資料3 中期防衛力整備計画(平成31年度〜平成35年度)について 平成30年12月18日 国家安全保障会議決定 閣議決定 平成31年度から平成35年度までを対象とする中期防衛力整備計画について、「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成30年12月18日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に従い、別紙のとおり定める。 (別紙) 中期防衛力整備計画(平成31年度〜平成35年度) T 計画の方針 平成31年度から平成35年度(2023年度)までの防衛力整備に当たっては、「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成30年12月18日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に従い、統合運用による機動的・持続的な活動を行い得るものとするという、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成25年12月17日国家安全保障会議及び閣議決定)に基づく統合機動防衛力の方向性を深化させつつ、宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力の構築に向け、防衛力の大幅な強化を行う。 この際、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化する。また、人口減少と少子高齢化の急速な進展や厳しい財政状況を踏まえ、既存の予算・人員の配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分し、効果的に防衛力を強化する。さらに、あらゆる分野での陸海空自衛隊の統合を一層推進し、縦割りに陥ることなく、組織及び装備を最適化する。 以上を踏まえ、以下を計画の基本として、防衛力の整備、維持及び運用を効果的かつ効率的に行うこととする。 1 領域横断作戦を実現するため、優先的な資源配分や我が国の優れた科学技術の活用により、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力を獲得・強化するとともに、新たな領域を含む全ての領域における能力を効果的に連接する指揮統制・情報通信能力の強化・防護を図る。また、領域横断作戦の中で、宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力と一体となって、航空機、艦艇、ミサイル等による攻撃に効果的に対処するため、海空領域における能力、スタンド・オフ防衛能力、総合ミサイル防空能力、機動・展開能力を強化する。さらに、平時から有事までのあらゆる段階において、必要とされる各種活動を継続的に実施できるよう、後方分野も含めた防衛力の持続性・強靭性を強化する。 2 装備品の取得に当たっては、能力の高い新たな装備品の導入と既存の装備品の延命や能力向上等を適切に組み合わせることにより、必要かつ十分な「質」及び「量」の防衛力を効率的に確保する。その際、研究開発を含む装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化等によるライフサイクルコストの削減に努め、費用対効果の向上を図る。また、最先端技術等に対して選択と集中による重点的な投資を行うとともに、研究開発のプロセスの合理化等により研究開発期間を大幅に短縮する。 3 人口減少と少子高齢化が急速に進展する中、自衛隊の精強性を確保し、防衛力の中核をなす自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上を図る観点から、採用層の拡大や女性の活躍推進、予備自衛官等の活用を含む多様かつ優秀な人材の確保、生活・勤務環境の改善、働き方改革の推進、処遇の向上等、人的基盤の強化に関する各種施策を総合的に推進する。 4 米国の我が国及びインド太平洋地域に対するコミットメントを維持・強化し、我が国の安全を確保するため、我が国自身の能力を強化することを前提として、「日米防衛協力のための指針」の下、幅広い分野における各種の協力や協議を一層充実させるとともに、在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするための取組等を積極的に推進する。 自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進するため、防衛力を積極的に活用し、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流を含む防衛協力・交流のための取組等を推進する。 5 なお、主に冷戦期に想定されていた大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えについては、徹底した効率化・合理化により、将来における情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持・継承に必要な範囲に限り保持する。 6 格段に厳しさを増す財政事情と国民生活に関わる他の予算の重要性等を勘案し、我が国の他の諸施策との調和を図りつつ、一層の効率化・合理化を徹底した防衛力整備に努める。 U 基幹部隊の見直し等 1 宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を含め、領域横断作戦を実現できる体制を構築し得るよう、統合幕僚監部において、自衛隊全体の効果的な能力発揮を迅速に実現し得る効率的な部隊運用態勢や新たな領域に係る態勢を強化するほか、将来的な統合運用の在り方として、新たな領域に係る機能を一元的に運用する組織等の統合運用の在り方について検討の上、必要な措置を講ずるとともに、強化された統合幕僚監部の態勢を踏まえつつ、大臣の指揮命令を適切に執行するための平素からの統合的な体制の在り方について検討の上、結論を得る。また、各自衛隊間の相互協力の観点を踏まえた警備及び被害復旧に係る態勢を構築するなど、各自衛隊の要員の柔軟な活用を図る。 宇宙空間の状況を常時継続的に監視するとともに、平時から有事までのあらゆる段階において宇宙利用の優位を確保し得るよう、航空自衛隊において宇宙領域専門部隊1個隊を新編する。 自衛隊の情報通信ネットワークを常時継続的に監視するとともに、我が国への攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力を抜本的に強化し得るよう、共同の部隊としてサイバー防衛部隊1個隊を新編する。 電磁波の利用を統合運用の観点から適切に管理・調整し得るよう、統合幕僚監部における態勢を強化するとともに、各自衛隊において、電磁波利用に関する能力強化のための取組を推進する。 