、各種事態の発生を未然に防止する。  一方、グレーゾーンの事態を含む各種事態に対しては、その兆候段階からシームレスかつ機動的に対応し、その長期化にも持続的に対応し得る態勢を確保する。  また、複数の事態が連続的又は同時並行的に発生する場合においても、事態に応じ、実効的な対応を行う。  このような取組に際しては、特に以下の点を重視する。 ア 周辺海空域における安全確保  平素から我が国周辺を広域にわたり常続監視するとともに、領空侵犯に対して即時適切な措置を講じる。また、グレーゾーンの事態も含め、我が国の主権を侵害し得る行為に対して実効的かつ機動的に対応するとともに、当該行為が長期化・深刻化した場合にも、事態の推移に応じシームレスに対応し、我が国周辺海空域の防衛及び安全確保に万全を期す。 イ 島嶼部に対する攻撃への対応  島嶼部に対する攻撃に対しては、安全保障環境に即して配置された部隊に加え、侵攻阻止に必要な部隊を速やかに機動展開し、海上優勢及び航空優勢を確保しつつ、侵略を阻止・排除し、島嶼への侵攻があった場合には、これを奪回する。その際、弾道ミサイル、巡航ミサイル等による攻撃に対して的確に対応する。 ウ 弾道ミサイル攻撃への対応  弾道ミサイル発射に関する兆候を早期に察知し、多層的な防護態勢により、機動的かつ持続的に対応する。万が一被害が発生した場合には、これを局限する。また、弾道ミサイル攻撃に併せ、同時並行的にゲリラ・特殊部隊による攻撃が発生した場合には、原子力発電所等の重要施設の防護並びに侵入した部隊の捜索及び撃破を行う。 エ 宇宙空間及びサイバー空間における対応  宇宙空間及びサイバー空間に関しては、平素から、自衛隊の効率的な活動を妨げる行為を未然に防止するための常続監視態勢を構築するとともに、事態発生時には、速やかに事象を特定し、被害の局限等必要な措置をとりつつ、被害復旧等を迅速に行う。また、社会全般が宇宙空間及びサイバー空間への依存を高めていく傾向等を踏まえ、関係機関の連携強化と役割分担の明確化を図る中で、自衛隊の能力を活かし、政府全体としての総合的な取組に寄与する。 オ 大規模災害等への対応  大規模災害等の発生に際しては、所要の部隊を迅速に輸送・展開し、初動対応に万全を期すとともに、必要に応じ、対処態勢を長期間にわたり持続する。また、被災住民や被災した地方公共団体のニーズに丁寧に対応するとともに、関係機関、地方公共団体及び民間部門と適切に連携・協力し、人命救助、応急復旧、生活支援等を行う。 (2)アジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善  我が国周辺において、常続監視や訓練・演習等の各種活動を適時・適切に実施することにより、我が国周辺を含むアジア太平洋地域の安全保障環境の安定を確保する。  また、同盟国等と連携しつつ、二国間・多国間の防衛協力・交流、共同訓練・演習、能力構築支援等を多層的に推進し、アジア太平洋地域の域内協力枠組みの構築・強化を含む安全保障環境の安定化のための取組において枢要な役割を実効的に果たす。  軍事力の役割が多様化する中、地域紛争、国際テロの拡大・拡散、破綻国家、大量破壊兵器等の拡散等といったグローバルな安全保障上の課題等に適切に対応するため、軍備管理・軍縮、不拡散に関する各種取組を強化するとともに、国際平和協力活動、海賊対処、能力構築支援等の各種活動を積極的に推進し、グローバルな安全保障環境の改善に取り組む。  以上の取組に際しては、特に以下の点を重視する。 ア 訓練・演習の実施  自衛隊による訓練・演習を適時・適切に実施するとともに、アジア太平洋地域における二国間・多国間による共同訓練・演習を推進し、積極的かつ目に見える形で、地域の安定化に向けた我が国の意思と高い能力を示すとともに、関係国との協力関係を構築・強化する。 イ 防衛協力・交流の推進  各国及び国際機関との相互理解及び信頼関係の増進は、安全保障環境の安定化の基礎である。これに加え、人道支援・災害救援、海洋・宇宙空間・サイバー空間の安定的利用の確保等、共通の関心を有する幅広い安全保障上の課題等について協力関係を構築・強化するなど多層的な防衛協力・交流を更に推進する。 ウ 能力構築支援の推進  自衛隊の能力を活用し、平素から継続的に人材育成や技術支援等を通じて途上国自身の能力を向上させることにより、主としてアジア太平洋地域における安定を積極的・能動的に創出し、安全保障環境の改善を図る。 エ 海洋安全保障の確保  海洋国家として、平和と繁栄の基礎である「開かれ安定した海洋」の秩序を強化することは極めて重要であることから、海上交通の安全確保に万全を期す。また、関係国と協力して海賊に対応するとともに、この分野における沿岸国自身の能力向上の支援、我が国周辺以外の海域における様々な機会を利用した共同訓練・演習の充実等、各種取組を推進する。 