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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

3 基本政策

これまでわが国は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備してきている。

1 専守防衛

専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう。

2 軍事大国とならないこと

軍事大国という概念の明確な定義はないが、わが国が他国に脅威を与えるような軍事大国とならないということは、わが国は自衛のための必要最小限を超えて、他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持しないということである。

3 非核三原則

非核三原則とは、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという原則を指し、わが国は国是としてこれを堅持している。

なお、核兵器の製造や保有は、原子力基本法の規定でも禁止されている2。さらに、核兵器不拡散条約(NPT:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)により、わが国は、非核兵器国として、核兵器の製造や取得をしないなどの義務を負っている3

4 文民統制の確保

文民統制は、シビリアン・コントロールともいい、民主主義国家における軍事に対する政治の優先、又は軍事力に対する民主主義的な政治による統制を指す。わが国の場合、終戦までの経緯に対する反省もあり、自衛隊が国民の意思によって整備・運用されることを確保するため、旧憲法下の体制4とは全く異なり、次のような厳格な文民統制の制度を採用している。

国民を代表する国会が、自衛官の定数、主要組織などを法律・予算の形で議決し、また、防衛出動などの承認を行う。国の防衛に関する事務は、一般行政事務として、内閣の行政権に完全に属しており、内閣を構成する内閣総理大臣その他の国務大臣は、憲法上文民でなければならないこととされている。内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を有しており、国の防衛に専任する主任の大臣である防衛大臣は、自衛隊の隊務を統括する。また、内閣には、わが国の安全保障に関する重要事項を審議する機関として国家安全保障会議が置かれている。

防衛省では、防衛大臣が国の防衛に関する事務を分担管理し、主任の大臣として、自衛隊を管理し、運営する。その際、防衛副大臣、防衛大臣政務官(2人)及び防衛大臣補佐官が政策、企画及び政務について防衛大臣を助けることとされている5

また、防衛大臣政策参与が、防衛省の所掌事務に関する重要事項に関し、自らが有する見識に基づき、防衛大臣に進言などを行うこととしているほか、防衛会議では、防衛大臣のもとに政治任用者、文官、自衛官の三者が一堂に会して防衛省の所掌事務に関する基本的方針について審議することとし、文民統制のさらなる徹底を図っている。

以上のように、文民統制の制度は整備されているが、それが実をあげるためには、国民が防衛に対する深い関心を持つとともに、政治・行政両面における運営上の努力が引き続き必要である。

着任にあたり特別儀仗隊を巡閲する岩屋防衛大臣(18(平成30)年10月)

着任にあたり特別儀仗隊を巡閲する岩屋防衛大臣(18(平成30)年10月)

2 原子力基本法第2条「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし……」

3 NPT第2条「締約国である各非核兵器国は、……核兵器その他の核爆発装置を製造せず又はその他の方法によって取得しないこと……を約束する」

4 軍に関する事項について、内閣の統制の及び得ない範囲が広かった。

5 2章1項参照