平素から常時持続的に我が国全土を防護するとともに、多数の複合的な経空脅威に同時対処し得るよう、陸上自衛隊において弾道ミサイル防衛部隊2個隊を新編する。また、弾道ミサイル対処能力の向上に伴い、指揮統制を含め、より効率的な部隊運用を行い得るよう、航空自衛隊において地対空誘導弾部隊24個高射隊は維持しつつ、6個高射群から4個高射群に改編する。 平時から有事までのあらゆる段階において、統合運用の下、自衛隊の部隊等の迅速な機動・展開を行い得るよう、共同の部隊として海上輸送部隊1個群を新編する。 2 陸上自衛隊については、新たな領域における作戦能力を強化するため、陸上総隊の隷下部隊にサイバー部隊及び電磁波作戦部隊を新編する。 各種事態に即応し、実効的かつ機動的に抑止及び対処し得るよう、1個師団及び2個旅団について、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする1個機動師団及び2個機動旅団に改編する。機動師団・機動旅団に加え、1個水陸機動連隊の新編等により強化された水陸機動団が、艦艇と連携した活動や各種の訓練・演習といった平素からの常時継続的な機動を行うことにより、抑止力・対処力の強化を図る。また、引き続き、初動を担任する警備部隊、地対空誘導弾部隊及び地対艦誘導弾部隊の新編等を行い、南西地域の島嶼(しょ)部の部隊の態勢を強化する。さらに、島嶼(しょ)部等に対する侵攻に対処し得るよう、島嶼(しょ)防衛用高速滑空弾部隊の新編に向け、必要な措置を講ずる。 大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えのより一層の効率化・合理化を徹底しつつ、迅速かつ柔軟な運用を可能とする観点から、機動戦闘車を装備する部隊の順次新編と北海道及び九州以外に所在する作戦基本部隊が装備する戦車の廃止に向けた事業を着実に進める。また、北海道以外に所在する作戦基本部隊が装備する火砲について、新編する各方面隊直轄の特科部隊への集約に向けた事業を着実に進める。さらに、戦闘ヘリコプターについて、各方面隊直轄の戦闘ヘリコプター部隊を縮小するとともに、効果的かつ効率的に運用できるよう配備の見直し等を検討する。 3 海上自衛隊については、常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動(以下「常続監視」という。)や対潜戦、対機雷戦等の各種作戦の効果的な遂行により、周辺海域を防衛し、海上交通の安全を確保するほか、各国との安全保障協力等を機動的に実施し得るよう、1隻のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)と2隻のイージス・システム搭載護衛艦(DDG)を中心として構成される4個群に加え、多様な任務への対応能力を向上させた新型護衛艦(FFM)や掃海艦艇から構成される2個群を保持し、これら護衛艦部隊及び掃海部隊から構成される水上艦艇部隊を新編する。また、我が国周辺海域における平素からの警戒監視を強化し得るよう、哨戒艦部隊を新編する。さらに、既存の潜水艦を種別変更した試験潜水艦の導入により、潜水艦部隊の運用効率化と能力向上の加速を図り、常続監視のための態勢を強化するとともに、我が国周辺海域において水中における情報収集・警戒監視、哨戒及び防衛を有効に行い得るよう、引き続き潜水艦増勢のために必要な措置を講ずる。 4 航空自衛隊については、太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域における防空態勢の充実や効率的な運用を図るため、航空警戒管制部隊について8個警戒群及び20 個警戒隊から28 個警戒隊への改編のほか、1個警戒航空団を新編するとともに、戦闘機部隊1個飛行隊の新編に向け、必要な措置を講ずる。 偵察機(RF−4)の退役に伴い、航空偵察部隊1個飛行隊を廃止するとともに、空中給油・輸送機能を強化するため、空中給油・輸送部隊1個飛行隊を新編する。 我が国から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な監視を実施し得るよう、無人機部隊1個飛行隊を新編する。 5 陸上自衛隊の計画期間末の編成定数については、おおむね15万9千人程度、常備自衛官定数についてはおおむね15万1千人程度、即応予備自衛官員数についてはおおむね8千人程度を目途とする。また、海上自衛隊及び航空自衛隊の計画期間中の常備自衛官定数については、平成30年度末の水準を目途とする。 なお、計画期間中においては、重要性が低下した既存の組織及び業務を見直し、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を中心に人員を充当するなどの組織や業務を最適化する取組を推進する。 V 自衛隊の能力等に関する主要事業 1 領域横断作戦に必要な能力の強化における優先事項 (1)宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力の獲得・強化 (ア)宇宙領域における能力 宇宙空間の安定的利用を確保するため、宇宙領域専門部隊の新編や宇宙状況監視(SSA)システムの整備等により、関係府省との適切な役割分担の下、宇宙空間の状況を常時継続的に監視する体制を構築するとともに、宇宙設置型光学望遠鏡及びSSAレーザー測距装置を新たに導入する。 宇宙領域を活用した情報収集、通信、測位等の各種能力を一層向上させるため、様々なセンサーを有する各種の人工衛星を活用した情報収集能力を引き続き充実させるほか、高機能なXバンド衛星通信網の着実な整備により、指揮統制・情報通信能力を強化するとともに、準天頂衛星を含む複数の測位衛星信号の受信や情報収集衛星(IGS)・超小型衛星を含む商用衛星等の利用等により、冗長性の確保に努める。また、継続的にこれらの能力を利用できるよう、必要な調査研究を行った上で、我が国衛星の脆弱性への対応を検討・演練するための訓練用装置や我が国衛星に対する電磁妨害状況を把握する装置を新たに導入する。このような状況を把握する態勢の強化により、電磁波領域と連携して、相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力を構築する。 その際、宇宙領域を専門とする職種の新設や教育の充実を図るほか、民生技術を積極的に利活用するとともに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等の関係機関や米国等の関係国に宇宙に係る最先端の技術・知見が蓄積されていることを踏まえ、人材の育成も含め、これらの機関等との協力を進める。 (イ)サイバー領域における能力 サイバー攻撃に対して常時十分な安全を確保し、我が国への攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力を保持し得るよう、統合機能の充実と資源配分の効率化に配慮しつつ、サイバー防衛隊等の体制を拡充するとともに、自衛隊の指揮通信システムやネットワークの抗たん性の向上、情報収集機能や調査分析機能の強化、サイバー防衛能力の検証が可能な実戦的な訓練環境の整備等、所要の態勢整備を行う。