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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

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第1章 防衛力を支える人的基盤及び衛生機能

第1節 防衛力を支える人的基盤の強化

新防衛大綱1は、防衛力の中核は自衛隊員であり、自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上は防衛力の強化に不可欠としている。そして、これらは人口減少と少子高齢化の急速な進展によって喫緊の課題となっており、防衛力の持続性・強靭性の観点からも、防衛力を支える人的基盤の強化をこれまで以上に推進していく必要があるとしている。

これまで行われてきた取組を含め、人的基盤の強化に関する取組を、以下で説明する。

1 募集・採用

1 募集

防衛省・自衛隊が各種任務を適切に遂行するためには、質の高い人材を確保することが必要不可欠である。防衛省・自衛隊に対する国民の期待が高まる一方で、社会の少子化・高学歴化の進展のほか、近年の好調な景気・雇用状況などにより、自衛官の募集環境は、厳しい状況にある。このような状況において、防衛省・自衛隊は、募集対象者などに対して、自衛隊の任務や役割、職務の内容、勤務条件を丁寧に説明し、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を募る必要がある。

このため、防衛省・自衛隊では、学校説明会などに加え、全国50か所に自衛隊地方協力本部を置き、学校関係者の理解と募集相談員などの協力を得ながら、志願者個々のニーズに対応できるようにしている。なお、地方公共団体は、募集期間などの告示や広報宣伝などを含め、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行うこととされており、防衛省はこれに要する経費を負担している。また、募集に関する事務の円滑な遂行のために必要な募集対象者情報の提出を含め、所要の協力が得られるよう今後も地方公共団体などとの連携を強化する。

2 採用
(1)自衛官

自衛官は、個人の自由意志に基づく志願制度のもと、様々な区分に応じて採用される。なお、自衛官の採用年齢について、民間企業での勤務経験を有する者など、より幅広い層から多様な人材を確保するため、18(平成30)年10月、一般曹候補生及び自衛官候補生の採用上限年齢を「27歳未満」から「33歳未満」に引き上げた。

参照図表IV-1-1-1(採用対象人口の推移)
図表IV-1-1-2(自衛官の任用制度の概要)

図表IV-1-1-1 採用対象人口の推移

図表IV-1-1-2 自衛官の任用制度の概要

自衛官は、その職務の特殊性から、自衛隊の精強性を保つため、「若年定年制」や「任期制」など、一般の公務員とは異なる人事管理2を行っている。

採用後は、各自衛隊の教育部隊や学校で基本的な教育訓練を受けた後、希望や適性などに応じて職種が決定され、全国の部隊などで勤務する。

参照資料55(自衛官の定員及び現員)
資料56(自衛官などの応募及び採用状況(平成30年度))

(2)予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補

有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要数を早急に満たさなければならない。この所要数を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では予備自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官補の3つの制度3を設けている。

参照図表IV-1-1-3(予備自衛官などの制度の概要)

図表IV-1-1-3 予備自衛官などの制度の概要

予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として任務につく。即応予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、第一線部隊の一員として、現職自衛官とともに任務につく。また、予備自衛官補は、自衛官未経験者などから採用され、教育訓練を修了した後、予備自衛官として任用される。

予備自衛官などは、平素はそれぞれの職業などについているため、定期的な訓練などには仕事のスケジュールを調整するなどして参加する必要があることから、予備自衛官などを雇用する企業の理解と協力が不可欠である。

このため、防衛省は、年間30日の訓練が求められる即応予備自衛官が、安心して訓練などに参加できるよう必要な措置を行っている雇用企業などに対し、その負担を考慮し、「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。また、17(平成29)年には、予備自衛官又は即応予備自衛官の雇用主から、訓練招集の予定期間や実運用のために予備自衛官などが招集され自衛官となる予定期間などの情報を求められた場合に、防衛省・自衛隊から当該情報を提供する枠組みを整備するとともに、18(平成30)年には、予備自衛官又は即応予備自衛官が、①防衛出動、国民保護等派遣、災害派遣などにおいて招集に応じた場合や、②招集中の公務上の負傷などにより本業を離れざるを得なくなった場合、その職務に対する理解と協力の確保に資するための給付金を雇用主に支給する「雇用企業協力確保給付金」制度を新設した。