オ 国際平和協力活動の実施  関係機関や非政府組織等と連携しつつ、平和維持から平和構築まで多様なニーズを有する国際平和協力業務や国際緊急援助活動を始めとする国際平和協力活動に積極的に取り組むとともに、より主導的な役割を果たすことを重視する。その際、事態に応じて迅速に国外に派遣できるよう即応態勢を充実するとともに、海外での任務の長期化に備えて、持続的に対処し得る態勢を強化する。 カ 軍備管理・軍縮及び不拡散の努力への協力  国際連合等が行う軍備管理・軍縮の分野における諸活動に積極的に関与する。その際、人的貢献を含め、自衛隊の有する知見の積極的な活用を図る。また、大量破壊兵器及びその運搬手段となり得るミサイルの拡散や武器及び軍事転用可能な貨物・技術の拡散は、我が国を含む国際社会の平和と安定に対する重大な脅威であることから、関係国や国際機関等と協力しつつ、それらの不拡散のための取組を推進する。 2 自衛隊の体制整備に当たっての重視事項 (1)基本的考え方  自衛隊は、上記の防衛力の役割を実効的に果たし得る体制を保持することとし、体制の整備に当たって、今後の防衛力整備において特に重視すべき機能・能力を明らかにするため、想定される各種事態について、統合運用の観点から能力評価を実施した。  かかる能力評価の結果を踏まえ、南西地域の防衛態勢の強化を始め、各種事態における実効的な抑止及び対処を実現するための前提となる海上優勢及び航空優勢の確実な維持に向けた防衛力整備を優先することとし、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、機動展開能力の整備も重視する。  一方、主に冷戦期に想定されていた大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持・継承に必要な範囲に限り保持することとし、より一層の効率化・合理化を徹底する。 (2)重視すべき機能・能力  効果的な防衛力を効率的に整備する観点から、米軍との相互運用性にも配意した統合機能の充実に留意しつつ、特に以下の機能・能力について重点的に強化する。 ア 警戒監視能力  各種事態への実効的な抑止及び対処を確保するため、無人装備も活用しつつ、我が国周辺海空域において航空機や艦艇等の目標に対する常続監視を広域にわたって実施するとともに、情勢の悪化に応じて態勢を柔軟に増強する。 イ 情報機能  各種事態等の兆候を早期に察知し迅速に対応するとともに、我が国周辺におけるものを始めとする中長期的な軍事動向等を踏まえた各種対応を行うため、情報の収集・処理体制及び収集した情報の分析・共有体制を強化する。  この際、人的情報、公開情報、電波情報、画像情報等に関する収集機能及び無人機による常続監視機能の拡充を図るほか、画像・地図上において各種情報を融合して高度に活用するための地理空間情報機能の統合的強化、能力の高い情報収集・分析要員の統合的かつ体系的な確保・育成のための体制の確立等を図る。 ウ 輸送能力  迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保し、所要の部隊を機動的に展開・移動させるため、平素から民間輸送力との連携を図りつつ、海上輸送力及び航空輸送力を含め、統合輸送能力を強化する。その際、多様な輸送手段の特性に応じ、役割分担を明確にし、機能の重複の回避を図る。 エ 指揮統制・情報通信能力  全国の部隊を機動的かつ統合的に運用し得る指揮統制の体制を確立するため、各自衛隊の主要司令部に所要の陸・海・空の自衛官を相互に配置し、それぞれの知識及び経験の活用を可能とするとともに、陸上自衛隊の各方面隊を束ねる統一司令部の新設と各方面総監部の指揮・管理機能の効率化・合理化等により、陸上自衛隊の作戦基本部隊(師団・旅団)等の迅速・柔軟な全国的運用を可能とする。  また、全国的運用を支えるための前提となる情報通信能力について、島嶼部における基盤通信網や各自衛隊間のデータリンク機能を始めとして、その充実・強化を図る。 オ 島嶼部に対する攻撃への対応  島嶼部への攻撃に対して実効的に対応するための前提となる海上優勢及び航空優勢を確実に維持するため、航空機や艦艇、ミサイル等による攻撃への対処能力を強化する。  また、島嶼部に対する侵攻を可能な限り洋上において阻止するための統合的な能力を強化するとともに、島嶼への侵攻があった場合に速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備する。  さらに、南西地域における事態生起時に自衛隊の部隊が迅速かつ継続的に対応できるよう、後方支援能力を向上させる。  