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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

➋ 契約制度などの改善

1 取得制度の見直し

防衛省では、環境の変化に迅速に対応した取得改革を推進するため、07(平成19)年から「総合取得改革推進プロジェクトチーム」会合を、10(平成22)年からは有識者による「契約制度研究会」において取得制度の検討を行っている。平成28(2016)年度からは、検討結果を確実に具現化するため、特別研究官制度3を活用している。

2 長期契約など

装備品の製造には長期間を要することから、一定数量を一括で調達しようとする場合に5年を超える契約が必要になるものが多い。また、装備品や役務については、①防衛省のみが調達を行っていること、②それらを供給する企業が限られていることなどから、スケールメリット4が働きにくく、また、企業としても高い予見可能性をもって計画的に事業を進めることが難しいといった特殊性がある。

このため、財政法において原則5か年度以内とされている国庫債務負担行為による支出年限について、特定の装備品については、長期契約法5の制定により10か年度以内としている。この結果、装備品の安定的な調達が可能となり、計画的な防衛力整備が実現されるとともに、企業側も、将来の調達数量が確約され、人員・設備の計画的な活用と一括発注による価格低減が可能となる。

参照図表IV-2-3-2(長期契約のイメージとコスト縮減効果)
II部4章2節3項(効率化への取組)

図表IV-2-3-2 長期契約のイメージとコスト縮減効果

また、PFI(Private Finance Initiative)法6などを活用し、より長期の複数年度契約を実施することにより、国の支出の平準化による予算の計画的取得及び執行を実現するとともに、受注者側のリスク軽減、新規参入の促進などを通じた装備品調達コストの低減などのメリットを引き出している。PFI法を活用した事業としては、13(平成25)年1月から「Xバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業」を、16(平成28)年3月から「民間船舶の運航・管理事業」を実施している。

このほか、装備品の特性などにより、競争性が期待できない調達や、防衛省の制度を利用してコストダウンに取り組む企業については、迅速かつ効率的な調達の実施及び企業の予見可能性の向上の観点から、透明性・公正性を確保しつつ、対象を類型化・明確化したうえで、随意契約の適切な活用を図っている。

具体的には、新たな取組として、新艦艇7の取得にあたり、防衛省の要求事項に対して最も優れた企画提案を行った者を調達の相手方とし、次順位者を下請負者として設計・建造に参画させることにより、必要な機能を効率的に具備した新艦艇の取得と、建造技術基盤の維持・強化を図るための調達方式を17(平成29)年2月から採用し、同年4月、企画提案契約を締結、同年8月には調達相手方及び下請負者を決定した。

3 調達価格の低減策と企業のコストダウン意欲の向上

装備品の調達においては、市場価格が存在しないものが多く、高価格になりやすいという特性があることを踏まえ、調達価格の低減と企業のコストダウン意欲の向上を同時に達成することが必要である。このため、19(令和元)年6月、官民が共同して契約の履行管理を行うことで契約上のリスクを極小化し、コストダウンが図られた場合は一定の割合を企業に還元する共同履行管理型インセンティブ契約制度を導入した。

また、20(令和2)年4月から、企業のコストダウンを正当に評価する仕組みとして、価格低減に対して報奨を付与する制度を導入した。

3 実務を行う防衛省職員の視点だけでなく、経営学・経済学の分野で提唱されている理論なども踏まえ、効果的な取得制度の見直しを図るため、当該分野を専門とする大学准教授などを非常勤職員として招へいし、防衛装備品の取得制度に資する研究を実施する制度

4 規模を大きくすることにより得られる効果のことであり、例えば、材料の大量購入などにより、単価を低く抑えることができる。

5 特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法(15(平成27)年4月成立。19(平成31)年3月、有効期限を5年間延長する一部改正法成立)

6 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律

7 多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