平成28(2016)年熊本地震4、平成30(2018)年7月豪雨5、平成30(2018)年北海道胆振東部地震6で即応予備自衛官が招集され、物資輸送や給水支援などの任務を行った。今後も、地震などの災害に対し、予備自衛官などの招集機会の増加が予想されるため、予備自衛官などの充足向上を図る様々な施策を実施している。具体的には、より幅広い層から多種多様な人材を確保するため、18(平成30)年に採用・任用基準の拡大を行い、予備自衛官については、士長以下の採用上限年齢を「37歳未満」から「55歳未満」に、継続任用時の上限年齢を「61歳未満」から「62歳未満」に引き上げるとともに、医師の資格を有する者については、上限年齢を設けず、医師の技量が適正に維持され、予備自衛官の任務に支障がないことを確認したうえで、継続任用を認めることとした。即応予備自衛官については、士長以下の採用上限年齢を「32歳未満」から「50歳未満」へ引き上げた。また、19(平成31)年には、自衛官経験のない予備自衛官補から予備自衛官に任用された者についても、一定の教育訓練を受けた上で、即応予備自衛官に任用できる制度を新たに整備している。

また、割愛7により民間部門に再就職する航空機操縦士を予備自衛官として任用するなど、幅広い分野で予備自衛官の活用を進めている。

(3)事務官、技官、教官など

防衛省・自衛隊には、自衛官のほか、約2万1,000人の事務官、技官、教官などが隊員8として勤務している。防衛省では、主に、人事院が行う国家公務員採用総合職試験及び国家公務員採用一般職試験、防衛省が行う防衛省専門職員採用試験の合格者から採用を行っている。採用後は、共通の研修を受けたうえで、様々な分野で業務を行っている。

事務官は、本省及び防衛装備庁の内部部局などでの防衛全般に関する各種政策の企画・立案、情報本部での分析・評価、全国各地の部隊や地方防衛局などでの行政事務に従事している。

技官は、本省内部部局、防衛装備庁、全国各地の部隊や地方防衛局などで、各種の防衛施設(司令部庁舎、滑走路、弾薬庫など)の建設工事、様々な装備品の研究開発・効率的な調達・維持・整備、隊員のメンタルヘルスケアなどに従事している。

教官は、防衛研究所や防衛大学校、防衛医科大学校などで、防衛に関する高度な研究や隊員に対する質の高い教育を行っている。

防衛大学校卒業式(19(平成31)年3月)

防衛大学校卒業式(19(平成31)年3月)

参照資料57(防衛省の職員等の内訳)

1 II部3章1節脚注1参照

2 国家公務員法第2条に定められた特別職の国家公務員として位置づけ

3 諸外国においても、予備役制度を設けている。

4 平成28(2016)年熊本地震に際しては、史上2度目となる即応予備自衛官の招集を行い、162名の即応予備自衛官が生活支援活動などに従事した。

5 平成30(2018)年7月豪雨に際しては、史上3度目となる即応予備自衛官の招集を行い、7月12日から7月30日の間、311名の即応予備自衛官が生活支援活動などに従事した。

6 平成30(2018)年北海道胆振東部地震に際しては、史上4度目となる即応予備自衛官の招集を行い、9月8日から9月23日の間、251名の即応予備自衛官が生活支援活動などに従事した。

7 自衛隊操縦士の割愛は、最前線で活躍する若手の操縦士が民間航空会社などへ無秩序に流出することを防止するとともに、一定年齢以上の操縦士を民間航空会社などで活用する制度であり、わが国の航空業界などの発展という観点からも意義がある。

8 防衛省の職員のうち、特別職の国家公務員を「自衛隊員」といい、自衛隊員には、自衛官のほか、事務官、技官、教官などが含まれる。