なお、太平洋側の島嶼部における防空態勢の在り方についても検討を行う。 カ 弾道ミサイル攻撃への対応  北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上を踏まえ、我が国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図る。  弾道ミサイル防衛システムについては、我が国全域を防護し得る能力を強化するため、即応態勢、同時対処能力及び継続的に対処できる能力を強化する。  また、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力の強化のため、我が国自身の抑止・対処能力の強化を図るよう、弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる。 キ 宇宙空間及びサイバー空間における対応  様々なセンサーを有する各種の人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙状況監視の取組等を通じて衛星の抗たん性を高め、各種事態が発生した際にも継続的に能力を発揮できるよう、効果的かつ安定的な宇宙空間の利用を確保する。こうした取組に際しては、国内の関係機関や米国との有機的な連携を図る。  サイバー空間における対応については、自衛隊の効率的な活動を妨げる行為を防止するため、統合的な常続監視・対処能力を強化するとともに、専門的な知識・技術を持つ人材や最新の機材を継続的に強化・確保する。 ク 大規模災害等への対応  南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害や原子力災害を始めとする特殊災害といった各種の災害に際しては、発災の初期段階における航空機等を活用した空中からの被害情報の収集、救助活動、応急復旧等の迅速な対応が死活的に重要であることを踏まえ、十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開するとともに、統合運用を基本としつつ、要員のローテーション態勢を整備することで、長期間にわたり、持続可能な対処態勢を構築する。 ケ 国際平和協力活動等への対応  国際平和協力活動等において人員・部隊の安全を確保しつつ任務を遂行するために必要な防護能力を強化する。また、アフリカ等の遠隔地での長期間の活動も見据えた輸送・展開能力及び情報通信能力並びに円滑かつ継続的な活動実施のための補給・衛生等の体制整備に取り組む。  加えて、国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から、海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討する。  さらに、活動に必要な情報収集能力を強化するとともに、任務に応じた適切な能力を有する人材を継続的に派遣し得る教育・訓練・人事管理体制を強化する。 3 各自衛隊の体制  各自衛隊の体制については、(1)から(3)までのとおり整備することとする。また、将来の主要な編成、装備等の具体的規模については、別表のとおりとする。 (1)陸上自衛隊 ア 島嶼部に対する攻撃を始めとする各種事態に即応し、実効的かつ機動的に対処し得るよう、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団、機動旅団及び機甲師団)を保持するほか、空挺、水陸両用作戦、特殊作戦、航空輸送、特殊武器防護及び国際平和協力活動等を有効に実施し得るよう、専門的機能を備えた機動運用部隊を保持する。  この際、良好な訓練環境を踏まえ、2(2)ウに示す統合輸送能力により迅速に展開・移動させることを前提として、高い練度を維持した機動運用を基本とする作戦基本部隊の半数を北海道に保持する。  また、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部への部隊配備、上記の各種部隊の機動運用、海上自衛隊及び航空自衛隊との有機的な連携・ネットワーク化の確立等により、島嶼部における防衛態勢の充実・強化を図る。 イ 島嶼部等に対する侵攻を可能な限り洋上において阻止し得るよう、地対艦誘導弾部隊を保持する。 ウ (3)エの地対空誘導弾部隊と連携し、作戦部隊及び重要地域の防空を有効に行い得るよう、地対空誘導弾部隊を保持する。 エ アに示す機動運用を基本とする部隊以外の作戦基本部隊(師団・旅団)について、戦車及び火砲を中心として部隊の編成・装備を見直し、効率化・合理化を徹底した上で、地域の特性に応じて適切に配置する。 (2)海上自衛隊 ア 常続監視や対潜戦等の各種作戦の効果的な遂行による周辺海域の防衛や海上交通の安全確保及び国際平和協力活動等を機動的に実施し得るよう、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦等により増強された護衛艦部隊及び艦載回転翼哨戒機部隊を保持する。  なお、当該護衛艦部隊は、(3)エの地対空誘導弾部隊とともに、弾道ミサイル攻撃から我が国を多層的に防護し得る機能を備えたイージス・システム搭載護衛艦を保持する。 イ 水中における情報収集・警戒監視を平素から我が国周辺海域で広域にわたり実施するとともに、周辺海域の哨戒及び防衛を有効に行い得るよう、増強された潜水艦部隊を保持する。 ウ 洋上における情報収集・警戒監視を平素から我が国周辺海域で広域にわたり実施するとともに、周辺海域の哨戒及び防衛を有効に行い得るよう、固定翼哨戒機部隊を保持する。 エ アの多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦と連携し、我が国周辺海域の掃海を有効に行い得るよう、掃海部隊を保持する。 (3)航空自衛隊 ア 我が国周辺のほぼ全空域を常時継続的に警戒監視するとともに、我が国に飛来する弾道ミサイルを探知・追尾し得る地上警戒管制レーダーを備えた警戒管制部隊のほか、グレーゾーンの事態等の情勢緊迫時において、長期間にわたり空中における警戒監視・管制を有効に行い得る増強された警戒航空部隊からなる航空警戒管制部隊を保持する。 イ 戦闘機とその支援機能が一体となって我が国の防空等を総合的な態勢で行い得るよう、能力の高い戦闘機で増強された戦闘機部隊を保持する。また、戦闘機部隊、警戒航空部隊等が我が国周辺空域等で各種作戦を持続的に遂行し得るよう、増強された空中給油・輸送部隊を保持する。 ウ 陸上部隊等の機動展開や国際平和協力活動等を効果的に実施し得るよう、航空輸送部隊を保持する。 エ (1)ウの地対空誘導弾部隊と連携し、重要地域の防空を実施するほか、(2)アのイージス・システム搭載護衛艦とともに、弾道ミサイル攻撃から我が国を多層的に防護し得る機能を備えた地対空誘導弾部隊を保持する。 X 防衛力の能力発揮のための基盤  防衛力に求められる多様な活動を適時・適切に行うためには、単に主要な編成、装備等を整備するだけでは十分ではなく、防衛力が最大限効果的に機能するよう、これを下支えする種々の基盤も併せて強化することが必要不可欠である。その主な事項は、以下のとおりである。 1 訓練・演習  平素から、訓練・演習を通じ、事態に対処するための各種計画を不断に検証し、見直すとともに、各自衛隊の戦術技量の向上のため、訓練・演習の充実・強化に努める。その際、北海道の良好な訓練環境を一層活用するとともに、関係機関や民間部門とも連携し、より実践的な訓練・演習を体系的かつ計画的に実施する。  自衛隊の演習場等に制約がある南西地域において、日米共同訓練・演習を含む適時・適切な訓練・演習を実施し得るよう、地元との関係に留意しつつ、米軍施設・区域の自衛隊による共同使用を進めること等により、良好な訓練環境を確保する。 2 運用基盤  部隊等が迅速に展開し、各種事態に効果的に対応し得るよう、その運用基盤である各種支援機能を維持する観点から、駐屯地・基地等の復旧能力を含めた抗たん性を高める。  また、各自衛隊施設について、その一部が老朽化している現状等も踏まえ、着実な整備に努めるとともに、各種事態に際しての迅速な参集のため、必要な宿舎の整備を進め、即応性を確保する。  民間空港及び港湾についても事態に応じて早期に自衛隊等の運用基盤として使用し得るよう、平素からの体制の在り方も含め、必要な検討を行う。さらに、任務に従事する隊員や留守家族の不安を軽減するよう、各種家族支援施策を実施する。  必要な弾薬を確保・備蓄するとともに、装備品の維持整備に万全を期すことにより、装備品の可動率の向上等、装備品の運用基盤の充実・強化を図る。 3 人事教育  近年、装備品が高度化・複雑化し、任務が多様化・国際化する中、技能、経験、体力、士気等の様々な要素を勘案しつつ、精強性を確保し、厳しい財政事情の下で人材を有効に活用する観点から、人事制度改革に関する施策を行う。  そのため、各自衛隊の任務や特性を踏まえつつ、適正な階級構成及び年齢構成を確保するための施策を実施する。  女性自衛官の更なる活用や再任用を含む人材を有効に活用するための施策及び栄典・礼遇に関する施策を推進する。また、統合運用体制を強化するため、教育・訓練の充実、統合幕僚監部及び関係府省等における勤務等を通じ、広い視野・発想や我が国の安全保障に関する幅広い経験を有し、政府の一員として各種事態等に柔軟に即応できる人材を十分に確保する。  