また、民間部門との協力、同盟国等との戦略対話や共同演習等を通じ、サイバー・セキュリティに係る最新のリスク、対応策、技術動向等を常に把握するよう努める。 サイバー攻撃の手法が高度化・複雑化している中、専門的知見を備えた優秀な人材の安定的な確保が不可欠であることを踏まえ、部内における専門教育課程の拡充、国内外の高等教育機関等への積極的な派遣、専門性を高める人事管理の実施等により、優秀な人材を計画的に育成するとともに、部外の優れた知見を活用し、自衛隊のサイバー防衛能力を強化する。 サイバー領域において、政府全体として総合的な対処を行い得るよう、平素から、防衛省・自衛隊の知見や人材の提供等を通じ、関係府省等との緊密な連携を強化するとともに、訓練・演習の充実を図る。 (ウ)電磁波領域における能力 防衛省・自衛隊における効果的・効率的な電磁波の利用に係る企画立案及び他府省との調整機能を強化するため、内部部局及び統合幕僚監部にそれぞれ専門部署を新設する。 電磁波に関する情報収集・分析能力の強化及び情報共有態勢を構築するため、電波情報収集機や地上電波測定装置等の整備、自動警戒管制システム(JADGE)の能力向上、防衛情報通信基盤(DII)を含む各自衛隊間のシステムの連接及びデータリンクの整備を推進する。 我が国に対する侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等を無力化し得るよう、戦闘機(F−35A)及びネットワーク電子戦装置の整備並びに戦闘機(F−15)及び多用機(EP−3及びUP−3D)の能力向上を進めるとともに、スタンド・オフ電子戦機、高出力の電子戦装備、高出力マイクロウェーブ装置、電磁パルス(EMP)弾等の導入に向けた調査や研究開発を迅速に進める。 (2)従来の領域における能力の強化 (ア)海空領域における能力 (@)常続監視態勢の強化 太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺海空域で広域において常続監視を行い、各種兆候を早期に察知する態勢を強化するため、多様な任務への対応能力を向上させた新型護衛艦(FFM)、潜水艦、哨戒艦、固定翼哨戒機(P−1)、哨戒ヘリコプター(SH−60K及びSH−60K(能力向上型))及び艦載型無人機の整備並びに既存の護衛艦、潜水艦、固定翼哨戒機(P−3C)及び哨戒ヘリコプター(SH−60J及びSH−60K)の延命を行うとともに、固定翼哨戒機(P−1)等の能力向上を行う。この際、新型護衛艦(FFM)については複数クルーでの交替勤務の導入による稼働日数の増加や新たに導入する哨戒艦との連携、潜水艦については既存の潜水艦を種別変更した試験潜水艦の導入による潜水艦部隊の平素における運用機会の増加により、常続監視のための態勢を強化する。また、早期警戒機(E−2D)及び滞空型無人機(グローバルホーク)の整備、現有の早期警戒管制機(E−767)の能力向上並びに新たな固定式警戒管制レーダーの開発を行うほか、前記U4に示すとおり、航空警戒管制部隊に1個警戒航空団を新編するとともに、移動式警戒管制レーダー等を運用するための基盤の太平洋側の島嶼(しょ)部への整備及び見通し外レーダー機能の強化により、隙のない情報収集・警戒監視態勢を保持する。 (A)航空優勢の獲得・維持 太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域における防空能力の総合的な向上を図る。 近代化改修に適さない戦闘機(F−15)について、戦闘機(F−35A)の増勢による代替を進めるとともに、戦闘機の離発着が可能な飛行場が限られる中、戦闘機運用の柔軟性を向上させるため、短距離離陸・垂直着陸が可能な戦闘機(以下「STOVL機」という。)を新たに導入する。この際、隊員の安全確保を図りつつ、戦闘機運用の柔軟性を更に向上させ、かつ、特に、広大な空域を有する一方で飛行場が少ない我が国太平洋側を始めとして防空態勢を強化するため、有事における航空攻撃への対処、警戒監視、訓練、災害対処等、必要な場合にはSTOVL機の運用が可能となるよう検討の上、海上自衛隊の多機能のヘリコプター搭載護衛艦(「いずも」型)の改修を行う。同護衛艦は、改修後も、引き続き、多機能の護衛艦として、我が国の防衛、大規模災害対応等の多様な任務に従事するものとする。なお、憲法上保持し得ない装備品に関する従来の政府見解には何らの変更もない。また、近代化改修を行った戦闘機(F−15)について、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を行う。さらに、戦闘機(F−2)について、ネットワーク機能等の能力向上を行う。 将来戦闘機について、戦闘機(F−2)の退役時期までに、将来のネットワーク化した戦闘の中核となる役割を果たすことが可能な戦闘機を取得する。そのために必要な研究を推進するとともに、国際協力を視野に、我が国主導の開発に早期に着手する。 中距離地対空誘導弾を引き続き整備するとともに、巡航ミサイルや航空機への対処と弾道ミサイル防衛の双方に対応可能な能力向上型迎撃ミサイル(PAC−3MSE)を搭載するため、地対空誘導弾ペトリオットの能力向上を引き続き行う。また、空中給油・輸送機(KC−46A)及び救難ヘリコプター(UH−60J)を引き続き整備する。 (B)海上優勢の獲得・維持 常続監視や対潜戦、対機雷戦等の各種作戦の効果的な遂行により、周辺海域を防衛し、海上交通の安全を確保するため、前記(@)に示すとおり、新型護衛艦(FFM)等の整備、既存の護衛艦等の延命及び固定翼哨戒機(P−1)等の能力向上を行うとともに、掃海・輸送ヘリコプター(MCH−101)の整備を行う。また、掃海艦艇及び救難飛行艇(US−2)を引き続き整備するとともに、戦術開発・教育訓練能力の向上を図るための体制を整備する。さらに、地対艦誘導弾を引き続き整備するとともに、更なる射程延伸を図った新たな地対艦誘導弾及び空対艦誘導弾を導入する。加えて、太平洋側の広域における洋上監視能力の強化のため、滞空型無人機の導入について検討の上、必要な措置を講ずる。このほか、指揮統制・情報通信能力の着実な向上を図るとともに、無人水中航走体(UUV)等の配備を行い、海洋観測や警戒監視等に活用すべく、更なる能力向上に向けた研究開発を推進する。 (イ)スタンド・オフ防衛能力 我が国への侵攻を試みる艦艇や上陸部隊等に対して、自衛隊員の安全を確保しつつ、侵攻を効果的に阻止するため、相手方の脅威圏の外から対処可能なスタンド・オフ・ミサイル(JSM、JASSM及びLRASM)の整備を進めるほか、島嶼(しょ)防衛用高速滑空弾、新たな島嶼(しょ)防衛用対艦誘導弾及び極超音速誘導弾の研究開発を推進するとともに、軍事技術の進展等に適切に対応できるよう、関連する技術の総合的な研究開発を含め、迅速かつ柔軟に強化する。 (ウ)総合ミサイル防空能力 弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機等の多様化・複雑化する経空脅威に対し、最適な手段による効果的・効率的な対処を行い、被害を局限するため、ミサイル防衛に係る各種装備品に加え、従来、各自衛隊で個別に運用してきた防空のための各種装備品も併せ、一体的に運用する体制を確立し、平素から常時持続的に我が国全土を防護するとともに、多数の複合的な経空脅威にも同時対処できる能力を強化する。 この際、各自衛隊が保有する迎撃手段について、整備・補給体系も含め共通化・合理化を図る。 弾道ミサイル攻撃に対し、我が国全体を多層的かつ常時持続的に防護する体制の強化に向け、陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)を整備するほか、現有のイージス・システム搭載護衛艦(DDG)の能力向上を引き続き行うとともに、前記(ア)(A)に示すとおり、地対空誘導弾ペトリオットの能力向上を引き続き行う。また、日米共同の弾道ミサイル対処態勢の実効性向上のため共同訓練・演習を行う。 ミサイル攻撃等に実効的に対処するため、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM−3ブロックIB及びブロックUA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC−3MSE)、長距離艦対空ミサイル(SM−6)、中距離地対空誘導弾等を整備する。 ミサイル等の探知・追尾能力を強化し、各自衛隊が保有する各種装備品を一元的に指揮統制するため、自動警戒管制システム(JADGE)の能力向上及び対空戦闘指揮統制システム(ADCCS)の整備、新たな固定式警戒管制レーダーの開発、E−2Dへの共同交戦能力(CEC)の付与、汎用護衛艦(DD)間で連携した射撃を可能とするネットワークシステム(FCネットワーク)の研究開発、衛星搭載型2波長赤外線センサの研究等の取組を推進するとともに、将来の経空脅威への対処の在り方についても検討を行う。 日米間の基本的な役割を踏まえ、日米同盟全体の抑止力の強化のため、ミサイル発射手段等に対する我が国の対応能力の在り方についても引き続き検討の上、必要な措置を講ずる。 ミサイル等による攻撃に併せ、同時並行的にゲリラ・特殊部隊による攻撃が発生した場合を考慮し、警戒監視態勢の向上、原子力発電所等の重要施設の防護及び侵入した部隊の捜索・撃破のため、引き続き、各種監視・対処器材、機動戦闘車、輸送ヘリコプター(CH−47JA)、無人航空機(UAV)等を整備するとともに、部隊間のネットワーク化を進め、情報共有を強化し、効果的かつ効率的に対処する能力を向上する。また、原子力発電所が多数立地する地域等において、関係機関と連携して訓練を実施し、連携要領を検証するとともに、原子力発電所の近傍における展開基盤の確保等について検討の上、必要な措置を講ずる。 (エ)機動・展開能力 多様な事態に迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保し、実効的な抑止及び対処能力の向上を図るため、統合幕僚監部における輸送調整機能の強化を含め、平素からの各自衛隊の輸送力の一元的な統制・調整の在り方を検討の上、必要な措置を講ずる。 輸送機(C−2)及び輸送ヘリコプター(CH−47JA)を引き続き整備するほか、新たな多用途ヘリコプターを導入するとともに、陸上自衛隊のオスプレイ(V−22)を速やかに配備するため、関係地方公共団体等の協力を得られるよう取組を推進する。こうした航空輸送力の整備に当たっては、役割分担を明確にし、機能の重複の回避を図るなど、一層の効率化・合理化について検討の上、必要な措置を講ずる。 島嶼(しょ)部への輸送機能を強化するため、中型級船舶(LSV)及び小型級船舶(LCU)を新たに導入するとともに、今後の水陸両用作戦等の円滑な実施に必要な新たな艦艇の在り方について検討する。また、民間事業者の資金や知見を活用した船舶については、災害派遣や部隊輸送等に効果的に用いられている現状も踏まえ、自衛隊の輸送力と連携して大規模輸送を効率的に実施できるよう、引き続き、積極的に活用しつつ、更なる拡大について検討する。 前記U2に示す機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団・機動旅団)に、航空機等での輸送に適した機動戦闘車等を装備し、各種事態に即応する即応機動連隊を引き続き新編する。機動師団・機動旅団に加え、1個水陸機動連隊の新編等により強化された水陸機動団が、艦艇と連携した活動や各種の訓練・演習といった平素からの常時継続的な機動を行う。また、引き続き、南西地域の島嶼(しょ)部に初動を担任する警備部隊の新編等を行うとともに、島嶼(しょ)部への迅速な部隊展開に向けた機動展開訓練を実施する。 (3)持続性・強靭性の強化 (ア)継続的な運用の確保 平時から有事までのあらゆる段階において、部隊運用を継続的に実施し得るよう、弾薬及び燃料の確保、自衛隊の運用に係る基盤等の防護等に必要な措置を推進する。 弾薬の確保については、統合運用上の所要を踏まえた上で、航空優勢の確保に必要な対空ミサイル、海上優勢の確保に必要な魚雷、脅威圏外からの対処に必要なスタンド・オフ火力、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイルを優先的に整備する。 燃料の確保については、有事の燃料供給の安定化の観点から、緊急調達等の実効性を確保するとともに、油槽船を新たに導入するなどの必要な施策を推進する。 各種攻撃からの被害を局限し、機能を早期回復し得るよう、電磁パルス攻撃からの防護の観点も踏まえ、自衛隊の運用に係る基盤等の分散、復旧、代替等の取組を推進するとともに、各自衛隊間の相互協力の観点を踏まえた警備及び被害復旧に係る態勢を構築する。また、各種事態発生時に民間空港・港湾の自衛隊による速やかな使用を可能とするための各種施策を推進する。 補給基盤の強化については、即応性を確保するため、所要の弾薬や補用部品等を運用上最適な場所に保管し、必要な施設整備を進めるほか、一部の弾薬庫について拡張及び各自衛隊による協同での使用を可能とするとともに、後方補給を含む後方支援の在り方に関し、統合運用の観点等から最適化するため、検討の上、必要な措置を講ずる。 駐屯地・基地等の近傍等において必要な宿舎の着実な整備を進めるほか、施設の老朽化対策及び耐震化対策を推進するとともに、対処態勢の長期にわたる持続を可能とする観点から、隊員の家族に配慮した各種の家族支援施策を推進する。 (イ)装備品の可動率確保 各種事態に即応し、実効的に対処するためには、取得した装備品に係る高い可動率の確保のため、装備品の維持整備に必要十分な経費を確保するほか、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う契約方式(PBL)等の包括契約の拡大及び補給データに関する官民の情報共有を図るとともに、複雑形状を迅速かつ高精度で造形する三次元積層造形(3Dプリンター)等の活用、部品等の国際市場からの調達等の措置を推進する。 2 防衛力の中心的な構成要素の強化における優先事項 (1)人的基盤の強化 人口減少と少子高齢化が急速に進展する一方、装備品が高度化・複雑化し、任務が多様化・国際化する中、より幅広い層から多様かつ優秀な人材の確保を図るとともに、全ての自衛隊員が高い士気を維持し、自らの能力を十分に発揮できる環境の整備に向けた取組を重点的に推進する。 (ア)採用の取組強化 少子高齢化等に伴う厳しい採用環境の中でも、優秀な人材を将来にわたり安定的に確保するため、非任期制士の採用の拡大や大卒者等を含む採用層の拡大に向けた施策を推進する。また、自衛隊が就職対象として広く意識されるよう、採用広報の充実や採用体制の強化を含め、多様な募集施策を推進するとともに、地方公共団体や関係機関等との連携を強化する。さらに、採用における魅力化を図るため、生活・勤務環境を改善するとともに、任期満了退職後の公務員への再就職や大学への進学等に対する支援の充実を図る。 (イ)人材の有効活用 女性自衛官の全自衛官に占める割合の更なる拡大に向け、女性の採用を積極的に行うとともに、女性の活躍を推進し、これを支える女性自衛官に係る教育・生活・勤務環境の基盤整備を推進する。 精強性にも配意しつつ、知識・技能・経験等を豊富に備えた高齢人材の一層の活用を図るため、自衛官の若年定年年齢の引上げを行うとともに、再任用の拡大や、自衛隊の専門性の高い分野において部隊等における退職自衛官の技能等の活用を推進する。また、民間の人材の有効活用により、専門性の高い分野を担う部隊等の人員を確保する。 (ウ)生活・勤務環境の改善 厳しい安全保障環境に対応して部隊等の活動が長期化する中、国民の命と平和な暮らしを守るという崇高な任務に取り組む全ての隊員が自らの能力を十分に発揮し、士気高く任務を全うできるよう、必要な隊舎・宿舎の確保及び建て替えを加速し、同時に、施設の老朽化対策及び耐震化対策を推進するほか、老朽化した生活・勤務用備品の確実な更新、日用品等の所要数の確実な確保、複数クルーでの交替勤務の導入による艦艇要員1名当たりの洋上勤務日数の縮減を行うなど、生活・勤務環境の改善を図る。 (エ)働き方改革の推進 社会構造の大きな変化により育児や介護等で時間や移動に制約のある隊員が増えていく中にあって、全ての隊員が能力を十分に発揮し活躍できるよう、ワークライフバランスの確保のため、長時間労働の是正や休暇の取得促進等、防衛省・自衛隊における働き方改革を推進する。さらに、庁内託児所の整備等の取組を進めるとともに、緊急登庁せざるを得ない隊員のための子供一時預かり等、地方公共団体等との連携を強化しつつ、家族支援施策を推進する。 (オ)教育の充実 各自衛隊及び防衛大学校において、安全保障に関する幅広い視野を涵養するための必要な学術知識や国際感覚を含め、教育訓練の内容及び体制の充実を図るほか、自衛隊の能力及びその一体性を高め、領域横断的な統合運用を推進するため、統合運用に関する教育及び研究の在り方について、既存の組織において十分な教育及び研究が可能か検討の上、必要な措置を講ずるとともに、防衛省・自衛隊の組織マネジメント能力に関する教育の強化を図る。また、各自衛隊の相互補完を一層推進するため、教育課程の共通化を図るとともに、先端技術を活用し、効果的かつ効率的な教育を推進する。さらに、防衛大学校等を卒業した留学生のネットワーク化を図り、防衛協力・交流の強化の一助とする。なお、教育訓練を着実に実施するため、現有の初等練習機(T−7)の後継となる新たな初等練習機の整備について検討の上、必要な措置を講ずる。 (カ)処遇の向上及び再就職支援 隊員が高い士気と誇りを持って任務を遂行できるよう、防衛功労章の拡充を始めとした栄典・礼遇に関する施策や、任務・勤務環境の特殊性等を踏まえた給与面の改善を含む処遇の向上を推進するとともに、家族支援を含めた福利厚生の充実を図る。 若年定年退職制度の下にある自衛官の生活基盤の確保が国の責務であることを踏まえ、職業訓練課目の拡充や段階的な資格取得等の支援を行うとともに、退職自衛官の知識・技能・経験を活用するとの観点から、地方公共団体や関係機関との連携を強化しつつ、地方公共団体の防災関係部局等及び関係府省における退職自衛官の更なる活用を進めるなど、再就職支援の一層の充実を図る。 (キ)予備自衛官等の活用 多様化・長期化する事態における持続的な部隊運用を支えるため、即応予備自衛官及び予備自衛官のより幅広い分野・機会での活用を進める。また、予備自衛官等の充足向上のため、自衛官経験のない者を対象とする予備自衛官補の採用者数を拡大するとともに、予備自衛官補出身の予備自衛官から即応予備自衛官への任用を進める。さらに、予備自衛官等が訓練招集に応じやすくなるよう、教育訓練基盤の強化及び訓練内容の見直しに取り組むとともに、雇用企業等の理解と協力を得るための施策を実施する。 (2)装備体系の見直し 現有の装備体系を検証し、統合運用の観点から実効的かつ合理的な装備体系を構築するための統合幕僚監部の機能を強化するほか、装備品のファミリー化及び仕様の共通化・最適化、各自衛隊が共通して保有する装備品の共同調達等を行うとともに、航空機等の種類の削減、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直しや中止等を行う。 限られた人材を最大限有効に活用して防衛力を最大化するため、情報処理や部隊運用等に係る判断を始めとする各分野への人工知能(AI)の導入、無人航空機(UAV)の整備、無人水上航走体(USV)及び無人水中航走体(UUV)の研究開発等の無人化の取組を積極的に推進するとともに、新型護衛艦(FFM)や潜水艦等の設計の工夫、レーダーサイト等の各種装備品のリモート化等による省人化の取組を積極的に推進する。 (3)技術基盤の強化 新たな領域に関する技術や、人工知能等のゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術を始めとする重要技術に対して重点的な投資を行うことで、戦略的に重要な装備・技術分野において技術的優越を確保し得るよう、中長期技術見積りを見直すとともに、将来の統合運用にとって重要となり得る技術等について、戦略的な視点から中長期的な研究開発の方向性を示す研究開発ビジョンを新たに策定する。 島嶼(しょ)防衛用高速滑空弾、新たな島嶼(しょ)防衛用対艦誘導弾、無人水中航走体(UUV)、極超音速誘導弾等について、研究開発のプロセスの合理化等により、研究開発期間の大幅な短縮を図るため、ブロック化、モジュール化等の新たな手法を柔軟かつ積極的に活用するとともに、研究開発段階の初期において技術実証を用いた代替案分析を行うなどして、装備品の能力を早期に可視化する。 