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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

2 防衛技術戦略など

防衛省では、わが国の技術的優越を確保し、先進的な装備品の創製を効果的・効率的に行い、防衛技術や民生技術に関する各種の政策課題に対応するため、16(平成28)年、国家安全保障戦略や25大綱1などを踏まえつつ、戦略的に取り組むべき各種施策の具体的な方向性を示した「防衛技術戦略」を策定した。この戦略に基づき、防衛省は各種施策を推進している。

1 防衛技術戦略
(1)防衛省の技術政策の目標

わが国の防衛力の基盤である技術力を強化し、さらに強固な防衛力の基盤とするべく、次の2つを防衛省の技術政策の目標に定めた。

  1. ① 技術的優越の確保
  2. ② 優れた防衛装備品の効果的・効率的な創製
(2)推進すべき具体的施策

前項で示した目標を達成するため、次の3つの施策を推進する。

① 技術情報の把握

防衛技術を支えている様々な科学技術について、官民におけるデュアル・ユース技術や最先端科学技術を含む国内外の現状と動向を把握する。また、ゲーム・チェンジャーとなり得る先進的な技術分野を明らかにする「中長期技術見積り」(本項2参照)を策定し、公開する。

KEY WORDデュアル・ユース技術とは

民生用にも防衛用にもどちらにも使うことができる技術

② 技術の育成

中長期的な研究開発を推進する「研究開発ビジョン」(本項3参照)を策定するとともに、防衛力構築の基盤を担う研究開発、国内外の関係機関などとの技術交流や防衛用途として期待される先進的な技術の発掘と育成を視野に入れた「安全保障技術研究推進制度」などを推進する。

③ 技術の保護

わが国の技術が意図せず他国に流出し、国際社会の平和及び安全の維持や、わが国の技術的優越の確保の妨げにならないよう、技術移転を適切に行うための技術管理を実施するとともに、防衛装備移転を考慮した知的財産管理を確立し、知的財産の活用を推進する。

2 中長期技術見積り

「中長期技術見積り」とは、今後おおむね20年の間に確立されることが期待される、装備品に適用が可能な技術の見通しと、わが国の技術的優越を確保するために確立しなければならない技術分野を提示するものである。また、本見積りを公表することで、優れた民生先進技術の取り込みや、防衛装備品への適用を目指した技術の省外での育成を促進させることを期待している。今般、特に新たな領域に関する技術や、人工知能(AI)などのゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術をはじめとする重要技術により戦略的に取り組むために、見直しを行っている。

3 研究開発ビジョン

「研究開発ビジョン」とは、先進的な研究を中長期的な視点に基づいて体系的に行うため、今後のわが国の防衛に必要な能力の獲得に必要な技術について基本的な考え方を示した上で、技術的課題や研究開発のロードマップを提示したものである。

防衛省は、策定した研究開発ビジョンを公表し、防衛産業などと共有することにより、企業などの予見可能性を向上させ先行投資の促進を図るとともに、その力を最大限に引き出すことで、より効果的・効率的な研究開発を実現することを目指している。これまで、10(平成22)年に「将来戦闘機ビジョン」を、16(平成28)年に「将来無人装備に関する研究開発ビジョン~航空無人機を中心に~」を策定、公表しており、現在、無人機などの共通基盤となる各種研究・調査などを実施している。

19(令和元)年8月には、多次元統合防衛力の実現に資するとともに、今後のさらなる防衛力の強化に必要となる技術革新を実現すべく、「研究開発ビジョン~多次元統合防衛力の実現とその先へ~」を公表した。今後も、政策的方向性、運用ニーズ、技術動向の変化等を考慮し、研究開発ビジョンの見直しや新たなテーマでの研究開発ビジョンの策定・公表を進めることとしている。