第III部 わが国防衛の三つの柱（防衛の目標を達成するための手段）
➌ 国際緊急援助活動への取組
近年、軍の果たす役割が多様化し、人道支援・災害救援などに軍の有する能力が活用される機会が増えている。自衛隊も、人道的な貢献やグローバルな安全保障環境の改善の観点から、国際協力の推進に寄与することを目的として国際緊急援助活動に積極的に取り組んでいる。
このため、平素から、自衛隊は事前に作成した計画に基づき任務に対応できる態勢を維持している。派遣に際しては、被災国政府などからの要請内容、被災地の状況などを踏まえつつ、外務大臣との協議に基づき、自衛隊の機能・能力を活かした国際緊急援助活動を積極的に行っている。
1 国際緊急援助隊法の概要など
わが国は、1987（昭和62）年に国際緊急援助隊の派遣に関する法律（国際緊急援助隊法）を施行し、被災国政府又は国際機関の要請に応じて国際緊急援助活動を行ってきた。92（平成4）年、国際緊急援助隊法が一部改正され、自衛隊が国際緊急援助活動や、そのための人員や機材などの輸送を行うことが可能となった。
参照資料10（自衛隊の主な行動の要件（国会承認含む）と武器使用権限等について）
2 自衛隊が行う国際緊急援助活動と自衛隊の態勢
自衛隊は、国際緊急援助活動として災害の規模や要請内容などに応じて、①応急治療、防疫（ぼうえき）活動などの医療活動、②ヘリコプターなどによる物資、患者、要員などの輸送活動、③浄水装置を活用した給水活動などの協力に加え、自衛隊の輸送機・輸送艦などを活用した人員や機材の被災地までの輸送などを行うことができる。
陸自は、国際緊急援助活動を自己完結的に行えるよう、陸上総隊や方面隊などが任務に対応できる態勢を常時維持している。また、海自は自衛艦隊が、空自は航空支援集団が、国際緊急援助活動を行う部隊や部隊への補給品などの輸送ができる態勢を常時維持している。さらに、15（平成27）年4月から、P-3C哨戒機による捜索活動の要請があった場合、迅速に対応できるよう態勢を整備した。
3 ジブチ共和国における大雨、洪水被害に対する国際緊急援助活動
19（令和元）年11月21日から23日にかけてジブチ共和国で発生した大雨により、大規模な洪水被害が発生した。
ジブチ共和国政府からわが国に対し要請があり、同年11月26日、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動のために派遣されている部隊の一部をもって国際緊急援助活動を実施することを決定した。
現地においては、ジブチ市内の小・中学校において排水ポンプを使用した排水作業のほか、日本政府がJICAを通じて供与した緊急援助物資の輸送を実施した。
同年12月2日、防衛大臣による終結命令が発令され、国際緊急援助活動を終了した。今回の派遣においては、人員延べ約230名により、約1,950トンの排水作業を行い、約4.3トンの緊急援助物資（テント、毛布など）を輸送した。
ジブチ共和国における大雨、洪水被害に対する
国際緊急援助活動に従事する隊員（19（令和元）年11月）
動画：ジブチ共和国における大雨、洪水被害に対する国際緊急援助活動
URL：https://youtu.be/kkWpSS55gfo（別ウィンドウ）
4 オーストラリアで発生した大規模な森林火災に対する国際緊急援助活動
19（令和元）年9月以降オーストラリアで続いていた大規模な森林火災に対し、オーストラリア政府からわが国へ要請があり、20（令和2）年1月15日、自衛隊による国際緊急援助活動の実施を決定し、空自のC-130H輸送機2機及び隊員約70名が出国した。
現地においては、同年1月18日からリッチモンド空軍基地を拠点に、消火及び復旧活動に関連する人員及び物資などを輸送した。
同年2月7日、防衛大臣による終結命令が発令され、25日間に及ぶ国際緊急援助隊の活動を終了した。今回の派遣においては、延べ約11tの物資（車両、消火関連器材など）及び約600名の人員を輸送した。なお、国際緊急援助隊の帰隊時には、在京豪大使が、空自小牧基地に出迎えに訪れるなど、日豪関係の深化上も、非常に意義のある活動となった。