国内外の関係機関との技術交流や関係府省との連携の強化、安全保障技術研究推進制度の活用等を通じ、防衛にも応用可能な先進的な民生技術の積極的な活用に努める。この際、ゲーム・チェンジャー技術に大規模な投資を行う米国等との協力関係を強化・拡大し、相互補完的な国際共同研究開発を推進する。また、国内外の先端技術動向について調査・分析等を行うシンクタンクの活用や創設等により、革新的・萌芽的な技術の早期発掘やその育成に向けた体制を強化する。 (4)装備調達の最適化 装備品の効果的・効率的な取得を一層推進するため、装備品の開発段階から量産以降の段階のコスト低減に資する取組を要求事項として盛り込むことや、民生分野における成功事例の装備品製造等への取り込み、民間の知見の活用に資する企画競争方式等の契約方式の積極的な適用、コスト管理の厳格化等により、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の実効性及び柔軟性を高める。その際、プロジェクト管理の対象品目を拡大するとともに、ライフサイクルコストとの関係も含め、仕様や事業計画の見直しに関する基準の適正化を図り、これを適用する。 市場価格のない装備品の価格積算について、装備品の製造等に要する加工費等の算定の精緻化・適正化を行うなど、より適正な費用の算定に取り組むほか、情報システムについて適切な価格水準で調達を行う。また、こうした取組を効果的に実施するため、専門的な知識・技能・経験を有する民間の人材を活用するなど、人材育成・配置を積極的に行うとともに、企業の見積資料・契約実績及び装備品の各部位を単位とした価格等の情報のデータベース化を推進する。 長期契約を含め、装備品の効率的な調達に資する計画的な取得方法の活用及びPBL等の包括契約の拡大を含む維持整備の効率化を推進する。また、国内調達の費用対効果が低い装備品について、輸入における価格低減の検討、国内向け独自仕様の縮小等の検討により、国内外の企業間競争の促進を図る。さらに、有償援助調達(以下「FMS調達」という。)における価格、納期等の管理の重要性が増していることを踏まえ、日米協議等を通じて米国政府等と緊密に連携し、米軍等との調達時期・仕様を整合させた装備品の取得や履行状況の適時適切な管理に努めるなど、FMS調達の合理化に向けた取組を推進する。 (5)産業基盤の強靭化 装備品の生産・運用・維持整備にとって必要不可欠である我が国の防衛産業基盤を強靭化するため、競争環境に乏しい我が国の防衛産業に競争原理を導入し、民生分野の知見及び技術を取り入れ、装備品に係るサプライチェーンを強化するなど、政府として主体的な取組を推進する。こうした取組の一環として、防衛産業の競争力の強化に資する取組の程度を評価指標とする企業評価制度の導入を含め、企業間の競争環境の創出に向けた契約制度の見直しを行う。また、防衛技術の民生分野へのスピンオフ及び革新的な製造技術を含む民生分野における先端技術の防衛産業へのスピンオンを推進する。さらに、装備品に係るサプライチェーンの調査等を通じてその脆弱性等に係るリスク管理を強化するとともに、輸入装備品等の維持整備等における我が国の防衛産業の参画を促進する。 我が国の安全保障に資する場合等に装備移転を認め得るとする防衛装備移転三原則の下、装備品の適切な海外移転を政府一体となって推進するため、諸外国との安全保障・防衛分野の協力の進展等を踏まえ、必要な運用改善に努めるとともに、情報収集・発信等のための官民連携の推進や、海外移転に際して装備品に係る重要技術の流出を防ぐための技術管理及び知的財産管理の強化、海外移転を念頭に置いた装備品の開発を進める。また、我が国の防衛産業が国際的な取引を行うために必要となる情報セキュリティに係る措置の強化及び防衛産業を対象とした情報保全指標の整備を行う。さらに、我が国の強みをいかし、諸外国との間で、国際共同開発・生産を積極的に進める。 このほか、装備品の製造プロセスの効率化や徹底した原価の低減などの施策に取り組み、これらの結果生じ得る企業の再編や統合も視野に、我が国の防衛産業基盤の効率化・強靭化を図る。 (6)情報機能の強化 政策判断や部隊運用に資する情報支援を適時・適切に実施し得るよう、情報の収集・分析・共有・保全等の各段階における情報機能を総合的に強化するための取組を推進する。 情報収集・分析機能については、情報収集施設の整備や能力向上、情報収集衛星・商用衛星等の活用、滞空型無人機を含む新たな装備品による情報収集手段の多様化等により、電波情報・画像情報の収集態勢を強化するとともに、防衛駐在官制度の充実を始めとする人的情報の収集態勢の強化、公開情報の収集態勢の強化、同盟国等との協力の強化等により、新たな領域に関するものも含め、ニーズに十分に対応できるよう、情報収集・分析機能を抜本的に強化する。その際、情報処理における最新の技術の積極的活用等により、一層効果的・効率的な態勢の実現を図るとともに、多様な情報源を融合したオールソース分析を推進する。また、情報を有効に活用する観点から、情報共有のためのシステムの効果的な整備・連接を図る。 多様化するニーズに情報部門が的確に応えていくため、能力の高い情報収集・分析要員の確保・育成を進め、採用、教育・研修、人事配置等の様々な面において着実な措置を講じ、総合的な情報収集・分析機能を強化する。 情報保全については、関係部局間で連携しつつ、教育等を通じて、知るべき者の間での情報共有を徹底し、情報漏えい防止のための措置を講じる等、情報保全のための取組を徹底するとともに、関係機関との連携の推進等により、防衛省・自衛隊におけるカウンターインテリジェンス機能の強化を図る。 3 大規模災害等への対応 南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害や原子力災害を始めとする特殊災害といった各種の災害に際しては、統合運用を基本としつつ、十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開して初動対応に万全を期すとともに、災害用ドローン、ヘリコプター衛星通信システム(ヘリSAT)、人命救助システム及び非常用電源の整備を始め対処態勢を強化するための措置を進める。また、関係府省、地方公共団体及び民間部門と緊密に連携・協力しつつ、各種の訓練・演習の実施や計画の策定、被災時の代替機能や展開基盤の確保等の各種施策を推進する。 4 日米同盟の強化 (1)日米防衛協力の強化 米国の我が国及びインド太平洋地域に対するコミットメントを維持・強化し、我が国の安全を確保するため、我が国自身の能力を強化することを前提として、「日米防衛協力のための指針」の下、日米防衛協力を一層強化する。 宇宙領域やサイバー領域等における協力、総合ミサイル防空、共同訓練・演習や共同のISR活動を推進するとともに、共同計画の策定・更新、拡大抑止協議等の各種の運用協力や政策調整を一層深化させる。 