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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

2 真に実効的な防衛力 ─ 多次元統合防衛力 ─

厳しさを増す安全保障環境の中で、軍事力の質・量に優れた脅威に対する実効的な抑止及び対処を可能とするためには、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域と、陸・海・空という従来の領域の組合せによる戦闘様相に適応することが死活的に重要になっている。

このため、今後の防衛力については、個別の領域における能力の質及び量を強化しつつ、全ての領域における能力を有機的に融合し、その相乗効果により全体としての能力を増幅させる領域横断(クロス・ドメイン)作戦により、個別の領域における能力が劣勢である場合にもこれを克服し、わが国の防衛を全うできるものとすることが必要である。

また、不確実性を増す安全保障環境の中で、わが国を確実に防衛するためには、平時から有事までのあらゆる段階における活動をシームレスに実施できることが重要である。これまでも、多様な活動を機動的・持続的に行い得る防衛力の構築に努めてきたが、近年では、平素からのプレゼンス維持、情報収集・警戒監視などの活動をより広範かつ高頻度に実施しなければならず、このため、人員、装備などに慢性的な負荷がかかり、部隊の練度や活動量を維持できなくなるおそれが生じている。このため、今後の防衛力については、各種活動の持続性・強靭性を支える能力の質及び量を強化しつつ、平素から、事態の特性に応じた柔軟かつ戦略的な活動を常時継続的に実施可能なものとすることが必要である。

さらに、わが国の防衛力は、日米同盟の抑止力及び対処力を強化するものであるとともに、多角的・多層的な安全保障協力を推進し得るものであることが必要である。

以上の観点から、今後、わが国は、統合運用による機動的・持続的な活動を行い得るものとするという、25大綱2に基づく統合機動防衛力の方向性を深化させつつ、宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力を構築していく。