社会の少子化・高学歴化に伴う募集環境の悪化を踏まえ、自衛隊が就職対象として広く意識されるよう、多様な募集施策を推進する。  さらに、一般の公務員より若年で退職を余儀なくされる自衛官の生活基盤を確保することは国の責務であることを踏まえ、地方公共団体や関係機関との連携を強化すること等により、再就職支援を推進する。  より多様化・長期化する事態における持続的な部隊運用を支えるため、航空機の操縦等の専門的技能を要するものを含め、幅広い分野で予備自衛官の活用を進めるとともに、予備自衛官等の充足向上等のための施策を実施する。 4 衛生  自衛隊員の壮健性を維持し、各種事態や国際平和協力活動等の多様な任務への対応能力を強化するため、自衛隊病院の拠点化・高機能化等を進め、防衛医科大学校病院等の運営の改善を含め効率的かつ質の高い医療体制を確立する。また医官・看護師・救急救命士等の確保・育成を一層重視する。  このほか、事態対処時における救急救命措置に係る制度改正を含めた検討を行い、第一線の救護能力の向上や統合機能の充実の観点を踏まえた迅速な後送態勢の整備を図る。 5 防衛生産・技術基盤  適切な水準の防衛生産・技術基盤は、装備品の生産・運用・維持整備のみならず、我が国の運用環境に適した装備品の研究開発にも不可欠であり、潜在的に抑止力の向上にも寄与するものである。  一方、厳しい財政事情や、装備品の高度化・複雑化に伴う単価の上昇等を背景に、各種装備品の調達数量は減少傾向にある。また、国外において、国境を越えた防衛産業の大規模な再編が進展した結果、海外企業の競争力が増しつつあるなど、我が国の防衛生産・技術基盤を取り巻く環境は厳しさを増している。  以上の状況の下、我が国の防衛生産・技術基盤の維持・強化を早急に図るため、我が国の防衛生産・技術基盤全体の将来ビジョンを示す戦略を策定するとともに、装備品の民間転用等を推進する。  また、平和貢献・国際協力において、自衛隊が携行する重機等の防衛装備品の活用や被災国等への供与(以下「防衛装備品の活用等」という。)を通じ、より効果的な協力ができる機会が増加している。また、防衛装備品の高性能化を実現しつつ、費用の高騰に対応するため、国際共同開発・生産が国際的主流となっている。こうした中、国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から、防衛装備品の活用等による平和貢献・国際協力に一層積極的に関与するとともに、防衛装備品等の共同開発・生産等に参画することが求められている。  こうした状況を踏まえ、武器輸出三原則等がこれまで果たしてきた役割にも十分配意した上で、移転を禁止する場合の明確化、移転を認め得る場合の限定及び厳格審査、目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保等に留意しつつ、武器等の海外移転に関し、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定めることとする。 6 装備品の効率的な取得  研究開発を含め、装備品の効果的・効率的な取得を実現するため、プロジェクト・マネージャーの仕組みを制度化し、技術的視点も含め、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理を強化するとともに、更なる長期契約の導入の可否や企業の価格低減インセンティブを引き出すための契約制度の更なる整備を検討し、ライフサイクルを通じての費用対効果の向上を図る。  また、民間能力の有効活用等による補給態勢の改革により、即応性及び対処能力の向上を目指す。さらに、取得プロセスの透明化及び契約制度の適正化を不断に追求し、装備品を一層厳正な手続を経て取得するように努める。 7 研究開発  厳しい財政事情の下、自衛隊の運用に係るニーズに合致した研究開発の優先的な実施を担保するため、研究開発の開始に当たっては、防衛力整備上の優先順位との整合性を確保する。  また、新たな脅威に対応し、戦略的に重要な分野において技術的優位性を確保し得るよう、最新の科学技術動向、戦闘様相の変化、費用対効果、国際共同研究開発の可能性等も踏まえつつ、中長期的な視点に基づく研究開発を推進する。  安全保障の観点から、技術開発関連情報等、科学技術に関する動向を平素から把握し、産学官の力を結集させて、安全保障分野においても有効に活用し得るよう、先端技術等の流出を防ぐための技術管理機能を強化しつつ、大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努めるとともに、民生分野への防衛技術の展開を図る。  以上の取組の目的を達成するための防衛省の研究開発態勢について検討する。 