日米共同の活動に当たり、日米がその能力を十分に発揮するため、日米共同の活動に資する装備品の共通化、各種ネットワークの共有、米国製装備品の国内における整備能力の確保、情報協力・情報保全の取組等を進める。また、日米の能力を効率的に強化すべく、防衛力強化の優先分野に係る共通の理解を促進しつつ、FMS調達の合理化による米国の高性能の装備品の効率的な取得、日米共同研究・開発等を推進する。さらに、自衛隊及び米軍施設・区域の共同使用に係る協力や、強靭性向上のための取組を推進する。 (2)在日米軍駐留に関する施策の着実な実施 在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするとの観点から、在日米軍駐留経費を安定的に確保する。 5 安全保障協力の強化 我が国にとって望ましい安全保障環境を創出することは、我が国の防衛の根幹に関わり、また、我が国防衛そのものに資する極めて重要かつ不可欠な取組であるとの認識の下、自由で開かれたインド太平洋のビジョンも踏まえつつ、二国間・多国間の防衛協力・交流を一層推進する。特に、ハイレベル交流、政策対話、軍種間交流に加え、自衛隊と各国軍隊との相互運用性の向上や我が国のプレゼンスの強化等を目的として、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、共同訓練・演習、装備・技術協力、能力構築支援といった具体的な取組を各軍種の特性に応じ適切に組み合わせて、戦略的に実施する。 こうした防衛協力・交流の意義を踏まえ、より相互に連携し、具体的かつ踏み込んだ取組を行うべく業務要領の改善、体制の整備、制度の見直し等を進めるとともに、部隊運用に際して、防衛協力・交流に関する所要を一層反映していく。また、取組を実施するに当たっては、関係府省との連携、諸外国や非政府組織、民間部門等との連携を図るとともに、取組について戦略的に発信する。その際、特に以下を重視する。 (1)共同訓練・演習 防衛協力・交流としての意義も十分に踏まえつつ、二国間・多国間の共同訓練・演習を積極的に推進する。これにより、望ましい安全保障環境の創出に向けた我が国の意思と能力を示すとともに、各国との相互運用性の向上や他国との関係強化等を図る。 (2)装備・技術協力 防衛装備の海外移転を含む装備・技術協力の取組を強化し、相手国軍隊の能力向上や相手国との中長期にわたる関係の維持・強化を図る。特に、必要に応じて、訓練・演習や能力構築支援等の他の取組とも組み合わせることで、これを効果的に進める。 (3)能力構築支援 インド太平洋地域の各国等に対して、その能力向上に向けた自律的・主体的な取組が着実に進展するよう協力することにより、相手国軍隊等が国際の平和及び地域の安定のための役割を適切に果たすことを促進し、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出することを目指す。その際、自衛隊がこれまで蓄積してきた知見を有効に活用するほか、外交政策との調整を十分に図るとともに、能力構築支援を実施する米国・オーストラリア等との連携を図り、多様な手段を組み合わせて最大の効果が得られるよう効率的に取り組む。 (4)海洋安全保障 開かれ安定した海洋は海洋国家である我が国の平和と繁栄の基礎という認識の下、自由で開かれたインド太平洋のビジョンも踏まえ、海洋安全保障について認識を共有する諸外国との共同訓練・演習、装備・技術協力、能力構築支援、情報共有、様々な機会を捉えた艦艇や航空機の寄港等の取組を推進する。これにより、海洋秩序の安定のための我が国の意思と能力を積極的かつ目に見える形で示す。 (5)国際平和協力活動等 国際平和協力活動等については、平和安全法制も踏まえ、派遣の意義、派遣先国の情勢、我が国との政治・経済的関係等を総合的に勘案しながら、主体的に推進する。特に、これまでに蓄積した経験をいかしつつ、現地ミッション司令部要員等の派遣、工兵マニュアルの普及、我が国が得意とする分野における能力構築支援等の活動を積極的に推進する。また、平和安全法制を踏まえた任務に対応する教育訓練を推進するとともに、陸上自衛隊において、中央即応連隊及び国際活動教育隊の統合による、高い即応性及び施設分野や無人機運用等の高い技術力を有する国際活動部隊の新編に向け、必要な措置を講ずる。 国際平和協力センターにおける教育内容を拡充するとともに、国際平和協力活動等における関係府省や諸外国、非政府組織等との連携・協力の重要性を踏まえ、同センターにおける教育対象者を自衛隊員以外に拡大するなど、教育面での連携の充実を図る。 なお、ジブチ共和国において海賊対処のために運営している自衛隊の活動拠点について、地域における安全保障協力等のための長期的・安定的な活用に向け取り組む。 (6)軍備管理・軍縮及び不拡散 大量破壊兵器及びその運搬手段となり得るミサイルの拡散や武器及び軍事転用可能な貨物・機微技術の拡散については、関係国や国際機関等と協力しつつ、それらの不拡散のための取組を推進する。また、自衛隊が保有する知見・人材を活用しつつ、自律型致死兵器システム(LAWS)に関する議論を含む国際連合等による軍備管理・軍縮に係る諸活動に関与する。 6 防衛力を支える要素 (1)訓練・演習 各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、演習場等周辺の環境を十分把握し、安全確保に万全を期しつつ、自衛隊の統合訓練・演習や日米の共同訓練・演習を計画的かつ目に見える形で実施するとともに、これらの訓練・演習の教訓等を踏まえ、事態に対処するための各種計画を不断に検証し、見直しを行う。その際、北海道を始めとする国内の演習場等の整備・活用を拡大し、効果的な訓練・演習を行う。また、地元との関係に留意しつつ、米軍施設・区域の自衛隊による共同使用の拡大を促進する。さらに、自衛隊施設や米軍施設・区域以外の場所の利用や米国・オーストラリア等の国外の良好な訓練環境の活用を促進するとともに、シミュレーター等を一層積極的に導入する。このほか、陸上自衛隊及び海上自衛隊による米海兵隊等と連携した訓練・演習の実施により、水陸両用作戦能力の更なる充実を図る。こうした国内外の訓練環境を活用した訓練・演習を有機的に連携させることにより、平素からの部隊の迅速かつ継続的な展開の実効性向上やプレゼンスの強化を図る。 各種事態に国として一体的に対処し得るよう、警察、消防、海上保安庁などの関係機関との連携を強化する。また、国民保護を含め、自衛隊の統合訓練・演習や日米間での共同訓練・演習の機会を、自衛隊の実運用のための計画等の検討・検証のみならず、総合的な課題の検討・検証の場としても積極的に活用する。 (2)衛生 自衛隊員の壮健性を維持するとともに、各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得る衛生機能の強化を図る。 