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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

防衛白書トップ > 第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など > 第2章 防衛装備・技術に関する諸施策 > 第1節 装備体系の見直し > 1 合理的な装備体系の構築のための取組

第2章 防衛装備・技術に関する諸施策

わが国の財政事情が厳しさを増す中、装備品の高性能化・複雑化に伴い外国製装備品の輸入が増加する一方、国内企業からの調達数量が減少傾向にあることなどにより、わが国の防衛産業は厳しい状況に晒(さら)されている。

また、各国は全般的な軍事能力の向上のため、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力を裏付ける技術の優位を追求している。さらに、ゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術を活用した兵器の開発や、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を搭載した自律型の無人兵器システムの研究にも取り組んでおり、今後のさらなる技術革新は、将来の戦闘様相をさらに予見困難なものにするとみられる。

このような中、多次元統合防衛力の構築に必要かつ十分な防衛力の「質」及び「量」を確保するには、①装備体系の見直し、②技術基盤の強化、③装備調達の最適化、④産業基盤の強靭化、⑤防衛装備・技術協力の推進に取り組むことが不可欠である。

第1節 装備体系の見直し

1 合理的な装備体系の構築のための取組

人口減少・少子高齢化の急速な進展や厳しい財政事情を踏まえれば、領域横断作戦に対応できる十分な能力を獲得するためには、装備体系の合理化などにかかる取組を一層推進することが必要不可欠である。新中期防1においては、統合運用の観点から実効的かつ合理的な装備体系を構築するため、以下の項目に取り組んでいくこととしている。

1 統幕の機能強化

現有の各自衛隊の装備体系を検証し、統合運用の観点から実効的かつ合理的な装備体系を構築するため、統幕における装備体系機能の強化について検討し、必要な措置を講ずるとともに、新中期防期間中の適切なタイミングで統合運用上の観点を踏まえた装備体系の構築に着手することとしている。

2 装備品のファミリー化・仕様の共通化・共同調達など

これまでも、統合的見地を踏まえ、開発・取得・維持経費の低減を図るため、装備品のファミリー化、装備品の仕様の共通化、各自衛隊が共通して保有する装備品の共同調達などを行ってきた2ところである。新中期防においては、例えば、陸自の次期装輪装甲車の「人員輸送型」、「指揮通信型」、「患者輸送型」などの「ファミリー化車両」を整備するとともに、陸自が保有する沿岸レーダー、低空レーダーなどの複数種類のレーダーの後継として、仕様を共通化したレーダーを開発することとしている。また、各自衛隊が共通して保有する装備品の共同調達として、共通仕様化が図られている陸自の11式短距離地対空誘導弾と、航空自衛隊の基地防空用地対空誘導弾について、同一の契約により取得することで単価低減の可能性が見込めることから、具体的な効果について検討していくこととしている。

仕様の共通化が図られている陸自11式短距離地対空誘導弾(写真手前)と空自基地防空用地対空誘導弾(写真奥)

仕様の共通化が図られている陸自11式短距離地対空誘導弾(写真手前)と
空自基地防空用地対空誘導弾(写真奥)

KEY WORD装備品のファミリー化とは

装備品について、基本的な構成部品を共通化させつつ、機能、性能などにバリエーションを持たせることで異なる運用要求に応えるようにすること

3 重要度の低下した装備品の運用停止など

新中期防においては、航空機などの種類の削減、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直しや中止などを行うこととしている。

具体的には、203mm自走りゅう弾砲など、わが国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、必ずしも優先順位の高いとは言えない装備品について、後継装備品を整備せず用途廃止とするとともに、生物偵察車などの整備数量が少なく、費用対効果の低い装備品などは、機能担保を行いつつ用途廃止とすることとしている。

1 II部4章1節脚注2参照

2 「装備品のファミリー化」は、陸・海・空自で使用する対艦誘導弾、「装備品の仕様の共通化」は、陸自と空自で使用する短距離用の地対空誘導弾、「各自衛隊が共通して保有する装備品の共同調達」は、陸・海・空自における弾薬などがある。