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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

➋ 新型コロナウイルス感染症に対する災害派遣

1 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための救援にかかる災害派遣

20(令和2)年1月、自衛隊は、中国における新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により帰国した邦人などの救援にかかる災害派遣を実施した(1月31日から3月16日まで46日間)。この際、感染拡大防止のための帰国邦人などへの支援については、特に緊急に対応する必要があり、かつ、特定の都道府県知事などに全般的な状況を踏まえた自衛隊の派遣の要否などにかかる判断に基づく要請を期待することは無理があって、要請を待っていては遅きに失すると考えられたことから、要請によらない自主派遣とした。

これを受けて、帰国した邦人などが滞在する一時宿泊施設や感染者が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」(乗員・乗客約3,700名)において生活・医療支援、下船者の輸送支援などを実施した。具体的には、PCR検査のため、船内において自衛隊医官などにより、延べ約2,200検体の採取を実施した。また、陽性者などの患者や乗員・乗客の下船者約2,000名を自衛隊救急車や大型バスにより搬送を実施しており、このうち各国政府(米、オーストラリア、カナダなど)が準備したチャーター機に搭乗する乗員・乗客などの帰国者延べ約1,300名の羽田空港への輸送などを実施した。

「ダイヤモンド・プリンセス号」における活動は、巨大で複雑な客船上での前例のないオペレーションであるとともに、感染リスクの高い活動であったものの、本活動に従事した現地活動人員延べ約2,700名の隊員のうち感染者はゼロであった。

また、自衛隊病院などへの患者の受入れを行うとともに、医療面からサポートするため、医師、看護師などの資格を有する予備自衛官10名を招集し、対応にあたった。

本派遣の規模は、現地活動人員延べ約8,700名(活動人員2延べ約2万名)、防衛省が契約している民間船舶「はくおう」など2隻に上った。

クルーズ船乗客に対する医療支援(20(令和2)年2月)

クルーズ船乗客に対する医療支援
(20(令和2)年2月)

動画アイコンQRコード動画:新型コロナウイルス感染症対応の活動
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2 新型コロナウイルス感染症に対する水際対策強化にかかる災害派遣

20(令和2)年3月、自衛隊は、新型コロナウイルス感染症に関して、他国からの入国・帰国者にかかる水際対策をさらに強化する政府の方針などを踏まえ、新型コロナウイルス感染症に対する水際対策の強化にかかる災害派遣を実施した(3月28日から5月31日まで65日間)。この際、水際対策の強化のための支援の実施については、特に緊急に対応する必要があり、かつ、特定の都道府県知事などに全般的な状況を踏まえた自衛隊の派遣の要否などにかかる判断に基づく要請を期待することは無理があって、要請を待っていては遅きに失すると考えられたことから、要請によらない自主派遣とした。

具体的には、自衛隊医官などによる空港(成田、羽田)における検疫支援として約4万6,000名の帰国者・入国者のうち、約2万400名の検体を採取したが、これは3月28日から5月31日までの空港検疫全体の検体採取実施人数の約44%に相当するものとなった。また、PCR検査の結果がでるまで宿泊施設3に滞在する帰国者・入国者の空港(成田、羽田、関西、中部)から宿泊施設への輸送支援として合計延べ約6,100名の輸送、宿泊施設に滞在する帰国者・入国者への生活支援として合計延べ約17,200名に対し食事の配分などを行った。

本派遣の規模は、現地活動人員延べ約8,700名(活動人員延べ約1万3,400名)に上るとともに、隊員の感染者はゼロであった。

3 新型コロナウイルス感染症に対する市中感染対応にかかる災害派遣等

20(令和2)年4月、自衛隊は、新型コロナウイルス感染症の市中感染拡大防止のため、同年4月3日に長崎県知事から災害派遣要請を受けて以降、29都道府県の知事からの要請などを受け、各都道府県に連絡員を派遣し緊密な連携を図りながら、患者空輸、宿泊施設における生活支援、自治体職員や民間宿泊施設従業員などに対する感染防護に関する教育支援(合計延べ約1,700名に対して教育)などを行った(5月31日現在)。また、長崎県の岸壁において係留中に集団感染が発生したクルーズ船「コスタ・アトランティカ号」(乗員約620名)に対して、PCR検査に必要な検体採取支援や乗員に対する医療支援に加え、CT診断車を派遣し対応にあたった。

自治体職員に対し、感染防護教育を行う陸自隊員(20(令和2)年4月)

自治体職員に対し、感染防護教育を行う陸自隊員
(20(令和2)年4月)

2 活動人員とは、現地活動人員に加えて整備・通信要員、司令部要員、待機・交代要員などの後方活動人員を含めた人員数。

3 防衛省共済組合が運営する「ホテルグランドヒル市ヶ谷」においても PCR検査の結果を待つ帰国者・入国者840名を受入れた。(5月末現在)