8 地域コミュニティーとの連携  各種事態において自衛隊が的確に対処するため、地方公共団体、警察・消防機関等の関係機関との連携を一層強化する。こうした地方公共団体等との緊密な連携は、防衛施設の効果的な整備及び円滑な運営のみならず、自衛官の募集、再就職支援等の確保といった観点からも極めて重要である。  このため、防衛施設の整備・運営のための防衛施設周辺対策事業を引き続き推進するとともに、平素から地方公共団体や地元住民に対し、防衛省・自衛隊の政策や活動に関する積極的な広報等の各種施策を行い、その理解及び協力の獲得に努める。  地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊の救難機等による急患輸送が地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配置に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮する。同時に、駐屯地・基地等の運営に当たっては、地元経済への寄与に配慮する。 9 情報発信の強化  自衛隊の任務を効果的に遂行していく上で必要な国内外の理解を得るため、戦略的な広報活動を強化し、多様な情報媒体を活用して情報発信の充実に努める。 10 知的基盤の強化  国民の安全保障・危機管理に対する理解を促進するため、教育機関等における安全保障教育の推進に取り組む。また、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を強化するとともに、政府内の他の研究教育機関や国内外の大学、シンクタンク等との教育・研究交流を含む各種連携を推進する。 11 防衛省改革の推進  文官と自衛官の一体感を醸成するとともに、防衛力整備の全体最適化、統合運用機能の強化、政策立案・情報発信機能の強化等を実現するため、防衛省の業務及び組織を不断に見直し、改革を推進する。 Y 留意事項 1 本大綱に定める防衛力の在り方は、おおむね10年程度の期間を念頭に置いたものであり、各種施策・計画の実施過程を通じ、国家安全保障会議において定期的に体系的な評価を行うとともに、統合運用を踏まえた能力評価に基づく検証も実施しつつ、適時・適切にこれを発展させていきながら、円滑・迅速・的確な移行を推進する。 2 評価・検証の中で、情勢に重要な変化が見込まれる場合には、その時点における安全保障環境等を勘案して検討を行い、所要の修正を行う。 3 格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、防衛力整備の一層の効率化・合理化を図り、経費の抑制に努めるとともに、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力全体として円滑に十全な機能を果たし得るようにする。 (別表) 区  分 現状(平成25年度末) 将  来 陸上自衛隊 編成定数  常備自衛官定員  即応予備自衛官員数 約15万9千人 約15万1千人 約8千人 15万9千人 15万1千人 8千人 基幹部隊 機動運用部隊 中央即応集団 1個機甲師団 3個機動師団 4個機動旅団 1個機甲師団 1個空挺団 1個水陸機動団 1個ヘリコプター団 地域配備部隊 8個師団 6個師団 5個師団 2個旅団 地対艦誘導弾部隊 5個地対艦ミサイル連隊 5個地対艦ミサイル連隊 地対空誘導弾部隊 8個高射特科群/連隊 7個高射特科群/連隊 海上自衛隊 基幹部隊 護衛艦部隊 潜水艦部隊 掃海部隊 哨戒機部隊 4個護衛隊群(8個護衛隊) 5個護衛隊 5個潜水隊 1個掃海隊群 9個航空隊 4個護衛隊群(8個護衛隊) 6個護衛隊 6個潜水隊 1個掃海隊群 9個航空隊 主要装備 護衛艦 (イージス・システム搭載護衛艦) 潜水艦 作戦用航空機 47隻 (6隻) 16隻 約170機 54隻 (8隻) 22隻 約170機 航空自衛隊 基幹部隊 航空警戒管制部隊 戦闘機部隊 航空偵察部隊 空中給油・輸送部隊 航空輸送部隊 地対空誘導弾部隊 8個警戒群 20個警戒隊 1個警戒航空隊(2個飛行隊) 12個飛行隊 1個飛行隊 1個飛行隊 3個飛行隊 6個高射群 28個警戒隊 1個警戒航空隊(3個飛行隊) 13個飛行隊 ― 2個飛行隊 3個飛行隊 6個高射群 主要装備 作戦用航空機 うち戦闘機 約340機 約260機 約360機 約280機 (注)1 戦車及び火砲の現状(平成25年度末定数)の規模はそれぞれ約700両、約600両/門であるが、将来の規模はそれぞれ約300両、約300両/門とする。 2 弾道ミサイル防衛にも使用し得る主要装備・基幹部隊については、上記の護衛艦(イージス・システム搭載護衛艦)、航空警戒管制部隊及び地対空誘導弾部隊の範囲内で整備することとする。