各種事態に対応するため、統合運用の観点も含め、第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢の強化として、速やかに医療拠点を展開し患者の症状を安定化させるためのダメージコントロール手術を行う機能及び後送中の患者を管理する機能の充実を図る。その際、患者情報について第一線から最終後送先まで共有するシステムを整備する。また、衛生資材の相互運用性を考慮して共通化等を図るとともに、必要な衛生資材の備蓄を図る。さらに、患者搬送を安全に実施するため、装甲化した救急車の導入に向け、必要な措置を講ずる。こうした整備に当たっては、地域の特性を踏まえつつ、南西地域における衛生機能の強化を重視する。 平素からの自衛隊の衛生運用に係る統制・調整を行うため、統合幕僚監部の組織強化を図る。また、自衛隊病院の拠点化・高機能化等をより一層推進し、効率的で質の高い医療体制を確立する。さらに、防衛医科大学校の運営改善及び研究機能の強化を進め、優秀な人材の確保に努めるとともに、医官の臨床経験を充実させ、医官の充足向上を図りつつ、医師である予備自衛官の任用を推進する。加えて、戦傷医療対処能力を向上させるために必要な各自衛隊共通の衛生教育訓練基盤等の整備や、能力構築支援を含む様々な国際協力に必要な態勢の整備を推進する。 (3)地域コミュニティーとの連携 地方公共団体や地元住民に対し、平素から防衛省・自衛隊の政策や活動に関する積極的な広報等を行うとともに、自衛隊及び在日米軍の部隊や装備品の配備、訓練・演習の実施等に当たっては、地元に対する説明責任を十分に果たしながら、地元の要望や情勢に応じたきめ細やかな調整を実施する。同時に、住宅防音事業の更なる促進を含め防衛施設周辺対策事業を引き続き推進する。また、各種事態において自衛隊が迅速かつ確実に活動を行うため、地方公共団体、警察・消防機関などの関係機関との連携を一層強化する。 地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊による急患輸送が地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配置・運営に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮する。また、中小企業者に関する国等の契約の方針を踏まえ、効率性にも配慮しつつ、地元中小企業の受注機会の確保を図るなど、地元経済に寄与する各種施策を推進する。 (4)知的基盤 国民が安全保障政策に関する知識や情報を正確に認識できるよう教育機関等への講師派遣や公開シンポジウムの充実等を通じ、安全保障教育の推進に寄与するほか、安全保障に係る研究成果等への国民のアクセスが向上するよう効率的かつ信頼性の高い情報発信に努めるとともに、多様化が進むソーシャルネットワークの一層の活用や、外国語によるものも含む情報発信の能力を高める各種施策を推進する。また、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を一層強化するため、国内外の研究教育機関や大学、シンクタンク等とのネットワーク及び組織的な連携を拡充する。さらに、高度な専門知識と研究力に裏付けされた質の高い研究成果等を政策立案部門等に適時・適切に提供することによって政策立案に寄与することを図る。 W 整備規模 前記Vに示す装備品のうち、主要なものの具体的整備規模は、別表のとおりとする。 V 所要経費 1 この計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、平成30年度価格でおおむね27兆4,700億円程度を目途とする。 2 本計画期間中、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力整備の一層の効率化・合理化を徹底し、重要度の低下した装備品の運用停止や費用対効果の低いプロジェクトの見直し、徹底したコスト管理・抑制や長期契約を含む装備品の効率的な取得などの装備調達の最適化及びその他の収入の確保などを通じて実質的な財源確保を図り、本計画の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、おおむね25 兆5,000 億円程度を目途とする。なお、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、従来とは抜本的に異なる速度で防衛力の強化を図り、装備品等の整備を迅速に図る観点から、事業管理を柔軟かつ機動的に行うとともに、経済財政事情等を勘案しつつ、各年度の予算編成を実施する。 3 この計画を実施するために新たに必要となる事業に係る契約額(物件費)は、平成30 年度価格でおおむね17 兆1,700 億円程度(維持整備等の事業効率化に資する契約の計画期間外の支払相当額を除く)の枠内とし、後年度負担について適切に管理することとする。 4 この計画については、3年後には、その時点における国際情勢、情報通信技術を始めとする技術的水準の動向、財政事情等の内外諸情勢を勘案し、必要に応じ見直しを行う。 Y 留意事項 米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図るための在日米軍の兵力態勢見直し等についての具体的措置及びSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関連事業については、着実に実施する。 ? (別表) 区  分 種  類 整備規模 陸上自衛隊 機動戦闘車 装甲車 新多用途ヘリコプター 輸送ヘリコプター(CH−47JA) 地対艦誘導弾 中距離地対空誘導弾 陸上配備型イージス・システム (イージス・アショア) 戦車 火砲(迫撃砲を除く。) 134両 29両 34機 3機 3個中隊 5個中隊 2基 30両 40両 海上自衛隊 護衛艦 潜水艦 哨戒艦 その他 自衛艦建造計 (トン数) 固定翼哨戒機(P−1) 哨戒ヘリコプター(SH−60K/K(能力向上型)) 艦載型無人機 掃海・輸送ヘリコプター(MCH−101) 10隻 5隻 4隻 4隻 23隻 (約6.6万トン) 12機 13機 3機 1機 航空自衛隊 早期警戒機(E−2D) 戦闘機(F−35A) 戦闘機(F−15)の能力向上 空中給油・輸送機(KC−46A) 輸送機(C−2) 地対空誘導弾ペトリオットの能力向上 (PAC−3MSE) 滞空型無人機(グローバルホーク) 9機 45機 20機 4機 5機 4個群 (16個高射隊) 1機 (注)1 哨戒ヘリコプターと艦載型無人機の内訳については、「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」完成時に、有人機75機、無人機20機を基本としつつ、総計95機となる範囲内で「中期防衛力整備計画(平成31年度〜平成35年度)」の期間中に検討することとする。 2 戦闘機(F−35A)の機数45機のうち、18機については、短距離離陸・垂直着陸機能を有する戦闘機を整備するものとする。