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資料70 特別防衛監察の結果について(概要)

平成29年7月27日
防衛監察本部

特別防衛監察の結果について(概要)

1 対象項目

「平成28年10月3日付で行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)の規定に基づく開示請求のあった「南スーダン派遣施設隊が現地時間で2016年7月7日から12日までに作成した日報」(以下「本件日報」という。)の管理状況」について監察を実施した。

2 対象機関等

本件日報の管理に関係する防衛省の機関等(事務次官、内部部局、統合幕僚監部(以下「統幕」という。)、陸上幕僚監部(以下「陸幕」という。)、中央即応集団(以下「CRF」という。)司令部)

3 監察実施の概要

平成29年3月17日から特別防衛監察を開始し、関係書類等の取得・分析、アンケート調査、現場等確認、面談を実施した。

4 監察結果

(1)7月19日付の開示請求※1における不適切な対応(平成28年7月~9月)

CRF副司令官(国際)は、本件日報の開示請求と関連する7月19日付の開示請求において、行政文書としての日報の存在を確認しつつ、日報が該当文書から外れることが望ましいとの意図をもって指導し、存在している日報を開示しなかったが、このことは、この対応が契機となり、本件日報に係る開示請求において文書不存在につき不開示となったことから不適切である。

また、陸幕及び統幕関係職員が、日報の存在を認識できる状況であったにも関わらず、日報が除かれた該当文書の開示手続を実施したことは適切ではなかった。

※1 「2016年7月6日(日本時間)~15日の期間にCRF司令部と南スーダン派遣施設隊がやり取りした文書すべて(電子情報含む)」

(2)10月3日付の開示請求における不適切な対応(平成28年10月~12月)

陸幕及びCRF司令部関係職員が、本件日報に係る開示請求において、7月19日付の開示請求への対応を踏まえ、文書不存在につき不開示とし、存在している本件日報を開示しなかったことは不適切である。

また、陸幕及び統幕関係職員が、日報の存在を認識できる状況であったにも関わらず、文書不存在として不開示手続を実施したことは適切ではなかった。

(3)本件日報の管理に関する不適切な対応(平成28年12月、平成29年2月)

平成28年12月、陸幕運用支援・情報部長(以下「陸幕運情部長」という。)は、本件日報の開示請求において文書不存在につき不開示としたことを認識していたにも関わらず、開示に係る処置を行うことなく、用済み後破棄を念頭に、掲示板の適切な管理について指導し、CRF司令部において本件日報が掲示板から廃棄された。このことは、文書不存在につき不開示決定に実態を合わせるよう指導したとみなされてもやむを得ないことから不適切である。

また、平成29年2月、陸幕運情部長は、統幕に存在する本件日報のみを公表したこととの整合を図るため、適切な文書管理とした上で、日報の廃棄を依頼等し、本件日報が廃棄された。このことは、直ちに情報公開法違反につながらないものの、文書不存在につき不開示決定に実態を合わせるよう廃棄の依頼等がなされているといえることから適切ではなかった。

(4)本件日報の存在に係る防衛大臣報告の遅れ及び対外説明を含む不適切な対応(平成28年12月~平成29年1月)

陸幕運情部長は、統幕総括官に対し、陸自に存在する日報が行政文書である可能性を認識しつつ、日報が個人データとして存在すると説明したため、関係者の意思疎通に混乱を生じさせた。※2 一方、統幕総括官は、防衛大臣から本件日報の再探索の指示を受けたが、陸幕等に対する再探索を指示することはなかった。その後、統幕において本件日報の存在を確認したものの、防衛大臣への報告に約1か月を要した。また、陸自の日報の状況を確認せず、正確に把握できなかった。このために、事実関係と異なる対外説明資料を作成する等、防衛省として適切な対応をとれなかったことは不適切である。

※2 このやり取りにおいて、統幕背広組に「今更あるとは言えない」と陸幕が言われたとの報道の事実は確認できなかった。

(5)対外説明スタンスの継続(平成29年2月)

事務次官及び統幕総括官は、陸幕長等からCRF司令部に本件日報データが存在するが、行政文書として管理されているか不明であるなどの説明を受けた。事務次官は、当該データを個人データと認識し、陸自の日報の状況を確認せず、防衛省として本件日報を公表しているので、情報公開法上の対応としては問題ない旨の対外説明方針を示した。また、防衛大臣に対し、本件日報に係る論点について、上記応答ぶりが説明され、了承された。その際、事務次官及び統幕総括官から、陸自に本件日報が存在することについては触れられなかった。そのため、陸自の日報の状況を確認することにより、対外説明スタンスを変更する機会があったにも関わらず、陸自において本件日報は適切に取扱われているとの対外説明スタンスを継続したことは不適切である。

※3 これとは別に、防衛大臣に対し、陸自における日報の取扱いなどについて説明がなされたことがあったが、その際のやり取りの中で、陸自における日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないものの、陸自における日報データの存在を示す書面を用いた報告がなされた事実や、非公表の了承を求める報告がなされた事実はなかった。また、防衛大臣により公表の是非に関する何らかの方針の決定や了承がなされた事実もなかった。

5 改善策

(1)適正な情報公開業務の実施

ア 関係職員に対して、情報公開業務の適正な実施について、意識を高めさせるよう教育等を徹底する必要がある。

イ 行政文書不存在とする場合には、複数回の探索や探索範囲の拡大を実施させるとともに、文書の管理状況を実際に確認するなど、入念な確認を徹底する必要がある。

ウ 開示請求手続と関係のない立場の組織により、情報公開業務の検査等を実施するなど、チェック機能の強化を図る必要がある。また、定期防衛監察を活用し、開示請求に係る手続の適正性の確認に努める。

(2)適正な文書管理等の実施

ア 行政文書への保存期間等の適切な表示などにより、行政文書の状況を明確に把握できるよう措置するとともに、注意文書については、配布先を必要最小限にとどめるよう措置する必要がある。

イ 同一の行政文書を複数の文書管理者が保有する場合における責任を明確にするなど、行政文書の管理要領について見直す必要がある。

(3)日報の保存期間等のあり方の検討及び措置

防衛省として、日報の保存期間や保存期間が満了したときの措置などのあり方について早急に検討及び措置する必要がある。

6 結言

防衛省・自衛隊の活動には、国民の理解と支持が不可欠であり、国民に説明する責務を全うすることが、極めて重要であることを認識し、改善策を早急に講じた上で、各種業務における適正性の確保に万全を期すべきである。

資料70の表